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蛊真人  作者: 魏臣栋
青茅山
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第百三十六節:斗力斗智

冷気れいき四方しほうひろがり、氷刃ひょうじんおどる。鉄拳てっけん咆哮ほうこうし、きばうなる。


熊力ゆうりきらと白凝冰はくぎょうひょうたたかいは白熱はくねつきわみにたっしていた。


戦闘時間せんとうじかんじつのところながくなかった。だが白凝冰はくぎょうひょうからの圧力あつりょく増大ぞうだいするにつれ、熊力ゆうりきらには時間じかん長引ながびくるしささえかんじられるほどだった。


熊姜ゆうきょうかお暗雲あんうん立ちめ、熊林ゆうりんひたいいっぱいにあせかべ、熊力ゆうりきにもおもくるしい緊張感きんちょうかんみなぎっていた。


ここまでたたかいて、熊力ゆうりきでさえいかりをおさえ、白凝冰はくぎょうひょうつよさをみとめざるをなかった。三転さんてん実力じつりょく封印ふういん二転にてん蠱虫こちゅうのみでたたか白凝冰はくぎょうひょう戦闘力せんとうりょくは、彼等かれらたばになってもあらがれぬものだった。


じつえば、白凝冰はくぎょうひょういまこの瞬間しゅんかん全力ぜんりょくってはいない。故意こいではなく、方源ほうげんへの警戒けいかいのこさざるをないからだ。


熊力ゆうりきらにとって動機どうき単純たんじゅん――白凝冰はくぎょうひょう生捕いけどりにすることだけを目指めざしている。


だが白凝冰はくぎょうひょう立場たちばかられば、状況じょうきょう複雑ふくざつきわまる。


一方いっぽう熊力ゆうりきグループとたたかいつつ、他方たほう方源ほうげん不意打ふいうちにそなえなければならないのだ。


かれはこの方源ほうげん隠鱗蠱いんりんこ使つか場面ばめん目撃もくげきしていた。そのため戦闘中せんとうちゅうこころ三分さんぶ方源ほうげん出方でかたき、警戒けいかいつづけていた。


だがたたかいがいまいたっても、方源ほうげん依然いぜんとしてうごきをせない。


「まさかげたのか? いや、初対面しょたいめんだが、あのおとこ簡単かんたんくはずがない!かなら仕掛しかけてくる。ただ時機じきっているだけだ」白凝冰はくぎょうひょう氷刃ひょうじんるい熊力ゆうりき反撃はんげきさえ込み(こみ)ながら、あたま高速こうそく回転かいてんさせていた。


かれ熊力ゆうりきらとの力比ちからくらべだけでなく、方源ほうげんとの知略ちりゃく勝負しょうぶも強いられていた。


方源ほうげん攻撃こうげきおくらせるほど、こころ重圧じゅうあつ増大ぞうだいする。さやおさまったままのつるぎもっと危険きけん――いつどこにされるかからないからだ。


方源ほうげん遠方えんぽう観戦かんせんしているだけだが、白凝冰はくぎょうひょう精神せいしん終始しゅうし拘束こうそくつづけていた。この牽制けんせいがなければ、熊力ゆうりきグループはとっくに敗北はいぼくし、ここまでめるはずもなかった。


「この白凝冰はくぎょうひょう、なかなか機転きてんく。さき豪電狼ごうでんろう素早すばや始末しまつし、おれこまらせた。さらにきずいながら治療ちりょう蠱師こしほうむった。すべて最善さいぜん選択せんたくだ。熊力ゆうりきらと激戦げきせんしながらも、まだおれへの警戒けいかいいていない……」


はやしかげ腕組うでぐみする方源ほうげん遠目とおめから観察かんさつし、ほそめていた。


たくないわけではない。ただいままで適切てきせつ戦機せんきおとずれていないだけだ。


だがかれまったあせっていなかった。


時間じかんつほど白凝冰はくぎょうひょう戦力せんりょく消耗しょうもうする。十絶体じゅうぜつたい真元回復速度しんげんかいふくそくど甲等こうとうはるかにしのぐが、それでも消耗しょうもうけられない。


方源ほうげんてばつほど、白凝冰はくぎょうひょう空竅くうきょうから真元しんげんり、勝利しょうり天秤てんびんが徐々(じょじょ)に方源ほうげんかたむく。


もし白凝冰はくぎょうひょう真元しんげん枯渇こかつすれば、北冥冰魄体ほくめいひょうはくたいだろうとどうなる?一発いっぱつ月刃げつじんくびねられるだけだ!


この事実じじつ方源ほうげん白凝冰はくぎょうひょう理解りかいしていた。


優位ゆういたもつづけているにもかかわらず、白凝冰はくぎょうひょう心中しんちゅうおもくなる一方いっぽうだった。


「もうこんな状況じょうきょうつづけられない!」あおえるひとみひからせ、白凝冰はくぎょうひょう突然とつぜん大股おおまた後退こうたいし、熊力ゆうりきらとの距離きょり一気いっきひらいた。


すると喉仏のどぼとけうえたぎるようにうごき、からなに反芻はんすうしたようなものが口内こうないがってきた。


ほお風船ふうせんのようにふくらんだかと思うと、くるしそうにくちひらいた。


氷色こおりいろ小鳥ことりしろ歯列しれつあいだからかおのぞかせた。活発かっぱつ周囲しゅうい一瞥いちべつするや、すぐに標的ひょうてき見定みさだめた。


白凝冰はくぎょうひょうくちからすと、幅広はばひろつばさ力強ちからづよ羽搏はばたかせ、熊力ゆうりき目掛めがけて突進とっしんした。


あおみがかったこおりとりはとのようなあいらしい外見がいけんだったが、熊力ゆうりきらはその姿すがたるなり顔色かおいろうしなった。


三転藍鳥氷棺蛊さんてんらんちょうひょうかんこ!?」

げろ!」


熊力ゆうりきらはあわててりにかくしたが、このあお氷鳥ひょうとり月刃げつじんちがい、はなたれたら自動的じどうてきてき追尾ついびする。


ドン!


熊力ゆうりきグループの後方支援こうほうしえん蠱師こし衝突しょうとつした瞬間しゅんかん爆発ばくはつした。


あらぶしい冷気れいきほとばしり、まぶしいほどの青白あおじろひかり戦場せんじょうらしした。


次の瞬間しゅんかん青光あおびかりきゅうえ、半透明はんとうめい水色みずいろがかった巨大きょだい氷塊ひょうかいあらわれた。


氷塊ひょうかいなか封印ふういんされた蠱師こしかおには、直前ちょくぜん恐慌きょうこう恐怖きょうふのこっていたが、生命せいめい気配けはい完全かんぜんうしなわれていた。


白凝冰はくぎょうひょう三転さんてん蠱虫こちゅうたないわけではなかった。ただ使用しようすれば空竅くうきょう二転真元にてんしんげんはげしく消耗しょうもうし、三転蠱虫さんてんこちゅう本来ほんらい威力いりょく発揮はっきできず、その一時的いちじてき無防備むぼうび状態じょうたいてき攻撃こうげきすきさら危険きけんがあったからだ。


だが熊力ゆうりき三人さんにんはこの藍鳥氷棺蠱らんちょうひょうかんこ一撃いちげき恐怖きょうふ硬直こうちょくしていた。


白凝冰はくぎょうひょう優位ゆういわず、さっさと戦場せんじょうから離脱りだつしようとした。


これはきわめて賢明けんめい判断はんだんだった。このままたたかつづければ、状況じょうきょうはますます不利ふりになる。


「クソッ……!」

白凝冰はくぎょうひょうげるんじゃねえ!」

熊鑫ゆうきん兄貴あにきころされた……このあだかならず!」


熊力ゆうりき三人さんにん怒鳴どならしたが、くことはできなかった。



元々四人よにんかろうじて形成けいせいしていた包囲網ほういもうも、一人ひとりうしなったいま白凝冰はくぎょうひょうやぶられていた。


白凝冰はくぎょうひょう戦場せんじょうから離脱りだつしようとした瞬間しゅんかんしげみのなかから月刃げつじんし、人影ひとかげおどした。ガン!


白凝冰はくぎょうひょうやいばるって月刃げつじんらしたが、そのすき来襲者らいしゅうしゃりをはらけ、三歩さんぽあとずさった。


そのすき熊力ゆうりき三人さんにんふたたけつけ、白凝冰はくぎょうひょうかこんだ。


白凝冰はくぎょうひょう熊力ゆうりきらを見向みむきもせず、あらわれた人物じんぶつ凝視ぎょうししながら高笑たかわらいした。「ってたぞ」


方源ほうげんだ!」熊林ゆうりんかがやき、絶望的ぜつぼうてき状況じょうきょう好転こうてんしたとかんじた。


方源ほうげんくやった!」熊姜ゆうきょう予想外よそうがい援軍えんぐんよろこびをあらわにした。


熊力ゆうりきだけは沈黙ちんもくまもっていた。外見がいけん粗野そやだが、じつ常人じょうじん以上いじょう慎重しんちょう性格せいかく方源ほうげんいままでうごかず突然とつぜんあらわれたことに違和感いわかんおぼえていた。


方源ほうげん余裕よゆうわらみをかべていたが、内心ないしんでは警戒けいかいつよめていた。白凝冰はくぎょうひょう撤退てったい自分じぶんをおびきわなだと看破かんぱしていたが、ざるをなかった。


熊力ゆうりき表情ひょうじょう方源ほうげんうつっており、予測よそく範囲内はんいないだった。


安心あんしんしろ」方源ほうげんこえげた。「一族いちぞく連絡れんらくみだ。あとすこえれば援軍えんぐんる!」




熊力ゆうりき表情ひょうじょう一瞬いっしゅんゆるんだ。


熊林ゆうりん熊姜ゆうきょう闘志とうし急激きゅうげきたかまるなか白凝冰はくぎょうひょう突然とつぜんてんあおいで高笑たかわらいした。「ハハ、あいつが方源ほうげんか……ますますころしたくなってきたぜ!」


「できるものならやってみろ」方源ほうげんつめたいひかりしきりにひらめかせ、まえした。


白凝冰はくぎょうひょうてんがおまえ見放みはなした!今日きょうわりだ!」熊姜ゆうきょういしばり体当たいあたりを仕掛しかけた。


「好き勝手きってしすぎたんだ!その代償だいしょうはらわせる!」熊林ゆうりん怒声どせいを上げながら背中せなかまわんだ。


方源ほうげんがって援護えんごしてくれ。がさないだけで充分じゅうぶんだ」熊力ゆうりき指示しじす。


方源ほうげん乱入らんにゅうすれば、三人さんにん連携れんけいくずれる危険きけんがあった。


戦闘せんとう再開さいかいされると、方源ほうげん無表情むひょうじょう熊力ゆうりき指示しじ無視むしつづけた。


最初さいしょ熊力ゆうりきらはまゆひそめていたが、方源ほうげん攻撃こうげきつね要害ようがいき、戦機せんきのがさない完璧かんぺき援護えんごとなっていた。


最初さいしょ熊力ゆうりき方源ほうげんかって怒鳴どなりつけていたが、すぐにみずかくちじた。けわしかったまゆゆるみ、方源ほうげんへのおどろきをかくせない様子ようすだった。


方源ほうげん攻撃こうげき頻繁ひんぱんではなかったが、つね戦局せんきょく急所きゅうしょいていた。達人級たつじんきゅう戦術眼せんじゅつがん発揮はっきされ、またたくうちに主導権しゅどうけん掌握しょうあくした。


熊力ゆうりきグループ五人ごにん白凝冰はくぎょうひょう対戦たいせん二人ふたりうしな劣勢れっせいだったが、方源ほうげんくわわると三人さんにんとの連携れんけい完全かんぜん白凝冰はくぎょうひょうしまくった。


白凝冰はくぎょうひょう!くたばれ!」熊力ゆうりきかみなりのような雄叫おたけびを上げ、高々(たかだか)とがり地面じめんはげしく着地ちゃくち両手りょうてゆびわせ、鉄鎚てっついのようなこぶし白凝冰はくぎょうひょう目掛めがけてろした。


白凝冰はくぎょうひょうがかわそうとした瞬間しゅんかん方源ほうげんがタイミングよくあらわれ、月刃げつじんはなって回避かいひ経路けいろふうじた。


白凝冰はくぎょうひょう熊力ゆうりきおも一撃いちげきえるしかなかった。



水罩蛊すいしょうかこ


はなから水蒸気すいじょうき二筋ふたすじし、瞬時しゅんじからだつつ水球すいきゅう防壁ぼうへき形成けいせいした。


ドン!というおととも熊力ゆうりきこぶし防壁ぼうへき直撃ちょくげき一撃いちげきらした。


だがこれにより拳勢けんせいき、白凝冰はくぎょうひょう危機ききしのいだ。


それでも熊力ゆうりき方源ほうげん一瞥いちべつし、賞賛しょうさんいろかべた。方源ほうげん巧妙こうみょう連携れんけいがなければ、この一撃いちげき白凝冰はくぎょうひょうけられ、真元しんげん消耗しょうもうさせることなどできなかったのだ。


「また水罩蛊すいしょうかこか……」方源ほうげん熊力ゆうりき視線しせんにせず、白凝冰はくぎょうひょう凝視ぎょうししながらまゆかすかにひそめた。


この水罩蛊すいしょうかこが度々(たびたび)白凝冰はくぎょうひょう危機ききからすくっていた。白玉蛊はくぎょくこよりもすぐれた防御能力ぼうぎょのうりょく発揮はっきする。


しかし重大じゅうだい欠点けってんがあった。球状きゅうじょう形成けいせいしなければならず、水流すいりゅう衝撃しょうげき分散ぶんさんすることで最大さいだい防御ぼうぎょ効果こうか発揮はっきするという特性とくせいだ。



もし白凝冰はくぎょうひょう崖壁がけべ背中せなかけてしまえば、球状きゅうじょう防壁ぼうへき形成けいせいできず防御力ぼうぎょりょく大幅おおはば低下ていかする。


青茅山せいぼうざんには山林さんりんおおいが、白凝冰はくぎょうひょうつね注意ちゅういはらい、窮地きゅうちまれたことはなかった。


「この水罩蛊すいしょうかこやぶれば白凝冰はくぎょうひょうめられる。だがどうすれば……」方源ほうげん思案しあんしていると、白凝冰はくぎょうひょう突然とつぜんくちひらき、あお氷鳥ひょうとりふたたはなった。


熊力ゆうりきらがおそれるこの攻撃こうげきを、方源ほうげんすずしいかお月刃げつじんはなつ。


バン! 月刃げつじん氷鳥ひょうとり直撃ちょくげき爆散ばくさんさせる。


「ぐっ……!」白凝冰はくぎょうひょう苦悶くもんこえらす。至近距離しきんきょりでの爆発ばくはつぎゃく自身じしんおそい、爆風ばくふうばされ地面じめんたたきつけられた。左腕ひだりうで大半たいはん氷漬こおりづけになり、戦闘能力せんとうのうりょく喪失そうしつした。


絶好ぜっこう機会きかいだ!」熊力ゆうりきするどひかり、「くたばれ!」と咆哮ほうこうしながら両拳りょうこぶしわせて白凝冰はくぎょうひょう頭部とうぶたたろす。


この一撃いちげき直撃ちょくげきすれば、水罩蛊すいしょうかこ半分はんぶん防御力ぼうぎょりょくしか発揮はっきできず、白凝冰はくぎょうひょう即死そくしするだろう。

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