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蛊真人  作者: 魏臣栋
青茅山
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第百三十五節:北冥冰魄,十绝天资

「なんだって!?」熊林ゆうりん絶句ぜっくした。


強纏きょうてんだと?青茅山せいぼうざんでこれをつのはたった一人ひとりおれ従弟いとこ熊氈ゆうせんだけだぞ!」熊姜ゆうきょう顔色かおいろ一気いっきけわしくなった。


熊力ゆうりきほそめると、そのひとみ凶悪きょうあくひかりひらめいた。他人ひと白凝冰はくぎょうひょうおそれようと、かれ一族いちぞくのためにいのちてる覚悟かくごをすでにかためていた!


白凝冰はくぎょうひょう強纏きょうてん本当ほんとうにおまえってるのか?」方源ほうげん横切よこぎるにまかせ、白凝冰はくぎょうひょうった。


白凝冰はくぎょうひょう高笑たかわらいした。「ってたからどうした?」


熊姜ゆうきょう表情ひょうじょう暗雲あんうん立ちめた。「え!おれ従弟いとこはどうしてんだ?そのがなぜおまえに?」


熊林ゆうりんつづけた。「白凝冰はくぎょうひょう殿どの尊敬そんけいはしております。ですが盟約めいやく違反いはん熊家寨ゆうかさい蠱虫こちゅうわたしものにするとは!」


そううとり上げ、信号蠱しんごくこはなった。


バン!とおとて、色鮮いろあざやかなほむら空中くうちゅう炸裂さくれつした。


ほのおあやりが白凝冰はくぎょうひょうかおらすなかかれ哄笑こうしょうした。「盟約めいやくなんぞ最初さいしょから眼中がんちゅうにない。ただ強纏きょうてん使つかい方が面白おもしろかったからっただけだ」


熊姜ゆうきょうはこの言葉ことばき、憤怒ふんぬ爆発ばくはつさせた。「白凝冰はくぎょうひょう従弟いとこぬのをだまっててやがって……この野郎やろう!」



グループ五人ごにん完全かんぜん一体いったいとなっていた。公私こうしとも熊力ゆうりきのチームは白凝冰はくぎょうひょう不倶戴天ふぐたいてん敵対関係てきたいかんけいにあった。


戦闘せんとうけられない。場面ばめん瞬時しゅんじにして混乱こんらんおちいった。


一方いっぽう白凝冰はくぎょうひょう熊力ゆうりきグループ五人ごにん連携攻撃れんけいこうげきけている。他方たほう彼等かれら狼群おおかみぐん包囲ほういされ、電狼でんろうきばからもてられていた。


方源ほうげん戦場せんじょうからはなれ、遠方えんぽう余裕よゆう綽々(しゃくしゃく)と観察かんさつしていた。


狼群おおかみぐんうごめさま巨大きょだい石臼いしうすのようで、六人ろくにん蠱師こしわれわすれてたたかなかわずかな油断ゆだんすなわおおかみ餌食えじきになる危険きけんはらんでいた。


熊姜ゆうきょう遊僵蠱ゆうきょうこ発動はつどうし、両目りょうめ不気味ぶきみ緑色みどりいろかがやいた。熊力ゆうりき真赤まっかひからせ、白凝冰はくぎょうひょうひとみ水晶すいしょうのようにあおんでいた。この三者さんしゃたたかいが戦場せんじょうもっと激烈げきれつ焦点しょうてんとなった。


遊僵蠱ゆうきょうこちから熊姜ゆうきょう僵尸きょうしし、みずこおりへの防御ぼうぎょりょく急上昇きゅうじょうしょうし、かろうじて白凝冰はくぎょうひょう攻撃こうげきふせいでいた。熊力ゆうりき熊豪蠱ゆうごうこ駆使くしし、二頭にとうくまちからて、茶碗ちゃわんおおきいこぶし猛威もういふるった。二三発にさんぱつめば、白凝冰はくぎょうひょう水球すいきゅう防壁ぼうへきさえ粉々(こなごな)にくだけた。


のこ三人さんにん熊家ゆうけ蠱師こしはこのたたかいに介入かいにゅうできず、電狼でんろう対処たいしょするのに精一杯せいいっぱいだった。方源ほうげんせた豪電狼ごうでんろう本来ほんらいなら容易ようい制圧せいあつできる存在そんざいだったが、いま巨大きょだい脅威きょういへと変貌へんぼうしていた。


白凝冰はくぎょうひょう!おまえ所業しょぎょう代償だいしょうはらわせる!」熊姜ゆうきょう咆哮ほうこうし、白凝冰はくぎょうひょう突進とっしんした。


「ふん、おまえごときが?」白凝冰はくぎょうひょう冷笑れいしょうこぼし、かろやかにうしろへ退いて距離きょりった。同時どうじ左手ひだりてり、ゆびほどのおおきさの氷錐ひょうすい五本ごほんはなつ。


氷錐ひょうすい熊姜ゆうきょう胴体どうたい直撃ちょくげきしたが、かれいたみをまったかんじなかった。僵尸きょうししたさい手足てあし切断せつだんされても痛覚つうかく消失しょうしつしていたのだ。


こおり冷気れいき常人じょうじんなら動作どうさにぶらせるが、かれにはすずやかな快感かいかんはしった。僵尸きょうしは元々(もともと)陰体いんたいであり、ほのおかみなり日光にっこうよわわりに、このしゅ冷気れいきには耐性たいせいそなえていた。


白凝冰はくぎょうひょう!こんな状況じょうきょう俺達おれたちもてあそんでるつもりか?本気ほんきせ!」熊力ゆうりき怒声どせいげた。


戦闘開始せんとうかいし以来いらい白凝冰はくぎょうひょうみずからの修為しゅうい二転にてん蠱師こしレベルに抑制よくせいし、使用しようする蠱虫こちゅう大半たいはん二転にてんのものにとどめていた。


この態度たいど熊力ゆうりき侮蔑ぶべつされているという屈辱感くつじょくかんしょうじさせ、いかりのほのおたせていた。


「フゲフゲ……お前達まえたちみたいなゴミに全力ぜんりょく資格しかくがあるとでも?」白凝冰はくぎょうひょうあざけるようにわらい、攻撃こうげきさらするどくしたが、依然いぜんとして実力じつりょくおさえ込み(こみ)、三転さんてん蠱虫こちゅう一切いっさい使つかわなかった。


遠方えんぽう腕組うでぐみしながら傍観ぼうかんする方源ほうげん心中しんちゅうには明察めいさつがあった。


使つかいたくないのではなく、使つかえないのだ。白凝冰はくぎょうひょう、フン……あいつは北冥冰魄体ほくめいひょうはくたいなのだから」


この世界せかい最古さいこ伝説でんせつによれば、全て(すべて)の人間にんげん人祖じんそ子孫しそんである。


だがことわざにもある通り、りゅう九匹きゅうひきそれぞれちがう。双子ふたごでさえ差異さいがある。


この世界せかいで人々(ひとびと)がもっと注目ちゅうもくする差異さい資質ししつだ。


修行資質しゅぎょうししつを持つもの蠱師こしとなり、人上ひとうえひととなる。たないもの凡人ぼんじんとして社会しゃかい最底辺さいていへんにじられ、もてあそばれる。


資質ししつ甲等こうとう乙等おつとう丙等へいとう丁等ていとう四等よんとうかれる。これはられた事実じじつだ。


だがじつ甲等こうとううえに、さらすぐれた資質ししつ存在そんざいする。


この情報じょうほう秘聞ひぶんとされ、一族いちぞくけっしてひろ宣伝せんでんせず、一定いってい社会地位しゃかいちいたっしたもののみがる。


熊力ゆうりきらは当然とうぜんよしもなく、家老かろう族長ぞくちょうでさえらないかもしれない。しかし前世ぜんせ六転ろくてんたっし、凡体ぼんたいだっして蠱仙こせんいきいたった方源ほうげんは、当然とうぜんこのこと熟知じゅくちしていた。


この甲等こうとう超越ちょうえつする資質ししつ十種とおくさ存在そんざいし、「十絶体じゅうぜつたい」と総称そうしょうされる。




人祖じんそ完全かんぜんまえに、全部ぜんぶ十人じゅうにんをもうけた。長男ちょうなん太日陽莽たいじつようもう次女じじょ古月陰荒こげついんこう……そのなか北冥冰魄ほくめいひょうはくというがいた。人祖じんそ伝説でんせつ真実しんじつ虚構きょこうじり、蠱師こし修行しゅぎょうにおける数多あまた秘密ひみつ暗示あんじしている。人祖十子じんそじっしはそれぞれ十種じゅっしゅ絶頂的ぜっちょうてき資質ししつ象徴しょうちょうしている」方源ほうげん記憶きおく辿たどった。


十絶体じゅうぜつたいのどれもが甲等こうとう資質ししつ凌駕りょうがする。最優秀さいゆうしゅう甲等こうとうでも空竅くうきょう真元しんげん貯蔵量ちょぞうりょう九割九分きゅうわりきゅうぶまでだが、十絶体じゅうぜつたいなら十割じゅうわり完璧かんぺきたせる」


「だが万物ばんぶつ均衡きんこうする。十割真元じゅうわりしんげん十絶体じゅうぜつたい完璧かんぺきすぎて、天地てんちすらその存在そんざいゆるさない。人祖じんそ物語ものがたりでも十人じゅうにん長寿ちょうじゅれいはない。現実げんじつでも十絶体じゅうぜつたい蠱師こし若死わかじにし、成長せいちょうするのが困難こんなんだ。ただし六転ろくてんまでそだてば、同階級どうかいきゅう圧倒あっとうし、越級戦えっきゅうせんすら可能かのう奇跡きせきを起こせる!」


北冥冰魄体ほくめいひょうはくたいを持つ白凝冰はくぎょうひょう例外れいがいではない。十割真元じゅうわりしんげん空竅くうきょう過負荷かふかをかけており、崩壊ほうかい危機ききつねとなりあわせだ。この危機きき緩和かんわするため、かれ修行しゅぎょう真元しんげん消費しょうひしつつ空竅壁くうきょうへき強化きょうかつづけなければならない。だからこそかれ成長速度せいちょうそくど常人じょうじん超越ちょうえつしている」


「しかし修行しゅぎょうすすむほど真元しんげんしつ向上こうじょうし、空竅くうきょうへの圧力あつりょく増大ぞうだいして危機きき拡大かくだいする。白凝冰はくぎょうひょうはまるで海上かいじょうただよ遭難者そうなんしゃだ。真水まみずがないから海水かいすいかわきをいやすが、塩分えんぶん体内たいない水分すいぶんうばい、さらにかわきをつのらせる」



白凝冰はくぎょうひょう修行しゅぎょうかさねるほど、自滅じめつちかづく。だが修行しゅぎょうめるわけにもいかない。一族いちぞく期待きたい熊家寨ゆうかさい古月寨こげつさいからの暗殺あんさつが、かれつよくさせるようせまる。北冥冰魄体ほくめいひょうはくたい宿命しゅくめい自覚じかくしているかれは、みずからの余命よめいすくないことをさとり、こんな性格せいかく形成けいせいしたのだろう」


そうかんがえながら、方源ほうげんこころ嘆息たんそくした。


これはまぎれもない皮肉ひにくだった。


過剰かじょう資質ししつが、蠱師こし栄達えいたつさせるどころか、破滅はめつ元凶げんきょうとなる。


ぎたるはおよばざるがごとし。人間にんげんみずべる必要ひつようがあるが、過剰摂取かじょうせっしゅすればいたる。


べつ視点してんれば、どんな世界せかいにもまこと完璧かんぺき存在そんざいしない。完璧かんぺきあいも、完璧かんぺき作品さくひんもない。


完璧かんぺきすぎれば、破滅はめつまねく。


方源ほうげん前世ぜんせでは、狼潮ろうちょうぎて三年後さんねんご白凝冰はくぎょうひょう修為しゅうい不可避ふかひ四転してんたっした。つい空竅くうきょう真元しんげん重圧じゅうあつれず、爆散ばくさんしたのである。



十絶体じゅうぜつたい天地てんちれられず、てんさからうものの自爆じばく絶唱ぜっしょうごとく、その威力いりょく尋常じんじょうではなかった。三寨さんさいもの全滅ぜんめつさせ、青茅山せいぼうざん全体ぜんたい絶死冰域ぜっしひょういきへとえた。


さいわ当時とうじ平凡へいぼん修為しゅうい方源ほうげん方正ほうせいまれ商隊しょうたい参加さんかしたため、奇跡的きせきてきなんのがれた。


おくらせるため、白凝冰はくぎょうひょうみずか蛊虫こちゅうを使って三転さんてん白银真元はくぎんしんげん二転にてん赤鉄真元せきてつしんげん希釈きしゃく同時どうじ三転蛊虫さんてんこちゅう使用しよう極力きょくりょくひかえた。


三転さんてん蛊虫こちゅう一発いっぱつ使用しようするだけで大量たいりょう赤鉄真元せきてつしんげん消費しょうひし、あとつづかなくなる。それより何匹なんびき二転にてん蛊虫こちゅう使つかまわす方が、戦闘せんとう有利ゆうりだったからだ。


これこそ白凝冰はくぎょうひょう修為しゅういさえつづける真因しんいん


もしちからがあるのにみずかかせめて危地きちおちいるなら、それこそ愚者ぐしゃのやること。


白凝冰はくぎょうひょうさいひいで、教育きょういくけてきた。そんな馬鹿ばか選択せんたくをする道理どうりがない。


死期しきさとっていればこそ、常識じょうしきえた性格せいかく形成けいせいされたのだ。


制約せいやくなきい、既存体制きそんたいせいまらぬ姿勢しせいが、かれ魔道まとうこころはぐくませた。もし期待きたい栄光えいこうつつまれ、強敵きょうてきかこまれていれば、早々(そうそう)に組織そしき順応じゅんのうし、指導者しどうしゃてき心性しんせいにつけていただろう。


白凝冰はくぎょうひょうじつあわれな少年しょうねんだった。方源ほうげんは元々(もともと)かれ敵視てきしするつもりはなかったが、この白凝冰はくぎょうひょうみずか追撃ついげき仕掛しかけてくるなら、利用りようくしたうえ先回さきまわりして禍根かこんつこともいとわないとかんがえた。


戦場せんじょう混戦こんせん依然いぜんつづいていた。


このみじか時間じかん状況じょうきょう激変げきへんしていた。


豪電狼ごうでんろう白凝冰はくぎょうひょうたおされ、狼群おおかみぐん潰走かいそうした。熊力ゆうりきグループの治療ちりょう蠱師こし白凝冰はくぎょうひょうやいばにかかり、かれ自身じしん右腕みぎうで熊力ゆうりき強烈きょうれつ拳撃げき骨折ほっせつした模様もようで、その後の死闘しとうちゅうずっと無力むりょくがったままだった。


だがそれでもかれ優位ゆういたもつづけている。


熊力ゆうりき二転にてん蠱師こし頂点てん精鋭せいえいで、実力じつりょく青書せいしょ赤山せきざん同等どうとう熊姜ゆうきょう新進しんしん防御ぼうぎょ専門家せんもんか熊林ゆうりん当年度とうねんど天才てんさい新人しんじんとして二転戦力にてんせんりょくゆうする。さらにべつ蠱師こしくわえた四人よにん総攻撃そうこうげきにもかかわらず、依然いぜんとして白凝冰はくぎょうひょうしまくっていた。



白凝冰はくぎょうひょうさき戦闘せんとう赤鉄真元せきてつしんげん大量たいりょう消費しょうひし、豪電狼ごうでんろうたおさい治療ちりょう蠱師こして、右腕みぎうでうごかなくなっていた。氷刃ひょうじんひだりたたかわざるをなくなり、左手ひだりてこおり発射はっしゃ能力のうりょくふうじられた。攻撃力こうげきりょく半減はんげんしたも同然どうぜんだ。


それでも依然いぜん優位ゆういたもち、次第しだい優位ゆういかくたるものにしていた。


「さすが北冥冰魄体ほくめいひょうはくたいだ。真元しんげん希釈きしゃく本領ほんりょう封印ふういんしていても、回復速度かいふくそくど維持いじされている。たたかいが長引ながびけば長引ながびくほど有利ゆうりになる」方源ほうげんくらがりで感嘆かんたんした。


現状げんじょう戦力せんりょくではかれてない」この事実じじつ素直すなおみとめた。


丙等へいとう資質ししつ四割四分よんわりよんぶ真元しんげんしかたぬ方源ほうげん乙等おつとう熊力ゆうりき三人さんにんたばになってもされつづける状況じょうきょうかんがれば、単独たんどくでは尚更なおさらきびしい。


「だがたおせないからといってころせないわけじゃない」そうおもいたると、方源ほうげんくちびる冷笑れいしょうかんだ。


これこそ五百年ごひゃくねん経験けいけんはぐくんだ知恵ちえだった。


たようなかげかんじさせる部分ぶぶんはある。


だが百年老魔ひゃくねんろうまである自分じぶんくらべれば、白凝冰はくぎょうひょう残酷ざんこく運命うんめい早熟そうじゅくさせられた小悪魔しょうあくまぎない。

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