表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蛊真人  作者: 魏臣栋
青茅山
134/457

第百三十四節:追い討ち

安心あんしんしろ、おまえ二転にてんだ。おれ実力じつりょく二転にてん制限せいげんする。さあ、まこと公平こうへい勝負しょうぶだ!」白凝冰はくぎょうひょう狂気きょうきじみたわらいをうかべながらさけごえげた。


狂乱きょうらんした表情ひょうじょう白凝冰はくぎょうひょうを前に、方源ほうげん冷静れいせいたもっていた。かれ白凝冰はくぎょうひょう凝視ぎょうしし、淡々(たんたん)とった。「ころしたいなら、かかってい」


言葉ことばえるやいなや、方源ほうげんかすかにまえし、柳絮りゅうじょのようにかろやかに高所こうしょから落下らっかした。


白凝冰はくぎょうひょうわらごえ途切とぎれ、羞恥心しゅうちしんじりのいかりが爆発ばくはつした。「げるんじゃねえ!」


即座そくざ追跡ついせき開始かいしし、方源ほうげんうしろを猛烈もうれつけた。


方源ほうげん無言むごん冷笑れいしょううかべ、谷間たにあい直行ちょっこうした。


二人ふたり前後ぜんごして戦場せんじょう突入とつにゅうすると、狼群おおかみぐん沸騰ふっとうし、方源ほうげん白凝冰はくぎょうひょう一斉いっせいおそいかかった。



谷底たにぞこめられた蠱師こしたちはすで一人ひとり死亡しぼうし、のこ四人よにん狼群おおかみぐん異変いへん気付きづかお喜色きしょくかべた。


一人ひとりさけんだ:「兄弟きょうだいたち、頑張がんばれ!援軍えんぐんたぞ!」


「なんで二人ふたりだけなんだ?」彼等かれら方源ほうげん白凝冰はくぎょうひょうのぼやけた姿すがたにした。


「あいつだ!」距離きょりちぢむにつれ、古月蛮石こげつばんせき表情ひょうじょうけわしくなった。


かれ方源ほうげんみとめた――公衆こうしゅう面前めんぜん自分じぶんかしたおとこだ。あの双ノそうのひとみは、かれこころ最深部さいしんぶねむ悪夢あくむました。古月蛮石こげつばんせきけっして方源ほうげんわすれない。


復讐ふくしゅうちかい、必死ひっし修練しゅうれんかさねてきたのだ。


だがいま方源ほうげんみずから「すくい」に事実じじつが、古月蛮石こげつばんせき胸中きょうちゅう複雑ふくざつ感情かんじょうしょうじさせた。


て、二人目ふたりめは……」


すぐに白凝冰はくぎょうひょうみとめ、全員ぜんいん驚愕きょうがく表情ひょうじょうあらわにした。


白凝冰はくぎょうひょう白凝冰はくぎょうひょう!」古月蛮石こげつばんせきおおきく見開みひらいた。まさかこの状況じょうきょう再会さいかいするとはおもってもみなかった。


……


「この野郎やろうて!」背後はいごから白凝冰はくぎょうひょう怒号どごうひびいた。


方源ほうげんみみさず、狼群おおかみぐんなかすすんだ。


全身ぜんしん白玉しらたまひかりはなち、雷狼いなずまおおかみきばつめ攻撃こうげきふせいでいた。だがそのため、空竅くうこうない真元しんげん急激きゅうげきつづけていた。


後方こうほう少しはなれた位置いちで、白凝冰はくぎょうひょう鼻腔びこうから水蒸気すいじょうきし、球状きゅうじょう水盾みずたて形成けいせいしてまもっていた。


無数むすう雷狼いなずまおおかみ水盾みずたて衝突しょうとつするも、表面ひょうめんながれる水流すいりゅう衝撃しょうげき吸収きゅうしゅうし、いきおいよくばしていた。


道理どうりからえば、白凝冰はくぎょうひょう実力じつりょく三転さんてんたっしているはずだが、いま平凡へいぼんうごきしかせていない。本人ほんにん言葉ことばどおり、実力じつりょく二転にてん抑制よくせいし、方源ほうげんたいしているようだった。


二転にてん実力じつりょくもとでは、白凝冰はくぎょうひょう速度そくど方源ほうげんよりすこはやく、真元しんげんりょう圧倒的あっとうてきおおかった。しかし狼群おおかみぐんなかすすむにつれ、両者りょうしゃ距離きょりひら一方いっぽうだった。決定的けっていてき要因よういんは、両者りょうしゃの「ちから」にあった。


方源ほうげんには二猪にちょちからがあり、白凝冰はくぎょうひょうちからはややおとっていた。方源ほうげん狼群おおかみぐん衝撃しょうげきえながら前進ぜんしんつづけたが、白凝冰はくぎょうひょう水盾みずたて衝撃しょうげき緩和かんわするだけで、方源ほうげんのように真正面ましょうめんからみちを切りひらくことはできなかった。


ガオォォ!


豪電狼ごうでんろう注意ちゅうい方源ほうげん白凝冰はくぎょうひょうに引きせられた。


咆哮ほうこうとも周囲しゅうい雷狼いなずまおおかみうしおのようにかれ、みちひらいた。


豪電狼ごうでんろう四肢ししおどらせ、方源ほうげん目掛めがけて直進ちょくしんしてくる。


この光景こうけいにした谷底たにぞこ四人よにん蠱師こしは、おもわず心配しんぱいいろうかべた。


一方いっぽう方源ほうげん背後はいごにいる白凝冰はくぎょうひょうはこの状況じょうきょう爆笑ばくしょうした。


だがつぎ瞬間しゅんかん方源ほうげん姿すがた水鏡みずかがみのようにらめき、視界しかいからえるのを目撃もくげきする。


わらごえ途切とぎれた。


谷底たにぞこ蠱師こしたちも騒然そうぜんとなった。



豪電狼ごうでんろう方源ほうげん気配けはい見失みうしない、いかりの咆哮ほうこうげながら白凝冰はくぎょうひょう突進とっしんした。


白凝冰はくぎょうひょうかおふたたみがかんだ。「ははは、面白おもしろい!本当ほんとう面白おもしろやつだ!じゃあこいつらを前菜ぜんさいにしちまおうか!」


わるやいなや、かれ双瞳そうどう漆黒しっこくから蒼穹そうきゅうのようなあお変色へんしょく


片足かたあしで立ち(だち)、氷刃ひょうじん水平すいへいかまえ、回転かいてんはじめた。優美ゆうび氷刃ひょうじょう無数むすう剣閃けんせんえがき、ひかり空中くうちゅうくことで竜巻たつまきのような光景こうけい現出げんしゅつした。


ゆきのようにしろ剣刃けんじん構成こうせいされた氷嵐こおりあらし狼群おおかみぐん蹂躙じゅうりん


無数むすう雷狼いなずまおおかみがこのあらしまれ、肉片にくへんへと粉砕ふんさいされた。だが飛散ひさんすることはすくなく、霜寒そうかんが全て(すべて)を凍結とうけつさせていた。


豪電狼ごうでんろう咆哮ほうこう一声ひとこえ上げ、凶暴性きょうぼうせいを引きひきだされた。からだ宿やどっていた蠱虫こちゅうちから発揮はっきはじめ、金色こんじき電流でんりゅう全身ぜんしん渦巻うずまいた。


体毛たいもう逆立さかだち、くさりのように金色こんじき電流でんりゅう胴体どうたい四肢ししからみつき、粗末そまつ鎖帷子くさりかたびらのようなよろい形成けいせいした。


四本よんほんつめ地面じめんり、金色こんじき流星りゅうせいのように氷刃ひょうじんあらし激突げきとつした。


ドーン!


雷鳴らいめいのような爆音ばくおんひびき、氷刃ひょうじんあらし突然とつぜんんだ。れた氷刃ひょうじん先端せんたん空中くうちゅうほうされ、ズバッとおとてて岩肌いわはださった。


しろしもあたりにひろがり、豪電狼ごうでんろう地面じめんたおんだ。心臓しんぞう氷刃ひょうじんつらぬかれ、この致命傷ちめいしょうにより完全かんぜんいきえていた。



白凝冰はくぎょうひょうはクスクスわらいながら、氷刃ひょうじんをゆっくりいた。


氷刃ひょうじんすで先端せんたんれ、部分ぶぶんにもけやれが目立めだっていた。だがかれまったにせず、左手ひだりてかるでるようにれた。


左掌ひだりてのひらからこぼ極寒ごっかんつかから刃先はさきまでながれ、とおった箇所かしょ氷刃ひょうじんあらたにするどさを取りとりもどした。くちからはあらたなやいば結晶けっしょうのように成長せいちょうしていく。


豪電狼ごうでんろうたおれたことで、狼群おおかみぐんりになった。


だが方源ほうげん依然いぜんとして姿すがたあらわさない。



白凝冰はくぎょうひょうさますくいのおんけっしてわすれません!」数人すうにん蠱師こしすすうやうやしくあたまげた。


ただ一人ひとり古月蛮石こげつばんせきだけがのこり、複雑ふくざつ表情ひょうじょううかべていた。


かつて白凝冰はくぎょうひょうやぶれ、いのちひろわれた屈辱くつじょく磐石蠱ばんじゃくこ完成かんせいさせたいま再戦さいせんしていたはずなのに――いまこの瞬間しゅんかん挑戦ちょうせんする勇気ゆうきなど微塵みじんいてこない。


白凝冰はくぎょうひょうつめたいわらいをらすと、突然とつぜん氷刃ひょうじんるった。空中くうちゅう閃光せんこう軌跡きせきえがかれる。


「これは……?」

「ぐえっ!」


三人さんにん蠱師こし不意ふいかれ、しんじられない表情ひょうじょうのまま地面じめんくずちた。


白凝冰はくぎょうひょうなにをしやがる!!」古月蛮石こげつばんせき怒号どごうげる。


ころしてるんだよ、馬鹿ばかか?そんなこともからんのか」白凝冰はくぎょうひょうかたをすくめてわらった。


「この卑劣漢ひれつかんめ!」古月蛮石こげつばんせきこぶしかたにぎめ、歯軋はぎしりしながらえた。「三族同盟さんぞくどうめいやぶるつもりか!おれ相手あいてになってやる!むかし因縁いんねんいまここで決着けっちゃくつけよう!」


そうさけぶと、古月蛮石こげつばんせきは「ウォォォ!」と雄叫おたけびをげ、大地だいちって白凝冰はくぎょうひょう突進とっしんした。



かれ極力きょくりょく磐石蠱ばんじゃくこ発動はつどうさせ、全身ぜんしん筋肉きんにく隆起りゅうきさせてあついしかわ形成けいせいした。もはや人間にんげんというより石像せきぞうそのものの姿すがたへと変貌へんぼうしていた。


自業自得じごうじとくだ」白凝冰はくぎょうひょう冷淡れいたんわらい、氷刃ひょうじんろした。


するど氷刃ひょうじょううえからした真一文字まいちもんじに切りつける。頭頂とうちょう眉間みけん鼻梁びりょうくちびる喉仏のどぼとけ胸板むないたへとやいばすべりた。


石片いしへん飛散ひさんし、氷刃ひょうじんふたたれたが、極寒ごっかん古月蛮石こげつばんせき体内たいない生気せいき完全かんぜん凍結とうけつさせていた。


ドサリ。


地面じめんたおんだかれからだから隆起りゅうきしたいし表皮ひょうひおもむろにえ、本来ほんらい姿すがたあらわした。



「どこかでたことあるような……」白凝冰はくぎょうひょうしびれた手首てくびりながらつぶやいた。かつて蛮石ばんせきかしておいたことなど、ほぼわすれていた。


かすかにくびり、かえってひろびろとした谷間たにあいかってさけんだ。「いよ!おまえころしたかった蠱師こしたち、わりに片付かたづけてやったぞ!さあ、命懸いのちかけの勝負しょうぶしようぜ!」


こええるかえないか、方源ほうげん不遠ふえんくに姿すがたあらわした。


白髪しらが少年しょうねん灼熱しゃくねつのごとくかがやき、にした氷刃ひょうじんかかげて方源ほうげん突撃とつげきした。


方源ほうげん無言むごん冷笑れいしょううかべ、きびすかえした。


げるんじゃねえ!」白凝冰はくぎょうひょう怒鳴どなりながら執念しゅうねん追跡ついせきつづける。


追走中ついそうちゅう方源ほうげん白凝冰はくぎょうひょう最寄もよりのべつ戦場せんじょう――熊力ゆうりきグループが豪電狼ごうでんろうひきいる狼群おおかみぐん激戦げきせんひろげている場所ばしょ誘導ゆうどうした。


この狼群おおかみぐんも、当然とうぜん方源ほうげん故意こいに引きせたものだった。



みな、もっとるぞ!この狼群おおかみぐんはもう限界げんかいだ!南東なんとう方向ほうこう信号蠱しんごうこがってからときっている。奴等やつら俺達おれたちたすけを必要ひつようしてる!」熊力ゆうりき士気しき鼓舞こぶしている最中さいちゅう突然とつぜん言葉ことばった。


方源ほうげんと、その背後はいごにいる白凝冰はくぎょうひょう姿すがたみとめたからだ。


方源ほうげん自主的じしゅてき降参こうさんして以来いらい熊力ゆうりき方源ほうげん眼中がんちゅういていなかった。だから視線しせんは早々(そうそう)に方源ほうげんかすめ、白凝冰はくぎょうひょうへと集中しゅうちゅうした。


白凝冰はくぎょうひょう!」熊力ゆうりき両目りょうめいかりのほのおいていた。白衣はくい白髪しらが少年しょうねんるや、胸中きょうちゅう怒濤どとうじょうられた。


つい先日せんじつ白凝冰はくぎょうひょう突然とつぜん眼前がんぜんあらわれ、一言ひとこと説明せつめいもなくおそかってきた。


特に故意こい二転にてん実力じつりょくまでおさんでいた。


熊力ゆうりき不意ふいかれ敗北はいぼく個人こじん武名ぶめい一族いちぞく名誉めいよ白凝冰はくぎょうひょうみにじられた!これこそ最大級さいだいきゅう屈辱くつじょくいかりがかない方が不自然ふしぜんというものだ!



「ちょっとて、白凝冰はくぎょうひょう方源ほうげんってるみたいだ」かたわらにいた熊林ゆうりん突然とつぜんった。


かれ小柄こがらで、丸々(まるまる)としたったあたまひかっているようだった。熊林ゆうりん方源ほうげんおな年齢ねんれいで、乙等おつとう資質ししつち、そのとし熊家寨ゆうかさい第一だいいち天才新人てんさいしんじんとされていた。


現在げんざいでは二転にてん修為しゅういたっし、数多あまた経験けいけんんで成長せいちょうしてきていた。


熊力ゆうりき衝動しょうどうおさんだ。


方源ほうげん古月一族こげついちぞくもので、熊家寨ゆうかさい人間にんげんではない。三族盟約さんぞくめいやくがあるとはいえ、所詮しょせん親疎しんそがある。よそもの同士どうしあらそいなら、自分じぶんまれないのが一番いちばんだ。


熊力ゆうりきのグループが傍観ぼうかんするつもりだったが、方源ほうげんめないはずがない?かれ一言ひとこと彼等かれら立場たちば一変いっぺんさせた。


方源ほうげん熊力ゆうりきのグループへ素早すばや接近せっきんしながら、あわてた口調くちょうさけんだ。「強纏きょうてんやつからだにあるのをた!おれまもれ!白凝冰はくぎょうひょう口封くちふうじにころしにてる!!」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ