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蛊真人  作者: 魏臣栋
青茅山
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第百二十二節:人生に幾多の風雪

シュシュシュ!


洗面器せんめんきほどのおおきさの月刃げつじん三枚さんまい空中くうちゅう青白あおじろ光線こうせんえがいた。


バキバキバキ!


またたに、玉眼石猴ぎょくがんせきこう十六・七匹じゅうろくしちひき即死そくしした。


方源ほうげん追撃ついげきしていた石猴せきこうれは、一気いっき半数近はんすうちかった。


方源ほうげんはそのまったまま後退こうたいせず、ふたた右掌みぎてげ、三度みたび虚空くうった。


また三枚みまい月刃げつじんぐに石猴せきこうれにさり、れた場所ばしょでは石猴せきこうが次々(つぎつぎ)にたおれていった。


石猴せきこう屍体したい地面じめんち、くだけて石塊せきかいになった。眼球がんきゅうたまわったものは、あか地面じめんころがりねた。


方源ほうげん空竅くうこう確認かくにんした。空竅くうこうには深紅しんく真元しんげんおおはんのこっていた。


月芒蠱げつぼうこ月刃げつじん一枚いちまい発動はつどうするには、一割いちわり淡紅たんこう真元しんげん必要ひつようだ。方源ほうげん二転初階にてんしょかいなら四発よんぱつまで、中階ちゅうかいになると八発はちぱつ高階こうかいでは十六発じゅうろっぱつ倍増ばいぞうする。


方源ほうげん二転高階にてんこうかいにはたっしていないが、四味酒虫しみしゅちゅう精製せいせいされた高階真元こうかいしんげんつため、擬似高階ぎじこうかい見做みなせる。ゆえ戦闘力せんとうりょく急上昇きゅうじょうしょうしていた。


元々(もともと)70~80ななじゅうはちひき石猴せきこうれにわれていたときは、たたかいながら撤退てったいする必要ひつようがあった。しかしいま月刃蠱げつじんこ攻撃こうげきだけで迅速じんそく大半たいはん殲滅せんめつできる。のこ十数匹じゅうすうひきかぜるようにっていった。


「たった二日ふつか三本さんぼん石柱せきちゅう突破とっぱしたのか。この速度そくど以前いぜんより数倍すうばいはやい!こう計算けいさんすると、一ヶ月半後いっかげつはんごにはふたた石林せきりん中央ちゅうおうへのみちひらけるだろう」方源ほうげん内心ないしん思案しあんめぐらせた。


花酒行者かしゅぎょうじゃ配置はいちスタイルから推測すいそくすれば、石林中央せきりんちゅうおう地洞ちどうつぎ関門かんもんだ。その手前てまえ地蔵じぞう仕掛しかけられている可能性かのうせいきわめてたかい。ただしここまでれば、花酒行者かしゅぎょうじゃちから継承けいしょうもほぼわりにちかいだろう。かれ重傷じゅうしょうい、非常ひじょうわる状態じょうたいきゅうごしらえした継承けいしょうだからな。最大限さいだいげん見積みつもっても、あと一二いちに関門かんもんのこっている程度ていどだろう」


前世ぜんせ豊富ほうふ経験けいけんまえ、方源ほうげん影壁えいへいうつっていたまみれで瀕死ひんし花酒行者かしゅぎょうじゃ姿すがたおもし、判断はんだんくだした。


花酒行者かしゅぎょうじゃがこの継承けいしょう設置せっちした時間じかんみじかすぎたため、よりおおくの仕掛しかけをつく余裕よゆうがなかった。しかしこれはあくまで特殊とくしゅ継承けいしょう一例いちれいぎない。


実際じっさい正常せいじょう継承けいしょうでは、蠱師こし年単位ねんたんい設計せっけい配置はいちほどこす。大規模だいきぼなものもあれば、十数年じゅうすうねんごとに一度いちどしかひらかれないものもある。継承けいしょう過程かていで、場所ばしょ一箇所いっかしょではなくすう地点ちてん分割ぶんかつされ、五湖四海ごこしかい分散ぶんさんしている場合ばあいさえある――たがいに天涯海角てんがいかいかくほどはなれていることもありるのだ。


後継者こうけいしゃがこのような継承けいしょう継承けいしょうするには、十数年じゅうすうねんから数十年すうじゅうねん歳月さいげつをかけて探索たんさくし、様々(さまざま)な試練しれん必要ひつようがある。



一部いちぶ継承けいしょうは、蠱師こし一生いっしょうをかけて探索たんさくしても成功せいこうするとはかぎらない。往々(おうおう)にして未完成みかんせい事業じぎょう子孫しそんのこすことになる。


花酒行者かしゅぎょうじゃのこの継承けいしょう超小規模ちょうしょうきぼのもの。欠点けってん継承品けいしょうひんすくないことだが、そのわりに関門かんもん現地げんち状況じょうきょうおうじてつくられるため比較的ひかくてき簡素かんそだ。おれはここから白豕蠱はくしこ玉皮蠱ぎょくひこ酒虫しゅちゅうれた。隠石蠱いんせきこかろうじてかぞえられるだろう。つぎのこっているのは、おそらく一二輪いちにりん地蔵花じぞうかだけだ。ねがわくば、これからられるなか偵察型ていさつがた移動補助型いどうほじょがたのものがふくまれていることを!」




ときつのははやく、あきふゆた。


初冬しょとう最初さいしょゆき


そら鉛色なまりいろくもり、雪片せっぺんがひらひらとい、青茅山せいぼうざんもっている。


方源ほうげんひとり、雪道ゆきみちあるいていた。いし秘洞ひとうからたばかりで、いま山寨さんさいいそもどるところだった。


かんがえれば二ヶにかげつ以上いじょうつのに、石林せきりん突破とっぱ進展しんてんまったくない」方源ほうげんまゆあいだ陰鬱いんうつひそんでいた。


これは努力不足どりょくぶそくではなく、狼潮ろうちょう前兆ぜんちょうはじまっていたためだ。


ふゆ寒風かんぷうなか食料しょくりょうとぼしく、増殖ぞうしょくするおおかみれがつなぐため広域こういき狩猟しゅりょう開始かいしした。


このため狼巣ろうそう周辺しゅうへん獣群じゅうぐん一掃いっそうされ、小規模しょうきぼ混乱こんらんした獣潮じゅうちょう頻発ひんぱつくわえて残狼群ざんろうぐんあらわれた。


これらの残狼ざんろう狼巣ろうそうから追放ついほうされたものたち。生存せいぞんのためれを山寨周辺さんさいしゅうへん頻繁ひんぱん活動かつどうはじめた。


山村さんそん襲撃しゅうげきするまでにはいたっていないが、凡人ぼんじん猟師りょうしやまはいれなくなり、むらでは度々(たびたび)住民じゅうみんおおかみさらわれる事件じけんきていた。


古月山寨こげつさんさい大勢おおぜい蠱師こし動員どういん掃討作戦そうとうさくせん展開てんかい往来おうらい偵察蠱師ていさつこしおおく、方源ほうげん石縫秘洞せきほうひとう回数かいすう大幅おおはばらさざるをなかった。


このため石林せきりん攻略こうりゃく速度そくど急激きゅうげき低下ていか


ゴーゴーとすさ寒風かんぷうり、ゆきさらはげしさをしていた。


ウォー……


ひくおもたいけものうなごえが、風雪ふうせつじって突如とつじょひびいてきた。


方源ほうげんはパッとあしめ、警戒けいかいしながら周囲しゅうい見回みまわした。


小規模しょうきぼ残狼群ざんろうぐん――やく二十数頭にじゅうすうとう電狼でんろうが、もなくかれ視界しかいあらわれた。


「またか……」方源ほうげんつぶやいた。今月こんげつだけで八度目やつどめ遭遇そうぐうだ。


しかし今回こんかいすこちがっていた。


山寨さんさいのすぐちかくまでおおかみ活動かつどうしている。どうやら今後こんご一族いちぞく蠱師こしたちの出撃しゅつげき回数かいすうさらえるだろう。石縫秘洞せきほうひとうちかいことだし、当分とうぶんけなくなりそうだ」おもいたり、方源ほうげんこころくらしずんだ。


みちすすむのはむずかしく、このにはつねに人々(ひとびと)の一時的いちじてき前進ぜんしんはば風雪ふうせつあらわれるものだ。


おおかみたちは素早すばや方源ほうげん包囲ほういした。


ウォォォ! ひくいうなりごえひびかせながら、次々(つぎつぎ)におそかってくる。



月芒蠱げつぼうこ方源ほうげんこころうごき、素早すばやって月刃げつじんをヒュッとはなった。


青白あおじろ月刃げつじん風雪ふうせつき、次々(つぎつぎ)と残狼ざんろうりつけた。またた三頭さんとうたおし、四頭目よんとうめいたったとき残狼ざんろう突然とつぜん地面じめんころがり、狡猾こうかつにも月刃げつじんけた。


これらの残狼ざんろうは、おおくが手足てあしいていたりつぶれていたりかったりするが、豊富ほうふ戦闘せんとう経験けいけんち、きわめて狡知こうちけていた。


もし普通ふつう二転中階にてんちゅうかい蠱師こしが、こんな残狼群ざんろうぐん包囲ほういされれば、いのち危険きけんさらされるだろう。


しかし方源ほうげん危険きけんめんしてもおそれない。


かれ豊富ほうふ戦闘経験せんとうけいけんと、四味酒虫しみしゅちゅう精製せいせいされた高純度こうじゅんど深紅真元しんくしんげんつよみだった。


ころせ!ころせ!ころせ!


残狼ざんろう包囲網ほういもうなか素早すばやかわし、冷静れいせい回避かいひし、果断かだん攻撃こうげきす。


一頭いっとうまた一頭いっとう残狼ざんろうかれたおれていった。


あっというに、残狼群ざんろうぐん電狼でんろうかず半減はんげんした。



ゴォォォ――!


一頭いっとう頭狼とうろう悲痛ひつう遠吠とおぼえをはなち、狼群おおかみぐん即座そくざ攻撃態勢こうげきたいせい撤退てったいはじめた。


これが残狼ざんろう狡知こうちだ。


方源ほうげん手強てごわてきだとさとるや、躊躇ちゅうちょなく狩猟しゅりょう断念だんねんする。


これらの老狼ろうろう病狼びょうろう傷狼しょうろうは、完璧かんぺき体躯たいくこそないが、今日きょうまで生存せいぞんしてきた生存本能せいぞんほんのうそなえている。


方源ほうげんはそのくし、しずかに残狼群ざんろうぐん風雪ふうせつえるのを見届みとどけた。自身じしん実力じつりょくは、さらさずにむならそれにしたことはない。


狼群おおかみぐん完全かんぜん退散たいさんしたことを確認かくにんすると、方源ほうげんはようやくこしとし、いそあしおおかみ死体したいから戦利品せんりひん採取さいしゅはじめた。


狼皮ろうひ狼牙ろうがなど、全て(すべて)価値かちあるものだ。


相場そうばひくいが、りょうおぎなえる。


方源ほうげんはこの一ヶいっかげつ残狼ざんろう駆除くじょ戦利品せんりひん小銭こぜにかせいでいた。


ゆきうえで、おおかみ死体したいからながはまだあたたかみをたもっていた。いきめられていないおおかみもおり、ひとみかすかなひかりのこっていた。


「この自然しぜんなかでは、万物ばんぶつあらがい、びようとしている。人間にんげんだけが特別とくべつではない。この天地てんちは、せいいろどられる壮大そうだい舞台ぶたいなのだ!」方源ほうげんこころ感嘆かんたんしつつ、いきえの残狼ざんろう容赦ようしゃなく最後さいご一撃いちげきくわえた。


一頭いっとう残狼ざんろう戦闘力せんとうりょくは、玉眼石猴ぎょくがんせきこう二匹にひきぶん上回うわまわる。狼群おおかみぐん連携れんけいすれば、戦力せんりょくはさらに倍増ばいぞうする。


「この程度ていど小規模しょうきぼ残狼群ざんろうぐんなら対処たいしょできるが、大群たいぐん健康けんこう狼群おおかみぐん遭遇そうぐうしたら厄介やっかいだ」


方源ほうげん漠然ばくぜんとした圧力あつりょくかんじていた。


「このあと狼潮ろうちょう本格化ほんかくかすれば一族いちぞく総動員そうどういんになる。当然とうぜんおれ例外れいがいではない。今後こんご単独たんどく電狼でんろうるには、偵察型ていさつがた移動補助型いどうほじょがた必須ひっすだ。そうでなければ、この狼潮ろうちょういのちとすかもしれん」


経験けいけんむほど、方源ほうげん自身じしん不足ふそく痛感つうかんする。


四味酒虫しみしゅちゅうれたいまかれ戦闘力せんとうりょく飛躍的ひやくてき向上こうじょうした。月芒蠱げつぼうこ白玉蠱はくぎょくこ攻防こうぼうそなえ、前世ぜんせ知識ちしきもあって、青書せいしょ赤山せきざん漠顔ばくがん古月一族こげついちぞく精鋭せいえいけをらない。


ってみれば、一族内いちぞくない二転蠱師にてんこしトップクラスにかろうじてつらねられる実力じつりょくだ。


かろうじて」とうのは、高階こうかいではなく、資質ししつ丙等へいとうという限界げんかいがあるからだ。


戦力面せんりょくめんでは現状最善げんじょうさいぜんくしたが、狼潮ろうちょうを生きびるには戦闘力せんとうりょくだけでは不十分ふじゅうぶん


偵察手段ていさつしゅだん不可欠ふかけつだ。もし偵察蠱ていさつこっていれば、狼群おおかみぐん接近せっきん事前じぜん察知さっちし、迅速じんそくにルート変更へんこうできる。あるいは移動補助蠱いどうほじょこ加速かそくし、包囲網ほういもうから脱出だっしゅうすることも可能かのうだろう」方源ほうげん内心ないしんかんがえた。


この二種にしゅのどちらか一つでもてば生存確率せいぞんかくりつ劇的げきてき向上こうじょうし、両方りょうほうそろえば余裕よゆうって行動こうどうできるはずだ。


花酒行者かしゅぎょうじゃ継承けいしょうにそんな蠱虫こちゅうがあればいいが、くてもかまわん。記憶きおくにある通り、狼潮ろうちょうたび三大家族さんだいかぞく協力きょうりょくして戦功榜せんこうぼう設置せっちし、在庫ざいこ蠱虫こちゅう放出ほうしゅつする。そのなかにはめずらしいおおい。そのときには戦功せんこう白家寨はくかさい熊家寨ゆうかさい交換こうかんすることも可能かのうだ」


方源ほうげんこころ計算高けいさんだかめながら、こした。


ほんのみじか時間じかんで、戦利品せんりひん手際てぎわよくまとめふくろめ、背負せおんだ。


ゆきがしんしんともり、おおかみまたたく間にこおりつき、死体したいおおかくした。


「ほら、方源ほうげんもどってきたぞ」

ふくろ背負せおってる…また残狼ざんろうりにってたのか?」

「あいつが山寨さんさいすくったんだって?」

「へっ、たまたまうんかっただけさ。あの程度ていどちからがあればだれだって出来できるわ」


方源ほうげん山寨さんさいはいると、通りみちの人々(ひとびと)が次々(つぎつぎ)に視線しせんげかけた。賞賛しょうさんするもの好奇こうきちたもの嫉妬しっとするもの


方源ほうげん赤山せきざん突然とつぜんがりかどからあらわれ、こえをかけた。

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