表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蛊真人  作者: 魏臣栋
青茅山
116/455

第百十六節 :猿王を斬り伏せ、新しき蠱を獲る

一割一分いちわりいちぶ真元しんげん月刃げつじん二発にはつか、石猿王いしざるおう二度にど奇襲きしゅうえるだけ。月芒蠱げつぼうこ白玉蠱はくぎょくこだけじゃりない。唯一ゆいいつ勝機しょうきは、石猿王いしざるおう攻撃こうげきする瞬間しゅんかん月刃げつじんはなって仕留しとめることだ!」方源ほうげん脳裏のうり電光石火でんこうせっかごと最適さいてき戦術せんじゅつひらめいた。


石猿いしざる防御力ぼうぎょりょくとくたかくない。奇襲きしゅうという攻撃方法こうげきほうほうえらんだ石猿王いしざるおう自身じしんも、防御ぼうぎょ脆弱ぜいじゃく弱点じゃくてん露呈ろていしていた。


一発いっぱつ月刃げつじんで五、六匹(ご、ろっぴき)の玉眼石猿ぎょくがんいしざるせる。石猿王いしざるおう一撃いちげきたおせなくても、致命傷ちめいしょうわせられる。


だが容易よういだとあなどるな。偵察ていさつよう蛊虫こちゅうたない五人組ごにんぐみ蛊師こしたちでも、このいをのこ羽目はめになるほど難しい。


「このさるめ、おれ真元しんげんきるのをってやがるのか? だが春秋蝉しゅんじゅうせみしんじて、このけによう!」方源ほうげん即座そくざ決断けつだんし、ひとみ冷酷れいこくひかり宿やどした。


そのくし、両手りょうて上着うわぎ襟元えりもとにぎりながら、徐々(じょじょ)にまぶたじていった。おどろくべきことに白玉蠱はくぎょくこ防御ぼうぎょいたのだ。


空竅くうこう真元しんげん消費しょうひ停止ていしする一方いっぽう全身ぜんしんから白玉はくぎょくかがやきがった。


石林せきりんからなくこえる石猿いしざるたちの怒号どごう悲鳴ひめいが、方源ほうげんには次第しだいとおのいていくようにかんじられた。


静寂せいじゃくかれこころつつんだ。


方源ほうげん石猿王いしざるおう攻撃こうげきしずかにつづけていた。


その攻撃こうげききたとき、このたたかいの決着けっちゃく瞬間しゅんかんだ!


つ……


つ……


突然とつぜん空竅くうこう春秋蝉しゅんじゅうせみふたたふるえた。


キィッ!


次の瞬間しゅんかん方源ほうげん耳元みみもと爆音ばくおんとどろき、石猿王いしざるおう左側ひだりがわあらわれた!!


白玉蠱はくぎょくこ!」

方源ほうげんひとみするどひかり全身ぜんしん白玉はくぎょくかがやきにつつまれた。


ドン!


石猿王いしざるおう一撃いちげき方源ほうげんからだおそい、その衝撃しょうげきかれはよろめきそうになった。空竅くうこう真元しんげん半割はんわりり、のこりは半分はんぶんだけになった!


狡猾こうかつ石猿王いしざるおう一撃いちげきはずれると、即座そくざ姿すがたした!



方源ほうげん反撃はんげきするひまもなかったが、そのみじか時間じかんった上着うわぎりかぶった。


次の瞬間しゅんかん上着うわぎなにかをつつんだ感触かんしょくおぼえた。猛烈もうれつちから上着うわぎそときずりそうとする。


上着うわぎ鉄線てっせんあみではない。やぶれるのをふせぐため、方源ほうげん素早すばやはなした。上着うわぎなにかをくるんだまま、けないはやさで四方八方しほうはっぽうまわっている。


いまだ!」方源ほうげんひやたいひかりはしる。このたたかいの成否せいひは、いまはな月刃げつじんにかかっていた。こころこおりのように冷静れいせいだ。


石猿王いしざるおう所詮しょせんけもの上着うわぎ顔面がんめんおおわれ、恐慌きょうこう状態じょうたいおちいった。


キィキィと甲高かんだか悲鳴ひめいげながら配下はいか石猿いしざるあつめ、上着うわぎかぶったまま急方向転換きゅうほうこうてんかんかえし、あちこちをまわった。




幽藍色ゆうらんしょく月刃げつじんななめにび、石猿王いしざるおう胴体どうたいつらぬいた。


「ギャァァァン!」石猿王いしざるおう悲鳴ひめいげながら姿すがたあらわした。


外見がいけん普通ふつう玉眼石猿ぎょくがんいしざるわりないが、からだ三倍さんばいおおきく、両目りょうめのようにあかひかっていた。


むねから左大腿部ひだりだいたいぶにかけてふか細長ほそなが傷口きずぐちはしり、鮮血せんけつしていた。


にはいたらなかったが、致命傷ちめいしょうい、気配けはい全身ぜんしんおおった。石猿王いしざるおう傷口きずぐちさえつけながらふたた透明化とうめいかしようとした。


方源ほうげん上着うわぎ月刃げつじんながかれ地面じめんちた。だが血痕けっこん石猿いしざる動向どうこうあばいていた――恐怖きょうふられ後退こうたいし、もはや追撃ついげきする余裕よゆうはない。この重傷じゅうしょう放置ほうちすればいのちあやうい。


そのすき方源ほうげん石扉いしとびら退しりぞいた。月刃げつじんはなったあと空竅くうこう真元しんげんいとほどしかのこっておらず、戦闘力せんとうりょく激減げきげんしていた。


表向おもてむきは引きけだが、実質的じっしつてきには方源ほうげん勝利しょうりだった。


石猿王いしざるおうきず短時間たんじかん回復かいふくできず、ながれるほど弱体化じゃくたいかしていく。


一方いっぽう方源ほうげん元石げんせき真元しんげん即座そくざ補充ほじゅうし、戦闘力せんとうりょく回復かいふくできる。


透明化とうめいか看破かんぱする蛊虫こちゅう広範囲攻撃こうはんいこうげきたないながら、豊富ほうふ戦闘経験せんとうけいけん鋼鉄こうてつ意志いしで、よわきをってつよきをせいしたのだ。


さるきつね穴熊あなぐま……これらは普通ふつうけものより知能ちのうたかいため狡猾こうかつだが、そのぶん蛮勇ばんゆうける。重傷じゅうしょうえば撤退てったいする。野牛やぎゅういのししのような、きずうほど狂暴きょうぼうになる種族しゅぞくとはちがう。この猿王さるおう寄生きせいしてる蛊虫こちゅう一匹いっぴきだけ。透明化とうめいかできても血痕けっこんかくせないことから推測すいそくすれば、一転いってん隠石蠱いんせきこだろう」


方源ほうげん記憶きおく辿たどりながら分析ぶんせきふかめ、もはや石猿王いしざるおう未知みち要素ようそはなくなった。



戦局せんきょくまった」方源ほうげん石室せきしつ退しりぞき、石扉いしとびらじて元石げんせき真元しんげん補充ほじゅうした。


しばらくすると真元しんげん最盛期さいせいきまで回復かいふくとびらひらき、ふたた石林せきりんへとあしれた。


石林せきりんない依然いぜんとして混乱こんらんしていたが、先程さきほどよりは幾分いくぶんおさまっていた。


「この混乱こんらん石林全域せきりんぜんいき猿群さるむれの勢力図せいりょくずえられるだろう。石猿いしざる移住いじゅう再編さいへん孤立こりつした個体こたいあたらしいれを形成けいせいする。苦労くろうして開拓かいたくした通路つうろえてしまうかもしれない」


方源ほうげんまゆひそめた。通路つうろ完全かんぜん消滅しょうめつするまえ石猿王いしざるおうたねばならない。ふたた通路つうろひらくのに膨大ぼうだい時間じかんがかかり、石林中心部せきりんちゅうしんぶ到達とうたつするころには完治かんちした猿王さるおう対峙たいじすることになるだろう。


宜将剩勇追窮寇ぎしょうじょうゆうついきゅうこう不可沽名学霸王ふかこめいがくはおう


方源ほうげん開拓かいたくした経路けいろ辿たど石林せきりん突入とつにゅう途中とちゅうしてくる石猿いしざるを次々(つぎつぎ)に殲滅せんめつしていった。


15分後ぷんご方源ほうげんふたた中央ちゅうおう巨大きょだい石柱せきちゅうまえいたった。


石猿王いしざるおう地面じめんたお石化せっかしており、すでいきっていた。


一匹いっぴき玉眼石猿ぎょくがんいしざるがそのしかばねあしみつけ、キィキィとさわてている。


王座おうざ交代こうたい旧王きゅうおうに、新王しんおう即位そくいした。獣群けものむれであれ人間社会にんげんしゃかいであれ、冷酷れいこく淘汰とうたのシステムが存在そんざいするのだ。


手間てまはぶけたようだ」方源ほうげんはゆっくりちかづいていった。


そのとき石猿王いしざるおうしかばねからぼんやりとひか蛊虫こちゅうかびがり、新王しんおうほうんでいこうとした。


月芒蠱げつぼうこ!」


方源ほうげん素早すばや月刃げつじんはなち、石猿新王いしざるしんおうはらうと、あるって蛊虫こちゅうつかった。


この蛊虫こちゅうきわめて平凡へいぼん外見がいけんをしている。灰色はいいろ石片せきへんのような姿すがたで、表面ひょうめん凸凹でこぼこ立方体りっぽうたいでもなければ球体きゅうたいでもない。道端みちばたころがっていても、だれづかないだろう。


だがじつはこれこそがいしせい自然しぜんした天然てんねん蛊虫こちゅうだった。


一見いっけん無機質むきしついしかたまりだが、じつたしかな生命体せいめいたいで、独自どくじ知性ちせい意識いしきゆうする。


方源ほうげん予想よそう通り、隠石蠱いんせきこだった。


方源ほうげんつかまると、蠱虫こちゅうはげしくもがき脱出だっしゅうこころみた。


春秋蝉しゅんじゅうせみ


方源ほうげんねんじるや、空竅くうこうから春秋蝉しゅんじゅうせみかびがり、一縷いちる気配けはいそとらした。


隠石蠱いんせきこんだようにうごきをめ、ねずみねこたかのようになった。


緋紅ひこう真元しんげん注入ちゅうにゅうするや、瞬時またたき煉化れんか完了かんりょうした。


また一つ、蠱虫こちゅうれた!


隠石蠱いんせきこ空竅くうこうおさめられ、真元海しんげんかいそこ白玉蠱はくぎょくこならんでしずんだ。


石猿新王いしざるしんおうだまってその様子ようす見守みまもり、蠱虫こちゅう方源ほうげんからだ吸収きゅうしゅうされるのを目撃もくげきし、地団駄じだんだんでキィキィと絶叫ぜっきょうした。


即位そくいしたばかりで、したが石猿いしざるすくない。


方源ほうげん月刃げつじん一閃いっせん直撃ちょくげきで4、5ひき石猿いしざる粉砕ふんさい新王しんおう周囲しゅういあつまっていたれは崩壊ほうかいし、りになった。


あたらしい石猿王いしざるおう方源ほうげんけてした。



えろ」方源ほうげん石猿王いしざるおうこおりのようにつめたい眼差まなざしでにらみつけ、一語いちごはなった。


石猿王いしざるおうからだふるわせ、方源ほうげんはな恐怖きょうふ殺気さっき真正面ましょうめんからかんった。呆然ぼうぜん方源ほうげんつめたあと、クンッとごえげてひるがえした。これは他のけものえる知性ちせいしめしていた。


方源ほうげん石猿いしざるれをらすと、それ以上いじょうかかわろうとせず、時間じかんしんで石柱せきちゅう根元ねもといそいだ。


ちかづくと、石柱せきちゅう基部きぶいた穴口あなぐち発見はっけんした。


はばひろくないが、一連いちれん石段いしだん暗闇くらやみかってつづいていた。


偵察用ていさつよう蛊虫こちゅうたない方源ほうげんは、地下ちかなにがあるか当然とうぜんよしもなかった。


状況じょうきょう不透明ふとうめいなため、方源ほうげんあなはい石段いしだんくだることをひかえた。強引ごういん突入とつにゅうしたため自身じしん状態じょうたい万全ばんぜんではなく、さらに石林せきりん混乱こんらん収束しゅうそく安定あんていしつつあった。


膨大ぼうだい時間じかん労力ろうりょくついやして開拓かいたくした経路けいろには、すで多数たすう石猿いしざる石柱せきちゅうくっている。



いてはこと仕損しそんじる。継承けいしょう手掛てがかりを)つけた以上いじょう目的もくてき達成たっせいした。もどときだ」方源ほうげん真相しんそうさぐりたい欲望よくぼうおさえ、みちした。


道中どうちゅうすすむほどに圧力あつりょく増大ぞうだいしていくのがあきらかだった。だが最終的さいしゅうてき方源ほうげん数百匹すうひゃっぴき石猿いしざるてられ、みじめな姿すがた石林せきりんから脱出だっしゅうした。


ときはやぎ、はるなつわった。


らずらずのあいだ灼熱しゃくねつなつふたたおとずれた。


方源ほうげんたゆまず修行しゅぎょうはげみ、一刻一瞬いっこくいっしゅんしんで鍛錬たんれんかさねた。赤鉄舎利蠱せきてつしゃりこ使用しようで、かれ方正ほうせい修為しゅうい進度しんど一気いっきいた。


特殊とくしゅ蠱虫こちゅうたない方源ほうげん中階ちゅうかい気配けはいかくしようがなく、石猿王いしざるおうって隠石蠱いんせきこれた翌日よくじつ、その修為しゅういぞくものたちに発見はっけんされた。


ぞくものたちはこのときはじめて、赤鉄舎利蠱せきてつしゃりこにした人物じんぶつ方源ほうげんであったことをった。


同時どうじ方源ほうげん意図的いとてき黒豕蠱こくしこ存在そんざい暴露ばくろした。


方源ほうげん黒豕蠱こくしこ赤鉄舎利蠱せきてつしゃりこ購入こうにゅうするため、莫大ばくだい遺産いさんはらっていた。多くのものかれ選択せんたく理解りかいできず、「大馬鹿おおばか」「間抜まぬけ」「狂人きょうじん」「目先めさきしかえない」といった言葉ことば方源ほうげん代名詞だいめいしとなった。


注目度ちゅうもくど上昇こうしょうにより、方源ほうげん花酒行者かしゅぎょうじゃ継承けいしょう探索たんさくひかえざるをなくなった。


一方いっぽう空竅くうこう温養おんよう二転高階にてんこうかいけて着実ちゃくじつあゆつづけながら、酒虫しゅちゅう隠石蠱いんせきこ合成進化ごうせいしんか必要ひつよう材料ざいりょう収集しゅうしゅうあわせて生肌葉せいきよう育成いくせい元石げんせきかせぎ、修行しゅぎょう維持いじしていた。


七月しちがつ初秋しょしゅう


山麓さんろくむらちかくで野生やせい五転蠱ごてんこ突如とつじょあらわれ、古月山寨こげつさんさい全体ぜんたい震撼しんかんさせた!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ