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蛊真人  作者: 魏臣栋
青茅山
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第百十五節:中階への昇格

とおった光膜こうまくした淡紅たんこう真元海しんげんかい波濤はとうててはえ、うしおごといていた。


海面かいめんでは二匹にひきしろぽっちゃりした酒虫しゅちゅうみずい、黒豕蠱こくしこ甲虫かぶとむしのように赤鉄舍利蠱せきてつしゃりこまわりをブンブンまわっていた。


海底深かいていふかしず白玉蠱はくぎょくこ丸石まるいしのようにうごかず、春秋蝉しゅんじゅうせみかくしたまま休眠きゅうみんつづけていた。


ときた」方源ほうげんねんじるや、真元しんげん逆流ぎゃくりゅうして赤鉄舍利蠱せきてつしゃりこそそんだ。


舎利蠱しゃりこらめきながら浮上ふじょうし、赤紅あかべにかがやきをはなはじめた。


やがて舍利蠱しゃりこはゆらゆらとのぼ太陽たいようごとく、空竅くうこう全体ぜんたいあかげた。


そのひかりほのおごと灼熱しゃくねつで、刃物はもののように剣突つんづするどさを持つ。


黒豕蠱こくしこれず「ポチャン」と真元海しんげんかいもぐんだ。二匹にひき酒虫しゅちゅうふかしずんでいき、白玉蠱はくぎょくこ海底かいてい明滅めいめつしていた。


通常つうじょう修行しゅぎょうなら、淡紅真元たんこうしんげん光膜こうまくを徐々(じょじょ)にあらきたえる必要ひつようがある。


だが赤鉄舍利蠱せきてつしゃりこはな圧倒的あっとうてき赤光せきこう真元しんげんってわり、光膜こうまく直接ちょくせつ浸透しんとうしていくよう驚異的きょういてきだった。


方源ほうげん内視ないしによれば、光膜こうまく目視もくしできるはやさであつくなり、光流こうりゅうからって水膜すいまく変容へんようしろ波紋はもん表面ひょうめんながれ、明暗めいあんかえしていた。


この瞬間しゅんかん方源ほうげん中階ちゅうかい昇格しょうかした!


だが舍利蠱しゃりこ依然いぜんあかひかりはなつづけていた。


真元しんげんってわったひかり空竅くうこう全体ぜんたいたし、なく精華せいか底力そこぢから方源ほうげん空竅くうこうそそんでいた。


水膜すいまくはすべてを受けれ、表面ひょうめん波紋はもんみずのようになめらかにながはじめた。


この過程かていはさらに15ふんほどつづいた。


赤鉄舍利蠱せきてつしゃりこはすべての底力そこぢから使たし、透明とうめいになったからだ赤光せきこうなか完全かんぜんった。


消滅しょうめつ同時どうじに、圧倒的あっとうてきあかひかりまたたく間に消散しょうさんした。


空竅くうこうもと静寂せいじゃくを取りもどした。


ただ水膜すいまく以前いぜんよりあつ丈夫じょうぶになり、赤鉄舍利蠱せきてつしゃりこはたらきで方源ほうげん膨大ぼうだい時間じかん苦労くろう節約せつやくできた。


緋色ひいろがかった真元しんげん元海げんかいあらわれた。


これは二転中階にてんちゅうかい真元しんげん淡紅たんこう初階しょかい真元しんげんより凝縮ぎょうしゅくされ、海底かいていふかしず白玉蠱はくぎょくこつつんでいた。


赤鉄舍利蠱せきてつしゃりこ空竅くうこう潜在力せんざいりょく直接ちょくせつ強化きょうかし、蛊師こし修為しゅうい一小境界いちしょうきょうかい向上こうじょうさせる効果こうかがあるのだ。



このしゅ蛊虫こちゅうはや使つかうほど効果的こうかてきだ。


蛊師こし修為しゅういたかければ戦闘力せんとうりょく向上こうじょうし、生存率せいぞんりつがり、任務にんむ完遂かんすいして元石げんせきえる。あらゆるめん好影響こうえいきょうがある。


中階ちゅうかいたっした方源ほうげん元石げんせき数個すうこし、真元しんげん素早すばや補充ほじゅう空竅くうこう元海げんかい四割四分よんわりよんぶ中階緋紅真元ちゅうかいひこうしんげんたされるまでつづけた。


30分後ぷんごふたた石林せきりんあしれ、中央ちゅうおう祭壇さいだんかった。


猿群さるむれの警戒線けいかいせんえるやいなや、石柱せきちゅうから次々(つぎつぎ)にいかくるった玉眼石猿ぎょくがんいしざるあらわれた。


キィキィと甲高かんだかきながら方源ほうげんおそいかかる。


方源ほうげん顔色かおいろ一つえず、注意ちゅうい大半たいはん最上層さいじょうそう石洞いしどうそそいだ。


普通ふつう玉眼石猿ぎょくがんいしざるなら包囲ほういされないかぎ問題もんだいない。肝心かんじんなのはこの石猿王いしざるおうだ。


一体いったいどんな蛊虫こちゅう寄生きせいしているのか?


このてんについては方源ほうげん推測すいそくかなかった。


方源ほうげんは徐々(じょじょ)に後退こうたいしながら慎重しんちょう観察かんさつつづけたが、石猿王いしざるおうつい姿すがたあらわさない。


「まさかこの猿群さるむれに猿王さるおうがいないのか? 存在そんざいするなら、縄張なわばりを侵犯しんぱんされればさきあらわれるはずだ。て、もしかするとすでに……」


思考しこうがここまでおよんだとき空竅くうこうねむつづけていた春秋蝉しゅんじゅうせみ突然とつぜん浮上ふじょうし、からだふるわせながら方源ほうげんこころにだけひびかすかな警告音けいこくおんはっした。


本命蛊ほんめいこ緊急警報きんきゅうけいほう


これは蛊師こしいのち重大じゅうだい脅威きょういさらされたときのみ発生はっせいする現象げんしょうだった。


瞬時またたき方源ほうげん総毛立そうけだ感覚かんかくおそわれ、考えるもなく反射的はんしゃてき白玉蠱はくぎょくこ全力ぜんりょく発動はつどうさせた。


全身ぜんしん白玉はくぎょく光輪こうりんつつまれた。


その直後ちょくご通常つうじょう石猿いしざるより三倍さんばい大き(おおき)い石猿王いしざるおう方源ほうげん左側ひだりがわ突然現とつぜんあらわれ、するどつめ左肩ひだりかたろした。


ドンというおと石猿王いしざるおう攻撃こうげき白玉蠱はくぎょくこ防御ぼうぎょはばまれ、無効むこうわった。


この攻撃こうげきけた瞬間しゅんかん方源ほうげん空竅くうこうない白玉蠱はくぎょくこつよかがやき、緋紅真元ひこうしんげん半割はんわりぶん一気いっき吸収きゅうしゅうした。



もし方源ほうげん二転初階にてんしょかいだったころなら、淡紅真元たんこうしんげん一割いちわり瞬時またたきえていただろう。


この一撃いちげきがどれほど陰湿いんしつ残忍ざんにん奇襲きしゅうだったかがかる。


方源ほうげんほどの冷静沈着れいせいちんちゃく人物じんぶつでも、いま背中せなか冷汗ひやあせながれた。日頃ひごろ戦闘状態せんとうじょうたいませていなければ、石猿王いしざるおうわなはまるところだった。


もし反応はんのう一瞬いっしゅんでもおくれていれば、左肩ひだりかたうしなわれ、左腕ひだりうでは使いものにならなかっただろう。古月蛮石こげつばんせき惨劇さんげき再現さいげんされていたはずだ。



「この石猿王いしざるおうからだに、透明化とうめいかできる野生やせい蛊虫こちゅう寄生きせいしてやがる!」方源ほうげん爆発的ばくはつてき後退こうたいした。透明とうめい探知たんちできる蛊虫こちゅうたないかれ一気いっき劣勢れっせいたされた。


石猿王いしざるおう普通ふつう石猿いしざるより狡猾こうかつらしく、一撃いちげきはずれるとふたた姿すがたえ、どこへかくれたのかからなくなった。


これにより方源ほうげんうたがいようもない重圧じゅうあつがかかる。


白玉蠱はくぎょくこ発動はつどうさせ全身防御ぜんしんぼうぎょ維持いじしているが、常時じょうじ真元しんげん消耗しょうもうつづける。この状態じょうたい永続的えいぞくてきたもつのは不可能ふかのうだ。


かつて石猿いしざるれとたたかったときでさえ、決定的けっていてき瞬間しゅんかんだけ白玉蠱はくぎょくこ起動きどうさせていた。


もしこの状態じょうたいつづければ、すぐに真元しんげん枯渇こかつしてしまう。


五百匹以上ごひゃっぴきいじょう石猿いしざる殺気立さっきだって包囲網ほういもうせばめてくる。方源ほうげん最大速度さいだいそくど後退こうたい距離きょりろうとする。


数匹すうひき石猿いしざるいきおいをよわめ、そのあしめて方向ほうこうかえはじめた。


「キィ!」そのとき玉眼石猿王ぎょくがんいしざるおうふたた姿すがたあらわし、甲高かんだかこえ指令しれいはっした。


「キィキィ!!」石猿いしざるれは即座そくざおうじ、まよいや躊躇ちゅうちょてて方源ほうげんへの追撃ついげき再開さいかいした。


五百匹ごひゃっぴきえる玉眼石猿ぎょくがんいしざる執拗しつようせまってくるようながめながら、方源ほうげんあわてる様子ようすもなく、むしろ口元くちもとひややかなわらみをかべた。


この事態じたいすで予測よそくみだった。


石林せきりん中央ちゅうおうふかはいんだのは、もっと容易ようい経路けいろえら通路つうろひらいたにぎない。通路つうろ周囲しゅういには依然いぜんおおきな石猿群いしざるむれが生息せいそくしていた。


この通路つうろ構造こうぞう方源ほうげんにとって熟知じゅくちのもの。


だが知能ちのうひく石猿いしざるたちに理解りかいできるはずもない。猿王さるおう叱咤しったけ、石猿いしざるたちが石林せきりん乱暴らんぼうすすんだ結果けっかほか猿群さるむれの縄張なわばりを侵犯しんぱんし、反撃はんげきまねいてしまったのだ。


石林せきりん大混乱だいこんらんおちいった!



無数むすう玉眼石猿ぎょくがんいしざるみずからの縄張なわばりをまもるため、共食ともぐいをはじめた。


もし十数年じゅうすうねんてば、石猿王いしざるおう千獣王せんじゅうおう成長せいちょうし、石林せきりん統一とういつできたかもしれない。だがいま百獣王ひゃくじゅうおうで、これほどの石猿いしざる統率とうそつするちからはない。


ことなる石猿群いしざるむ同士どうしみだれ、大乱闘だいらんとうおちいった。


一瞬いっしゅんにして方源ほうげんみみ石猿いしざるのキィキィという騒音そうおんくされた。


追撃ついげきしてきた五百匹ごひゃっぴき以上の石猿いしざるほかれに足止あしどめされたが、石猿王いしざるおうだけは方源ほうげん執拗しつようめてくる。


方源ほうげんたたかいながら撤退てったいつづけ、そのあいだ石猿王いしざるおうから何度なんど奇襲きしゅうけ、毎回まいかい真元しんげん大量たいりょう消耗しょうもうさせられた。


さいわまえもって中階ちゅうかい昇格しょうかしていた。さもなければ初階しょかいのわずかな真元しんげんでは、こんな消耗しょうもうえられなかっただろう。


方源ほうげん絶対的ぜったいてき劣勢れっせいたされ、石猿王いしざるおう弱点じゃくてんとらえられない。


唯一ゆいいつ反撃はんげき機会きかん石猿王いしざるおう攻撃こうげきしてくる瞬間しゅんかんだけ。だが方源ほうげん反応はんのうしても、反撃はんげき動作どうさをするひまがない。


石猿王いしざるおう透明化とうめいか蛊虫こちゅう完全かんぜん主導権しゅどうけんにぎっている。このとき奇襲きしゅう仕掛しかけ、たとえきずつけられても透明化とうめいか無事ぶじげおおせる。もはや不敗ふはいっているとえる。


透明とうめい見破みやぶ蛊虫こちゅうっていない以上いじょう、このたたかいの勝算しょうさんきわめてひくい!広範囲こうはんい攻撃こうげき手段しゅだんがあればためせるかもしれないが、月芒蠱げつぼうこでは……うん石猿王いしざるおうたるしかない。だがそんな確率かくりつすずめなみだほどもない」


方源ほうげん戦況せんきょう看破かんぱし、即座そくざ撤退てったい決断けつだんした。


しかし石猿王いしざるおうてつこころかれころ覚悟かくごのようだった。


方源ほうげん石扉いしとびらまで100mの距離きょりまで退しりぞいたとき突然とつぜんあしめた。


真元しんげん一割いちわり少ししかのこっていない。100mも維持いじできまい。かり第二密室だいにみっしつはいってとびらめても、石猿王いしざるおうやぶっておか可能性かのうせいがある!」


方源ほうげん石猿王いしざるおうがこれほどなが追撃ついげきつづけるとはおもわなかった。ここまで執念深しゅうねんぶかいとは……


いまかれ石林せきりん脱出だっしゅうし、周囲しゅういひらけた空間くうかんになっている。


無数むすう石猿いしざる石林せきりんない乱戦らんせんひろげ、甲高かんだかごえ洞窟どうくつない反響はんきょうつづけていた。



方源ほうげんはじっとうごかなくなる。戦闘直感せんとうちょっかんげていた——石猿王いしざるおうがどこかにひそんですきねらい、致命的一撃ちめいてきいちげき仕掛しかけようとしている。


方源ほうげんみずからが絶体絶命ぜったいぜつめい状況じょうきょうたされていることをさとった。


普通ふつう二転蛊師にてんこしなら、このえない圧力あつりょくれず崩壊ほうかいしているところだろう。


だが方源ほうげん依然いぜんとして冷静れいせいだった。


この状況じょうきょう予想よそう範囲内はんいないだった。ただ可能性かのうせいひくいだけだ。本来ほんらいなら石猿王いしざるおう石猿いしざる習性しゅうせいち、はなれないはず。だがなぜかこの石猿王いしざるおう方源ほうげん執拗しつようめてくる。


冒険ぼうけんえらんだ以上いじょういのちける覚悟かくごはできている!」方源ほうげんつめたいひかりはしり、上着うわぎはじめた。







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