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蛊真人  作者: 魏臣栋
青茅山
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第百一十一節 元石はただ身の外の物

「おばあちゃん、これなん?」少女しょうじょ三階さんがい中央ちゅうおうカウンターを指差ゆびさし、好奇こうきしんちたこえたずねた。


この樹上じゅじょう店舗てんぽ三層さんそう構造こうぞう一階いっかい一転いってん蠱虫こちゅう二階にかい二転にてん蠱虫こちゅう三階さんがい三転さんてん蠱虫こちゅう販売はんばいしている。


上層じょうそうくほど蠱虫こちゅうかずすくなくなり、価格かかく高騰こうとうする。


当然とうぜん、この樹上店舗じゅじょうてんぽなら蠱虫こちゅうは全て(すべて)貴重品きちょうひんだ。


古月薬姫こげつやくひまご視線しせんい、円筒形えんとうけいたかかぶた。五本ごほんえだひと五本指ごほんゆびのようにび、中央ちゅうおう交錯こうさくしている。


親指おやゆびおおきさの球状きゅうじょう蠱虫こちゅうほそ小枝こえだからまり、みどりかげ銀白色ぎんぱくしょくひかりはなっていた。


「これは白銀舍利蠱はくぎんしゃりこ一度いちどきりの使用しようで、三転さんてん蠱師こし修為しゅういまたたく間に小境界しょうきょうかい向上こうじょうさせる」古月薬姫こげつやくひはゆっくり説明せつめいした。


舍利蠱しゃりこ系列けいれつされた蠱虫こちゅうだ。


一転いってんよう青銅舍利蠱せいどうしゃりこ二転にてんよう赤鉄舍利蠱せきてつしゃりこ三転さんてんようがこの白銀舍利蠱はくぎんしゃりこ


四転してんになると黄金舍利蠱おうごんしゃりこ存在そんざいする。


表示価格ひょうじかかく三万個さんまんこ元石げんせきたかっ!」少女しょうじょしたしておどろいた。


古月薬姫こげつやくひうなずいた:「最終的さいしゅうてきにはすくなくとも五万ごまん元石げんせきれるだろう。さあ、一階いっかい入口いりぐち総合そうごうカウンターへこう。酒虫しゅちゅう結果けっかているはずだ」


樹上じゅじょう店舗てんぽにある一転いってん蠱虫こちゅうは、値段ねだんを付けられたものはかくカウンターに半日はんにちしか展示てんじされない。無関心むかんしん蠱虫こちゅうは、だれかがけるまでそのままかれる。


二転にてん蠱虫こちゅう一日いちにち三転さんてん蠱虫こちゅう二日間ふつかかん展示てんじされる。


この規則きそく一見いっけん奇妙きみょうおもえるが、実践じっせんからげられた最ももっとてきした取引方法とりひきほうほうだ。


総合そうごうカウンター。


「なんですって?酒虫しゅちゅうはもうほかものわれた?」古月薬姫こげつやくひ結果けっかいてまゆひそめた。自身じしんでは十分じゅうぶんたかけたつもりで、八割方はちわりがた確信かくしんしていたのに、おもわぬ失態しったいだった。


「ふん!だれがこんな邪魔じゃまをしたの?わたし酒虫しゅちゅううばったのは!」少女しょうじょふくれっつらなじった。


薬楽やくらく!」古月薬姫こげつやくひ少女しょうじょせいする。


少女しょうじょ桜色さくらいろくちびるとがらせ、大人おとなしくだまんだ。


カウンターうら二転にてん女性じょせい蠱師こしかる会釈えしゃくし、丁寧ていねいこたえた:「もうわけございませんが、お客様きゃくさま情報じょうほう一切いっさい公開こうかいしておりません。商慣習しょうかんしゅうゆえ、ご理解りかいください」


情報非公開じょうほうひこうかいこそが、顧客こきゃく懸念けねん払拭ふっしょくし、遠慮えんりょなく入札にゅうさつできる仕組しくみだった。


同族どうぞくあいだではかお見知みし同士どうし遠慮えんりょからしいものゆず場面ばめんもあるが、この闇競売やみきょうばい方式ほうしきなら情実じょうじつはいせる。




「どうしてこんなものを、あんたにゆずらなきゃなんないの? ただの親戚しんせきってだけで?」


けっして人々(ひとびと)のこころやみあまてはならん。


非公開ひこうかい取引とりひきこそ、そのやみあらわにする。


古月薬姫こげつやくひ沈思ちんしした:「老婆ろうば商慣習しょうかんしゅうっとる。小娘こむすめ酒虫しゅちゅうったものわん。ただ最終価格さいしゅうかかくだけおしえてくれ」


女性じょせい蠱師こしふたたあたまげた:「まこともうわけございません。価格かかく秘匿ひとく事項じこうです。ですが最高値さいたかね成約せいやくしたことは保証ほしょうします。賈家行商かかぎょうしょう誠意せいい第一だいいちにしております」


「ふん、小娘こむすめはわしがだれっとるのか?」古月薬姫こげつやくひ顔色かおいろけわしくし、不快ふかいそうにはなわらった。


なにがあったのです?」そのとき三転さんてん中年ちゅうねん蠱師こしけた。


この樹上店舗じゅじょうてんぽつね蠱師こし監視かんしにあり、事態じたい筒抜つつぬけだった。


管轄様かんかつさま女性じょせい蠱師こし即座そくざ中年ちゅうねんおとこ挨拶あいさつした。


おとこってめいじた:「さきがってよい。ここはわたし対応たいおうする」


そして古月薬姫こげつやくひなおり、笑顔えがおった:「これは薬姫様やくひさまでは。そちらはおまごさんでしょう、じつ聡明そうめい可愛かわいらしいおかたで」


三転さんてん蠱師こしかり、古月薬姫こげつやくひ表情ひょうじょうやわらかくなったが、依然いぜんとして成約価格せいやくかかくりたがっている。


おとこ管轄かんかつ困惑こんわくした様子ようす


かれ商隊しょうたい古参こさん賈富かふ腹心ふくしん古月山寨こげつさんさい事情じじょう精通せいつうしており、眼前がんぜん老婆ろうば影響力えいきょうりょく理解りかいしていた。


古月赤練こげつせきれん古月漠塵こげつばくじんおこらせるより、古月薬姫こげつやくひおこらせるほう危険きけんだった。彼女かのじょ影響力えいきょうりょく族長ぞくちょう古月博こげつひろぐものだ。


おとこ管轄かんかつかんがみ、提案ていあんした:「ではこうしましょう。薬姫様やくひさまがそこまでおのぞみなら、特別とくべつひそかに酒虫しゅちゅう手配てはいします。じつうと在庫ざいこ三匹さんびきあり、賈富かふさまみずか配置はいち決定けっていされました。酒虫しゅちゅう貴重きちょうさはご存知ぞんじの通り。元石げんせきがくはご提示ていじ価格かかく結構けっこうです」


古月薬姫こげつやくひかすかにくびり、にしたつえ地面じめんたたきつけ、かるおとてた。


彼女かのじょった:「老婆ろうばやす利得りとくがくらむつもりはない。価格かかく……さきほどれた酒虫しゅちゅう成約価格せいやくかかく計算けいさんしてくれ」


「それは……」管轄かんかつ躊躇ちゅうちょした。古月薬姫こげつやくひ真意しんい見抜みぬいている。


古月薬姫こげつやくひはわざと不機嫌ふきげんそうに圧力あつりょくをかけた:「どうした? その価格かかくたかすぎて、老婆ろうば支払しはらえぬとでも?」


けっしてそんな意味いみでは……まあ、おっしゃる通りにしましょう」管轄かんかつ溜息ためいきをつき、数字すうじげた。


少女しょうじょはそれをき、一瞬いっしゅん安堵あんどしたが、すぐに不服ふふくそうにった:「なによ、たった二十元石にじゅうげんせきじゃない!」


古月薬姫こげつやくひほそめたが、なにかたらなかった。


そのころ樹上店舗じゅじょうてんぽ方源ほうげん酒屋さかや到着とうちゃくしていた。


二匹目にひきめ酒虫しゅちゅうにしたいまのこるは「あまからにが」の四種よんしゅ美酒びしゅだ。


甘酒あまざけすでっている。家産かさん任務にんむときあまった黄金蜜酒おうごんみつしゅがある。辛口からくち酸味さんみさけ問題もんだいないが、苦酒にがしゅ心配しんぱいだ」方源ほうげん内心ないしんかんがえ、不安ふあんつのらせた。


苦酒にがしゅがあれば今夜こんやにも四味酒虫しみしゅちゅう合煉ごうれん開始かいしできる。もしなければ、完成かんせい月日つきひようするだろう。



人生じんせいの多く(おおく)のことは、おそれることが現実げんじつになるのだ。


方源ほうげん心配しんぱい的中てきちゅうした。何時間なんじかん無数むすうのテントをめぐり、辛酒からざけ酸酒すざけつけたが、苦酒にがしゅだけは見当みあたらなかった。


なかことおもどおりにならぬこと十中八九じっちゅうはっくよ」方源ほうげんはやりれない気持きもちだった。こうして酒虫しゅちゅう合煉ごうれん計画けいかく保留ほりゅうせざるをなかった。


四味酒虫しみしゅちゅうがなくなると、かれ修行しゅぎょう進展しんてん速度そくど普通ふつう以下いかもどった。


その午後ごごふたた樹上店舗じゅじょうてんぽおとずれた。


一階いっかいおおくの展示台てんじだいにはあたらしい蠱虫こちゅうならえられていた。


以前いぜん酒虫しゅちゅうかれていた中央ちゅうおうだいには、浄水蠱じょうすいこ配置はいちされていた。


浄水蠱じょうすいこ地球ちきゅうひるており、通称つうしょう山蛭やまひると呼ば(よば)れる。ただ普通ふつうひるより可愛かわいらしく、全身ぜんしんあわ青色あおいろみずひかりはなっていた。



浄水蠱じょうすいこ空竅くうこう異種いしゅせる。赤城せきじょうにとってはかなられるべきだ」この浄水蠱じょうすいこて、方源ほうげん赤城せきじょうおもした。


かれ赤城せきじょう丙等資質へいとうししつで、祖父そふ古月赤練こげつせきれん真元しんげん無理矢理むりやり修行しゅぎょうげたため、空竅くうこう赤練せきれん気配けはいじっていることをっていた。洗練せんれんしなければ、赤城せきじょう将来しょうらいにとっておおきながいとなる。


赤練せきれん間違まちがいなくこのうだろう。計算けいさんしてみよう……うん、かれ提示価格ていじかかく六百三十ろっぴゃくさんじゅうから六百四十ろっぴゃくよんじゅうあいだだろう」


この価格かかくすで酒虫しゅちゅう相場そうば上回うわまわっている。おも赤城せきじょうとくにこの必要ひつようとしているからだ。


わたし六百五十ろっぴゃくごじゅう元石げんせきせば、この浄水蠱じょうすいこ落札らくさつできるはずだ。さらに十元石じゅうげんせき上乗うわのせすれば、間違まちがいなくる! 今朝けさった酒虫しゅちゅうについては、古月薬姫こげつやくひより二十元石にじゅうげんせきほどたかけておいた」方源ほうげん内心ないしん冷笑れいしょうした。


かれにはこの自信じしんがあった。


この自信じしん五百年ごひゃくねん経験けいけんと、地球ちきゅうじょう何倍なんばい発達はったつした商業理論しょうぎょうりろん凝縮ぎょうしゅくされたものだ。すで凡人ぼんじんいきえている。


前世ぜんせ実践じっせん経験けいけんもとづけば、十元石じゅうげんせき上乗うわのせするだけで八割はちわり確率かくりつ落札らくさつできた。酒虫しゅちゅう購入こうにゅうときにさらに十元石じゅうげんせき追加ついかしたのは、方源ほうげん慎重しんちょう行動様式こうどうようしきほかならなかった。


方源ほうげん最終的さいしゅうてきをつけなかった。浄水蠱じょうすいこかれ必要ひつようとするものではなかった。また、かりれたとしても赤練せきれん調査ちょうさまねく。当然とうぜん最大さいだい理由りゆうは、方源ほうげん資金しきん温存おんぞんし、今後数日間こんごすうじつかん良質りょうしつ蠱虫こちゅう出品しゅっぴんされるかを見極みきわめる必要ひつようがあったからだ。


いまおれりない二匹にひき偵察ていさつよう移動補助いどうほじょようだ。来年らいねん青茅山せいぼうざんおおかみれの襲撃しゅうげきはじまれば、商隊しょうたい再来さいらいしなくなる。花酒行者かしゅぎょうじゃ遺産いさんがあるとはいえ、あれはかれ負傷ふしょうしたあとあわててのこしたものだ。完全かんぜんかどうかはだれにもからん。つぎにどんなあらわれるか?」


記憶きおくにある来年らいねん狼襲ろうしゅうきわめて危険きけんだ。方源ほうげん蠱虫こちゅう不足ふそく原因げんいん対応能力たいおうのうりょくひくくなり、戦闘せんとう傷付きずついたりいのちとしたりする事態じたいけたい。


現在げんざいかれ狼群おおかみむれ包囲ほういされれば、ほぼ九死きゅうし一生いっしょうないだろう。


ゆえに、それ以前いぜん最大限さいだいげん準備じゅんびととのえねばならない。修行しゅぎょう進展しんてん蠱虫こちゅう装備そうび――どちらもかせない要素ようそだ。



その三日間みっかかん連続れんぞくで、かれ何度なんど樹上店舗じゅじょうてんぽおとずれた。


三日目みっかめとき樹上店舗じゅじょうてんぽ一階いっかいおどろきを発見はっけんした――黒豕蠱こくしこ一匹いっぴき


黒白こくびゃく豕蠱しこは、とも蠱師こしちから根本的こんぽんてき増強ぞうきょうする蠱虫こちゅうだ。方源ほうげんすで白豕蠱はくしこ使つかって一猪いっちょちかられていた。もし二匹目にひきめ白豕蠱はくしこ使つかっても、ちからえる効果こうかはない。しかし黒豕蠱こくしこちがい、黒白こくびゃくちからたがいにかさねられるのだ。


こうして正午しょうごむかえるころかれふたた一匹いっぴきくわわった。


そのとく目立めだったうごきはなかった。


カウンターには偵察用ていさつよう移動補助いどうほじょよう蠱虫こちゅうならんだが、方源ほうげんるものはなかった。


これらの蠱虫こちゅう普通ふつう展示台てんじだいならべられ、人気にんきがなく、購入こうにゅうするものもほとんどいなかった。方源ほうげん今回こんかい商隊しょうたい八日間ようかかん滞在たいざいする予定よていだとき、あせらずにつづけていた。


ついに七日目なのかめになった。


樹上店舗じゅじょうてんぽ二階にかいで、方源ほうげん赤鉄舍利蠱せきてつしゃりこ一匹いっぴきつけた。


二転にてん蠱師こし使つかえば、即座そくざ小境界しょうきょうかい一階級いっかいきゅう上昇じょうしょうさせられる!


三千元石さんぜんげんせき表示価格ひょうじかかくに、無数むすう二転にてん蠱師こし殺到さっとうし、紙片しへんがカウンターにとうかんされる光景こうけい熱狂的ねっきょうてきだった。


「この赤鉄舍利蠱せきてつしゃりこれれば、おれ修為しゅうい即座そくざ中級ちゅうきゅうたっするんだ。中級ちゅうきゅう深紅しんく真元しんげんがあれば、月芒蠱げつぼうこにせよ白玉蠱はくぎょくこにせよ、もっと多く(おおく)使つかえるようになる」


修為しゅうい蠱師こし根本こんぽん修為しゅうい上昇じょうしょうすれば、戦闘力せんとうりょく自然しぜん向上こうじょうする。効果こうかめんえば、偵察ていさつ移動いどうようおぎなうよりはるかに有利ゆうりだ。


してやみせにあるそれらのは、方源ほうげんにとって凡品ぼんぴんぎず、るものはなかった。


「だがおれまえ酒虫しゅちゅう黒豕蠱こくしこ購入こうにゅうし、さけんでいる。この赤鉄舍利蠱せきてつしゃりこ落札価格らくさつかかく五千元石ごせんげんせきえ、下手したてすれば八千はっせんちかくまでがるだろう。なにしろみんなおおかみ襲来しゅうらいせまっていることをっている。いま小境界しょうきょうかい上昇じょうしょうさせることの価値かちはかれない。この舍利蠱しゃりこれるには、元石げんせきりそうにない!」


方源ほうげん瞬時またたくして、難題なんだいが目のまえに立ちふさがったことをさとった。

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