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8 元カイヤナイト伯爵

俺のスキル鑑定から、三ヶ月が経ったある日。

いつも通り、家族全員で朝食を摂っていると。


「言わなければいけないことがある。シルファが妊娠した」


あまりにあっさり言う物だから、一瞬静寂が場を支配した。

次の瞬間には、家族や使用人たちの驚愕の声で包まれた。

は?いきなりすぎるぞ。

と言うか、オニキスはまだ子供を増やす気なのか?

既に、子供は五人もいるのだぞ?


「お父様それはどういうことでしょうか?」


長女のアリアが、俺たちの疑問を単刀直入に聞いてくれた。


「だから、シルファが子を身籠ったと言ったのだ」


それは分かる!

どうして、そうなったのか聞いているんだ。

アリアが再度問いただそうとする。

しかし、それはシルファの声により遮られた。


「あなたでは説明不足です。代わりに私が説明します」


助かった。

オニキスでは一向に話が進まなかった。


「どうしてこうなったかと言うと、私とオニキスがラブラブすぎたのよ!」


ああ。

ダメだ。

シルファもこういう人間だった。


「つまり、いつも通りいちゃついて子供を作ったということですか?」


アルスは、ものすごくオブラートに言葉を包んだ。

アルスの心中を察すると、可愛そうになってくる。


「あなた達、何をしているのよ・・・」


ルビーが呆れたように、ため息を吐いた。

良かった。まともな大人が残っていて。


「あなた」


ルビーが真剣な表情で、オニキスを呼んだ。


「その子供のための資金の目途などはついているの?」


「ああ、ついている」


「そうならいいわ」


ルビーは大事になってくる部分だけを聞くと、それ以上は話さなかった。

まあ、実際子供が増えて困ることなどないしな。

一つ懸念があるとすれば、末っ子だけが年が離れていることだけか。


「皆、理解してくれてありがとう。」


「それで、シルファには妊娠中静かに暮らしてもらうため。別荘に行ってもらう。それについて行きたい者はいるか?」


少しの間、食堂に沈黙が流れた。

それを破ったのはカインだった。


「俺はいっしょに行きたいです」


「私も一緒に行きたいです」


カインに続いて、オリビアも声を上げた。

確かに、シルファの容体は心配だ。

それに、()()()()()()()()()からな。


「私も行きます。」


「他に行きたい者はいないか?」


オニキスの問いに、他の全員が首を縦に振る。


「それでは、出発は三日後。それまでに、支度を済ませておいて」




それから、時間はあっという間に過ぎ、別荘に出発する日になった。


「カイン。フォン。オリビア。シルファに無理をさせないようにな?」


「フォン様。楽しんできてくださいね!」


「怪我しないようにするのよ」


家族全員が屋敷の前に集まり、俺達を送り出してくれている。


「はい。行ってまりいます」


「アルスとアリアもしっかりするのよ」


挨拶を済ませると、俺達は馬車に乗り込んだ。

シルファから順に馬車に乗り込む。

ほどなくして、馬車が出発した。


俺がふと馬車の外を見ると、使用人やオニキスたちが手を振っていた。

それに対して、俺達も手を振り返した。


別荘までの道中は、平和の一言だった。

特に強力な魔物に襲われることもなく。

遭遇した魔物も、カイヤナイトの騎士団が難なく討伐する。


野営に関しても、統制された騎士団によって不便はない。

強いて言うならば、夜に警備をしている騎士が日中に眠そうなことだけだ。



そんな感じで、俺達は別荘のある街「キャッツコート」に着いた。

この街は、昔強力な従魔士が支配していた。

その従魔士の相棒が猫の魔獣だったため、こんな名前になっている。


そして、この街にある別荘には、父方の祖父がいる。

俺自身も初対面のため、どんな人物かは知らない。

ただ、オニキス曰く親バカタイプの人らしい。


「ここが、キャッツコート・・・領都より大きくないか?」


カインがそんなことを呟いた。

確かに、見たところ領都より大きい。


「それはそうよ。ここは元々領都だったんだから」


オリビアが自信たっぷりに言った。

オリビアが言うには、ここは最初領都だったらしい。

しかし、昔に他の貴族との戦いで一時的に奪われてしまったらしい。

その時に領都が今の場所に移動したらしい。


そんなオリビアの解説を聞きながら、俺達は門を通り街に入った。

そのまま、町の中心にある屋敷に向かっていく。


屋敷に着くと、そこには初老の男性が立っていた。

白く長いひげを生やしており、柔らかい雰囲気を纏っていた。

誰だろう?

俺はそんな疑問符を浮かべた。

だが、それと同時にもう一つ感じたことがある。

この老人は強い。一見ただの爺さんに見える立ち振る舞いだが、よく見れば武術に精通しているのがよくわかる。


「お久しぶりです。ジルフォード様」


シルファがその男性に話しかけた。

俺はそれを聞いてぎょっとする。

なぜなら、その名前は俺の祖父の名前だからだ。

つまり、この老人こそが俺の祖父であり、元カイヤナイト伯爵のジルフォード・カイヤナイトか。


「おお、久しいな。遠路はるばるよく来た。して、その子たちが私の孫かな?」


「はい。左から、オリビア、カインそしてフォンです。」


「孫たちよ、よく来たな。こんな場所で立ち話もなんだ。屋敷に入ってからゆっくり話そうではないか!」


なんというか、孫が好きな普通のお爺さんに見えてきた。










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