6 スキル鑑定と試合(3)
訓練場に着くと、カインとオニキスがいた。
それに、大半の使用人が訓練場に集まっている。
その使用人たちの中に紛れて、シルファとルビーが見守っていた。
「遅かったな」
カインは俺を見つけると、開口一番そう言い放った。
いつも思うが、会ってすぐに文句を言わないと気が済まないのだろうか?
まあ、そういう人もいるよな。
「遅れてすみません」
「いや、フォン時間通りだ。謝ることはない」
別にそんなことは気にしていないのだが。
「それでは、試合についてだが・・・」
それから、試合の説明が始まった。
今回の試合は、スキルの使用可、魔法使用可、武器は木剣。
相手が降参するか、審判が止めるまで試合を継続するルールだ。
俺とカインは、それぞれ開始位置に着いた。
カインは剣をゆっくりと構えた。
俺は剣を地面に突き刺した。
その行動に周囲がざわめく。
だが、オニキスは表情を変えずにいた。
「両者。準備はいいか」
「「はい」」
「それでは、試合開始!」
開始の合図と同時に、カインは火球を放ってきた。
魔法が使えるようになっているのか!
俺は驚きながらも、その火球を横に飛んで躱す。
俺が着地するタイミングで、カインが距離を詰めてきた。
「喰らえ!」
そう言い放ちながら、剣を横なぎに振るう。
それを、剣を振り下ろすことで鍔迫り合いになる。
カインは俺よりも年上だ。俺よりも筋肉量多いし、身体もでかい。
当然、俺は押し合いで負ける。
俺はギリギリのタイミングで、大きくバックステップで距離を取った。
カインは連撃を加えてこようとしたが、足元に魔法陣が発生する。
それを咄嗟に躱す。
カインがいた場所は火柱に包まれた。
「お前!魔法が使えるのか!」
ああ、そうか。
あの時、カインはスキル暴走の方に意識が向いていたのだろう。
それならば、俺が魔法が使えることを知らなくても納得だ。
俺はカインの動揺など構いもせず、カインに向かって接近する。
反応が遅れたのか、慌てたようで体制を整えようとする。
剣を振り負わすと、何とかカインは剣で防ぐ。
だが、俺の本当の狙いはそこではない。
カインの真横に魔法陣が出現する。
そして、魔法陣から影の手が伸びる。
その手がカインの胴を掴む寸前。
カインが消えた。
いや、正確には高速で後ろに下がったのだ。
「スキルを使いましたね」
カインは悔しそうな表情をする。
その理由がよくわからないが、俺の見当は当たっていたのだろう。
カインのスキルは、光に関係するものであることは既に知っていた。
だからこそ、光速の弾幕か瞬間移動のような使い方をすると思っていた。
そこまで、わかっていれば簡単だ。
カインがスキルを使うように、誘導すればいい。
いくらスキルが強力でも、速すぎれば制御できない。
その後にできる隙を突けば、いくらでもチャンスを作れる。
そもそも、高速だと言っても音速少し早い程度だ。
それならば、予測とタイミングだけで何とかなる。
「これでも喰らえ」
カインはそう言いなが、
十三個の魔法陣を展開した。
一つ一つは微弱な魔法だが、数でそれを補っている。
それに、魔法の同時発動は難易度が高いんだけどな。
俺はその迫ってくる弾幕から、逃れるように走り出した。
弾幕はどうやら追尾式らしい。
後ろからどんどんと迫ってくる。
そして、正面にカインが回ってきた。
絶体絶命、まさにそういう状況だ。
誰の目から見ても、敗色濃厚。
だが、それは上下移動を考慮しない場合だ。
その瞬間。俺は地面の中に沈んだ。
カインの放った魔法に、カインが被弾する。
カインは半分程度剣で防いだが、もう半分に被弾して膝をついた。
「どこに行った!」
「後ろだよ」
ぬるりと背後に現れた俺は、カインに向けて剣を横に振るった。
俺は身体能力強化の魔法を、自身にかけた。
そのため、カインは反応できずに大きき吹き飛ばされる。
吹き飛ばされたカインは、何とか立ち上がろうとする。
しかし、ダメージが大きいのか立ち上がることができない。
オニキスはそれを見て、口を開いた。
「勝者フォン。これで摸擬戦を終了とする」
オニキスがそう宣言すると、カインは地面を思い切り叩いた。
「クソッ!」
俺はふと周囲を見た。
使用人たちは大きく動揺しているようだ。
まあ、普通に五歳が七歳に勝ったら驚くよな。
俺はあまり深く考えずに、カインに向き直った。
今回の摸擬戦、どういう意図があったか知らない。
だが、カインは強くなっていた。
明らかに普通の貴族の、それも学院にも通っていない子供の実力ではなかった。
物凄く努力したのだろう。
どうか、このまま折れずに頑張ってほしい。
フォンは高速のカインの動きが見えていません。
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