5 スキル鑑定と試合(2)
屋敷に戻ってきた俺達は、馬車から降りる。
すると、屋敷の前でカインが仁王立ちしていた。
カインは俺達が、帰ってくるのを待っていたのか?
そんなことを思っていると、こちらに向かってくる。
よく見ると俺の方を睨んでいる。
その様子に、オニキスは顔を強張らせた。
カインは俺たちの前まで来ると止まり、口を開いた。
「フォン。俺と戦え!」
カインはそう言うと、オニキスに話しかけていた。
その会話の内容は、よく聞こえなかった。
だが、オニキスはその話を聞いて、それまで厳しかった顔を和らげた。
どんなことを話したのだろうか?
すると、オニキスが俺の方に向かってきた。
「フォン。カインとの戦いを受けてやってはくれないか?」
「わかりました」
動機が分からないが、カインと戦ったとしてもどうにでもできる。
それと、俺もカインとは戦って見たかったしね。
スキルを暴走させてから、どれだけスキルが扱えるようになったのかが気になるからな。
そういうことで、俺とカインは戦うことになった。
戦う場所は、屋敷にある訓練場を使用する。
俺とカインの戦いは、二時間後に行われることになった。
カインとの試合までの間、俺はオニキスの元を訪ねていた。
俺は執務室の前まで来た。
一つ大きく息を吐くと、扉をノックした。
「入っていいぞ」
「失礼します」
執務室に入ると、大量の書類の山に囲まれているオニキスがいた。
失礼かもしれないが、こうしてみると・・・
やはり、小さく見えてしまう。
おっと、少し話が脱線したな。
「それでフォン。何の用だ?」
「少し聞きたいことがあります」
俺の聞きたいことは、カインの動機だ。
カインがなぜ、いきなり戦いを申し込んできたのか。
どうして、それをオニキスが承諾したのか。
疑問に思うところが多い。
それに屋敷に戻ってから、使用人たちの様子もおかしい。
カインが試合を申し込んだとか、そういうことは関係なく。ただ、俺への視線がおかしいのだ。
「カインと戦うようにしたのはなぜですか?」
「それは今は言えない。試合が終われば、教えられる」
まるで事前に、決めていたセリフを喋っているようだ。
こういう質問が来ることは予想していたようだ。
まあ、当然か。
「なんでですか!」
俺は追い打ちをかけるように、質問した。
できるだけ、焦っている様子を出す。
「教えられない。質問がそれだけならもう戻りなさい。試合の準備があるだろう」
オニキスは淡々とそう告げる。
これ以上は効き出せそうにないな。
まあ、後は使用人のことだけ聞くか。
「では、あと一つだけ。屋敷に戻ってから使用人の様子がおかしいのですが、心当たりはありますか?」
その質問に、オニキスの眉間に力が入る。
もしかして、前後の質問に関連性があるのか?
しかし、オニキスはすぐに表情を戻した。
オニキスは少し黙った後に、返答した。
「スキル鑑定が今日行われたから、フォンの結果が心配なのだろう」
確かに、言われればそんな気がするが・・・
鑑定に行く前は、そんな不安そうな様子なんてなかった。
なんだ、この違和感は。
まるで、状況が変わったようだ。
うーん。いくら考えても、情報が足りない。
とりあえず、忙しそうだし退室しよう。
「ありがとうございます。それでは失礼します」
「ああ、試合だからと言って緊張しすぎるなよ」
俺は部屋を退室した。
そして、自室まで戻った。
やっぱり、動機が気になる。
だけど、それを知る術を今は持ち合わせていない。
考えても答えが出ないのは明白。
なら、試合のことを考えよう。
まず、カインがどれだけの実力を持っているかが大事だ。
仮に、想定よりカインが弱ければ、大けがを負わせる可能性がある。
カインについて、知っている情報を洗い出してみるか。
カインのスキルは光に関係するものだ。
そして、二年前は制御できていなかった。
後は二年前から、剣術と魔術の教師がついていたな。
それを考えると、魔法は下級から中級。剣術は基礎ができている程度だろう。
もし、想定より高くても上級魔法や剣術に重心移動、瞬間移動を入れてくるくらいだろう。
そう考えると、俺は下級魔法で対応するべきだな。
剣術は手加減すればいいだろう。
幸い、前世では剣をベースにしていたからな。
一番してはいけないのは、初手を俺が取ることだ。
相手の力量を計ることができない。
試合のことを考えていると、そろそろ時間になったようだ。
俺は訓練場に向かった。
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