27 冷たい目1
カインside
俺にはフォンと言う弟がいた。
その弟は三年前に死んだ。
俺は今でもフォンのことをよく思い出す。
子供にしては異常なほど冷静で、感情を一切見せなかった。
驚いたり、共感することはある。だけれど、喜びや悲しみ、怒りなどの感情を俺はフォンから感じたことはなかった。
そんな、フォンが唯一感情を出してくれたのが、俺がフォンに戦いを申し込んだ後だった。
今思えば、なぜあのような判断をしたのかもわからない。自分でも愚かだと思う。簡潔に言えば、俺が不器用すぎただけなのだが。
あの時、俺はフォンを守ってやると誓ったんだ・・・結局、俺は守るどころか、守れらてしまったけどな。フォンは一瞬だが、その時だけは嬉しいという感情を出してくれたように感じる。
それが酷くそして心の底から嬉しかった。
だからこそ、あの時フォンを守れなかった俺に価値は無い。
昔のように調子に乗ることも増長することもない。
だって、俺にはその資格はないのだから。
俺は後悔したくないと思った。だから、もう二度と後悔しないように、強くなりたいと思った。フォンは強かった。でも、あの魔狼はそれ以上に強かった。
多分、フォンは逃げるだけならできたんだと思う。それなのに、逃げなかったのは俺たちがいたからだ。
俺がもっと強ければあの時フォンは逃げられたのだ。
だから、俺は強くならなきゃいけない
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ジルフォードside
儂にはフォンと言う孫がいた。
儂があの子と初めて会ったときに思ったことは、強いと思ったのだ。
生物としての本能で、あの子を恐れたのだ。儂は幾度もの戦場を乗り越えてきた身であると自負している。だからこそ断言させてもらう、あれは全身の細胞一つ一つに至るまですべてが警報を鳴らしていた。
あの時には既に儂よりも強かったのだ。魔狼との戦いの最中、一瞬だけ見せた彼の力は儂が何人いようと勝てる気がしなかった。
もう一つ初対面で感じたことは、酷く冷たく感じた。
まるで無機質な人形のように感じたのだ。
そう考えると、あの力を見せた時だけはあの子の中の感情が見えた気がしたのだ。
こんな老い先短い爺のために、あの子が犠牲になる必要などなかった。
やはり、あそこには儂が残るべきだった。
アンジェリカも納得してくれただろう。
何故、あの時あのような選択をしてしまったんだ。
いや、わかっている。フォンなら勝てると思ってしまったのだ。あの力に対しては魔狼も全く対応できていなかった。それを見て安心してしまったのだ。
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アーノルド(ラピスラズリ前公爵)side
数週間前、アリスが召喚したという少年。名をフォンと言うのだが、私は今その少年の強さに驚いていた。アリスを攫った魔人を、彼は一瞬で制圧してしまった。
私に同じことができるかと問われればできないと答えるしかない。
初めて会った時も強いとは思っていた。だが、それは子供にしては、と言う言葉が頭についていた。精々が一兵士程度の実力だと思っていた。
しかし、目の前の少年の実力はそんなものではなく。伝説級の実力者であるように見える。
初対面の時も、子供にしては異質なほど落ち着いており、借りにも伯爵家程度の子息とは思えなかった。それに、アリスへの対応も普通だったから、早熟なのだと思い。特に気にしてはいなかった。
ただ、気になっていたのは彼が日を追うごとに冷たくなっているような気がしたのだ。
今思えば、何か理由があったのかもしれない。
私が何とか、魔物の群れを倒し切る頃には彼と魔人の姿はなかった。
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