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23 不穏な影


過去の事件の話を聞いてから、一週間が経った。

俺は今、アリスと剣術の訓練をしていた。


「ハ!ヤ!」


上段からの振り下ろし、それを防ぐと今度は横なぎが飛んでくる。

それをしゃがむことで、回避する。

追撃の速度が速いな。彼女の剣術は速度重視のものだからだろう。


低い姿勢のまま、片手を地面に置いて足払いする。

不意を突かれたアリスは、そのまま後方に体勢崩す。

姿勢をあげると同時にアリスの首元に剣先を向けた。


「参りました。今日は勝てると思いましたのに」


「まだ、負けられませんよ。でも、確実に剣のブレが無くなっていますよ」


「本当ですか!」


彼女の剣術はこの一週間で目に分かるほど成長した。

元々、基礎的な型を徹底していたようだし、対人経験を積むことで成長が加速したのだろう。

特に、戦闘中の剣先のブレが無くなってきた。


「お嬢様、タオルをご用意しました」


確か、カルミアと言う名前の使用人がタオルを差し出した。

ここ数日で気づいたのだが、彼女はアリスの専属らしい。だが、何故この前は前公爵と一緒にいたのだろうか。

アリスはタオルを受け取ると、顔を拭いた。


「お昼になりましたし、ランチと致しましょう」


「かしこまりました」


空を見てみると、確かに太陽が真上に来ていた。

もうこんな時間か。カイヤナイト家にいた頃は、剣を振る機会がなかったからか。ここに来てから、剣を振っていると時間を忘れている。感覚を取り戻すのに時間が掛かる。それに集中しているからだろう。


カイヤナイト家・・・そろそろ、家に帰る支度を始めなければな。

アリスの鍛錬にも付き合い、今やアリスの剣術の腕は騎士相当になっている。成長速度が速いな。

だから、前公爵からの指示は達成したと言っていいし、これ以上ここに留まる必要がなくなった。


「そろそろ帰るか」


「フォンさん、早く来てください」


先に訓練場を出たアリスに呼ばれた。

俺は急いで、アリスの元に向かった。




昼食を摂った後、俺は前公爵の書斎を訪れていた。この屋敷には二つの書斎があり、俺が寝泊まりしている書斎と前公爵のものだ。俺が使っている方は、非常時に現公爵が使われるらしい。


コンコン


「入れ」


「失礼します」


扉を開けて、部屋の中に入る。

使用人と思っていたのか、俺の顔を見ると驚いている表情になった。


「フォン君、どういう要件かな?」


「アリス様は一定レベルの剣術の腕を手に入れました。なので、私はそろそろカイヤナイト家に帰らせていただきたいと思っています」


「ああ、それについては構わないが、道中の手配などに時間が掛かってしまう。だから、後一週間ほど待ってほしい」


「わかりました」


カイヤナイト領に帰ることに反対されなくてよかった。公爵家の都合でこの場所に引き留められる可能性も考えていたからな。もしかしたら、口封じに暗殺者でも贈られるかもしれないが、その時は逃げればいい。


「要件はそれだけです。失礼しました」


「ああ、ちょっと待ってくれ」


部屋を出ようとする俺を、前公爵が呼び止めた。

何だろうか?


「最近、この町の周囲の魔物の出現数が増加している。フォン殿の腕を見込んで間引きを頼みたいのだ。引き受けてくれるか?」


「それなりの報酬を頂けるのならば構いません」


どうやら、魔物狩りの依頼のようだ。

このあたりの魔物はカイヤナイト領よりも強いらしいが、フェンリルほどの強さの魔物はいない。受けても問題はないだろう。そもそも、フェンリルレベルの魔物でも、逃げるだけならばできるのだから。


「それでは失礼します」


「引き留めて悪かったな」


俺は書斎から出ていく。

公爵からの依頼を達成しようかな。


俺は依頼をするために、街に繰り出した。



六時間ほど経っただろうか。

街の近くの魔物は大体狩っただろう。討伐部位を確認すると、その数は二千を超えていた。

ちなみに、討伐部位を入れているカバンがあるのだが、これは前公爵から借りた拡張の術式が施された魔法鞄だ。


ある程度間引いたし帰るとするか。


__________________________________


???


「例の少女の行方は分かったの?」


「ああ、どうやら領内の辺境の町に潜伏しているようだ。周囲には複数人の護衛とアーノルド前公爵がいる」


「ああ、スパイを忍ばせたってこの前言っていたわね。それにしても前公爵がいるのは厄介ね」


「だが、こちらには十万の魔物の大群を用意している。ブラフとして町の周囲に二・三千の魔物をばらまいておいた」


「それなら心配はないわね。例え元剣聖が相手でも、万の魔物には太刀打ちできないわ」


「これで、()()()()()が手に入るはずだ。その血があれば、あの方を解放できる」

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