22 平民の少女
昔のアリスには平民の友達がいた。名前はミミと言う。
彼女とアリシアは領内の視察の時に出会った。領都の平民として生きていた彼女に、アリスは関心を持ったようだ。それからも何度も会うようになった。
四歳になる頃には、同年代の幼馴染としていい関係を持っていた。
こういうことも経験だろうと、アリスの両親はミミとアリスの関係を否定しなかった。なぜなら、ラピスラズリ家は民に支えられているからこそ、民のために動くという家訓を持っている家だからだ。
事件が起きたのはアリスの五歳の誕生日の少し前だ。
そのころはアリスも、公爵家もとても忙しい時期に入っていた。だから、ミミとアリスが関わる時間が減っていった。
だが、そのことで公爵家から捨てられたと勘違いが起こったのか、ミミは公爵家に嫌われているという噂が流れた。もちろんそうなれば、その地に住む領民である彼女とその家族は周囲から避けられ、苦しい生活を余儀なくされた。
当時の公爵家は前述したとおり、忙しかった。そのため、市政のそんな噂が公爵家の人間の耳に入らなかったのだ。そのまま、ミミたち家族の生活は苦しくなってきた。公爵家に助けられないミミたち家族を見て、攻撃する人々まで出てきた。
そんな中、何とか時間を捻出して、アリスはミミに会いに行った。
だけど、そこで見たのは今までのように、おとなしいけど優しい顔をしているミミではなく。憔悴しきったミミの顔だった。
当然、アリスのそのことについて問いただした。
「なんで、たすげてぐれなかっだの!!」
その返答は、アリスの心に深く突き刺さった。
子供であり、貴族でもあるアリスにはそのような事態になることも、どうしてそうなったのかも理解できなかった。
だが、わからない中でもアリスは頑張って返答した。
「ごめんね。ごめんね」
アリスはミミと言う友達を支えることにしたのだ。アリスは家に帰ると、すぐに両親にそのことを報告した。両親はすぐにそんな噂は出鱈目であると、民に宣言すると同時に、このような差別的な行為を禁じた。差別的な行動をした者には、罰と厳重注意がなされた。
そして、ミミは公爵家で数週間匿われることになった。これはミミへの反感を防ぐためだった。
アリスはミミと一緒に過ごせることに喜んだ。
最初はミミも同じように喜んだが、数日もすると両親が恋しくなったようだ。
その様子にアリスも心を痛めた。
数週間が立ち、ミミは両親のもとに帰ることになった。
その付き添いとして、アリスと護衛が数人ついて行くことになった。
そんな中、ついに事件は起こった。
ミミへの怒りを抑えられなかった男たちが、何人かで徒党を組んで襲ってきたのだ。
彼らは領主の兵を襲う以上、死を恐れてすらいなかった。
そのような者の相手は、兵士にとっても難しいものだった。
結果として、一人の生き残りが一直線にミミの方へと向かっていったのである。
そのとき、アリスにはその男の急所が明確に認識できた。
アリスは男の急所である鳩尾に体当たりした。
それにより後方に倒れる男。
後は騎士が取り押さえるだけだった。
その男は悪あがきとして、一つの魔法を放った。
それは誰でも使える位階も属性も普通の魔法だった。
土属性で初級魔法の石を作り出して飛ばすだけの魔法。通常は当たっても、余程当たり所が悪くない限り致命傷になりえない魔法。
ただ、この時だけは違った。男はこの魔法に己の全魔力を乗せたのだ。
通常使用量以上の魔力を込めた場合、だいたいの魔法はより強力な威力へと変貌する。
その時は速度と体積が増加していた。
その魔法がミミの頭を消し飛ばした。
アリスはその光景を、自身のその瞳で捉えてしまった。
石が肉や骨を抉り、通過していく。残った体からは大量の血飛沫が溢れ出し、辺りに散乱した。そして、頭の無くなった胴は、バタンと地面に倒れた。
その後、男は捉えられ処刑された。
しかし、アリスの心の奥にはその時に記憶が鮮明にこびりついているのだ。
前回と今回少し短めになってしまいました。
誤字や間違いがありましたらご報告いただけると助かります。
作品への評価・感想等を頂けると嬉しいです。
ご覧いただき、ありがとうございます。




