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12 災害級・・・(4)

屋敷に着くと、屋敷には煙が立ち上っていた。

だがシルファの過ごしている別館には、まだ炎が届いていない。

俺は別館の中に入った。


別館の中は使用人があわただしく、避難の準備を始めていた。

俺はちょうど通りかかった使用人に、声を掛けた。


「お母さまはどこにいる?」


「シルファ様は避難されました。ジルフォード様がそばにいらっしゃるはずです。フォン様も早く非難を!!」


「わかった。ありがとう」


どうやら、シルファは無事らしい。

俺もこのまま非難を・・・

あれ?カインとオリビアは?

どこにいるのだろうか。

もし、逃げ遅れていたのなら・・・


本館の方から大きな爆発音が響いた。

その次に、聞こえてきたのは()()()()()()()()()()()


「キャアアア!!!」


気づけば、俺は本館に向かって走り出していた。


「ハァッ、ハァッ、ハァッ!!!」


走って、走って、走って、息を忘れて本館にたどり着いた。

そこには傷だらけの、カインとオリビアがいた。

そして、その目の前に一体の巨大な狼がいた。

俺の本能が言っている。

こいつは今の俺よりも強い。それもとてつもなく大きな差が開いている。


その狼は、真っ白な体毛をなびかせながら、視線をこちらへと向けてきた。

その瞬間に広がる圧倒的な威圧感。

まるで、大岩をその肩に背負っているような重圧を感じる。


「フォン!どうしてここに来たんだ!!」


カインがそう叫ぶ。

どうやら、二人とも死んではいないようだ。

ひとまず、二人の無事に安堵する。


俺は狼の方に正対する。

虚空に手を伸ばした。

すると、そこからなんの装飾もない()が出現した。

刀の切っ先を狼の方へと向ける。


「俺が時間を稼ぐから、二人とも逃げてくれないか?」


俺はカインに対して、そう返答した。

自身の肉体に、魔力による身体強化を行う。


「お主、名前は?」


どこからか、そんな声が聞こえた。

声の発信源はどうやら、この狼らしい。

人語を理解する知性・知能を持っている魔物。

最低でも都市一つは、容易に破壊できるレベルだろう。

状況は俺が不利だな。


「フォン・カイヤナイト」


「そうか、儂は白夜。お主ら人間が言う災害級の魔狼である。お主を敵として認めよう」


「それはありがたいな」


短い対話の後、静寂が流れる。

凍てつくような殺気と強大な魔力が辺りを支配する。

魔力によって、地面が変質する。

地面が白銀に変わる。


これは強力な魔力による影響だろう。

実際、地面の硬度は先程とは比べ物にはならないほどだ。


それから、数秒、数十秒、数百秒、遥か長い時間が経ったようにも感じられる。

そんな空気が、俺たちの間に流れた。

だが、その静寂はすぐに破られた。


先に動き出したのは、白夜だった。

白夜は俺の背後に回り、自身の爪による斬撃を放った。

その一撃は白い一閃となり、地面を切り裂いた。

そう、すさまじい硬さの地面をだ。

これだけで容易に、威力を想像できるだろう。


俺はそれを、ピンポイントの防御魔法によって防ぐ。

魔力を圧縮することで、なんとかそれを防ぐことに成功したわけだ。

今度は俺のターンだ。

俺は白夜に対して、刀を使った居合切りを放った。刀に纏っている魔力を、極限まで研ぎ澄ました斬撃だ。

それを放った瞬間、奥にあった壁が()()()()()

白夜はそれを大きく距離を取り、回避した。


「どうやら、それを喰らったらまずいようだ」


次の瞬間。

俺と白夜は同時に姿を消した。そして、高速で接近した。

刀と爪がぶつかり合い、激しい轟音を響かせている。その余波で、地面が木端微塵に砕け散る。

どうやら、純粋なパワーでは負けているようだ。

このままやったら負けるな。


刀と爪が跳ね返る。

そして、もう一度ぶつかり合う。轟音が響き渡る。

何かしけないとまずい・・・


俺の足元に一つの魔法陣が発生する。

やばっ!

俺は大きく後ろに飛んだ。元居た場所には、激しい暴風が吹き荒れていた。

その威力は凄まじく、空気すら切り刻んでいる。

威力がおかしいな。なんで、空気が切れるんだよ。


それからも何回も白夜の攻撃をいなし、白夜に攻撃を仕掛けた。

その数は千を超えただろうか。

このままでは千日手だな


そんなことを思った束の間、白夜は突進してきた。

俺はそれを大きく跳躍することで、回避した。

いや、回避させられた。


空中で、俺はうまく身動きを取ることができない。

白夜は、大量の氷属性の攻撃魔法を展開した。

氷の礫が、こちらに向かって飛来する。


「クソッ!!」


両手をクロスさせて、攻撃に備える。

そして、俺は為すすべなく、攻撃を喰らった。頭から地面の方に落下していく。

先程の攻撃で、左腕が潰されたようだ。バランスが乱れてしまった。


着地の瞬間に、白夜の斬撃がこちらに迫ってくる。

刀を出現させ、日本の刀で攻撃を防ごうとする。

威力を受け流すように、身体を回転させる。しかし、威力を殺しきることはできなかった。

俺の両手が刀が離れる。


誰にでもわかる。目の前に迫ってくる()の予感。

魔法を発動しようにも、間に合わず。

かといって物理的防御手段を持ち合わせていない。

詰み。その二文字が脳裏を過ぎった。


「見事であった」


白夜のその声と共に、俺の方に奴の牙が向かってきていた。

じわりじわりと攻撃がこちらに近づいていく。

だんだんと時間がゆっくりと感じられる。

これが俗に言う走馬灯と言う物なのだろうか?

まあ、今はそんなことはどうでもいい。

このピンチを凌ぐかだ。

俺は引き延ばされた感覚の中で、たった一つの魔法を()()()()()()()()

ただ、その魔法が発動することはなかった。


なぜならば、俺と白夜の間に一本の剣が入り込んできたからだ。

その剣は白夜の牙とぶつかり、白夜を弾き返した。


「遅くなってすまない」


その剣の持ち主がそう言った。

俺がそちらに視線を向けると、そこにいたのは・・・

ジルフォードだった。




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