11 災害級・・・(3)
キャッツコートに来てから三ヶ月が経った。
この三ヶ月、ジルフォードは様々な場所に連れて行ってくれた。
俺もサラを連れて、街を散策したりした。
カインやオリビアも自由に過ごしていた。
そして、その一日に起こったことを、シルファに伝えていた。
シルファはその話を楽しそうに聞いていた。
三ヶ月も経つと、シルファのお腹は大きくなっていた。
そろそろ、オニキスもキャッツコートに来るそうだ。
出産などはキャッツコートの屋敷で、行うらしい。
今日も俺は皿を連れて、街を散策しようとしたのだが・・・
「すみません。今日はお休みをいただいてもよろしいでしょうか?」
そう言われて、断られてしまった。
まあ、休みは必要だよね。
そう思い、俺は1人街をぶらぶらと歩くことにした。
「フォンちゃん」
街を歩いていると、八百屋のおばさんに話しかけられた。
「今日採れたての新鮮なリンゴがあるの、一つ上げるわ」
「ありがとうございます」
俺はそうお礼を言って、リンゴを受け取った。
この街は貴族と民の距離が近い、それも異常なほどに。
そのおかげか、ジルフォードは民から信頼されているようだ。
俺はリンゴをかじりながら、街の教会に向かった。
この国には二つの宗教がある。
一つは正教会、もう一つは武神教だ。
正教会は、唯一神である創造主を崇める宗教だ。
武神教は、それぞれの武器、技術の武神を崇める宗教だ。
俺が向かっているのは、武神教だ。
教会に着くと、一人の神官が教会から出てきた。
俺はその神官とすれ違う形で、教会に入った。
その時、何か魔力を感じた気がした。
まあ、気のせいだろう。
俺は気にせず、教会の中にある神像の前に来た。
少しその場に留まる。
「約束通り、来たようだな」
そう背後から声を掛けられた。
振り返ると、そこには珍しい黒髪をなびかせた男がいた。
その男は、高身長で、鋭い目つきをしている。
黒いスーツを身に纏い、いかにも貴族だという雰囲気を醸し出している。
「少し遅いんじゃないかな?」
俺はそう言って、この男を睨みつける。
男は時計を確認すると、頭をぼりぼりと掻いた。
「ほんとだ。十分遅れていましたね。すみません」
「それで、アッシュ。アレの持ち主はいたのか?」
「はい、わかりましたよ。持ち主は※※です」
「やっぱりか」
「どうしますか?」
「どうもしない。現状維持だ。どうだ、これから食事でも食べに行かないか?」
「お?いいんですかい?」
そう言って、俺達は食事処に向かった。
アッシュは街を歩きながら、俺に話しかけてきた。
「まさか、こんな子供をボスとして従うなんて思っていませんでしたよ」
「それはそうだろうな。だけど、先に手を出してきたのはお前たちだぞ?」
「それは分かっていますよ」
俺がアッシュと会ったのは、少し前のことだ。
その時も、今日と同じように一人で街を歩いていた。
すると、俺の感知に引っかかる奴らがいた。
それが、アッシュが所属していた組織だ。
何故、過去形なのかだって?
それはその組織が、シルファを狙って向けられた刺客だったからだ。
俺はそれにいち早く気づいて、組織を壊滅させた。
その時に、アッシュは俺に命乞いしてきた内の一人だった。
シルファのことや裏切る可能性を考えれば、殺すべきだったのだろう。
だが、それを見た他の組織の奴らも口々に命乞いを始めた。
俺はそれが気に食わなかった。
自身の意志を介さない、ただ他人のしている行動を模倣して、自分も助かろうとするその心根が。
その点、アッシュは必死だった。
だから、アッシュだけは殺さないで置いた。
まあ、ただの気まぐれだ。
それから、アッシュは俺に従うようになった。
今は一応部下と言ってもいいのかもしれないな。
店に着いた。俺達は店内に入り、席に着いた。
注文を済ませると、アッシュが口を開いた。
「そう言えば、どうして俺だけ助けてくれたんですか?」
アッシュは当然の質問をした来た。
「気まぐれだ。あと、少しだけ他より使えそうだっただけだ」
実際、アッシュは珍しい毒属性持ちだからな。
有用であることは事実である。
「そうですか」
俺の返答を聞くと、アッシュは嬉しそうにはにかんだ。
なぜ喜んでいるのか分からないし、男がはにかんでいても可愛くはないな。
料理が届き、俺たちが食事を摂っていると、遠くから爆発音が聞こえた。
「ウウォォォン!!!」
そんな甲高いと覚えが、辺りに響き渡った。
当然、店の中はパニックになっていた。
俺は状況を確認するために、店の外に出た。
そして、俺は現状を理解した。
遠くに見える外壁の一部が破壊されているのだ。
そこから数十体以上のグレートウルフが、街に侵入してきていた。
その近くの家屋は、既に壊れいるところもあるようだ。
そして、次は屋敷の方で爆発音が響いた。
おれは、急いで屋敷の方に向かった。
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