10 災害級・・(2)
翌日。
俺達はジルフォードに連れられて、街の中を散策していた。
どうやら、この街のことをジルフォードが紹介してくれるらしい。
もう既に三時間ほど、街を周っている。
「もうみんな足が疲れてきただろう。一回休憩にお勧めのお店に行かないか?」
ジルフォードがそう提案すると、オリビアは嬉しそうに頷いた。
オリビアは食べることが好きだからな。
俺はそんなことを考えながら、歩き出すオリビア達について行く。
少しすると、ジルフォードが立ち止まった。
そこは少し古びた外装の店だった。
「ここが儂の行きつけの店なんじゃ」
そう言って、ジルフォードは店に入っていく。
俺達もそれについて行く形で、店内に入る。
店内は、落ち着いた雰囲気の喫茶店のようだった。
古びた机や椅子が、そんな雰囲気を助長している。
「はーい。いらっしゃいませ。あ、ジルフォード様でしたか」
キッチンの方から、五十代くらいの女性が出てきた。
店内を見回すが、この店には彼女しかいないようだ。
「あら、今日はお連れ様がいらっしゃるんですね」
「ああ、可愛い儂の孫たちだ」
「ほう、お孫さんでしたか、あの狂人にも孫がいるんですね」
「孫たちの前で、そんな古い呼び名で呼ぶ出ない」
どうやら、ジルフォードと彼女はとても仲がいいようだ。
まるで、親友のようなそんな雰囲気がする。
「おじい様、その人とはどのような関係なのですか?」
俺は気づくと、そんなことを口にしていた。
その問いにおじいさまは顔を顰めた。
「私とジルフォード様は小さい頃からの腐れ縁よ」
「おい、令嬢の頃の癖が出ているぞ」
令嬢の頃の癖?
もしかして、この人もともとは貴族だったのか。
それならフレンドリーなのも納得だ。
「もしかして、貴族なんですか?」
「そうだよ。あたしは元貴族の令嬢でね」
やはり、貴族令嬢だったか。
だけど、元と言うのが気になる。
その時、サラがポンと手を叩いた。
「とりあえず席に着きませんか?立ちっぱなしだと、足が痛くなりますし!」
「それもそうだな」
「席はこちらです」
彼女はそう言って、席へと案内した。
席に着くと、メニューが差し出される。
カインとオリビアは、その中を興味深そうにのぞき込んだ。
「僕はこのウッドボアのステーキがいいです!」
「私はシフォンケーキと紅茶が欲しいです」
二人は口々に注文を口にした。
俺もメニューを見た。
その中に目につくものがあった。
「では、私はこのロックサーペントのサンドイッチをください」
この世界では、魔物の肉は普通に食べられる。
もちろん、毒のあるものもある。
俺が頼んだロックサーペントは、岩に擬態する魔物なのだ。
そのため、非常に希少なのだ。
こんな場所で、お目に掛かれるとは思わなかった。
「儂は・・・」
そう言って、ジルフォードは注文を進めるが・・・明らかに注文の量が多い。
注文の多さにあの食事に目がないオリビアでさえ、目を見開いている。
ジルフォードが注文を終えると、彼女はため息を吐いた。
「相変わらずあんたは、食べすぎなのよ」
頭に手を置いて、やれやれと言った風に首をふった。
その様子にジルフォードは文句を言いたそうに見ていたが、カイン達が納得するようにうなずいているのを見て、肩を落とした。
注文を受けた彼女は、料理を作るために厨房に戻っていった。
「そう言えば、お爺様。あの人の名前は何と言うのですか?」
カインがそうジルフォードに尋ねた。
確かに、彼女は名前を名乗っていなかったな。
「ああ、あやつはアンジェリカと言うのだ」
「アンジェリカさんとはどんな関係なんですか?」
オリビアが、興味深い様子で尋ねた。
やはり、女性はそう言ったことに興味があるのだろう。
ジルフォードは答えずらそうに、眉間に皺を寄せた。
すると、サラが口を開いた。
「オリビア様、大人には隠しておきたいことの一つや二つあるものです。俗に言う大人の秘密と言う物です」
「なるほど、わかったわ!」
厨房の方から、アンジェリカが出てきた。
その両手には料理が、乗っている。
「お待たせいたしました」
そう言って、机に料理を並べていく。
言わずもがな、ジルフォードの周りには大量の料理が置いてある。
改めて見ると、すさまじい量だ。
ざっと見ただけでも、十品は超えているだろう。
俺達は談笑しながら、料理を食べていく。
ジルフォードはゆっくり食べているはずなのに、気づけば皿の上から料理が消えていた。
恐ろしいスピードで、食事を済ませている。
それに気づいた時には、ものすごく驚いた。
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