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9.毒の有効な使い道を発見しました

 翌日


 早速ドワナロクで買った新しい装備を身につけて武庫ダンジョンへ出発。


 今までのカバンじゃ素材があまり入らないので思い切って買ったリュックタイプのカバンは、体にフィットして動きやすいだけではなく見た目の三倍以上の素材を収納できる優れもの。


 加えて一番高かったブーツは鉄製の武器でも刺さらないぐらいの丈夫さがありながら履いていないかのような軽さに加え、グリップもしっかりしているのでこの先に待ち受けるぬかるんだ場所でもしっかりと体を支えてくれることだろう。


 後はこまごまとして道具を身に着け三度目の武庫ダンジョンへとやってきた。


 残念ながらあのボインな職員さんはいないようだけどまぁそんな日もあるだろう。


 まずは一階層で突進スキルを補充した後、転送装置で四階層へ。


 どうやら収奪したスキルは日付をまたいでも保持し続けるようで今は突進と毒液の二種類を保有している。


 流石に外で毒液を処理するわけにもいかなかったので保有したままってのが理由だが、まぁどこかで使う事があるだろう。


 四階層に出現するのはキラービー。


 スズメバチのような見た目だが一匹の大きさは30cmを超え、素早い動きと鋭い針で攻撃してくる。


 幸いにも低層では群れて襲われるケースはほとんどないらしいのだが、トレインやそのほかの要因で群れる可能性もあるので絶対というわけではない。


 素早さに翻弄されなければ一応何とかなる・・・はずだ。


 四階層(ここ)からは宝箱の出現報告も上がっているのでいよいよダンジョンの本領発揮というところだろうか。


 もっとも、Eランクダンジョンなので見つかるのはかなりのレアなケースらしいから期待しない方が良いだろうけど。


「お、早速お出ましか」


 離れていてもわかるブーンという低い羽音、まだ姿は見えないが間違いなくこの先にいる。


 一本道を静かに進むと前方から巨大な影が右に左にとフラフラ揺れながら向かってきた。


「さて、実力を見せてもらおうか」


 両手でしっかりと棒を握りキラービーに向かって一直線に走り出す。


 今までの靴と違い確実に地面を捉え、蹴り出した力がそのまま速度に加算されるのがわかる。


 ラバーゴーレムの外皮を使ったっていうだけあってグリップ力は絶大だ。


 突然正面から走ってきた俺に驚いたキラービーが慌てた様子で針を突き出してくるも、それをあえて追い抜いてから思い切り地面を踏んで急停止、そのまま勢いよく反転する遠心力を生かして棒を振りぬくと聞いたこともない音と共にキラービーの胴体を真っ二つに切り裂いてしまった。


「やば」


 レベルアップの影響ももちろんあるだろうけど、自分の全体重をかけても全く滑らず地面をグリップし続けることで、思うがまま体を動かせるってのは最高に気持ちがいい。


 昔はこいつにかなり苦戦したはずなのに装備一つでこんなにも変わる物なのか。


「あの店員さんに感謝しなきゃなぁ」


 正直な話、靴コーナーで半ば強引に引き止められ売りつけられた感があったんだが、探索の基本は足からっていう格言は間違いじゃなかった。


 真っ二つになったキラービーは吸い込まれるようにして地面の下に消え、残ったのは羽と針の二つ。


 羽は建築素材に、針は医療用に使用されるらしいのでそれなりの値段で売れる為しっかりと回収しておこう。


 しっかしあれだな、装備次第でダンジョンってこんな楽になるんだな。


 でも一簡単に倒せてしまうってことは逆に言うと半殺しにするのが難しいという事。


 今の所スキルを収奪するには生きていないとダメなようなのでその辺を加減しなければならない。


 でもまぁ今はスロットがいっぱいだし、収奪しようにもどちらかを使い切らなければならないわけで。


 突進は残しておきたいし毒液の効果はまだ確認できていないからせめて効果のわかるやつに使ってから使い切りたいよなぁ、なんてことを考えている間に下り階段を発見してしまった。


 まだ潜って1時間も経っていないのだが、どうやら途中で二股になった道で正解を選んでしまったみたいだ。


 このまま降りるか、それとも宝箱を探して戻ってみるか。


 ぶっちゃけ近距離攻撃ではなく遠距離攻撃の手段がないと戦いにくい相手だけにあまり長居したくないってのはある。


「よし、降りるか!」


 悩んでいても仕方がない、あるかもわからない宝箱を探す理由もないのでさっさと先に進むとしよう。


 なんせ五階層は新人探索者に立ちはだかる大きな壁が待ち受けている、俺もブラック時代にここまでは到達できたけれど結局その壁を越えることは出来なかった。


 あの時はスキルもなかったしレベルだって低かった、だが今は違う。


 強力なスキルを持ち更には装備だって整えた。


 これはリベンジマッチ、越えるべき壁を乗り越える為俺はここに戻ってきたのだ!


「とかなんとかテンション上げないと勝てそうもない相手なんだよなぁマジで」


 そう自虐的につぶやいてからゆっくりと歩き出す。


 五階層は他の階層と違い迷路のような構造にはなっていない。


 一本道をすこし進めば巨大な部屋になっていて、そこにいる魔物は一体だけ。


 その先に六階層への階段があるのだが残念ながらそいつを倒さないことには奥の扉は開かない仕様になっている。


 せめてもの救いは引き返すことができるという事。


 転送装置が無いのでまたキラービーを相手にしながら戻る必要はあるが、死ぬまで戦わないといけないわけではない。


 新人に立ちはだかるは巨大な壁、ストーンゴーレム。


 その名の通り石でできたその巨体は生半可な攻撃を通さず弱点らしい弱点も存在しない。


 倒す方法は絶対的な力で叩き潰すかそれとも地道な攻撃で体を削りながら中心に眠る核となる魔石を砕くしかないので、それができない=実力がないということだ。


 自分の夢を叶える為にまず越えなければならない大きな壁、だが今の俺には秘策がある。


 5階層へ到着後少し休憩してからゆっくりと通路を進み巨大な部屋の手前で立ち止まった。


 眼前にそびえるは石の塊。


 だが、ひとたび足を踏み入れるとそいつはゴゴゴゴと地鳴りを立てながら巨大な手を足を生やしダンジョンを震わす低い声で叫んだ。


「さぁお前の実力を見せてもらおうか」


 普通に考えて魔鉱石程度の武器では傷はつけられても致命傷を与えられるような相手ではない。


 それを理解した上でまっすぐゴーレムへと突っ込み、見た目以上の速さでふり降ろされる攻撃を突進スキルを使って回避する。


【ホーンラビットのスキルを使用しました、ストックはあと二つです。】


 新しい靴のグリップ力と突進スキルによって爆発的な加速を生み出し、降り降ろされた手は何もない地面をえぐるだけ。


 そのまま股の下をスライディングの要領で滑り込んで反対側へと周りこむと、素早く立ち上がり次のスキルを発動する。


【ポイズンリザードのスキルを使用しました、ストックはあと二つです。】


【ポイズンリザードのスキルを使用しました、ストックはあと一つです。】


【ポイズンリザードのスキルを使用しました、ストックはありません。】


 たて続けにポイズンリザードの毒液を三連射すると無防備な背中に毒液が付着し、シュワシュワと音を立ててストーンゴーレムの装甲を崩していく。


 これこそが俺の秘策。


 ただの毒液と侮るなかれ、付着した部分をボロボロにする強い酸性を有したそれは俺の予想通り強靭なストーンゴーレムの外装を崩してみせた。


 試しに使った時にダンジョンの壁を溶かしたのを見てひらめいたのだが、一発では弱くても同じ場所に三発ともなればさすがのゴーレムも耐え切れなかったようだ。


 叫び声のような野太い咆哮に耳がつぶれそうになるもこのチャンスを逃す俺ではない。


【ホーンラビットのスキルを使用しました、ストックはあと一つです。】


【ホーンラビットのスキルを使用しました、ストックはありません。】


 突進スキルの二重がけ。


 一回で5m進む技を同時に使う事で二倍の速さを生み出し、棒を突き出してまるでロケットのように突っ込む。


 たとえ強固な武器でなくてもゴーレムを倒すほどの実力はなくても今の俺にはこのスキルがある。


「いけぇぇぇぇぇぇ!!」


 毒液によりボロボロになったとはいえまだまだ固い装甲が核を守ろうと最後の抵抗を試みるも、その抵抗もむなしく突進スキルは核もろとも装甲をぶちぬき反対側へと突き抜けた。


 ぽっかりとあいたストーンゴーレムの胴体。


 かつて俺の前に立ちふさがった宿敵は同じ魔物のスキルによって見事に敗れさったのだった。

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硬いモノを棒で突っつく訳だから物凄い反動きてそう
この毒液くらってあの女の人は毒になるだけで済んだのか
スキル使うたびにアナウンス入るの流石にうるさすぎでしょ
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