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8.追加報酬をもらいました

 地上に戻り、入り口に立っていた職員さんに彼女をお願いして一息つく。


 朝一番に潜ったので、いろいろあったけれどまだ昼前。


 転送装置までたどり着いたので次回からは4階層から始められるってのはありがたいのだが、今回の一件でスイッチが切れてしまったのでこれ以上は無理をしない方が良いかもしれない。


 探索者になって二日目、焦って怪我したせいでせっかく手に入れた当たりスキルを活かすことなく引退とか勿体なさすぎるのでここは一つ装備を見直す日にしよう。


 その為にもまずは先立つ物がいるわけで、昨日に続き買取カウンターへと向かい素材を提出。


 昨日程の量はないけれどそこそこは稼げたはずだ。


「では査定してまいりますのでライセンスカードをお預かりします」


「よろしくお願いします」


 そこまで汚れてはいないものの更衣室でシャワーを借りてさっぱりしてから元の場所へ。


 するとカウンターの向こうにいたあのやる気のない職員がにこにこと笑みを浮かべながらこっちにやってきた。


「やぁ、今日は怪我をした子を助けてくれたんだってね。わずか二日で四階層までいく実力もすごいけどそうやって仲間を思い合える人が出てきてくれるのは講義をした身としては鼻が高いよ。もしかして発現したスキルのお陰なのかな?」


「五階層までは潜ったことがあるので問題なかっただけです。あのスキルも使ってはいるんですけどよくわからないままですね。むしろギルドの方で何かわかったら教えてほしいぐらいですよ」


「そっかぁ、てっきりすごいスキルなのかと思ったんだけど発動条件がわからないんじゃ大変だね。でもまぁ新しいオーブで別のスキルを手に入れる方法もあるからそっちに期待してもいいかもしれないよ」


 職員がどれだけの高給取りなのかは知らないけど、ほいほいと買えるものじゃないし何より使ったからと言って何か新しいスキルを発現するとは限らない。


 ぶっちゃけ収奪スキルがあれば十分だし、そんなギャンブルするぐらいならまずは装備を整えるのが先だろう。


「新しいオーブって二十万もするじゃないですか、しばらくは無理ですよ」


「ふふ、それはどうかな」


「え?」


「新明さん、査定が終わりましたのでカウンターまでお願いします」


 名前が呼ばれるのと同時に職員はヒラヒラと手を振ってカウンターの向こうに戻ってしまった。


 名前も知らないのに毎回話しかけてくるあの人はいったい何者なんだろうか。


「お待たせしました、査定金額が4万3500円、救助報酬が12万円になります」


「は?」


「合わせて16万3500円をライセンスカードに入れていますのでご確認ください。今回は救助ご苦労様でした」


 いやいやいや、素材の報酬はまだわかるけど救助報酬ってそんなにもらえたっけ?


 何かの間違いじゃないのか?


「どうかされましたか?」


「あ、いや、救助報酬ってこんなに高いんですか?」


「本来は3万円の固定報酬ですが今回は救助者様よりお礼を頂戴していますのでその分を追加しております。持ち合わせが少なくて申し訳ないとのことでした」


「さっきの人は?」


「ギルドで治療を行なった後ご家族に連れられて病院へ向かわれました、申し訳ありませんが場所までは個人情報ですのでお答えできません」


 人の命が12万円というわけではないけれど、まさかこんなにもらえると思っていなくて正直戸惑っている。


 貰える物はもらっておくべきなんだろうけど・・・、よっぽどのお嬢様か何かだったんだろうか。


 まぁくれるというのだから遠慮なくもらっておくけど。


「元気ならよかったです、ありがとうございました」


「お疲れさまでした」


 昨日の報酬と合わせればほぼ20万円、オーブに手が届く金額ではあるけれど昨日は昨日で豪遊してしまったしこのまま装備を買いに行けばあっという間になくなってしまうんだろうなぁ。


 充実感と達成感に満たされながらギルドを出てその足で銀行へ、ライセンスカードをATMに通すと確かに今日の報酬が振り込まれていた。


 家賃は払ったところだけどとりあえず5万円ほど生活費として他の口座に移しておこう。


 いつ何が起こるかわからないしあればあるだけ使ってしまいそうなテンションだからな、今はお金があるだけで毎回これだけ稼げるわけじゃないのでここは堅実にいかないと。


「さて、まずは何から揃えるか」


 向かったのはギルド近くに新しく出来た探索者道具を専門に扱う巨大ビル『ドワナロク』。


 地上10階地下2階の総合ビルには武器防具を始めとした装備品から、肌着や服、探索用の道具や食料品など多種多様なものが販売されている。


 まさに探索者の為に作られた総合デパートではあるのだが、案外一般のお客もいるようでいつ来ても大勢の人が出入りしている。


 武器を買うにはライセンスが必要だけどそれ以外の危険のない物は一般人でも購入できるし、魔物の肉は人気が高い。


 そんな人たちの間を縫うようにしてまず向かったのは武器のエリア。


 ライセンスがないと入れなかったので今まで見る事が出来なかっただけに探索者になって一番最初に行きたかった場所だ。


「どうぞお通りください」


 ライセンスを改札機のようなものに通すと厳重な扉が開き様々な武器がキラキラと輝きながら出迎えてくれた。


 新人が使うシンプルな鉄製武器に始まり、俺が使っている魔鉱石を使った装備やさらに上位の探索者が使う隕鉄、極めつけはやはり希少鉱石の聖銀ミスリル製までワンフロア全てを使った大量の在庫はここに来れば何でもそろうを体現したような感じだ。


 もちろん上位の装備になればなるほど価格は上がり、聖銀製ともなると長剣一本で1千万はくだらない価格になる。


 因みに自分が使っている魔鉱石はおよそ10万円前後、10階層ぐらいまではつかえるはずなのでもう少しだけ頑張ってもらうとしよう。


「何かお気に召す物はございますか?」


「あ、いえ大丈夫です。」


「必要であれば遠慮なくお声がけください。ここでは販売だけでなく研磨や補修も行っております、みると随分と傷んでいるご様子、よろしければ再錬成も可能ですがいかがです?」


「再錬成?」


「魔鉱石は傷んだ部分の上から新たに錬成を加えると通常以上の堅さになります。最近のお客様はすぐに隕鉄製品に乗り換えらえますが個人的には愛着のある武器をより長く使っていた方が結果として強く、そして軽くなりますのでそちらをお勧めする次第です。よろしければ初回無料でお試しいただけますが・・・。」


「結構です!」


 突然話しかけられたかと思ったら無料で補修すると言われてしまった。


 タダより高い物はないというしなんとなく怖かったので逃げるようにしてフロアを離れる。


 この年になって逃げだすとか情けない話だが昔から押し売りとかには弱いタイプなので気を付けないと。


 とりあえずコレ!という物は決めていないので他のフロアに足を延ばしながら最終的に10万円を超える買い物をしてしまっていた。


 恐るべしドワナロク、追加報酬のおかげでダンジョン探索用の道具を色々と仕入れられたので明日からは今まで以上に快適になるのは間違いない。


 何事も準備が9割というだけに明日からが非常に楽しみだ。


 待ってろ第四階層、そして第五階層!

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― 新着の感想 ―
本編でスキルの詳細を職員に話さないのは理由話してましたっけ?
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