399.名も無きダンジョンに突入しました
森にあった巨木の向こうは森でした。
なんてばからしい感じに聞こえるかもしれないけれど、実際にそうなんだから仕方がない。
普通ダンジョンには何かしらの名前がつくものだけど、未発見のダンジョンには当たり前だが名前がない。
フィールド型なのか通路型なのかそれ以外なのかもわからず、どんな魔物が出てくるのかも不明。
何もかもわからないのでランクすらつけることが出来ない。
ダンジョンが発生してすぐのころは全部これだったわけだろ?
先人達は本当に偉大だなぁ。
「皆ついてきているかな?」
「こっちは全員揃っている」
「こちらも問題ありませんわ」
「俺の所も大丈夫だ。しかし、森を抜けてまた森ってのはまた変な感じだな」
「そうだね、目隠しして歩かされていたらいつダンジョンに入ったのか気づかないぐらいだよ」
「植生もまるで同じ、むしろ外の方がダンジョンだったと言われても納得してしまいそうですわね」
「むしろその方が納得できる環境だったけどな。虫も動物もいねぇ、それで100を超える魔物がいるってなったらそれはもうダンジョンだろ」
確かに岩城さんの言うとおりだ。
明らかに異様な空間、アレだけの魔物が地上にいると言われるのは違和感だけどあそこがダンジョンだと言われたらどこか納得してしまうところがある。
ダンジョンの中にダンジョンってのは梅田ダンジョンで経験済み、あり得ない話じゃない。
「なんにせよ先に進まなきゃ始まらない。とりあえず魔物の強さを確認してから、問題なければ分かれて探索するつもりだけど、・・・とりあえず正面に進むとしよう。警戒を継続、一定距離を取りながらまっすぐに進もう」
「了解」
「敵の強さがわからない以上、バフは難易度がわかるまで我慢してもらいますわよ」
「雑魚相手に使うのはもったいないからな。よし、行くか!」
流石ベテラン旅団、それぞれのやることが明確になっているので多くの指示を出すことなく各々が動き始める。
それに遅れまいと俺達も距離を取りながら森の奥へ、さっきと何も変わらないと思いながらもよくよく観察していると違っているところがある。
「空気が違うな」
「そうですね、外は湿気がありましたがここはカラッとしています」
「心なしかリルちゃんが元気じゃない?」
「魔素が濃いからでしょうか」
「わふ!」
「は、い」
七扇さんの問いかけにリルとルナが元気よく返事をする。
なるほど、俺達にはわからないけど彼女達にはその違いが感じ取れるわけか。
ということはだ、魔素の濃さによって強い魔物がいるかどうかを判別できるわけだから、一定の基準がわかれば魔物の強さも判断できるんじゃないだろうか。
氾濫しているという事を考慮する必要はあるけれど、それでもある程度の判断材料にはなるはずだ。
「どうやら魔物には動きやすい環境らしい。んー、前に潜った札幌ダンジョンより濃いか?」
ふるふる。
「じゃあ梅田ダンジョン」
「わふ!」
「前の氾濫した篠山ダンジョンはどうですか?」
「わふぅ・・・」
「微妙な感じですねぇ」
「ルナはどう思う?」
「キラキラ、より、うすい、です」
キラキラというのはおそらく札幌ダンジョンの事だろう。
つまり梅田以上札幌未満ってことになるのだろうか。
いや、この土地は通常よりも難易度が上がる傾向があるから札幌ぐらいと思った方がいいのかもしれない。
なんにせよ簡単じゃないのは間違いない、気を引き締めていこう。
警戒しつつ歩くこと数分、先を行くリルが何かを見つけ小さく吼えた。
「どうしたリル、何かあったか?」
「わふ!」
「これは、足跡ですね」
「それにしてはデカいぞ、ミノタウロスとかそういう系か?」
見つけたのはぬかるんだ所にあった大きな足跡、足の指は五本でサイズは優に50cmを超えてそうな感じだ。
「んー、足の感じからすると人型。推定身長は4m前後ってところかな」
「それで人型ってどんな奴だよ」
「巨人系の魔物じゃない?サイクロプスとかなんとかジャイアントとかそんな感じの魔物もいるし」
「雑だなぁ」
「でもそんな大きな魔物だとここを歩くの大変でしょうね」
「確かに!流石桜ちゃん、目の付け所が違うね!」
樹木の高さは優に5mを超えている、ということは顔の部分にがっつり葉っぱが当たっているという事だ。
それを避けながらじゃないと歩けないとなると・・・うん、大変だな。
「なんにせよデカい魔物がいるのは間違いなさそうだ、足跡の感じから・・・あっちに行ったみたいだな」
「どうする?追いかける?」
「これが外ならスルーするところだが、ダンジョンである以上戦う必要はあるだろうなぁ。声を出せば月城さん達が来てくれる状況にはあるし、とりあえず追いかけてみるか」
「了解です。ルナちゃん、前は任せました」
「は、い!」
「リルは足跡を追いながら様子を見てきてくれ、魔物が多い場合は即座にブレスレットに戻ってこい。いいな、絶対に無茶するなよ?」
「わふ!」
たとえどんなにデカくてもブラックベアーやドラゴンよりかは流石にマシだろう。
再びリルを先頭に今度は足跡を追跡すること数分、だんだんと足跡が見えなくなってきたと思ったその時だ。
「グァゥ!」
「リル!」
少し先を行くリルの緊迫した声に思わず足が動ていた。
目の前の茂みを飛び越えた先は少し広くなっており、そこではリルと巨人がにらみ合っている。
デカい。
本当に4mぐらいありそうなひげを蓄えたその巨人は、巨木から切り出したようなこん棒を振り上げ今にも振り下ろさんとにらみを利かせている。
俺達が飛び出してきているのにも気づいているはずなのに決してリルから目を離さなかった。
「須磨寺さん合図を頼む」
「オッケー!」
「ルナ、あいつの攻撃受けられそうか?」
「は、い!」
「よし、全員戦闘開始!」
【スケルトンジェネラルのスキルを使用しました。ストックは後九つです】
ダンジョン中に響くホイッスルの音色を背中で聞きながら巨人めがけて突っ込んでいく。
鼓舞スキルを使って恐怖心を薄め、雄たけびを上げながら近づいてくる俺達には流石に反応するようで、ちらりとこちらを見ると勢いよくこん棒を振り下ろしてきた。
ドン!というかガン!というか、ともかく物凄い音を響かせルナがそれを受け止める。
肉体化していることもあり多少後ろに下がるけれども吹き飛ばされるようなことは無かった。
流石の巨人もそれには驚いたようで、そのまま強く押すもルナはびくともしない。
その隙に全員で軸足に攻撃を仕掛けるも分厚い筋肉に阻まれて思うようにダメージを与えられないようだ。
これがC級?いやいや、やっぱりB級ぐらいあるんじゃないか?
「新明君!」
「助けに来ましたわよ!」
「おぉ、でっかいな!この感じ、フォレストジャイアントか」
何度か攻撃を仕掛けていると月城さん達が援護に来てくれた。
これで1対複数、大丈夫このメンバーなら勝てる。
そう思ったその時だ。
バキバキと音を立てながら空き地の奥からもう一体の巨人が姿を現す。
「・・・マジかよ」
「へへ、やっぱりこうでなくちゃ」
「楽しんでないか?」
「この状況を楽しまなくてどうするよ、なんだビビってるのか?」
「そんなわけないだろ?」
「だよな?デカいってことはそれだけ素材もいいってことだ、大儲けしてやろうぜ!」
この状況にビビることもなくむしろハイテンションのままもう一体の巨人へと突っ込んでいく岩城さん達。
そうだ、この状況でビビってどうする。
こうなることはむしろ想定内、二体しかいないってことは俺達だけで十分何とかなるってことだ。
ビビるな、楽しめ。
そんな岩城さんの背中に勇気づけられながら武器を握りしめもう一度走り出すのだった。




