395.地上で魔物と戦いました
「やれやれ、やっとついた」
俺達は二番目に降車、バスを見送り大きく伸びをする。
長時間のバス移動は全身が固くなるのでやっぱりしんどいなぁ。
ストレッチするだけでポキポキを骨が鳴ってしまうのは年のせいだろうか。
「ここがダンジョンだったらまだセーフティーエリアだけど、ここにはそれが無いんだよねぇ」
「そうなりますね・・・気を付けないと」
「索敵スキルには反応ありませんが、そもそも地上ではほとんど使ったことがないので機能しているかは正直なんとも言えません」
「そっか、地上じゃまず使わないもんね」
他のスキルは練習場なんかで使ったりすることもあるけれど、索敵スキルを使うことはまずないからなぁ。
でもまぁ桜さんの直感スキルに反応ないみたいだしリルも気にしてないから今の所は大丈夫だろう。
降ろされた荷物を背負いなおし準備完了、フィールド型ダンジョン同様にリルには先に行って周囲を警戒してもらいつつ全員で距離を取りながらダンジョンがないかを探していく。
地上での初めての戦闘、いつもと違う雰囲気に緊張してしまうがやることはいつもと変わらない。
プラスの面があるとすれば罠が仕掛けられていないという所だろうか。
もちろんダンジョンから出てきたやつが仕掛けている可能性もゼロじゃないけれど、少なくとも通常ダンジョンのような間隔では存在しないだろう。
「異常なし」
「こっちもなーし!」
「足跡、確認できません」
「な、い」
歩き始めて早一時間、時間をかけながらではあるけれど確実に歩みを進めていた俺達だったが未だ魔物の痕跡は発見できないでいた。
普通は足跡ぐらい見つかりそうなもんだが、いたのは元々ここに住んでいる動物ぐらい。
エゾシカなんかは何度も遭遇しているけれど本命の魔物が出てこないんだよなぁ。
この分だとヒグマに遭遇する方が早そうな感じだ。
しばらく進んだところでぽっかりと開けた場所を発見、そのタイミングでリルが向こうから戻ってきた。
彼女の方も収穫無し、どうやら外れエリアをひいてしまったようだ。
「どうする、休憩する?」
「そうだな、長丁場になるし小休止ぐらいしておくか」
「すぐに準備しますね」
戦闘しているわけじゃないしこのためにハウススキルを消費するのはもったいないので、とりあえず自前の道具で何とかしよう。
携帯用コンロでお湯を沸かして香茶を準備しつつ、持ってきたブロック型の携帯食料をお腹に入れる。
それだけじゃ味気ないのでモチベアップもかねてドライフルーツを食べてみたのだが、想像以上に美味しかった。
うーむ、肉や野菜だけでなく果物も美味しいとかマジで優秀過ぎる。
「美味し~い」
「ドライなのにこの甘さ、リンゴなのに凄い・・・」
「これを入れたブロック型のを作ってくれたらいいのに」
「わかる!でもそれをすると水分の問題とかあるのかな?」
「その辺は偉い人に聞いてくれ、俺にはわからん」
チーズ味とかメープル味とか色々あるけど、完全ドライの果物なら入れれそうなもんだけどなぁ。
そんなことを思いながらぱさぱさになった口の中を香茶で潤していく。
ここまではほぼピクニック、正直ここに来るまでが中々の状態だったので覚悟をしていたのだが拍子抜けではあるよな。
このまま何も見つからなかったらどうしよう、そんな不安は再び動き出して五分ほどでどこかに行ってしまった。
「ぐるるるる・・・」
「リルちゃん?」
「和人さん、何か来ます」
「私も感じます…強い、強い気配です」
「全員戦闘準備、ルナを先頭に防御陣形だ」
全員が武器を抜き、ルナが盾を構えて周囲を警戒する。
リルだけが少し離れた所へ移動、いつでも攻撃できるように身構えている。
息を殺し様子を伺っていると、ドドドドという振動が強くなっくるのを感じた。
前、いや、横?
「違う、下だ!」
ドンドンと大きくなってくる振動、慌てて全員がその場から離れた所へ巨大な爪が地面から突き出てきた。
「でっか!」
「モグラ?違う、もっと別の!」
「別のって何ですか!?」
「とりあえず体は堅そう、みんな気を付けて!」
地面から突き出てきたのは1m以上ある巨大な爪、再びそれが地面から突き出し更には本体らしきものが地面を割って登場。
てっきりモグラか何かかと思ったが亀っぽい甲羅のようなものも見える。
体長は優に3mを超える巨大な魔物、そんなのが地面から出て来るなんて誰が想像できただろうか。
「魔物の種類がわからない以上とりあえず様子見だ。ルナ、できるだけ攻撃は受け止めてくれ」
コクコク。
「最初の攻撃が終わったらリル、それから動き方を見つつ各自で攻撃だ」
「わかりました!」
「何が出るかわからないってのが地上の怖いところだよね」
「事前情報なしは未走破ダンジョンと同じ、ビビったやつが負けだ」
「流石和人君かっこいい!」
宝物庫ダンジョンでもそうだったけど、警戒しすぎるのもあまりよくない。
たとえどんな相手でも攻撃が通ればいずれ倒れる、本当は鑑定スキルや魔物判定のスキルがあればいいんだけどそれが無い以上やれることをやるだけだ。
まぁ最悪名前だけは収奪スキルでわかるからあとで調べればいいだろう。
鋭利な爪で俺達を威嚇してくる巨大な魔物、カチカチと爪を合わせたかと思ったらものすごい速度で地面を蹴って突っ込んで来た。
「ルナ!」
肉体化したルナが辛うじて受け止めるも、あまりの衝撃にずるずると後ろに下がる。
相手の恐ろしい所はそれが頭突きという事、つまり空いた両手の爪がルナの盾を超えて彼女の背中へと襲い掛かった。
「やらせません!」
そこへすかさず桜さんが割って入り、カバーリングスキルで受け止めつつメイスを振り回して攻撃をするものの想像以上に固く一撃で割ることはできなかった。
「グァゥ!」
「これはどうですか!」
カバーリングで初撃を回避した後、即座に後ろへと回った七扇さんとリルがボディを攻撃するも硬い甲羅に阻まれてしまい固い金属音があたりに響く。
「こいつ、結構硬いよ!」
「みたいだな、前と同じく一点集中で行くぞ!」
「はい!」
「それがだめなら脚・・・って短いなぁ」
「和人君、それは分かってても行っちゃだめだよ」
硬くとも同じところを攻撃し続ければ何とかなる、どれだけ硬くてもドラゴンの鱗程はないだろうからいずれ傷はつくはずだ。
一度距離を取っては再び突進、その隙を狙って攻撃を繰り返す。
短い脚の割に強烈なタックルで中々面倒な相手はあるけど、途中桜さんのメイスが爪を折ったのを確認してからはそれを優先することで一気に難易度が低下。
最後は甲羅を割られ、そこへリルノブレスを吹き込むことで一気に動きが遅くなる。
「これならいけるぞ!全員総攻撃!」
ここまでくれば後は顔や甲羅の中を攻撃すれば勝負はつくはず、初回から中々デカくて面倒な相手では会ったけれど無事に倒すことに成功した。
【シェルバロウのスキルを収奪しました。アンダークロー、ストック上限は後九つです】
名前だけではどうも判断がつかないけれど、とりあえず倒せることは分かった。
初回のあの爪攻撃さえなんとかすればこいつは行ける、魔物が強くなっているという話だったけどこれぐらいなら何とかやれそうだ。
「お疲れさん」
「お疲れ様でした。でもあれですね、これだけ頑張ったのに素材が残らないなんて残念です」
「ダンジョンの外だからねぇ、もしこれで残ろうものならわざと氾濫させて中から出てきたのを狩ろうとかいうバカげたことを考えた人がいるかもしれないからちょうどいいんじゃない?」
「なるほど、確かにそうかもしれません」
倒すとそのまま風化するように消えていく魔物、倒れていた場所には血の跡だけが残りドロップ品は何ももらえなかった。
確かにこれだけ頑張ったのにというところはあるが、須磨寺さんの言うようによからぬことを考える奴がいると思うとこれでいいのかもしれないなぁ。
なんにせよ、このままいけば何とかなる。
そう思っていた時もありました。
「ワフ?」
「敵、来ます!それもたくさん!」
「あちらこちらから気配が向かってきます、もしかして今の戦いにおびき寄せられたのかもしれません」
「やれやれ、そんな甘い場所じゃなかったか」
このままならいける・・・わけもなく、状況はさらに悪化しているようだ。
初の地上戦、それはすなわち未知の魔物のオンパレード。
果たしてどうなることやら。




