343.B級ダンジョンの洗礼を受けました
空から降り注ぐ白い雪・・・じゃなかった、氷・・・でもなかったアイスコボレート。
轟音と共にクリスタルパレスの中庭に着弾し、そこらじゅうで土煙ならぬ氷煙が立ち上る。
もちろん退避する俺達の上にも降り注ぎ後退する桜さんの前に立ちふさがった。
続いて殿になったルナの真上にも着弾、だが大楯を傘のように持ち上げていた彼女がそのまま下から跳ね飛ばしてくれたおかげで横の通路に移動したようだ。
これで挟撃はなくなった、すかさず桜さんがメイスを振り上げて突撃し七扇さんがそれを補佐する。
「この!」
「全身氷のコボレート、氷っていう割には固すぎない?」
「固いってものじゃないです。バッシュを使っても粉砕できないなんて、ちょっとずるくないですか?」
着地してすぐにメイスを振り下ろした桜さんだが、バッシュを使った渾身の一撃にもかかわらず肩が砕けるだけで倒しきるまでには至らなかった。
それでも大きく体勢が崩れたところへ、七扇さんのクロスボウが連続で命中。
ヘッドショットを喰らってもなお倒れないしぶとさ、これがB級の強さなのか。
「攻撃の手を緩めるな、大丈夫倒せる!」
【スケルトンジェネラルのスキルを使用しました。ストックは後九つです】
【トイアーミーのスキルを使用しました。ストックは後九つです】
【トイアーミーのスキルを使用しました。ストックは後八つです】
【コンビネーションが発動、拡散攻撃力アップ(小)を使用しました】
即座に鼓舞を全員にかけて下がりそうになるモチベをアップ、そこに攻撃力アップも加われば足りなかったひと押しができるはず。
バフを貰った桜さんが再びメイスを振り下ろすと見事に頭を破壊し、地面に叩きつけることができた。
そのままゆっくりと地面に吸い込まれるアイスコボレート、慌てて桜さんの横に体を押し込み何とかスキルを収奪する。
【アイスコボレートのスキルを収奪しました。フロストスナッチ、ストック上限は後九つです】
「はぁ、何とか間に合った」
「あの、和人さん・・・」
「ん?」
「駄目です、上見ないでください!」
通路が狭くて半ば強引に飛び込んだ時に倒れこんできた俺を避けようと桜さんが俺をまたぐ形になったはず、よく見れば左右に桜さんの足があるという事は俺をまたぐような形で立っているんだろう。
上を見ればそこはパラダイス・・・いや、一瞬で頭を踏み抜かれるデスエリア。
とりあえず桜さんが後ろに下がるまで冷たい床とにらめっこするしかない。
透明な床がわずかに上を反射していたような気もしないではないが、気にしないでおこう。
そうしよう。
「もう大丈夫です」
「すまなかった」
「いえ、急いでいたのは分かりますので。それでどんなスキルでした?」
「フロストスナッチ、名前だけじゃなんともわからない感じだ」
「スナッチ、奪うとか掴むとかそんな感じの意味だよね」
「言葉通りならそんな感じか。そういやあいつが持っていた武器もハンドアックス風だったな、まさかあれを投げるのか?」
投げるのはまぁいいとして、それで奪うってのはどういう事だろうか。
今回は相手が動き出す前に倒してしまったので具体的にどういう戦い方をしてくるかもわからない、もしかするとスキルのような攻撃を仕掛けてくる可能性も十分にある。
「戦えることは分かったけど、いつ何時また上から降ってくるかもわからないから早く戻ろう」
「綾乃ちゃんの言う通りです、一体ですから何とかなりましたけど挟まれたらかなり厳しくなりそうです」
「七扇さんに賛成だ、引き続き警戒しつつ入り口に戻ろう」
ドロップ品は氷でできた斧の破片、普通のコボレート同様ここのドロップはあまり期待できそうにないな。
複雑な通路を何度か間違えながらも少しずつ引き返し、途中襲い来るアイスコボレートを一体一体確実にさばいていく。
一度前と後ろから攻撃を仕掛けられたけど、桜さんとルナがしっかりと抑えてくれるのでそこまで危険はなかった。
【アイスコボレートのスキルを使用しました。ストックは後二つです】
フロストスナッチ、アイスコボレートが持っている氷のアックスに鎖がついたようなものを投げるスキルなのだが、どうやらただ投げるだけではなかったようだ。
盾を構えるルナの横をかいくぐるように氷のハンドアックスがコボレートへと伸び、そのまま奴の武器に絡まるとまるで一本釣りするかのように引っぺがしてしまった。
鎖を引っ張るとそのまま手元に戻ってきて鎖がついた方は消え、代わりに奴のハンドアックスだけが手元に残る。
突然武器を奪われ動揺するアイスコボレート、武器が無ければただの雑魚に成り下がるのであとはボコボコにすればそれで終わりだ。
魔物が倒れれば武器も一緒に消えてしまうけれど、スキルを使ってもすぐに回収できるのである種永久機関のような感じで戦い続ける事が出来る。
だが、残念なことに絶対に武器を奪えるというわけではないようで途中で何度か抵抗されてしまいスキルだけが無駄になることもあるようだけど、それでも五割を超える成功率は中々の物だろう。
もしかすると武器だけじゃなく盾とかそいういう物も奪えるかもしれないが、よくよく考えると武器を持つ魔物の方が少ないのであまり活躍するところはないかもしれない。
「見えた!」
それでもクリスタルパレスを走り抜けるのには便利なスキルであることに変わりはない、スキルのおかげで進軍速度は一気に上がり無事に入口へと戻ってくることができた。
高くなった入り口に上ると、再び空が陰り例の巨大雲から無数のアイスコボレートが降ってくる。
「これ、時間内に進めなかったら延々と降り続けるってこと?」
「ゆっくり進めば大丈夫、そんな気持ちで進むやつらはいらないっていう事じゃないか?」
迷路のいたるところに着弾するアイスコボレート、氷煙を上げながら獲物を探してうろうろし始める。
これ、増え続けるのはいいんだけど誰か駆除してくれるんだろうか。
このペースで落ちてきたらそこらじゅがコボレートだらけになると思うんだが。
「私達にはまだ早そうですね」
「ですね、私がもう少し強ければよかったんですけど・・・」
「凜ちゃんは十分やってるよ、でも戦力不足なのは確かなんだよなぁ。せめて前衛が後一人、それこそ和人君がサポートスキルを使わなくてもいいようになればしっかり前で戦えるんだけど。せっかくいい武器を手に入れたのにそれじゃ宝の持ち腐れだしね」
「まぁそれはあるけど・・・とりあえず人を増やすにも色々と条件があるからそこは様子を見ながらだな。ともかくB級は俺達にはまだ早かったってことがわかっただけでも大収穫だろう。欲を言えばあの宮殿の中を見たかったが・・・またいずれだな」
しっかりとB級ダンジョンの洗礼を受けた俺達だが決して落ち込んでいる感じではなかった。
目指すべき場所、自分たちがしなければならないこと、それを確認するいいきっかけになったと言えるだろう。
「もう一度ここに挑めるように強くならないとね」
「だな、その為にも・・・今月の支払い分は稼がないと」
「あはは、和人君も切実だねぇ」
「当たり前だろ!むしろそのために来てるんだから明日からガンガン行くからな!」
「え~、観光しようよぉ」
「そうですよ。せっかく札幌まで来たんですし円山動物園とかどうですか?」
「そこに行くなら円山ダンジョンもセットだからな、D級だからそんなに時間かからないだろ」
はるばる北の大地に来たのはローンを支払うため、その本分を忘れて観光とは何という事だ。
なんて言いたいところだけど彼女たちのモチベを上げるためにも観光は必須、やれやれ長い滞在になりそうだ。
かくしてB級ダンジョンの洗礼を受けた俺達は次なる目標を目指すべく・・・とりあえず観光にいそしむのだった。




