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【祝!金賞受賞!】【書籍化予定】収奪の探索者(エクスプローラー)~魔物から奪ったスキルは優秀でした~  作者: エルリア


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274.ダンジョンの守り人が待ち構えていました

ヘップダンジョン十階層。


今まで経験したことのなかったダンジョンだったがそれもこれで終わり、アンドロイドに追いかけられながらなんとかたどり着いた先はビルの屋上だった。


普通なら階層主と対峙する前に巨大な扉があるはずだけど、ここにそんな邪魔な物はない。


上を見上げれば真っ青な空、その上を真っ赤なクジラが二匹優雅に泳いでいる。


巨大な屋上は野球場ぐらいあるだろうか、一応フェンス的な物はあるけれど乗り越えたら下まで真っ逆さま、そんな雰囲気がプンプンしている。


これまでのフィールド型ダンジョンともまた雰囲気の違うこのオープンな感じ、吹く風は心地よくここで昼寝をしたら最高に気持ちいいだろうなぁ。


そんな広々とした屋上のど真ん中に居るのは二体の魔物。


どうやらこちらに気づいてはいるようだが、今までと同じく何のアクションも起こしてこない。


普段は扉に閉ざされているけれど、あれが無いとこんな感じになっているのか。


「これって、撤退するには階段を下りるしかないってことだよな?」


「まぁ、そうだね」


「追いかけてきたりは?」


「一応それはないみたい、だけど扉の向こうに逃げて休憩っていういつもの戦法は使えないと思った方が良いよ。今はまだセーフティーゾーン内だけど一度戦闘が始まればそれもなくなっちゃうから」


これがC級ダンジョンなのか?


オノゴロダンジョンも潜ったけれどダンジョン最下層まで潜ったわけではなかったのであそこも同じかどうかはわからない。


ただ言えるのは今までみたいに甘くないぞっていう事だろう。


ここから先は未知の領域、そこに挑むためにも・・・とりあえず休憩するか。


「なら今休憩するしかないな」


「え、ここでですか?」


「一応警戒しながらだけどアクションを起こさなければ向こうも待ってくれているみたいだし、今のうちにしっかりと休んでおこう」


「そういう思い切りの良さが和人君のいいところだよね」


「一応褒められているんだよな?」


「もちろん!そういう神経の太さが無いとこの先やっていけないからねぇ」


どういう理由かわからないけれど、向こうが待ってくれているのならば有難く休ませてもらおうじゃないか。


いつでも逃げられるよう階段を取り囲むように携帯用の椅子に腰かけ、九階層の疲れをしっかりと取り除くべくまずは空腹を満たす。


須磨寺さんのカバンから出てきたのは具がはみ出すぐらいのたまごサンドにカツサンド、そこに薫り高い香茶を添えれば最高のピクニックランチに変身だ。


他にもバナナやパイナップル、キウイなんかのフルーツ詰め合わせと桜さんが焼いたクッキーもそれぞれに配られた。


リルにはワイルドカウの肉、ルナは残念ながら食べられないけれど気分を味わうためにもお菓子を何種類か用意してある。


青い空、白い雲、そして爽やかな風。


そんな快適な環境の中、更には魔物に見守られながら食事をいただくというというなんとも初めての経験だけど気にしなければ案外何とかなるもんだ。


「さて、小腹も満たしたところだし彼らについて復習しておこうか」


「オニオーガ、オーガの一種ですけど知能は高く魔物同士連携して攻撃してくる魔物です。特にこの二体は戦鬼と呼ばれていて非常に密な連携攻撃を繰り出してきます。大きいほうが兄、小さい方が弟と呼ばれていて兄は巨大な体を生かして巨大な斧を振り回し地面を揺らしたり衝撃波を繰り出してきます。弟の方は小さい体を生かして素早い動きで相手を翻弄、使用武器は短刀ですがそれに似た物をスキルか何かで投擲してきますので気を付けてください。また、二体同時に攻撃してくる合わせ技は衝撃波にもスタン効果があるので出来るだけ回避するようにお願いします」


七扇さんがギルドから提供された資料を読み上げる。


元々オーガ自体が鬼っぽいけど、こいつはその名にふさわしく二本の角を生やしている。


兄の横には背丈ぐらいありそうな巨大な戦斧、あれを片手で振り回すっていうんだからいったいどんな筋肉なんだろうか。


しかもあの筋肉は生半可な攻撃を通さないぐらいの強度があるらしいので長期戦になるのは間違いない。


一方弟は兄の三分の二ぐらいの背丈しかなく筋肉も少なめ、その分動きが早く兄の相手をしていると突然死角から攻撃されたなんて言うこともあるらしい。


距離をとっても投擲武器を使ってくるし、それには普通の毒の他に麻痺や眠りなんかの状態異常を誘発してくる毒を塗っているらしいから注意が必要。


こういう時ヒーラーがいればと思ってしまうがいまさらそれを言った所で意味がない。


「兄貴はルナ、弟を桜さんで受け持ってくれ。それに合わせて俺が兄貴の方リルは弟を攻撃、七扇さんは状況に応じて援護を頼む。本当は逆の方が良いんだろうけど、俺じゃ弟の素早い動きには対応できそうにないから出来るだけ早めに弟を何とかしてくれ。場合によってはルナ一人で耐えてもらう事もあるだろう、なんにせよ向こうが息の合った連携で挑んでくるなら俺達はそれ以上の連携で迎え撃つだけだ。七扇さんには悪いが須磨寺さんと一緒に冷静な戦況報告をよろしく頼む。カバーリングがあるとはいえ桜さんも無理に突っ込まずに確実に攻撃を受けるように」


「まずは様子見ですね、頑張ろうねリルちゃん!」


「グァゥ!」


「仕切り直しがし辛い以上、俺もスキルを出し惜しみするつもりはない。各自冷静にでも行けると思った時は確実にダメージを与えていこう。頼りにしてるぞ、ルナ」


コクコク!


ギルドの資料を見る限りC級ダンジョン階層主にふさわしい実力の持ち主のようだ。


特に初手はどう動くかわからないので一番気を付ける必要があるけれど、ダンジョンの魔物にはある一定のリズムというかパターンが存在しているのでそれさえつかめれば十分に勝機はある。


こういう複数の魔物がいるときにタンクが二人いるってのはありがたいよなぁ。


「僕の事は気にしなくてもいいからね、危なくなったら階段に避難するしここぐらいならまだ自分だけでもなんとかなるから」


「ほんと頼りになる運搬人だよ」


「でしょ?もっと褒めていいんだよ」


「はいはい凄い凄い」


「和人君マイナス10点!」


「ちなみに今の持ち点は?」


「んー百万点?」


「微々たるもんじゃねぇか」


こんな状況でもしっかりボケて場の空気を和ませてくれる須磨寺さんに感謝しつつ、とりあえず打ち合わせは終了。


良い感じに休憩したところでそれぞれ武器と防具の点検を済ませて、荷物を片付ける。


ここを越えればいよいよ旅団(クラン)を設立することができる。


一人前の探索者としての新たな一歩を進むためにもここで立ち止まっているわけにはいかない。


やればできる、絶対倒せる、そんな強い意志を持ってそれぞれの顔を見合わせ力強くうなづき合った。


階段前に整列し、中央で仁王立ちするオニオーガの兄弟を睨みつける。


向こうも同じような気持ちでこっちを睨み返しているのかもしれない。


「よっしゃ、いっちょやったるか!」


「前方に罠はありません、行っちゃってください!」


「行くよルナちゃん!」


「みんな頑張って!」


かくしてヘップダンジョン最後の戦いの火蓋が切られたのだった。

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