263.玩具の兵士と戦いました
ヘップダンジョン六階層。
階層主との戦いを終え、広場の奥に現れた螺旋階段を登ってやってきたのはなんともファンシー?な空間だった。
ピンクや黄色などのパステルカラーで彩られた壁紙に水玉模様などが描かれており今までと雰囲気が明らかに違う、元はファッションビルだったという話だし、もしかするとそういう階層だったのかもしれないなぁ。
「ここに出るのはトイアーミーだったか?」
「それとトイメディックですね」
「玩具の兵士に衛生兵か、確かに可愛らしいエリアではあるけど出てくるのは生々しいな」
「玩具とは言いますが、大きさは子供と変わらないぐらいですし武器も本物を使ってきます。種類も様々ですので油断はできません」
「しかもメディックが来ると怪我が回復しちゃうんだよね。こう、手を当てるだけで取れたはずの手とか首とかくっついちゃうんだからホント困ったものだよ」
その辺は流石玩具という所だろうか、いくら回復魔法がつかえても普通首が取れた魔物は地面に吸い込まれてしまっているので回復することはない。
その点こいつらはそれをしても生き返る?わけだから、確実に地面に吸い込まれるのを確認しないと後で痛い目を見るだろう。
可愛らしい机や椅子、子供部屋を彷彿とさせる部屋をいくつも通り過ぎながら奥へと向かっていた時だった。
「この先、います」
「お、やっとお出ましか」
「すみません、反応が小さく数はわからないんですけど複数です」
「了解。あの扉の奥ってことは、とりあえずルナに先行してもらって様子を見よう」
コクコク。
「部屋が狭いからリルの機動力は活かせないからリルは周囲の警戒を意識してくれ。七扇さんと桜さんがいればわかるんだろうけど、突然後ろから襲われたなんていう報告もあったから気を付けてくれ」
「わふ!」
任せとけと言わんばかりにリルがどや顔をする。
イヌ科ってホント表情豊かだよなぁ。
猫とかも一応わかるっていうけれど、犬の表情豊かな感じには勝てないと思う。
特に大型犬、リルをそれに当てはめるのはあれかもしれないけど、実際表情豊かだからなぁ。
「でも後ろからってどういう事でしょう」
「急に命を吹き込まれるとか?」
「あながち間違いじゃないかもな、ほらあっちに色々玩具があるしその中に混ざっている可能性もゼロじゃない」
「リルちゃんよろしく!」
リルもいるし、状況次第では桜さんにも後ろで待機してもらうので奇襲には十分対処できるはずだ。
大楯を構えてルナがゆっくりと入り口付近へと移動、ゆっくり扉を越えた次の瞬間、ガガガガ!という音が響き渡った。
「入ってすぐにこれとか、中々の歓迎じゃないか」
「わざわざタイミングを見計らっていたんでしょうか」
「玩具でも兵隊だからね、結構組織立って動くらしいから注意しないと」
「了解」
ルナの足元には小さな矢のようなものがいくつも散乱している、どうやらさっきの音はこれが原因のようだ。
部屋に入った瞬間の大量狙撃、流石のカバーリングでもあの量は受けきれなかっただろうから桜さんだったら大怪我していたに違いない。
そのままじりじりと中へと突入するルナの後ろから魔装銃のスコープを使って周囲を確認、床には魔物の姿は無いけれどそのまま上に視線を向け正面を向くと壁に張り付いた何人もの兵隊が突撃のタイミングをうかがっていた。
「くるぞ!」
天井に仕込んだ紐を使ってまるでターザンのように勢いよく突っ込んでくる玩具の兵隊。
取って付けたような無表情なので確かに玩具と言われれば玩具だけど、身長は1mぐらいあるので小さな子供と言った方がしっくりくる。
しかもその手には剣だの斧だの物騒なものが握られているから中々にたちが悪い。
最初は兵隊ってきいてブリキのおもちゃ的なのを想像していたけれど、身に着けている装備は探索者が使っているようなものとほとんど同じ、そんな奴らが勢いもそのままに途中でロープを離してルナの大楯に突っ込んできたかと思ったら、盾の隙間や足元から攻撃を仕掛けて来る。
慌てて棍に持ち替えて隙間からこちらも反撃、ルナも剣を抜いてチクチクと攻撃を繰り出しているが効果は薄そうだ。
「あーもう、めんどくさい!」
「こんなの玩具じゃないですよ!」
隙間をかいくぐって突っ込んでくる魔物を吹き飛ばし、時に頭から叩き割っているのだが見た目が見た目だけに罪悪感がすごい。
違うと分かっていてもメンタル的にくるものがあるなこれは。
「でも血は出ないでしょ?」
「そういう問題か?」
「そう思わないとやってられないよ。子供だったら攻撃できる?」
「できな・・・いや、やらなきゃやられるだろ」
「そういうこと。相手は魔物、だから遠慮しちゃだめだよ!」
そう、これはやるかやられるかの世界。
その後も例の矢が何度か降ってきたり、増援が来たりと組織立った戦いを見せた兵士たちだったが少しずつ数を減らし無事に討伐に成功。
やれやれ、やっと片付いた。
足元に散乱する無数の残骸を蹴飛ばしながら部屋の真ん中へと移動、周囲を警戒するも敵影はもうない。
【トイアーミーのスキルを収奪しました。攻撃力アップ(小)、ストック上限は後七つです】
収奪できたのはバフ系の攻撃力アップ(小)、回復と同様効果は薄いけれどもバフスキルは一回で終わらず一定時間効果が持続するので非常にありがたい。
前々から思ってたんだが、これを重ねて使うと効果は重複するんだろうか。
「これで全部か?」
「ですね」
「この先もこれだけの数が来ると思うとちょっと疲れるな」
「手足はともかく頭を吹き飛ばすのがちょっと、表情が無いのでまだマシなんですけど、あの子みたいに無表情でこっちを見られると・・・」
「ん?ちょっと待て」
なんで足元にこんなに残骸があるんだ?
正直早く終われって思いながら戦っていたからあまり余裕はなかったんだけど、これって地面に吸収されるはずじゃなかったか?
「みんな下がれ!」
そう思うよりも早く足元に転がる剣を持つ腕が突然動き出し、ブーツの先を浅く切り裂いた。
幸い探索者用のブーツなので先に金属が仕込んであるから中身までは来ないけど、まさか腕だけで動くとは。
慌てて部屋の入口へと後退、するとさっきまで足元に転がっていた手足や体が近くのとくっつき始めた。
「メディックがいるよ!あいつを倒さないとまた復活しちゃう!」
「探すってどこだよ!」
あまりにも残骸が多すぎてメディックがどこにいるかが分からない。
そうこうしているうちに倒したはずの兵隊が少しずつ復活、っていうか合体し始めている。
これ、そのままにしたらものすごく大きいのになったりしないよな?
さっきまでは子供ぐらいの大きさだったのに見る見るうちに俺と代わらないぐらいの大きさに成長する兵士の残骸。
「そこです!」
そんな中、七扇さんが巨大化する兵士の横へクロスボウを発射。
奴らの脇をすり抜けて残骸の下に着弾したかと思ったら、その中から白衣を着たやつが這い出して来た。
そのまま息絶えたのか地面に吸い込まれるトイメディック、その流れで他のやつらもばらばらになるのかと思ったら一度復活した奴はもう一度倒さないといけないらしい。
「仕方ない、リルやるぞ」
「ワフ!」
他のやつがいないなら俺とリルで十分対処できる。
もちろん奥から追加が来ないとも限らないが、とりあえずこいつをどうにかしよう。
「グォォォォ!」
複数の兵士が混ざり合った巨大な人形的な何か、ほんとダンジョンってのは何でもありだよなぁ。




