191.頼んでいた装備が出来上がりました
急遽始まった城崎ダンジョンギルドへのガサ入れ。
木本監査官をリーダーとした一団は抜群の団結力と行動力の元、ギルド長の不正やコンプライアンス違反を次々と暴いていった。
らしい。
いや、あの後どうなったかなんて宿に戻ったからさっぱりわからない。
この話もギルドから疲労困憊の顔で戻ってきた七扇さんから断片的に聞いただけであって、当の本人があまりにも疲れていたのでそれ以上話を聞く事はしなかった。
翌日。
未だギルドには入れないという話だったので、昨日の素材を販売するついでにドワナロクへと向かったのだった。
「え、鉱石の買取って違法強制だったのか?」
「独占禁止法の観点から言えば違法ですね。本来ダンジョンから持ち帰った素材をどうするかは所有者である探索者に一任されるはずで、ギルドだからという理由で強制的に徴収できるものではありません。それがたとえ買取という名目であっても自由競争を阻害していると言えるでしょう。」
「でもお父様もそれを強く言えなかったと。」
「たとえ剛太郎様と言えど、その後ろに蔓延る数多の不正企業の群れを相手にするのは難しいと判断されたのでしょう。とはいえ今回の一件で城崎界隈は随分と綺麗になると思います。これまで以上に良質な鉱石が地上に流れ、職人達が良い装備を作ってくれるはずです。」
なるほどなぁ。
城崎ダンジョンで鉱石を持ち帰ったらギルドが強制的に買い付けるというのはやはり違法だったらしい。
最初こそ違和感を感じたけれどそれを何度か繰り返すと当たり前のように感じてしまっていた。
そのせいで市場に良質な鉱石が流れず、ギルド長はそれを横流しして私腹を肥やしていたと。
最初は少ない横流しでのその鉱石目当てによろしくない企業が群がり需要が増えれば必然的にやることが大きくなる。
そうなれば普通は上にバレてしまいそうなものだが、その辺に根回しがあのタヌキ親父は上手かったんだろうなぁ。
それこそ圧力をかけたり懐柔したり、様々な手段で悪事を隠蔽し続けて今まできたわけだが、流石に内部から直接監査官へのホットラインが引かれるとは思わなかったんだろう。
内調という危険な仕事を執念でやり遂げた七扇さんのお陰で見事タヌキは討伐されたのだった。
「では今回の買取は全てあわせまして20万円、二割増で24万円となります。」
「高いんだけど、やっぱり鉱石がないと安いな。」
「今回は探している余裕がありませんでしたから仕方ありません。」
「まぁ目的が違うからねぇ。でもギルドが戻ったら十二階層に行くでしょ?その時に探せば良いんじゃない?」
俺たちの目的はあくまでもダンジョン走破、大量のブレイザーに追われたり、燃える獣に追いかけられたりしたせいでまともに鉱石発見のスキルを活かす暇がなかった。
折角お宝を見つけられるんだから生かさない手はないんだけど、とりあえず耐熱スキルを取りに十二階層へ戻るからその時発見できたら、で良いか。
「早くも十三階層ですか。本来二桁階層の探索にはかなりの時間がかかるものですが、流石ですなぁ。」
「桜さん達が頑張ってくれるおかげだ。」
「そんなことないですよ、みんなの力です」
「そういうことにしておこう。」
俺も含めて全員が頑張ったからこそここまでこれたのは間違いない、謙遜しすぎると桜さんが怒るので程々にしておかないとな。
「そうでした!この間新明様が依頼されましたアタッチメントが出来上がったそうですので、すぐに持って参りますね。」
「アタッチメント・・・あぁ、あれか。」
「わざわざ鉱石まで取りに行ったのに忘れてたの?」
「城崎ダンジョンに潜る前だったし、色々ありすぎてすっかり忘れてた。」
あの後もイベント盛りだくさんだったからなぁ、頼んだものの絶対に必要という場面がほとんどなかったのでそれもあって記憶の奥底に沈んでしまったらしい。
アタッチメント。
魔装銃に装着するパーツの一種で今回は威力の底上げを目的とした仕様になっている。
遠距離攻撃手段の少ない俺達にとって初手でダメージを与えられるアドバンテージは非常に大きい、例の四人組がバランスよく戦っているのを見ているのもありどうしても作りたかったんだろうけど、まぁ何とかなっていたからなぁ。
「お待たせいたしました。」
「ありがとうございます。」
「あれ、思ったよりも小さい?」
「あくまでも補助装置ですので、ですが効果はかなりのものですよ。この筒の中を弾が通る際に通常の二倍以上の威力に増幅されます。」
鈴木さんが持ってきてくれたのは片手で収まるような小さな筒。
銃の音を消すサイレンサーのような感じだが、こっちは威力を増幅することができるらしい。
うーむ、これを見ただけではどれだけすごいかわからないけれど高いだけあって効果のほどは間違いない・・・はずだ。
「十三階層には非常に硬い魔物が待ち構えていますが、これさえつければ例えゴーレムの装甲であってもはじかれることなくダメージを与えられることでしょう。ただし魔力の消費量は増えますのでご注意を。」
「ってことは弾数は減るのか。」
「でも弾倉に魔力を貯めておけば何とかなりますよね。」
「何とかなるだろうけど・・・でもまぁ銃が主力ってわけじゃないしあくまでも補助装備だからそこまで気にしなくてもいいか。」
「和人君ってそういう所は結構さばさばしてるよね。普通はもっと敏感に反応してどうすれば増えた消費分を補おうかって悩むものだけど。」
「主力だったら悩むところだけど、弾切れになったところで放っておけば魔力は回復するしなにより棍を使った方がダメージは大きい。とはいえ安全圏で確実にダメージを与えられるのは魅力だよな。」
「ですね、近づく前に倒せなくても弱っていると動きも違いますからより戦いやすくなりますから。」
接敵する前に倒せたらラッキーだし、たとえ倒せなくても動きが遅くなったり弱くなれば寄り倒しやすくなる。
安全圏でダメージを与えられたり、手の届かない場所でに逃げられても攻撃できるようにと考えた装備なのでそこまで連射や弾数を重要視していないってのも気持ちに余裕がある理由だろう。
魔物が硬く討伐に時間がかかればかかる程体力が奪われるという最悪の環境の中、少しでも早く倒せるだけでも注文した甲斐があるというものだ。
「でもそれもしばらくお預けだね。」
「まぁ仕方ないさ。それまで別のダンジョンに潜るか、それとも休憩するかだ。」
「折角の温泉地なんだしもっとゆっくりすればいいのに。」
「そうですよ。水着必須ですけど、一緒に入れるお風呂もありますよ?」
「いや、一緒じゃなくても大丈夫だから。」
「えぇぇぇ、折角新しい水着かったのに!」
「・・・須磨ダンジョンで新しいの買ったはずじゃ?」
あの時も何着かかったはずなのにまた新しいのを買ったのか?
女性の買い物にとやかく言うつもりはないけれど、流石に買いすぎじゃないだろうか。
「ちなみに僕も新しいの買ったんだけどなー。」
「それはどっち用なんだ?」
「ふふ、どっちでしょう。」
「ま、どっちでもいいけど。」
「もう少し気にしてくれたっていいじゃないか!さすがの僕も傷ついちゃうんだけど。」
とか言いながらなんで顔が笑ってるんだよ。
新しい武器を手に入れてもギルドのごたごたが収まるまではそれもお預け、ここ連日潜り続けているのでここらで少し休憩してもいいかもしれない。
ただし、混浴は遠慮しておこう。
なんだか嫌な予感がするんだよなぁ。




