188.スキルをリルと合わせました
スキルの効果は自分ではなく物に付与できるタイプだった。
一応耐熱効果を付けられるのは俺が身に着けた物だけという制約はあるみたいだけど、それを外して別の人に渡しても効果は継続していたので桜さんのアドバイス通り鎧に入れる冷気ボトルに耐熱スキルを施すことにした。
これまでと違い俺だけでなく皆でスキルの効果を共有できるというのは非常にありがたい、後はフレイムカウを探して全員分付与できれば城崎ダンジョンに怖いものはないな。
「しっかし、何で一頭だけだったんだ?」
「はぐれたとか?」
「子牛ならともかく大人だしなぁ。」
「もしくは誰かが倒してしまったか、はたまた別の場所に溜まっているかですかね。」
「出来れば前者でお願いしたいところだ。」
前のカエルみたいに奥に溜まっているのは勘弁願いたい。
ここの魔物は鉱石を食べたりしないのでその辺は大丈夫だと思うけど、誰かが逃げてそれを追いかけていったという可能性はゼロじゃない。
じゃあその逃げたやつはどうなってるかって?
倒したかはたまた食われたか、よく考えてみればこいつらは人を襲うけど人を喰ったりするんだろうか。
牛と山羊は草食、猪は一応雑食か?
まぁ可能性の話だし、ただはぐれたっていう可能性も残ってるわけだし・・・。
「わふ?」
「どうしたリル、何かいるのか?」
「どうしたんでしょう私は何も感じませんけど。」
突然リルが耳をピンと立てて辺りを見回すようなそぶりをする。
かなり広い開けた空間、近くに来たらすぐ気づくとは思うが桜さんの直感スキルにも反応はない。
とはいえさっきとは違う何かを感じているのは間違いないが、一体どうしたんだろうか。
全員でキョロキョロするも特に変わった様子はない。
だがリルが何かに反応しているのは間違いないようだ。
「一応警戒した方が良いだろう、須磨寺さん回収するもの回収してサッサと移動しよう。」
「オッケー!って、地震?」
リルの行動に急ぎ回収した素材を鞄に突っ込んでいた須磨寺さんが地面に手をついたかと思ったら、そのまま身を伏せて耳をくっつける。
確か音は空気を伝うより地面なんかを伝う方が早いんだっけ?
俺もその場にしゃがんみ手を当てると熱と一緒に僅かな振動を感じる。
これがマグマの振動なのかそれとも別の何かなのかを判断することできないが、リルや須磨寺さんが反応しているのは間違いない。
なんならその振動がどんどんと強くなってきている気もするんだが・・・。
「和人さん!」
「周囲を警戒!どうやら後者だったみたいだよ!」
須磨寺さんが慌てて立ち上がり鞄を背負うと同時に桜さんとリルが奥の方を睨みつける。
さっきは何も感じなかったのに露骨に足元から振動が伝わってくる。
後者ってことは大量の魔物が迫ってきているという事、まったくめんどくさいことになったもんだ。
「いまさら下がったって遅いよな。」
「だね、今できるのはやり過ごすことだけ。僕のことはいいからみんなは戦うことに集中して。」
「わかりました!リルちゃん、頑張るよ!」
「ワフ!」
「スキルを出し惜しみしている場合じゃなさそうだな。」
どれだけ来るのかはわからないけど、俺達なら何とかなる。
念の為外皮スキルを使用して保険をかけつつ魔装銃のスコープで奥を覗き込む。
真っ暗い巨大通路の奥、だんだんと振動が大きくなると奥の方にオレンジ色の光が見えてきた。
「おいおい、多すぎじゃないか?」
「誰かがトレイン・・・している感じじゃなさそうだね。」
「ならなんであんなにいるんですか?」
「さぁ、それは本人?に聞いてみるしかないな。」
迫りくる無数のオレンジ色の光、ざっと数えても10を超えるそれらは一直線にこちらへと向かってくる。
さて出し惜しみとか言っているレベルじゃなさそうだ。
魔装銃を構え水の魔結晶を差し込んで弾に水属性を付与、狙いを定め魔力の続く限り撃ち続ける。
撃って、撃って撃って撃ちまくって、それでも倒せたのはわずかに一頭だけ。
それも倒したというか倒した程度でとどめはさせていないだろう。
「くそ、魔力切れだ。」
「どうしますか?」
「深追いせずとりあえず正面の敵だけさばいていくぞ、リルはブレスで威嚇さくらさんはできるだけ受け流してくれ。」
「わかりました!」
「わふ!」
魔装銃をカバンの横に置き、三節棍を長く伸ばして構えなおす。
直接使えるスキルは突進ぐらい、投擲スキルもあるけれど残念ながらあいつらにボムフラワーは通用しないんだよなぁ。
火属性攻撃は半減もしくは無効化されてしまうだけにさっき手に入れた溶岩弾も効果はなさそうだ。
あれだけの数がいるとできれば広範囲に命中するようなスキルが欲し所なんだけど・・・まぁ無い物ねだりしても仕方がない。
一直線に迫りくるオレンジ色の群れ、まずはリルが先陣を切ってそこに突撃して群れをかき回し流れてきたやつを俺と桜さんで随時処理していく。
時には突進スキルを使って急接近し、魔力を惜しみなく発動して出来るだけ少ない手数で敵を倒していく。
山羊、牛、山羊、山羊、猪、山羊って山羊多いな!
「くそ、燃えてる毛皮がめんどくさい!」
「リルちゃんがいたら多少ましなんですけど・・・。」
「向こうで暴れまわってくれているでもありがたいが、ちょっと無理しすぎだな。」
リルの周りを何頭も牛が群がっている。
突進を華麗に避けながらも次々襲ってくると流石のリルでも対応しづらいようだ。
援護したくても使えるスキルは溶岩弾だけ、それでも何もしないよりかは多少の手助けになるだろう。
【ボルケーノスライムのスキルを使用しました。ストックは後四つです。】
まるで噴石が飛び散るように真っ赤に燃える溶岩弾が一直線に群れへと飛んでいく。
火属性の攻撃なので効果は薄いかもしれないけれどそれでも注意を引くことぐらいはできるはずだ。
「あれ?当た・・・った?」
まるで散弾銃のように飛び散る溶岩、耐火性能の高いフレイムカウの前には効果は無いと思っていたのにリルを取り囲んでいた牛の横っ腹にめり込んでいく。
魔法と違って質量があるからかと思ったのだが当たっても平気な奴がいるのでそうではないらしい。
突然の攻撃によろめき倒れるフレイムカウ、その機を逃さず俺と桜さんがリルの元へと走り出す。
起き上がったとしてもすぐには動けないはずっていうかなんで効果があったんだ?
「リルちゃんもう一回ブレス!」
「ガウ!」
「和人さんもう一発お願いします!」
「了解!」
【ボルケーノスライムのスキルを使用しました。ストックは後三つです。】
よくわからないけど効果があるならもう一発ぶち込んでしまえばいい。
波状突進が収まったことでリルにも余裕ができ、威嚇のためにばらまいたブレスに牛たちの動きが止まる。
そこへ再びの溶岩弾。
真っ赤な溶岩は牛に着弾するよりも前に真っ黒に変わり、そして鈍い音を立てて再び牛の体にめり込んでいく。
そうか、そういう事か。
「桜さんは左、俺は右をやる!」
「わかりました!」
「リルは後ろのやつを牽制してくれ、一気にやるぞ!」
「グァゥ!」
囲んでいた四頭のうち二頭は溶岩をもろに受けて一時的に再起不能、その隙をついて残りの二頭を俺と桜さんで受け持ち後ろから迫ってくる別のやつらをリルが牽制。
突進スキルを連発して加速してからその勢いを使って足をへし折り、突進が終わる前に地面を踏みしめてクルリと反転。
着地と同時に再び突進スキルを発動させて桜さんと向かい合っていた奴に後ろから殴り掛かった。
これで突進スキルはすべて使いつくしたけれど、リルのブレスを受けて止まっている奴らから回収すれば問題ない。
彼女の口から吐き出される凍てつくブレスは奴らの炎を容易く消し去る程の冷気を帯びているのだが、どうやらそれは真っ赤に燃える溶岩を冷やす程で本来火属性が付くはずの溶岩弾もそれを浴びるとただの岩になってしまうようだ。
そのおかげで炎や熱に強い奴らにも広範囲の物理攻撃を加えることが出来るようになり、さっきみたいにフレイムカウが倒れてしまったんだろう。
偶然が生み出したリルと俺との合わせ技、だがそのおかげで何とかこの場をやり過ごすことが出来そうだ。




