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166.爬虫類に襲われました

城崎ダンジョン七階層。


例の騒動があってからギルドに行くのは初めてだったので非常にドキドキしていたけれど、ふたをあけてみれば特に騒がれることもなく淡々と手続きが終わりダンジョンの中に入っていた。


てっきり顔写真とかそういうのが出回っているのかと思っていたんだけど、メディアに出ていたのはイケメンの月城さんだけで俺の姿はほぼほぼカットされていたらしい。


でもそこだけ写さないというのもおかしな話なのでおそらくは何かしらの力が働いたんだろう。


それが何かはわからないけれど、おかげでこうして無事にダンジョンに潜れるのでありがたい限りだ。


しかも、自らの非を詫びる姿が男らしいと評価はうなぎのぼり、本人の言うように俺をダシにして自分の株を上げることに成功したっていうんだから流石だよなぁ。


「ほい到着っと。」


「やっぱり暑いですね。」


「だな、前以上の暑さにこの湿気。そりゃ誰も潜りたがらないわけだ。」


「でもそのおかげでこうやって何も気にせず探索できるんだから今はこの環境にお礼を言わないとね。フ〇ッキンホット!」


「いや、お礼じゃないし。」


到着早々放送禁止用語を発する須磨寺さん、気持ちはわかるがそれは流石にあれだろう。


まぁ誰に聞かれているわけでもないんだし別にいいんだけどさ。


「七階層といえば難敵の二匹、どっちも状態異常持ちだからくれぐれも気を付けて。」


「ポイズンスコーピオンとゴルゴンスネーク、毒と石化か。石化って言ってもちょっと動きにくくなるって程度なんだろ?」


「あくまでも蛇だけだからね、Bランクダンジョンに出る本体のゴルゴ―ンはマジで石化させてくるからやばいよ。」


「俗にいう目を見たらッていうやつか。」


「ううん、目を見なくても向こうが睨んできたら石化するんだ。」


「・・・俺C級まででいいかな。」


そんな恐ろしい奴が出るダンジョンになぜわざわざ行かないといけないのか。


嫌まぁ、稼ぎが全然違うから目標の為にはいずれ必要になる場所ではあるけれど・・・何もしなくても石化してくるとかマジで勘弁してほしい。


聖水かもしくは鏡で何とかするってのは聞いたことあるけれど、どこから見て来るかもわからないのに鏡でどうにかできるもんなんだろうか。


「うぅ、暑い。リルちゃん軽くブレスして?」


「がう!」


「あー涼しい、気持ちいいよう。」


真面目な話をしている横で桜さんがリルにお願いして弱いブレスをかけてもらっている。


確かにリルのブレスは相手を凍らせるだけの強さがあるからそのまま浴びるのはダメとは言え、まさかそんな使い方をするとは想像してなかった。


「・・・リルをクーラー代わりにするのはどうなんだ?」


「だって暑いんですもん。あ!そうだ、ブレスで手拭いを凍らせたの首に巻くのはどうですか?」


「あ!それいいかも!この暑さで熱中症になる探索者も多いけど、僕たちはリルちゃんがいるからその辺は安心だね。」


「リル、暑くてしんどくなったら戻っていいからな。」


「ガウガウ!」


いくら冷気を吐けるリルとはいえこの暑さはつらいだろうから彼女にも無理せず戻ってもらうほうがいいかもしれない。


幸いそこまでへばっている感じでもないから大丈夫そうだが、まぁ無理のない範囲でやっていこう。


【恒常スキルを使用しました。エコー、次回使用は十分後です。】


スキルを発動して通路の奥を確認、薄暗い通路型は変わらないけれどここは天井が低くてあまり大きく振り回すのは難しそうだし、ここは後衛に徹した方がよさそうな感じだ。


罠に気を付けながらゆっくり進むこと10分程、首に冷たいタオルを巻いたとしても吹き出す汗は止まらない。


そんな環境にストレスを感じながらもやっと一体目の魔物に遭遇した。


「和人さん。」


「あぁ、右側の通路にポイズンスコーピオンがいる、それと少し離れた前方通路にゴルゴンスネークもいるな。」


「どうする?」


「距離はあるから先に右からやろう、蛇が近づいてきたら教えるから桜さんよろしく。」


「了解です!」


挟み撃ちになるのだけは避けたいがまずは近場のやつから倒すのがセオリー、右の通路に進路を変えて進んでいくと体長1m程の巨大な蠍が待ち構えていた。


鋭い尻尾を天井すれすれまで勇ましく上げ、今にも毒を打ち出そうとしている。


こいつらで厄介なのは打ち出した毒に触れるだけでなくそれを揮発したものを吸い込んでも効果があるということ、幸い水をかけると効果が薄まるのだが閉所故すぐに対処しないと大変なことになる。


「リル、毒を見つけたらすぐにその上にブレスを頼むな。」


「ガウ!」


「よし、行くぞ!」


毒への対処もあるので今回リルは後衛待機、桜さんが先行するのを追いかけるように俺も棍を短く持ってつっこんでいく。


気を付けるべきはあの尻尾だが、はさみも中々に鋭いうえに甲羅も堅いのですぐに倒せない厄介者。


唯一の救いは常に一体しか出ないということだけど問題はそれだけじゃない。


「くそ、固いな!」


「とりあえず尻尾を何とかしないと・・・。和人さん上!」


「おっとぉ!?」


正面でハサミ攻撃を受け流しつつ、桜さんの声に慌てて後ろに飛びのくとさっきまで自分がいた場所に真上から襲ってきた尻尾が地面に突き刺さった。


二本のハサミだけじゃなく尻尾まで使ってくるとかマジで勘弁してほしい、とはいえ突き刺さったことで弱点が丸見え。


すかさず桜さんが手にしたメイスを両手に持ち直し思い切りフルスイングすると、尻尾の分厚い鱗にひびが入った。


普段はショートソードの桜さんも今回は魔物の堅さに合わせて片手で持てるメイスを用意したようだ。


いつの間にかったのかと思ったらこの間ドワナロクを一日堪能した時に発見したらしい。


武器を使い分けるのも探索者の腕の見せ所、若干重たくなるので振り回す速度は遅くなるけれどその分威力が増すので今回のように鱗にひびを入れることができたようだ。


劈く悲鳴を上げながら尻尾を地面から引き抜き、怒りを表すようにハサミをカチカチと鳴らす蠍。


「桜さんナイス!」


「ごめんなさい、思ったより硬くて・・・。」


「いや、後はあそこを攻撃するだけ・・・ってあぶねぇな!」


「リルちゃんお掃除よろしくね!」


「グァゥ!」


追撃を!と思ったタイミングで桜さんがぶん殴った尻尾から毒液が撃ち込まれたので口元を覆いながら慌てて後ろに下がる。


すかさずリルが前に出て毒液に向かってブレスを吐くと、ジュワジュワ音を立てていた部分が真っ白に染まった。


これで毒の飛散は防げたので後は尻尾に気を付けながらあのヒビを広げて尻尾を切断、そうすればもう敵ではない。


これならいける・・・と思いきや戦闘音に誘われてゴンゴンスネークが接近してくる反応があった。


エコースキルがあるからわかるけれど、これがなかったらいきなり石化させられたりするんだろうなぁ。


「桜さん、通路入り口にゴルゴンスネーク!こっちはいいから向こうは任せた!」


「はい!」


「あーもう、爬虫類なんだから寒さで冬眠したらいいのに!」


「残念ながらリルのブレスでもそれは無理だろ。・・・無理だよな?」


「ガウ?」


いやいやそんなまさか。


それが出来たら苦労はしないだろ、そう思いながらもわずかな可能性に期待してしまう自分がいる。


少しぐらいリルが戦線を離れても俺一人で何とかなる、いや何とかする。


「リル!桜さんの所に行って思いっきりブレスだ!」


「ガウ!」


「こいよ、俺が相手してやる」


蠍をにらみつけつつ手にはおなじみのボムフラワーの実、それを強く握りしめてからスキルを頭の中で念じる。


【ゴリランド―ンのスキルを使用しました。ストックは後四つです。】


漫画のように大きく足を振り上げてから握りしめた実を勢いよく投げつけた。


狙うは奴の顔・・・と見せかけてそれを守ろうと再び顔の前に振り下ろされる巨大な尻尾。


着弾と同時に実がはじけて炎が上がり、鱗の亀裂から内部を燃やす。


肉の焦げる臭いと劈く悲鳴を聞きながら、ためらうことなく棍を突き刺すと脆くなった鱗を貫通しそのまま尻尾を地面に縫い付けることに成功。


激痛に奴が尻尾を振り回せば毒液をまき散らしながらブチブチとちぎれた。


「よっし!」


棍にささった尻尾を足で抑えながら引き抜き、怒りに燃える蠍めがけて棍を構えなおす。


毒液さえなければ後はこっちのもの、エコースキルで桜さん達が戦うのを感じながら巨大な鋏を振りかざす蠍を睨みつけた。

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