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141.次のダンジョンへ向かうことにしました

「完全復活です!」


朝日を背にリビングに出てきた桜さんが腰に手を当てて胸を張るような格好で高らかに宣言する。


格好がパジャマだったり髪の毛がボサボサだったりと色々気になるところはあるけれど本人の中で納得できることができたのなら何よりだ。


「おはよう桜さん」


「桜ちゃんおはよう!」


「お二人には大変ご心配をおかけしました!大道寺桜、もう大丈夫です!」


何時にもなくハイテンションな桜さん、そう言えば一緒に暮らすってなった時もこんなテンションだったよなぁ。


須磨寺さんは中々だけど案外桜さんも負けてはいない。


元気なのはいいことだ、元気があればなんでもできると偉大なレスラーも言ってるからな、うん。


でも今はちょっと落ち着いていただきたい。


「それはよかった、よかったんだけどとりあえず部屋に戻ろうか」


「なんでですか!?もうお腹ぺこぺこで倒れそうです!」


「桜ちゃんがそのままでいいなら僕は止めないけど、結構セクシーな感じだよ?完全復帰でそっちの路線にシフトしちゃう?」


「え?」


須磨寺さんの指摘を受けて桜さんがやっと自分の格好を確認する。


パジャマのボタンは上から二つほどが外れていい感じに谷間が見えておりズボンはズレて白いショーツがチラチラと見えている。


さらに言えばサイズが若干小さいのか背中を伸ばせば胸の部分はパツパツになり裾の部分が捲れ上がっておへそまで見えている状態。


男の俺からすればなんとも役得、俗に言うラッキースケベと呼ばれるやつなんだけど・・・。


みるみるうちに顔が赤くなり、数秒硬直してから慌てて前屈みになって胸元を両手で隠した。


「ごごご、ごめんなさい!」

 

右手で胸元、左手でズボンをたくし上げてドタバタと自室へ戻っていった。


「桜さん、目玉焼きは半熟?完熟?」


一度バタンと扉が閉まったものの再びゆっくり扉が開き、真っ赤になった顔だけがひょこっと出てくる。


「えへへ、半熟でお願いします」


「味付けは塩だね」


「はい!」


師匠にボコボコにされて落ち込んでいると聞いた時はどうしたもんかと心配したけれど、彼女もいい大人だし自分でしっかり折り合いをつけたようだ。


再び扉が閉まるのを見守り、須磨寺さんと視線を合わせ笑い合う。


何はともあれ元気になって何よりだ。


しばらくして身だしなみを整えた桜さんが何事もなかったかのように腹ペコな顔でリビングにやってきたことでいつもの日常が戻ってきたのだった。



「というわけで次の目標の城崎ダンジョンへ向かおうと思っているわけだけど・・・流石に通うのは無理だな」


「無理だね」


「無理ですね」


お腹も満たされたので改めて今後の方針を話し合う。


次の目標はD級城崎ダンジョン、それに向けて色々準備を進めてきたわけなんだけど、ふとどうやっていくのか決めていないことに気がついた。


電車は出ているのでここから通うことは不可能じゃない、不可能じゃないけど数時間かけて移動することを考えると非常に非効率だしめんどくさいって言うのが本音だ。


それは二人も同じ意見のようで初めからその選択肢は無くなってしまった。


「向こうにドワナロクってあったっけ」


「少し離れますが一時間以内にあります」


「流石探索者の味方だよねぇ、あんな遠いところでも営業しているなんて」


「規模はこっちのよりかは小さいですけど氷ノ山ダンジョンもあるので需要はありますから。でもどちらかというと上級者向けの装備が多いんですよね」


B級氷ノ山ダンジョン、確か前に呼び出された時に年配の人が管理していると言っていた気がする。


今の実力じゃ入ることもできないけど、いつかはお世話になる日が来るかもしれない。


「必需品も気軽に手に入れられるとなるといよいよ向こうに拠点を作る方が早い気がしてきた。確か城崎ダンジョン近くに探索者向けのロッジとかそういうのあった気がするんだけど須磨寺さんは知ってる?」


「あるねぇ、学生探索者とか鉱石目当てに長期で潜る人もいるからそういう人たちが主に利用しいてるんだけど、正直な話あんまりお勧めしないかな」


「そうなんですか?」


「長期で潜るっていうと聞こえはいいけど、実際は借金とかそういうので潜らされている人もそれなりにいるんだよね。そんな場所にこんな可愛い子が二人もいきなり現れたらそりゃもう大騒ぎになっちゃうよ。色んな意味で歓迎してくれるんじゃないかなぁ」


女性に飢えた男どもがそういう目で二人を見てくるだけでなく実力行使に出てくるかもしれないから色々めんどくさいってことか。


一人二人ならともかく複数人ともなると俺一人じゃどうにもならないし、疲れを癒しに戻るはずなのに逆に疲れてたら意味がない、となるとそういう場所はパスだな。


そのうちの一人は残念ながら男だけどそっちがいいっていう人も少なからずいるらしいし、わざわざ危険な場所に行く必要はない。


「となると離れててもいいから安全な貸切ロッジかいっそのこと一軒家を借りるか。」


「それならうちのホテルを使えばいいじゃないですか」


「え、向こうにもあるのか?」


「もちろんです!大道寺グループは全国の温泉地や観光地にもホテルを建てていますし、城崎でしたら旅館もいくつかあるはずなので探索後に温泉も楽しめますよ。勿論ゴールドカード所有者の和人さんはお安くご利用いただけます」


城崎といえば温泉地、前みたいな高級宿じゃなくてもいいけど温泉に浸かって疲れを癒せるというのは魅力的だ。


なんだか目的が変わっているような気もしないではないが、探索後の娯楽がないと疲れてしまうからな。


それに温泉街ってことは歓楽街もあるはず、自由時間は色々楽しめるんじゃないだろうか。


「ダンジョン探索と見せかけて温泉街でしっぽり、やるね桜ちゃん」


「えへへ、いつまでも奥手なままじゃいられませんから」


「顔もそれなりだし背もそこそこ、タバコやギャンブルをするわけでもなければ女癖が悪いわけじゃない。ちょっと奥手っていうか鈍感っていうか残念なところもあるけど、優しいし実力もあって将来有望ってなったら今のうちに唾つけとかないとねぇ。和人君ならキズモノにしたって言ったら責任とってくれるんじゃないかな」


「責任だなんてそんな、でも子供は二人は欲しいです」


「おーい、帰ってこーい」


城崎ダンジョンを探索するっていう話だったのになんでそういう話になっているんだろうか。


そもそも手を出す気はない、っていうか出せない。


父親の思惑がどうのっていうのもあるけれど、俺の好みはもう少しこうスタイルがいいというかナイスバディというか・・・。


「綾乃ちゃんなんだかすごい失礼な目で見られた気がします」


「奇遇だね僕もそうだったんだ」


「そういうのいいから真面目な話をしよう」


「僕たちにとってはそれよりも大事なことなんだけど!?」


「それよりもって、えぇ・・・。」


俺はただ新しいダンジョンをどうやって攻略するかっていう話がしたいんだけどなぁ。


予想外の返答に思わず苦笑いしてしまうが、いつも通りと言えばいつも通り。


こういう時は余計な事を言わずただ嵐が過ぎるのを待つのみ、向こうも本気じゃないはずだからすぐにおさまってくれるはずだ。


兎にも角にも城崎ダンジョンへ向かうことは確定、どこを拠点にするかは桜さんたちに任せるとして俺は荷造りを進めよう。


ここを越えればいよいよCランク、夢のタワマン生活目指して一歩前進だ。

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