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【祝!金賞受賞!】【書籍化予定】収奪の探索者(エクスプローラー)~魔物から奪ったスキルは優秀でした~  作者: エルリア


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110.収奪スキルを駆使しました

「なんでしょう、和人さんが人間に見えなくなってきました。」


「奇遇だね僕もそう思ってたところなんだ。運命の人とはいえあの動きはちょっと変態すぎるなぁ。」


戦闘後。


太陽はないはずなのにオレンジ色に染まった平原でなぜか二人にディスられていた。


おかしい、なんでこんなことになっているんだろうか。


「誰が変態か誰が。」


「誰って和人君しかいないじゃないか。大草原の肉食獣を前に彼らを翻弄する動きができるのは、なんていうか人間じゃないよね。」


「わかります。スキルのおかげっていうのは理解しているつもりなんですけど、実際目前で見ているとちょっと気持ち悪いです。」


「・・・帰る。」


「わふぅ。」


「俺を慰めてくれるのはお前だけだよリル。」


二人にディスられまくって落ち込んだ俺のそばにリルがやってきて優しく頬をなめてくれる。


「って、嚙むんじゃない。」


「わふ?」


「血がついて美味しく感じるだけだから、俺は美味しくないから。」


「わふ!」


てっきり慰めてくれているのかと思ったら、そのまま前歯で頭ごとがりがりと噛んでくるとは思わなかった。


本人は甘噛みのつもりなんだろうけど、マジで痛かったんだからな。


どうしてこんなことを言われているかというと、時間は十数分前にさかのぼる。


三頭のリオーネキングに囲まれた俺たちだったが、やってきたのはそいつらだけじゃなかった。


遠巻きに様子をうかがう3頭のラピッドパーゲル。


そいつらに見守られながら迫りくるリオーネキングの鋭い猫パンチを避ける。


一頭はリルが、もう一頭は桜さんが、そして最後の一匹を俺が受け持ち各個撃破するべく勇敢に戦いを挑んでいたのだが普通に考えてライオンに戦いを挑むとか頭のおかしい話だ。


鋭い牙に強力な爪、一般人なら噛み殺される相手でもレベルが上がると何とかなってしまうんだよなぁ。


向かい合う俺とリオーネキング、まるで見計らっていたかのように走り始め同じタイミングで大地を蹴る。


正面衝突するかの勢いでお互いにとびかかるも所詮は人間と獣、明らかに勢いがあるのは向こうで振り下ろされた爪が俺を切り裂こうとした次の瞬間。


【アンテロープのスキルを使用しました。ストックはありません。】


リオーネキングの爪が空を切り、スキルで真横に移動した俺ががら空きの横っ腹目掛けて魔力を爆発させると、予想のしない動きになんの抵抗もできないまま明後日の方向に吹き飛んでいった。


空中で直角移動するというなかなかの離れ業、結構な距離を吹き飛びながらもふらふらと起き上がろうとするリオーネキングに近づきスキルを奪ってからトドメを刺す。


【リオーネキングのスキルを収奪しました。シャウト、ストック上限は後五つです。】


なるほど、咆哮(シャウト)か。


こいつにふさわしいスキルではあるけれど、果たして使うところがあるんだろうか。


なんて思いながら奥で戦っている桜さんにフォローに入り、次ぎはリルというタイミングで離れて様子をうかがっていたラピッドパーゲルが目にもとまらぬ速さで近づいてくるのが見えた。


流石肉食獣最速、魔物になってもそれは変わらずさっきまで豆粒ぐらいの大きさだったのにもう鋭い爪が見えるぐらいの距離に来ていた。


【リオーネキングのスキルを使用しました。ストックは後一つです。】


桜さんが俺の前に立ちふさがり振り下ろされる爪を受け流すと同時にスキルを発動、どこからこんな声が出るんだっていう衝撃波を伴った咆哮に一頭目の影から飛び出してきた二頭目が吹き飛ばされる。


あいつらからしたら最高のコンビネーションだったんだろうけど、予想外の動きに背中から落下したところぬ追い打ちをかけてスキルを収奪した。


【ラピッドパーゲルのスキルを収奪しました。俊足、ストック上限は後五つです。】


【ラピッドパーゲルのスキルを使用しました。ストックはありません。】


さらに奪ったスキルをすぐ使用し慌てて逃げる三頭目を追いかける。


想像以上の速度に俺自身も驚いたけれど、むこうもまさか自分と同じ速度で走られるとは思っていなかったんだろう。


信じられないという感じで二度見されながらも棍を振り回して動きをそらし、その隙にリオーネを倒してやってきたリルが横からわき腹にとびかかった。


完璧なタイミング、後は任せておいて問題ないな。


スキルが終わり速度が落ちる前に桜さんのところへ戻り、残りの一頭を一緒に倒して戦闘は終了。


手に入れたばかりの収奪スキルを使った見事な連携、自分でもまさかこんなにうまくいくとは思っていなかったけれど終わり良ければ全て良しだ。


とまぁ、こんな感じで戦いを終えたわけだけど結果は変態扱いされてしまうっていうね。


確かにいきなり空中で横にずれたり、チーターと同じ速度で走ったりするのは変態的な動きかもしれないけどそれとこれとは話が違う。


むしろスキルを有効に使っているとほめてもらえるところだと思うんだがなぁ。


「ま、和人君がどんな変態でも僕は受け入れるから安心してね!どんなプレイでもできちゃうから!」


「だから違うっての。なんだよプレイって。」


「えー、桜ちゃんの前でそれ聞いちゃう?僕は別に構わないんだけど・・・例えばそうだなぁ。」


「いや、聞いてないから。全く聞いてないから。そんなことよりも素材の回収をお願いしてもいいですかね運搬人さん。」


「はーい、お仕事頑張りまーす。」


まったくこんな時でも茶化してくるんだから困った人だ。


桜さんも桜さんでどんどん彼に毒されて行っている気がするんだけど、大丈夫だろうか。


「とりあえず桜さんもお疲れ様。」


「あの・・・。」


「どうかした?」


「ちょっとぐらい変なのでも私は大丈夫ですよ。」


「うーん、何がどう大丈夫なのかわからないなぁ。元気そうだし桜さんも須磨寺さんの手伝いしてもらっていい?」


「は~いお仕事頑張ります。」


まったく、悪ふざけが過ぎる。


気づけばオレンジ色の空は藍色に染まりもうすぐ夜がやってくる。


この前のように夜目がないだけに暗闇の中の移動は難しいので二人が楽しそうに素材を集めている間に俺は俺で野営の準備をしてしまおう。


サバンナの肉食獣は夜こそ活動が活発になるだけに油断は禁物、おふざけの過ぎる二人には見張り番を頑張ってもらって俺はゆっくり休ませてもらえばいいさ。


彼のことだから女の子に見張り番をさせるなんて!って言いそうだけどあえて聞かなかったことにしよう、そうしよう。


そんなこんなで十二階層も無事に走破中。


次は十三階層、いよいよ御影ダンジョンも終わりが近づいてきた。


あと二階層走破すれば初のD級ダンジョン走破が待っている。


もちろんそう簡単にはいかせてくれないだろうけど、収奪スキルもあるしリルや桜さんも一緒なので力を合わせれば大丈夫。


そう、大丈夫・・・なはずだ。


「あー、和人君がさぼってる!」


「サボってない、ちゃんと野営の準備してるだろ。」


「それなら今晩のご飯は和人君が作ってね。」


「なんでそうなるんだ?」


「僕が食べたいから!」


そんな自信満々に言われても困るんだが。


本来サポートは運搬人の仕事・・・いや、何も言うまい。


「私も和人さんのご飯が食べたいです。」


「桜さんまで、まぁいいけどさぁ。」


「決まりだね!材料はかばんに入ってるから好きに使っていいよ、期待してるね。」


「へいへい、頑張りますよ。」


空が暗くなりゆらゆらと揺れる炎が星のない空を焦がしていくのだった。

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― 新着の感想 ―
男の娘が居ると賑やかね
咆哮っていうと何となくスタンさせるスキルのように感じるけど、吹き飛ばすほどの圧があるのか 近くにいた桜さんにフレンドリーファイアしそうだけど、一頭目を巻き込まなかったから結構指向性が高いのかな?それは…
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