105.新しいスキルを理解しました
「さて、とりあえずスキル候補はこんなもんか。」
一日オフもあと数時間、自室に篭りこれまで書き留めた資料から必要な部分をピックアップする。
書かれているのはダンジョンで手に入れた収奪スキルの一覧。
ドロップ品の情報なんかはギルドに行けばいくらでも手に入るし、なんならネットでいくらでも引っ張り出せる。
だけど収奪スキルを使って魔物から収奪しものに関してはどこにも資料が無いので自分で思い出すためにもこうやって資料を書き留めていた。
中には瞬殺してしまってスキルを回収できなかったものもあるけれどその辺はおいおい確認すればいいだろう。
一応魔物の特性から推測されるスキルはメモ書きしているけれど、全く関係ない可能性もあるので時間があるときにまた確認しておきたいところだ。
「ということで、これが次回までに回収しておきたいスキル一覧。何度も言うけど門外不出でよろしく。」
「「おぉ~~。」」
ちょうど外出から戻ってきていた二人に声をかけて書き留めていた資料を見てもらう。
自作の資料なので若干恥ずかしい感じはするけれど、これも今後の探索に生かすため。
自分では使えないと思っているスキルも他人の目からすれば別の使い方を見つけてもらえるかもしれない。
「とりあえず今のスキルレベルは5、ストック数と種類はレベル+1の6種類6回、そして新たに恒常スキルってのを覚えたけどこれに関しては固定化される可能性もあるからかなり吟味したいと思ってる。とりあえずダンジョン内で回収する分も考慮して三種類選ぶつもりなんだけど・・・どう思う?」
「確かにこのスキル一覧は今の時点で絶対に世に出せないね。そんなことしちゃったら和人君が人体実験に駆り出されるのが目に見えてるもん。」
「E級ダンジョンでこれですから、C級とかB級の強い魔物からはもっとすごいスキルが手に入るかもしれないんですよね?」
「まぁおそらくは。今の所階層主のスキルは使い勝手のいい奴が多いから可能性は高いと思う。もちろんロケットとか微妙なのもあるけど使い方次第ではありかな。」
あの時直撃こそしなかったもののあれが命中していたらもっと簡単に倒せた可能性も十分にあるだけに侮れないスキルではあると思う。
それにE級ダンジョンの魔物だから使えないスキルというわけでもなく、実際にエコーや突進は汎用性が高いし凝縮なんかは金策にはもってこいなので要は使い方だろうなぁ。
「個人的候補としては突進と強撃あとは帯電が戦闘向きで鉄壁と残影それと外皮が補助向きかなと。他にも使えるスキルはあるけど、それは魔物の種類に応じて使い分けていけばいいかな。」
「エコーはどうなんですか?暗いところでも見えるのってすっごい便利ですよね、これがあれば隠し部屋とか罠も見つけられそうです。」
「でもそれは通路型のダンジョンとかだよね、御影ダンジョンとかのフィールド型じゃあまり使わないかも。それより痛覚耐性とか呪い耐性とかがやばいよね、使えば完全に遮断できるんでしょ?呪いなんてピラミッドダンジョンで一番問題になっててそのせいで探索が進んでないのに耐性があればサクサク行けちゃうわけだ、これは和人君が歴史を変えるのも時間の問題かも。」
「和人さんが教科書に載っちゃいますね。」
別に教科書に載りたくはないけれど、それで実績が積めるのなら選択肢の一つとしてありかもしれない。
とりあえず今回は外皮と帯電そして突進の三種類をストックとして潜ることが決定、どれも場所がバラバラなのでとりあえず外皮と突進を優先して帯電は御影ダンジョンに潜る前に回収することになった。
その為にはまたフォークテイルと戦うことになるけれどこれもまた練習。
前回はスキル無しで戦ったので、今回はそれを加味して戦うことでどれだけの違いを出せるかがわかるだろう。
翌日。
桜さんと須磨寺さんに買い出しをお願いして一人篠山ダンジョンへと向かった。
「あれ?新明君、どうしたんだい?」
「新しい装備を手に入れたのでちょっと腕ならしに。」
「なるほどその魔装銃だね、確かに棍だけじゃ手段に乏しいからいいチョイスだと思うよ。氾濫が収まってから寒さはましになってきているけど・・・まぁ、君にはあまり関係ない話か。」
ギルドで手続きをしているとメガネさんこと東宮さんが奥から出て来た。
氾濫は収まったもののまだまだ寒さは戻り切っていないようだけど冷気耐性(完全)のある俺には全く問題のない話だ。
さっさとスキルを獲得して桜さんたちと合流するためにも転送装置で七階層へ移動、四階層からいかないのは誰かに遭遇するのを避けるためとただ単に六階層の敵がそこまで強くないので移動がしやすいから。
四階層のスノーマンティスは倒すのがちょっとめんどくさいんだよなぁ。
「そんなわけでマラソン完了、さすがに六回戦うのは骨が折れたよ。」
「ご苦労様でした。」
「でも毛皮でウハウハだったでしょ?」
「まぁあそこを往復するだけでそこそこの値段になるから、経費を差し引いても30万は儲かったかな。」
「いいないいなー、僕もそれだけ稼ぎたいなー。」
この前の稼ぎが一人9万ほどだったのでそういう意味では破格の報酬ともいえるけど、危険度で考えればかなりのもの。
あそこまで簡単に倒せるのもお金にものを言わせた燃料戦法とリルという強い味方がいるおかげだ。
突進スキルも手に入れたし後は御影ダンジョンで帯電スキルを手に入れれば準備完了。
【現在のスキルレベルは5、現在所有しているのは羽ナイフのストックが一つテイルアタックのストックが一つ外皮のストックが六つ突進スキルが六つ、恒常スキルはありません。残りストック種は二つです。】
現状スキルはこんな感じ、あとは恒常スキルをどうするかだけど個人的には外皮を常に使うことが出来れば取りに行く手間も省けるし安全も手に入れられるんだけどなぁ。
【恒常スキルを選択しますか?最大ストックスキル、外皮・突進、以上です。】
「ん!?」
「どうしたの?」
「いや、恒常スキルを選ぶかどうか急に聞かれて・・・、成程最大数までストックしないと恒常スキルにできないのか。」
突然脳内に流れたアナウンス。
なるほど、今まで恒常スキルに反応が無かったのは条件を満たしていなかったからなのか。
偶然とはいえ最大数まで手に入れたことで条件が満たされたわけだな。
「でも選んじゃうと変えられないかもしれないんですよね?」
「でもまぁバリアみたいなものだから不意の攻撃にも対処できるし、お守りとして考えれば悪くないと思うんだ。もちろん今後もっといいスキルが手に入るかもしれないけど、それでも命を守る方が優先だと思うし。」
「僕もそっちがいいと思うな、魅力的なスキルは多いけど外皮はどのタイミングでも使い道があるからね。できれば僕たちにもかけてほしいんだけどなー。」
「そこも含めて次回確認しよう。とりあえず取ってみるからちょっと待って。」
元々外皮を恒常化するのは考えていたので後悔はない。
改めて外皮の恒常化を念じると新しいアナウンスが流れて来た。
【外皮を恒常スキル化しますか?】
もちろんイエス。
【外皮を恒常化しました。使用サイクルは1時間、恒常化解除には24時間かかります】
恒常化に成功、ただし連続使用はできないようで使用サイクルが決まっているらしい。
そりゃそうだ連続で使えたら無敵だもんな。
それよりも嬉しいのは恒常化解除ができるという事、これでもっといいスキルを見つけたり保温スキルのように何度も使う必要がある場合は重宝するだろう。
何気にマラソンするのはしんどいしこれは非常にありがたい限りだ。
えーっと、現状はどんな感じなのかなっと。
【現在のスキルレベルは5、現在所有しているのは羽ナイフのストックが一つテイルアタックのストックが一つ突進スキルが六つ、恒常スキルは外皮。残りストック種は三つです。】
どうやら恒常化したことでストックにも空きができたらしい。
これで帯電を手に入れても二つは確保できるし、ストックが一つのスキルを使い切れば全部で四種類確保できる。
「どうでしたか?」
「使用サイクルは決まってるけど解除もできるみたいだし問題なさそうだ。あとは明日使って確認しよう。」
「それじゃあ今日は早く寝て明日に備えないとね!それじゃおっやすみ~。」
「おやすみなさい綾乃ちゃん。」
「おやすみ。」
いよいよ明日収奪スキルを使った探索が始まる。
恒常スキルも含めてどれだけ便利になるのか今から楽しみだ。
待ってろよ未知の十一階層、魔物が三体来たって俺達の敵じゃないぜ。




