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マイクロ・ブラスト-3

 秋人の全力を込めた一撃は詩織の華奢な体を地面から引き剥がし、倉庫のシャッターに背中から叩きつけた。


 それだけだ。


 捨て身の一撃の成果としては余りに安すぎる結果だ。

 だがその原因が分からなかった。否、原因は分かっている。似た感覚をウルトラ・セブンの能力者、上杉と戦った時に秋人は経験している。

 『虫食い』の少女と同様に、自覚していなかったが衰弱が既に始まっており、力を満足に発揮させなかったのだ。それが必殺の一撃を鈍らせた。


 マイクロ・ブラストが原因なのも分かっている。

 問題は、自身の体にどんな変化が現れているか、だ。


「驚いた……爆弾を切り取る時に見てたけど、実際にやられると段違いに速く感じるね」


 秋人の様子に構わず、詩織はシャッターの凹みから背中を離し首をコキコキと鳴らして言う。


「さ、もうお馴染みだね。だけど今回はたぶん一味違うよ」


 そしてそう前置きしてから、


「発動、マイクロ・ブラスト」


 秋人を指差し、今度は手首に爆弾を発現させた。


「!?」


 その瞬間、秋人の視界がグニャリと歪む。秋人は足に力が入らず思わず地面に膝を着いた。

 それだけではない。脇腹のダメージを考慮したとしても明らかに気分が優れない。息苦しさから呼吸は荒くなり、吐き気が強まる。


――な、何をされた!?


 まるで酷い風邪か何かのウィルスを大量に吸い込んだかのような体調の変化に戸惑いながらも、まずは手首の爆弾を何とかしなくてはならないと頭の冷静な部分が指示を出す。


「クソッ……!!」


 グルグルと回る視界の中、なんとか右手に取り付けられた爆弾を切除し、地面に落ちたそれを手で払い遠ざけた。


――ボンッ!


 意外にリミットの迫っていた爆弾はその直ぐ後に爆発した。


 そこで秋人は気が付く。


 倉庫が暗い為今までは気が付かなかった。今も地面に膝を着き、視線を低くしていなければ見逃していただろう。

 爆発した場所に、血が飛び散っている事を。


 たまたま爆心地にネズミでもいたというのならば納得出来るが、そんな偶然が起こったとは到底考えられない。今思えば詩織のシャツの染まり具合も、傷による出血に対して余りに派手だ。


「気付いた?」


 尋ねる詩織に鋭い視線こそ向けるが言葉を返す余裕がない秋人だが、もし返答するならば答えはイエスだ。


 爆弾は血液から生成されている。


 爆発により自分の血液が体外に排出された事による失血症、それが衰弱の原因だと秋人は気付いた。

 自身の体に表れた症状が、如実にそれを証明していた。


 人間は約三分の一の血液を急激に失うと血圧が急激に低下し、ショック状態に陥り命を落とす。

 そして成人男性の全血液量は体重の約八パーセント、約五千グラムだ。ボーダーラインは大体千七百グラム、二千グラムも失えば死が確定的となる計算である。

 具体的に言えば、たった牛乳パック二つ分の失血で人間は死に至るのだ。


 だが秋人は戦闘中である。


 まだ命が助かる失血量ですが意識は失いました、というのはイコール死亡を意味する。

 二千など参考にもならない。意識障害が表れる全血液量の五分の一、千グラムすら全く関係がない。

 秋人のボーダーラインはもっとずっと手前、戦闘行動が可能か否かが、許された失血量の限界値だ。

 そして今、四回の爆発によって失われた血液の量は、その限界値に限りなく近付いている事を秋人は自覚した。


「厄介な能力だよね」


 秋人の胸中を代弁するかのようにそう言った詩織だが、それは詩織の視点からの言葉である。


「血が通っているのが発動条件の一つだから秋人みたいに小石に爆弾を取り付けたり出来ないし、何より敵を弱らせるからさ、生きが良いのを相手に劇的な逆転大勝利っなーんて演出が出来ないんだよ」


 前者はともかく、後者は実に詩織らしい不満点である。

 能力抜きで戦えば話は別だが、楽しんでいるとは言えさすがに不覚を取るような馬鹿な真似はしない。そもそもマジになってこその遊びだと言うのが詩織の持論であった。


 詩織は既に全く脅威でなくなった秋人との距離を、ゆっくりと詰め始めた。


「楽しかったよ秋人。こんなに興奮したのは初めてだった」


 詩織の遊びは終わった。詩織にとって、今の秋人には先程までの魅力は欠片も無い。


 戦う理由がなくなれば秋人を見逃しても構わないのだが、詩織はそうしようとは思わなかった。

 単純に、別に今殺してしまっても構わないからだ。


 秋人が回復すれば後日再戦出来るなどという思考もない。

 再戦したところで今日のような興奮は秋人からは二度と得られない事を詩織は理解しているからだ。


 パズルのようなものだ。

 初めて完成させたその時、そのパズルの与える達成感という快感は絶頂を迎える。

 またバラバラにして組み立て直したとして、最初程の達成感をそのパズルから得ることは永久に無い。


 だから詩織は秋人を見逃す気はない。

 そして、秋人は詩織の雰囲気からそれを感じ取っていた。


 今の詩織の表情に、戦闘中もずっと浮かべていた恍惚とした雰囲気は微塵もなくなっていた。

 物置にでもやり終えたパズルを仕舞うような、飽きてしまった玩具を横目で見るような、あるのはそんな虚無感だけだった。


「俺にはもう用無しか……?」


 秋人はフラフラとした足取りで立ち上がる。それだけで整いだしていた呼吸が僅かに荒くなる。

 酸素を体内に巡らせる血液が足りないのだからそれも当然だ。


「うん。もう秋人とのお遊びはおしまい」

「どうやら見逃す気は無いみたいだな……」

「雪だるまも、砂の山も、最後は崩すものだよ」


 そうか、と秋人は小さく呟く。


 今や切り札に必殺の威力はない。そして身体能力でも圧倒的に詩織に遅れを取っている。

 勝てる要素が一つとして見当たらない。


 だが、それでも秋人は戦闘の構えを取った。


 それにも反応を示さず、詩織は駆け出し間合いを一気に詰めた。


「バイバイ、秋人」


 そして手を振る代わりに拳を握り、慈悲も慈愛も無い、全力の一撃を詩織は秋人に放った。


「ぐふぉッ!!」


 まともに喰らえば腹を貫かれるのではないかと思う程の一撃を、秋人は何とか腕を交差させて防ぐ。

 しかし詩織は易々と腕を振り抜き、秋人を軽々と吹き飛ばした。


 腹部への衝撃の直後、硬い壁に叩きつけられ背部を衝撃が襲う。


 全身に電流が流れるような衝撃が走り、足りない血液が更に口から吹き出し失われていく。


――整った……


 勝機が見えたと、バウンドするように壁から跳ね返されながら秋人はそう思った。


 着地も受け身も出来ず、地面にそのまま倒れ伏しながらも、秋人は何とか視線を詩織へと向ける。


「無駄な抵抗を……」


 苛立ちもせず、嘲笑するのでもなく心底そう思っている為そう呟いた詩織は、トドメの為に突っ込んできていた。


 そして秋人を蹴り上げ起こし、再度壁に叩きつけて右腕を振り上げた。


――来た……!


 秋人は霞む視界の中で詩織が右腕を振り上げたのを見て歓喜した。

 トドメとして他の攻撃方法を取られれば、秋人は手の打ちようがなかった。


――動け……!運命はまだ俺を見捨ててはいない……!!


 秋人は勝利へのプランの最後の障害、『この一撃を躱す』に歯を食いしばり全力を振り絞る。


 だが背中の強打が原因か、思うように体が動かない。


「今度はあたしが言うよ?」


 詩織はそう言い振り上げた拳に力を込める。


――糞、動け……!!なんとしてもコイツを躱せ……!!


 必死な願いも虚しく、動かない秋人に詩織は躊躇せず、


「終わりだ」


 拳を振り下ろした。


――ガンッ!!


 秋人が動くのは不可能だった。だが詩織の拳は秋人を反れ、壁を思い切り殴り付けた。


「咄嗟に能力を解除するとは、往生際が悪いね」


 最も初めに取り付けた錘を解除し、その変化で拳を反らしたのだ。

 一度だけしか出来ない回避方法であったが、一度で十分だった。


 秋人は勝利を確信した。


「俺の能力が、加算する重さは……触れた時の衝撃に比例する……」

「ん?」


 突然の切り出しに詩織は疑問符を浮かべた。

 秋人は構わず続ける。


「吹っ飛ばされた俺は、かなり強烈に壁に衝撃を与えただろうな……」


 つまり、今の秋人は壁に影響の大きな錘を付けられるという事だ。

 それは詩織にも分かったが、それがどうしたというのが正直なところであった。


「今度はお喋りで時間稼ぎ?」

「お前の右腕……頭がボーっとして思い出せないんだが、確か殴ったよな……?」


 トドメとして放った、詩織をシャッターに吹き飛ばしたあの一撃。あの一撃は確かに詩織の右腕を捉えていた。


 脈絡の無い秋人の言う事に構うのを止め、再度トドメを刺そうと詩織は壁を殴り付けた手を引き戻そうとした。


「ッ!?」


 だがその腕を秋人がガッチリと握り、動くのを許さない。

 意図は不明だ。だが詩織が振り払おうとした時、その万力のように振り絞った力と、最初の頃と同じ、射抜くような秋人の視線に詩織は一瞬思考を止めてしまった。


 最早秋人に打つ手はない。その考えを再認識するのに要した時間だけ行動を鈍らせてしまったのだ。


 だがそもそもその考えが甘かった。


「トドメを刺す方法は何も殴る蹴るだけじゃない……こんな能力だ、お前も良く分かっているだろ?……なぁ、詩織」

「あ、秋人?」

「発動だ……」

「え?」


 強烈に叩きつけられた壁。そして殴り付けた詩織の右腕。


 この二つに同時に錘が取り付けられる。


 至近距離で発現させた二つの南京錠のような形の錘は鎖のように『8』の字に、二つの錘の『U』の部分で互いが絡み合う。


――し、しまった!!


 詩織の表情が一気に変わる。

 現状を冷静に考えれば考える程冷や汗が噴き出した。


 これは詩織と壁を繋ぐ鎖、言わば手錠だ。


 能力故、物理的な破壊はまず不可能。そして詩織の能力は血が通ってる物でなくては発現出来ない。無論、鍵などもない。


 これは重さではなく形状による、脱出不可能の完全なる拘束である。


「確かに厄介だな、衰弱させるっていうのは……何ともやるせない気持ちになる……」

「ッ!!」


 詩織は秋人の台詞から自分の今後の処分を理解する。


 放置だ。


 ただここに拘束され放置されるのだ。人通りも水もないこの場所で、生き長らえる事が出来よう筈がない。

 徐々に弱り、()えか乾きかそのどちらかでいずれ命を落とす。


 それを想像するだけで詩織の顔色は完全に消え失せた。

 その様子に秋人は不敵に微笑む。それが詩織の逆鱗を逆撫でした。


「ハッ!弱りきったアンタを殺せば良いだけだよ!そうすればこの錘だって消えるはず!」


 壁を背に座り込む秋人に覆い被さるようにしていた詩織は、自由な左手で秋人の首を鷲掴みにする。

 しかし手には力が入らない。これが大きな賭けである事を理解してるからだ。


「ああそうだ、消えるはず……『はず』程度の一抹の希望だ。もしかしたら消えないかも知れない……」


 そう、絶対に錘が消えるという確証がないのだ。

 秋人は不安や葛藤から左右に泳ぐ詩織の目を真っ直ぐに見る。


「試してみるか?正直、俺にもどうなるか分からない。発現した錘が俺の支配下にあるのかどうか……操作は出来ないし位置も感じない。だが消失させる事は出来る。果たして支配下にあるのかどうか、中途半端な関係なんだよ……もしかしたら案外あっさり消えるかも知れないし、逆に消す方法が無くなり完全無欠の強固なものになるかも知れない……」

「くっ……!!」


 出来るはずがない。秋人を手に掛けて消えなければそこまで、二度とこの錘の手錠が外れる事はなくなる。

 だが詩織には秋人を殺す殺さないの他にもう一つ選択肢があった。詩織はそれに気が付き、今度は詩織が秋人に不敵な笑み見せた。


「もう一つ選択肢があったよ。アンタの意識を奪えば良いんだ!駄目なら気絶から起こせば良いだけ!」

「いいや、その選択肢はない。お前が少しでも手を出したら俺は舌を噛み切り命を絶つ……」

「くっ……ちっ、くしょう……!!」


 詩織の導き出した浅はかな答えなど秋人はとうに思い付いていた。そしてそれに対する対策も。

 更に秋人は歯噛みし他の策を考える詩織に追い打ちを掛ける。


「このまま俺を離さず持久戦に持ち込むのも無駄だ……衰弱してる俺が先に死ぬのは目に見えてるからな。結論を先延ばしにするだけだ。お前が選べるのは行くか引くかの二択、ブラック・オア・ホワイトだ詩織。さあ、選べ」


 秋人は背を壁から僅かに離し詩織に迫る。迷いなく真っ直ぐに射る視線に詩織はたじろいだ。


 俺を殺せば脱出の手がなくなるぞ、とでも秋人が脅したなら詩織はここまで悩まなかった。意地になって詩織は秋人を手に掛けただろう。

 だがやれるものならやってみろ、殺して見せろとさえ言っているような秋人の自信に満ちた言動のせいで、詩織は本当に秋人を生かすのが唯一の解放の方法なのではないのかと思い始めてしまっていた。


 疑心暗鬼に陥ってしまえば選ぶ選択肢は決まっている。

 冒険など出来ない。詩織は安全な、秋人を生かす選択肢を選んだ。


 秋人は、首から手を離し錘で壁に固定された片腕を上げたままペタンと座り込んだ詩織の行動がその選択をした事を意味すると察し、軽く息を吐いてフラフラと立ち上がった。


「安心しろ。俺はこう見えて意外に優しいからな……血ダルマにされたからって、何日も放置して衰弱死させるような惨い事はしない」

「え?」


 そう言うと秋人は覚束ない足取りでフラフラと移動し、『虫食い』の少女を浚ったもう一人の敵の男が落とした携帯電話を拾い上げた。

 電話は未だ『虫食い』と通話中になっており、秋人は操作せずそのまま耳に当てた。


「俺だ、秋山だ」

『あ、秋山様!ご無事でしたか!』

「一応、な」


 あちらは僅かに聞こえる物音を何とか聞き取ろうとしていたので、秋人の呼び掛けに直ぐに答えた。

 答えたのは依頼を持ちかけた男だと秋人は声で判断する。


「仕事は完遂した。『虫食い』の女の子も一応無事だ。二十三番倉庫に残す敵の回収を頼む」

『了解しました、直ぐに『虫食い』を送ります』

「任せた」


 それで会話を終え、秋人は詩織に視線を向ける。


「直ぐに『虫食い』がここに来る。良かったな。手厚く保護して貰え」


 言葉通りに手厚く保護してくれる訳がないのは二人とも理解している。

 むしろ詩織からすれば事態は好転どころか悪化した。


「殺してくれ!そんなみっともない終わり方はヤダ!いっその事殺してくれ秋人!」


 『虫食い』がイカレた集団だとは詩織は思っていないが、仲間を傷付けた代償は払わされるに決まっている。場合によっては死よりも重い罰を与えられるだろう。

 詩織はそんな仕打ちは我慢出来なかった。


 詩織は秋人に懇願するが秋人はその要望に応えるつもりはなかった。


「無茶言うな……ボロボロの俺が、ただ動けないだけで元気一杯のお前にもう一度近付く訳がないだろ?」

「そんな……!抵抗しないから!なんなら石で――」

「悪いが俺はただの高校生であって殺人鬼じゃない。無抵抗なら尚更手に掛けるのはごめんだ」


 秋人は携帯を投げ捨てると未だに倒れ伏している『虫食い』の少女に近付き、ヒョイと肩に担いだ。


「俺の仕事は終わりだ。じゃあな、詩織」


 そしてそう言うと秋人は詩織に背を向けた。


 しかし、


「う、うぅ……うあぁーん!お願い秋人ぉ!あたしを捨てないでよぉ!」


 詩織の余りにみっともない言動に秋人は溜まらず振り向いてしまった。


「おいおい……」

「たずけてあきびどぉー!」


 先程までの威勢や気迫などまるで無く、詩織は涙と鼻水を垂れ流してワンワンと泣き出した。


「あだし、あだし……ヒック……きっと酷い事されちゃうよぉー!だずけてあぎひとぉー!」


 余りの酷さに秋人は脱力すると同時に心は瞬く間に哀れみで満たされた。


「ずてないで!ヒック、捨てないで秋人ぉー!!」

「捨てないでって別にお前は俺のじゃないだろ……」


 見捨てないでなら分かるが捨てないでは秋人は意味が理解出来なかった。詩織も自分が何を言っているか理解していないのだから仕方ない。


「お前を解放したらコイツが殺されるんだろ?」


 秋人は肩に担いだ『虫食い』の少女を指差す。


「嘘だよぉ、あんなの嘘ぉ!ぢょっど……ジュル、ちょっと悪ふざけしただけだよぉ!」


 首と言うより垂れた鼻水が横に振られ左右の頬を叩きながら詩織は訴える。


「だず、だず、だ、だずげであぎびどぉー!」

「分かった分かった!分かったからもう泣くな!」

「あうあぁー!」


 極限とも言える姿に秋人は折れざるを得なかった。予想外の展開と自分の甘さに秋人は頭をガシガシと掻く。


「はぁ……ここを離れて少ししたら能力を解除する。そうしたら好きにしろ」

「ぼ、ほんど……?」

「ああ。言ったろ、お前達の始末は俺の仕事じゃない。そこの男がいれば『虫食い』に敵を残したっていうのも嘘にならない」

「あぎびど……?」

「ああ、俺は秋人だ。ただ今後は行動を見直せよ。また同じように俺が『虫食い』に駆り出されてお前とやりあうのは絶対にごめんだ」

「あぎびどぉー!!」


 秋人の慈悲により助かった詩織は、感極まって抱き締めさせろというように左手を目一杯秋人に伸ばした。

 秋人は深々と溜め息を吐く。


――聞いているのかいないのか分からないが、この様子なら大丈夫だろう


 『虫食い』の少女の安全については、詩織が弱者をわざわざ相手にするとは思えない。

 自身の安全については、詩織は闇討ちするようなタイプでもない。


 このまま拘束して立ち去るのはさすがに後味が悪いし解放して構わないだろうと秋人は判断した。


「あびばどぉーあぎびどぉー!」

「……はぁ」


 数分前まで殺し合いをしていた相手に感謝されながら見送られる事になるとは、喜劇も良いところだと秋人は再び溜め息を吐いた。


 解読出来ない言葉を投げ掛ける詩織と共犯の男を倉庫に残し、秋人は少女を肩に担いで来た道を戻る。


 何にせよ仕事を無事達成し、今回の戦闘も五体満足で乗り越えられた事を、秋人は誰にと無く感謝したのだった。



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