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星の導き  作者: 緋崎 瑞理
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星の導き

 翔太からのメッセージを読み返す日々が続き二週間ほど経ったころ、「星の導き」に美咲からDMが届いた。

『ご報告』という件名から、葵は二つの可能性を考えた。

 一つは、翔太と仲直りをしたこと。

 もう一つは、仲直りした上に結婚の約束もしたこと。

 わざわざ報告してくるのだ。そのどちらかしかない。

 覚悟を決めてDMを開封し、葵は驚いた。そこに書かれていたのは、なんと翔太と別れたという内容だった。


 先日、ともに携わっていたプロジェクトが一段落つき、このまま順調にいけばうまくいくと見込まれている。

 チームは解散となったが、解散後ももちろんまだまだ仕事はあるため、二人はそれぞれの会社で忙しく動き回っていた。

 そんな中、美咲はふと、翔太に会えなくても精力的に働き、鑑定を依頼したときのように感情的になってもいない自分に気付いた。「別れようか」という簡単なメッセージを送ったら、翔太からはあっさり承諾の返事が来たという。


 この内容を、葵は落ち着いて受け止めていた。まだ自分にもチャンスがあるかも……などという淡い期待を抱くこともなかった。自分にとっても、翔太はもう過去に想いを寄せていた人となっていると知った。


 おもむろに、自分と美咲と翔太、三人のホロスコープと星回りを眺めてみる。

「……あれ……? 恋愛じゃない……?」

 ぼんやり見ていて、ふと気付く。

 三人とも、ここのところ仕事に関する星がとても強調されている。幸運の星である木星は、三人のうちの誰の太陽星座にも入っていない。しかし三人に共通しているのは、木星は各ホロスコープの恋愛に関する星ではなく、仕事に関係する星に恩恵を与えていることだ。

 二人が取り組んでいたプロジェクトは成功するだろう。自分も、会社を辞めた直後は貯金を切り崩していたが、今は少ないながらも鑑定による実績と収入がある。


 考えていたら、葵の頭に一つ疑問が湧いてきた。

 では、なぜ美咲と翔太は、短い期間ではあるものの交際に至ったのか。


 葵と翔太は、どちらも何も言えなかったから、何もなかった。

 しかし、そんな翔太と、美咲は付き合った。行動力のあるおひつじ座に太陽を持つ美咲から、おそらく告白があったのだろう。


 自分と美咲は何が違ったのか。告白をしたであろう美咲には何があって、「好き」の「す」の字も言えなかった自分には何がなかったのか。

 意気地なし? 度胸がない? 根性がない? それとももっと別の何か?

 考えても、葵には答えが分からない。どれも違うような気がするし、複数回答可のような気もする。

 いずれにせよ、木星が恋愛とは関係ないところで関わっていたのだから、この恋が実ることは難しかったのだろう。

 葵はそう理解し、蒸し返した恋に別れを告げる。翔太に返信をすることもないだろう。



「太陽とか、太陽が入っている星座とか……大切なのはそれだけじゃないから、西洋占星術は奥が深くて複雑で、でも興味深くて面白いのよね」


 せっかく木星が仕事の応援をしてくれているのだから、もっと勉強して、もっと知識と経験を増やして、もっともっといい西洋占星術師になろう。


 葵は改めて決心し、美咲からのDMを閉じようとマウスに手をかけた。

 その瞬間、鑑定依頼のメールが新たに届いた。

テーマ「勇気」ですが、、、

あえて「勇気」という言葉を使わずに執筆してみました。

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