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星の導き  作者: 緋崎 瑞理
2/5

回想

「星の導き」に、1通の鑑定依頼のメールが届いた。

 その依頼者の名前に、サイト運営者である葵は驚きと動揺を隠せなかった。


「え、まさか……美咲さん……?」


 その名前は、葵がかつて勤めていた広告代理店の上司である翔太の、恋人のものと同じだった。


 葵は、美咲のメールを開いた。

 内容は、恋人との恋愛についての相談だった。相手の男性の名前は書かれていないが、内容からして、翔太との恋愛についての相談であることは明白だった。


 メールの内容から、美咲は、翔太が仕事で忙しくて構ってくれないことを嘆いていた。

 自分も翔太と同じプロジェクトにかかわっているので忙しいのは分かるが、あまりにも放置され過ぎのような気がしてならない。また、翔太は自分のことを本当に愛しているのか、不安になることがある、とも。

 そんな折、「星の導き」を知り、相性を見てみようと自分の星座と翔太の星座を入力してみたところ、相性が良くないと出た。それでさらに不安になって、今回のメール相談に至ったという。


 葵は、メールを読んで複雑な気分になった。

 一方では、美咲が翔太との関係に悩んでいることをちょっと嬉しく思った。

 もう一方では、美咲に同情と共感を覚えた。自分も、翔太に不安や不満を抱いたことがあったからだ。



 翔太は、葵より3つ年上の28歳。仕事ができて、頭が良くて、見た目も良い。恋愛には不器用なほうではあるが、それでも葵から特別な想いを寄せられていることには何となく気付いていた。

 葵も、翔太が自分に好意を持っているような気がしていた。少なくとも悪く思われてはいないはずだと。

 翔太が入社時の葵の教育係をやっていたこともあり、数年たっても、仕事帰りに二人で飲みに行ったり食事に行ったりすることもあった。しかし、いつまでも雰囲気は「職場の後輩と先輩」で、恋愛となると決め手に欠け、どちらも何も言い出せないままだった。

 俗に言う、両片想いというやつである。


 そんな中、翔太の企画が通り、大規模のプロジェクトが動き出した。翔太をリーダーとするチームが組まれたが、葵がそのメンバーに入ることはなかった。

 そのチームに加わったのは、取引先のファッション雑誌の編集者である美咲だった。

 葵と翔太の接点は少なくなっていき、代わりに美咲と翔太がしょっちゅう一緒にいるようになった。

 そして、いつの間にやら美咲と翔太は付き合っていた。


 翔太と美咲が付き合い始めたことを知り、葵は半年ほど前に広告代理店を退職。西洋占星術師になるという夢を追うためというのが表向きの理由だったが、実際は翔太との距離を置きたかったからだ。



 会社を辞めてほどなくして占いサイト「星の導き」を立ち上げ、実際に西洋占星術師として活動もしている。後ろめたいことは何もない。誰にも嘘など言っていない。

 それでも、葵は美咲にどう返信するべきか悩んだ。

 西洋占星術師として、悩むユーザーのために正しく鑑定とアドバイスをするべきなのは分かっている。

 しかし、二人を遠ざけるようなことを伝えてしまいたい自分もいる。もちろん嫉妬のようなものだと分かっている。


 退職して半年がたち、サイトの運営も西洋占星術師としての活動も初めてのことだらけで、会社のことも翔太のことももうあまり思い出さなくなっていた。

 が、美咲からのメールで心が揺らぐ。

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