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第8話 俺とセナの過去


 二人で外に出ると、セナさんが空を見ながら言う。


「綺麗ですね」

「そうですね」


 セナさんの言う通り、夜空にまんべんなく星が散らばっていて、綺麗であった。


「それでどうしたんですか?」


 俺はセナさんに問いかけた。すると、少し複雑そうな表情をしながらこちらを向いてきた。


「ダイラルさん。私のことを覚えていますか?」

「え、覚えている?」

「はい」

 

 俺は首を傾げながら考える。


(セナさんと出会ったのは、アキナ村に来てからだよな?)


「申し訳ないです。覚えていません。セナさんと出会ったのってアキナ村に来た時じゃないんですか?」


 その言葉に対して、セナさんは少し悲しそうな表情をした。


「違いますよ。私とダイラルさんは一年前に一度出会っています」

「え......」


(一年前に出会っている?)


 一年前と言えば、勇者パーティに入って間もない頃。そんな時期にセナさんと出会っている......。


「あ!」

「思い出していただけましたか?」

「もしかして、子爵家の......」

「はい。私は子爵家の次女としてあなたに助けられました」


 その言葉と共に、一年前のことを思い出す。


 確かあの時、俺たち勇者パーティは国王からの依頼を達成して帰っている途中、盗賊に襲われている馬車を見つけたんだ。


 そこで、俺たち勇者パーティは助けに入った。そこでセナさんと出会ったんだ。


(なんで、こんなことを忘れていたんだ)


「私とお父様は盗賊に襲われていました。そこで、ダイラルさんを含めた勇者パーティに助けていただきました」

「そうでしたね」

「あの時、私はあなた方に助けられて人生が変わりました」

「え?」


(人生が変わった?)


「助けられた日、私たちは大きな商談をする予定でした。あの時、助けて頂かなかったら子爵家として落ちぶれていた可能性もありました。だからこそ、本当にありがとうございます」

「いえ、俺よりもハリーたちが盗賊との戦闘を頑張っただけですので」


 そう。助けた中に俺が居たのは事実だが、盗賊と真っ向に戦ったのはあいつらだ。


「そうですね。ですが、私はダイラルさんに感謝しています」

「お、俺にですか?」

「はい。私はあなたに命を救われましたので」


 その言葉に首を傾げる。


「覚えていませんか? 最後の一人になった盗賊が、私に目掛けてナイフを投げてきたのを」

「あ!!」


 そう言えば、そんなことがあった。セナさんの言う通り、逃げ遅れた盗賊が、セナさんにナイフを投げて俺が身をもって庇ったんだ。


「きちんと思い出していただけましたね」

「はい」

「だからビルくん同様、私にとってもダイラルさんは英雄なんです」


 この言葉を聞いて、今朝のことを後悔する。なんせ、セナさんはダンジョンに入る前に俺の事を励ましてくれた。それなのに、俺はそれを否定したのだから。それが、言葉に表していなくてもだ。


「あの時も今日も、本当にありがとうございます」

「いえ、こちらこそいろいろとありがとうございます」


 ビルやセナさんのおかげで、俺が今まで行動してきた意味があったんだと思えた。それが知れただけでよかった。


 だからこそ、俺はセナさんに頭を下げた。


「ごめんなさい」

「え?」

「俺は、今朝表情であなたの言葉を否定してしまったから」

「気にしないでください。誰だってそう思うと思いますし」


(本当にこの人は優しいな)


「でも、不快にさせてしまった。それに今までの言葉や今の言葉だけで、十分にセナさんに感謝している。だから、何かお礼をさせて頂けませんか?」


 俺の言葉にセナさんは驚いていたが、ゆっくりと話し始めた。


「では、二つお願いをしてもいいですか?」

「できる範囲でしたらいいですよ」


(何が来るんだろう?)


 そう考えていると、セナさんが言った。


「敬語はやめてもらえませんか?」

「え?」

「だから、敬語はやめてもらえませんか?」

「あ、いいですよ。ですが、それならセナさんも敬語は無しにしてください」


「う、うん。そして、もう一つ。一緒に冒険をしてくれないかな?」

「......」


 二つ目の問いに対しては、少し躊躇った。なんせ、俺はつい最近勇者パーティを追放された身だから仲間と言うのが怖く感じた。


 でもセナさんの表情を見た時、そんな不安が一瞬にして吹き飛んだ。


「是非」

「じゃあ、明日から宜しくね」

「あぁ」


 その後、二人で軽く雑談をしてビルの家に戻って就寝をした。

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