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異世界7-8 最終形態

 そこかしこの空間が歪んでは衝撃波が迸り、歪んでは衝撃波が散る。そのたびに近隣の星が終わりを迎え、散り際の爆発を見せていた。

 現在、最終形態となったロボ幹部の相手をしている。主に戦っているのはルシだけど俺もなんとか食い付いていきたいところだな。動き自体はルシと感覚を共有してるから見切れるけど。


『破壊。排除。殲滅』

「旧式と思う程に語彙力が無いな。もう少し頑張れ」


 単語だけを話すロボ幹部を前に言い、その攻撃をいなしていく。

 拳が放たれては紙一重でかわして腹部に蹴りを。しかしそれは空間移動によって避けられ、背後から回し蹴りが打ち込まれる。

 蹴りは手の甲で防いでそのまま裏拳を叩き込み、頬から首が360°回ったロボ幹部を吹き飛ばす。

 しかし即座に体勢を立て直して逆方向に捻れた頭を戻し、ルシの場所へ光線を。それは軽く逸れるだけで避け、直撃した背後の星が爆発を起こす。

 瞬時に詰め寄り、胴体を殴り抜いて彼方へ飛ばした。


『……破損率、2%』

「クク、頑丈だな」


 複数の星を突き抜けて吹き飛んだロボ幹部だが大したダメージは負わず、空間を跳躍して再びルシの眼前へ舞い戻った。

 そこから更なるせめぎ合いが執り行われ、互いの拳と拳。足と足がぶつかり合って衝撃波を散らし、一挙手一投足で近隣の星々を砂と変える。


「科学力。即ち叡知の結晶ではあるようだが、戦い方は至ってシンプルな殴る蹴る。もう少し無いのか?」


『それをおこなったところで貴様にダメージが入る訳ではないのは分かっている。ならば宇宙一硬い我が身体に速度を付け足して仕掛け続けた方が聡明だろう』


「そう言う考えか。下らんな」

『思考などうに捨てている』


 拳や足と言った在り方で攻め立てる理由は、光線とかを撃ったところで意味を成さないから。

 確かに光で視界……ロボット的に言えば認識システムを阻害されたりしたら却って邪魔になるかもな。

 なので牽制など以外では単純かつ確実な方法を執り行っているとの事。


『そして既に、今の動きは計算に入った』

「その様だな」


 ルシの蹴りを受け止め、裏拳でその体を吹き飛ばす。

 追撃するよう空間を跳んで移動し、手が無数に見える程のラッシュを打ち込んだ。

 そんな一連のやり取りを繰り返し、片手にエネルギーを集中。周りの星の欠片が部品のように連なり、巨腕としてルシの体へ叩き込まれる。

 しかもただ巨大なだけの手という訳ではない。星その物の質量はさる事ながら、激突した直後に組み換えては更なる武器とし、全方位から仕掛けて最後にまた吹き飛ばしたのだ。


「一回の攻撃で千回は食らったか。仕掛けのあるビックリロボだな貴様は」


『負傷確認無し。更なる追撃を遂行する』


 空間を跳び、ルシの眼前へ。それをルシは軽く殴って消し去り、ロボ幹部が全方位を囲んだ。


「分身も出来たのか」

『分身ではない。分裂だ。身体を切り離し、独自に部品を形成。周りにある星々の欠片を取り込んで生み出した』

「要するに一体一体の強さは取り込んだ星に依存している。ピンきりという事だろう」

『そうだが、一体一体には知的生命体の居る星を征服出来るだけの強さは有している』


 そして始まる、一対多数の攻防戦。

 原材料が多分ナノマシンとかだからこそ、部品一つで自動的に学習して進化を遂げ、独自の形を作り出せるのだろう。

 正直言ってどんな原理なのか俺には検討も付かないが、前世界で言うところのS級上位相当の存在が無数に生み出せるのはヤバいな。


『排除』『排除』『排除』『排除』『排除』『排除』『排除』『排除』『排除』『排除』『排除』『排除 『排除』『排除』『排除』『排除』『排除』『排除』『排除』『排除』『排除』『排除』『排除』『排除』『排除』『排除 『排除』『排除』『排除』『排除』『排除』『排除』『排除』『排除』『排除』『排除』『排除』『排除』『排除』『排除 『排除』『排除』『排除』『排除』


 スゴい圧力だな……軽く千体は居る。いや、ロボットだから千台か?

 どちらにせよこれじゃ流石のルシも一苦労だろう。


(侮るな。テンセイ。この程度、我にとっては数にも入らぬよ)


 マジかよ……。

 ルシは飛び出し、正面の一体を手刀で貫く。即座に引き抜き、その身体を爆発させた。

 分裂体とは言え、ロボ幹部に比べて随分とあっさり壊れるな。なんだこれ?


「思った通り、あくまで一つのナノマシンからしか増加しておらず、それを増幅させるには時間が掛かるようだ。もうしばらくは核を破壊すれば停止させる事が出来るな」


『即座に看破されたか。しかし問題は無い。構わず仕掛ければ自動的に増える』


「ま、この数全てを一撃でと言うのは……今の我だけでは難儀かもしれないな。だが、頼れる味方が居るんだ」


『何を?』


 成る程な。つまりそう言う事か。

 確かにこの距離なら届く。加え、有効的なスキルは既に得ている。


「これだーッ!」

『……取るに足らぬ青年』

「その覚え方はやめてくんねーかなぁ!?」


 “加速撃”で迫って複数体を破壊し、“極化回し蹴り”にて周りの存在を薙ぎ払った。

 余波だけで近隣の星々を巻き込む程の攻撃。未完成な分裂体くらいなら俺でも倒せる!


『死した時、我が物とする能力。厄介。無駄に殺し過ぎてしまったか』

「今更気付いてももう遅い。さあ、我と共に舞おうか?」

『何故貴様なんぞと』

「ああそうだ、訂正しよう。舞わざるを得ない……とな?」

『……!?』


 ルシが相手の懐へ蹴りを打ち込み、分裂体を巻き込みながら粉砕して吹き飛ばす。

 宇宙空間で堪えたロボ幹部は顔を上げて空間を跳ぼうとし、その空間をルシは素手で(・・・)掴んだ(・・・)


『なに……!?』

「概念を掴んだくらいで何を驚いている。我は我だぞ」


 圧縮される直前の空間は開かれ、そこから拳が打ち出される。俺はもう、この程度じゃ驚かないぞ。慣れるもんだな。人って。

 それによってロボ幹部はまた殴り飛ばされ、今度はルシ自身が空間を跳び越えて到達した。


『まさか……貴様も空間を操る機能が……!』

「機能? 違うな。空間を掴めるんだ。生身で空間を圧縮して跳ぶなんぞ容易かろう。更に付け加えるのなら、既に数え切れぬ程は仕掛けたぞ?」

『……!』


 刹那、ロボ幹部の全方位から無数の拳や足が打ち込まれ、全身をベキベキに凹まされる。

 その余波は分裂体にも及び、見る見るうちにその数を減らしていった。


『まさか……何を……情報を纏め、認識を改める』

「計算する時間の方が勿体無かろう。至極単純明快な方法だよ。この世界の我の幹部よ。シンプルにその場で攻撃を仕掛け、時間差で空間が歪んで到達するように設定しただけだ」

『そんなバカな事。物理法則を超越している』


「何を言っている。一次元世界の者が二次元世界や三次元の世界を認知出来るか? 三次元世界の者が更なる高次元を認識したか? 理論上を越えられぬ程度の低能な科学なんぞ、全ての次元に置いて最上位に君臨する我の前では無に等しい。我のやる事を理解しようとするな。我には矛盾も空想も何もかも無意味。そうなると判断すればそうなる。高々全人類より賢いだけのポンコツが我を知ってどうなる。貴様も学習して更なる進化を遂げたようだが、所詮は誰かに作られただけの粗大ゴミでしかないのだからな」


 いや、言い過ぎじゃね!? それって遠回しに俺の居た世界の事もディスってるよな!?

 俺の世界の現象だって昔の学者さんが頑張って解き明かしたんだからもう少し手心を加えて欲しいよ!


(案ずるな。君はいずれ我と駄神の次元に立たせてやる。下界を見下ろすと良いさ。生も死も超越し、苦しみも何も存在しない良きところだ)


 いや、俺だけの問題じゃなくてな……。

 そもそもまだルシと共に行くかは決めてないし……。


(フフ、気が向いたらで構わぬよ。我は永遠に居続けるのだからな)


 永遠ってのも怖いけどな……。この恐怖も所詮は三次元世界にしか居られない俺の小さな考えなんだろうけどさ。

 そんなルシの言葉を聞き、呆然としているロボ幹部は再び動き出した。


『関係無い。今は魔王様へ仇成す貴様をほふるだけ』

「思考が追い付かず、一周回って当初の目的に切り替えたか。理論上の中での最適解を行うように設定された貴様らしい在り方だ」

『排除』


 更なるエネルギーを放出し、出力を最大とする。

 磁力を発生させて近隣の星々。今度は惑星までをも引き寄せ、その全エネルギーを己の物として全身に力を込めていた。


『これをすれば後に支障をきたすが、やむを得ない。我が全力を以てして排除する』

「支障をきたす……つまりそれは、まだ壊れないつもりと言う訳だ。傲慢だな」

『敗北は無い』


 星のエネルギーが集まり、それが一点に集中する。

 放たれる直前、ルシは俺の方を見た。……あー、はいはい。分かったよ!


(これでいいんだな!?)

(ああ。君が更なる強化を得られる)

(痛みも感じる間もないくらいでやられるのが救いだよ。ホント!)


《認証しました。新たなスキルを登録します》


 そのエネルギーの前へと躍り出て正面から受け、超新星爆発並みのスキルを入手。

 正直言って範囲からも使いどころは分からないけど、こんなルシや同格であるディテの一部を得た魔王戦に備えるなら警戒のし過ぎという事は無いだろう。

 エネルギーを受けた俺は消滅。復活した直後、魔王戦以外で初めて傷を負ったルシの姿が目に入った。

 焦げたような手を近付け、クッと嗤う。


「貴様はポンコツではあるが、我の手を負傷させた。それはほまれだ。いずれ新たな貴様を作り、我が配下にしてやらぬ事もない」

『──よク……分カラなイ……考えダ……言ッテいる事ガ矛盾シていル……』

「そうだな。ではその時は、君に知能……いや、“命”を授けてやろう」


 満足したような顔でエネルギー波を消し去り、力を使い果たしたロボ幹部に引導を渡す。

 俺達と魔王軍幹部の戦闘。それはルシが負傷する程の激戦となり、終わりを迎えた。


所有スキル

・光線ライフル

・刃足・レーザービーム・光線弾

・サイコキネシス・ボルトキネシス・フォトンキネシス

・超遠光線・形態変化(獣)・毒液・加速撃・投擲・極化回し蹴り・極化裏拳・惑星エネルギー砲

・小惑星群・衝突・終焉爆発

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