異世界7-7 自動修復付学習性超大型ロボ幹部
自動再生付学習性超大型ロボ幹部は縦横無尽に手を振り回し、宇宙空間の星々をも蹂躙する。
既に俺達の居た惑星が何処かも分からなくなっちゃったけど、その辺は互いに位置が分かるルシとディテが居るのでどうとでもなるだろう。
「頼りにされる事については良いが、その言い方はあまり好ましくないな。崇高な我があの駄神と一心同体など、反吐が出る」
「相変わらずだなー」
『何をゴチャゴチャとほざいている』
巨大ロボの手足をいなし、会話する俺達を指摘する。
そう言えば今現在の位置は宇宙空間なんだが、サイコキネシスのバリアで覆っている俺はともかくルシやロボ幹部も言葉が聞こえるんだな。それはちょっと意外だ。
「別に意外でも無かろう。次元その物を超越している我と科学技術の結晶であるポンコツ。理由付けをするならいくらでも出る」
「成る程な。科学技術の結晶のポンコツってのは矛盾している気がするけど、取り敢えず理由が無い訳じゃないんだな」
説得力はある。存在が存在だからな。
その上で相手取っているけど、その攻撃は科学技術っぽさなんて一欠片も無い。
『死せよ』
「何度も死んでるよ。とっくにな!」
先程よりも更に広範囲の隕石を引き寄せて嗾け、本体も超速で仕掛けてくる。
単純な速度なら光その物のリヒトの方が速いが、強度と破壊力と範囲が比にならない。しかも光より劣るってだけでかなり速いからな。
『撲滅。殲滅。制圧。排除』
「更に短絡的な言葉になったな。会話する余裕も無くなりつつある感じか」
巨腕に巨足。それがしなやかに迫り、近隣の星を崩壊させて嗾けられる。
星って言っても惑星並みは無いが、山や大陸よりも遥かに大きなそれはとてつもないだろう。
スキルのお陰で追い縋る事は出来ているが、少なくとも俺には成す術が無い。
「クク、戦闘っぽくはなっているな……!」
『破壊』
ルシは巨腕を受け止め、横に逸らす。そのまま腕を駆け上がり、胸から頭に移動して蹴りを放ち、吹き飛ばした。
その頭は即座に機械が補い再生。ルシの横から掌が迫り、叩くように吹き飛ばして複数の星々を貫通させた。
ほんの少しとは言え、魔法世界の魔王から力を取り戻したルシ。そのうちのほんの少しはこの世界の魔王に奪われたが、前世界よりは遥かに強い彼女と戦闘が成り立つ時点で巨大ロボ幹部も十分規格外だな。
多分俺は前にも似たような事を思ったと思う。
「俺的にも仕掛けるしかないか……!」
『此方も厄介』
“加速撃”にて打ち抜き、“超遠光線”+“フォトンキネシス”にて射抜く。
断面も切れ端も即座に再生してしまうが完全に無傷という事は無いだろう。
そこからルシの追撃が合わされば確実に削れている筈だ。
『更なる強化を行う』
「……近隣の星を?」
「己の部品にしているようだな。金属からなる星があれば金剛石からなる物もある。君の世界の科学技術じゃまだ発見出来ていない更に強固な物もな。それらを繋ぎ合わせる事で自身を強化しているようだ」
「マジかよ……」
巨大ロボ幹部が行っているのは自己強化。
今の説明通り様々な鉱石や物質を体に適合するように変換し、更なる柔軟性と強度を得るようだ。
『より的確に。より強く。最善の身体を構成する』
「……あれ? 心なしか小さくなってるような……」
「“よう”ではなく、なっているな。巨体は本来なら範囲も破壊力も増して大抵の局面で有利に運ぶが、我らが相手では意味を成さない。故に学習し、合わせた造りとしているのだろう」
「そうか。確かに利点は多いけど的も広くなる。それがアイツにとっては致命的なのか」
諸々の理由から再び身体を小さく組み立てるロボ幹部。
体躯もスピードもパワーもお墨付きだが、それだけじゃルシを捉える事は出来ない。だからこそ等身大で整え、自己強化しているとの事。
攻撃範囲が狭くなる事についてはどうなるのか疑問だが、そんな事は関係無い程の強化が施されると言ったところだろう。
『これが現状の最終形態と言ったところか』
「最終形態って言っちゃうのかよ。さっきまで頑なに言わなかったのに」
「クク、現状という事はこの戦いで生き残った場合は更なる進化が施されるという事だろう。それもまた面白そうだがな」
遂に御披露目最終形態。
言うなら自動修復付学習性ロボ幹部最終形態。さっきは“再生”って考えていたけど“修復”の方がロボらしいからそうした。
「どうでも良い点であろう。さっさと片付けるとしよう。少しは楽しめそうだ」
「ルシを以てして楽しめるって判断が付くくらいか。こりゃ相当だな」
戦闘が成り立てば上澄み。楽しめるレベルならこの世界の最強格。
ルシの戦闘から学習したので本来の最終形態よりもかなり強化されたと思うが、それは凄まじい事柄。
既に宇宙空間へ飛び立っているのにどうなります事やら。
『楽しむ暇も無いぞ』
「そうか。それは何よりだ」
「……!」
《認証しました。新たなスキルを登録します》
刹那、ロボ幹部は何時ものように回り込み、後ろ回し蹴りを放った。
ルシはしゃがむように避け、俺は食らって死亡。からの復活。
見れば宇宙空間なのにも関わらず衝撃波が伝わり、ロボ幹部から正面の輝かしかった星々が消失していた。
なんつー馬鹿げた破壊力だ。
次の瞬間には消え去っており、気付いた時にはルシの体が吹き飛ばされていた。
「なんて速度……!」
『空間圧縮によって相手との隙間を埋めている。点と点を繋ぐ空間跳躍。ある種光よりも遥かに速い』
「空間跳躍……! 随分と丁寧に教えてくれたな!」
『今のところ、君は大して脅威では無いからな』
「そりゃごもっとも!」
《認証しました。新たなスキルを登録します》
あしらわれるように裏拳で消し炭にされ、また新たなスキルを得る。復活した時には既にロボ幹部の姿は無かった。その代わり遠方にて星々の消失を確認される。
あの速度の正体は空間を圧縮する事で相手との距離を繋ぎ合わせて移動する空間跳躍か。
俺もよく分からないが、ワープや瞬間移動と言った事象を科学的に起こしているのだろう。
昔有名な某ロボット漫画で見たな。紙に“・”を二つ書いて折り畳むのがワープの原理ってやつ。目の当たりにするととんでもない。
「って、悠長には考えてられないな。脅威的じゃない判定を食らったけど、食らい付いてやるか……!」
無視された悲しみも含めて独り言を述べ、二人の後を追うように突き進む。
けど今の俺じゃワープに追い付く術は持ち合わせていないな。
次々と星が消えているから今はあの場所に居るのだろう。一先ずは見える範囲への移動が重要だ。
(ならば我が感覚を共有してやろう。誉れに思え)
「……!」
すると直接脳内に声が。
ルシとの感覚共有。基本はディテからルシ。ルシからディテという風にしていたが、単体でも出来るのか。
(無論だ。駄神を除き、生物では君が初めての共有相手。所謂大魔王の処女を貰ったと考えれば良い)
「ブハッ……! ちょ、なんだよその言い方!?」
(何がおかしい? 人間の言語でも処女作とかあるではないか。そういう物と理解しておけ)
確かにそうだけどさ……。まあいいや。語弊を招きそうなやり取りは無しだ。今はルシの戦闘に集中するよ。
(ああ、そうしておけ。君自身も参加するのだろう?)
出来たらな。大した脅威じゃないって言われて黙っている訳にもいかないさ。
一先ずルシを追って合流する。
(ああ、中々に面白い相手だ。君も参加すると良い)
そこで声は途切れ、戦闘の光景へと移行する。
空間跳躍を巧みに使った移動術からなる死角からの超速攻撃。それをルシは受け止め、余波で周りの宇宙塵が崩壊。
膝蹴りにて吹き飛ばし、魔力からなるエネルギー波を撃ち込んで追撃。それを無傷で受け、また空間を圧縮して迫る。
既にインフレしまくっている存在同士の戦闘。最終形態はやっぱり手強そうだな。
所有スキル
・光線ライフル
・刃足・レーザービーム・光線弾
・サイコキネシス・ボルトキネシス・フォトンキネシス
・超遠光線・形態変化(獣)・毒液・加速撃・投擲・極化回し蹴り・極化裏拳
・小惑星群・衝突・終焉爆発