異世界7-6 第四形態
『破壊』
「排除から進化したな」
「進化か? これ」
巨大化した女性型のロボ幹部はその巨体を用いて巨腕を振るい、俺達の居た場所を一瞬にして吹き飛ばした。
既に更地だったが星の地表は消し飛び、遠方の瓦礫すら消滅する。
とんでもない破壊力だ。一挙一動で地殻変動に匹敵する威力。いや、地殻変動程度じゃないな。一振りで複数の都市や大陸が消し飛んだ訳だからな。
ディテが居るから犠牲者は出ていないと思うけど、それにしたってヤバい。こんなのを相手にするのか。
『まだだ』
「……! 速っ……!」
「それなりだな」
目の前に居た巨大ロボは背後に移動しており、その余波で大波のような砂塵が舞い上がる。
かなりの巨体なのに俊敏な動き。こう言うのって普通、重力の問題とかで遅くなるんじゃないのか? ソニックブームが発生してるし、明らかに音速以上。これは支部だけじゃなくて拠点の大半が崩壊しそうなものだぞ。
「クク、ならば移動させてやろうか?」
「移動って……」
刹那、ルシは巨大ロボの股下に移動し、上へと蹴り上げて舞い上げる。
そのまま巨体は黒天井を打ち破り、宇宙空間へと放り出された。
成る程宇宙か。確かにそれなら被害は及ばない……けど、俺は行けないぞ?
(問題無かろう。君が今更宇宙空間なんぞで永遠に死ぬか?)
いや、死にはするし、復活時はなぜか安全な場所に移動するけど流石に宇宙レベルの広さだと永遠に死に続けるだけなんじゃないのか?
(それも含めて実験と行こう)
俺はモルモットか!
(似たようなものだ。行かねば今夜、レジスタンスの者達の前で君を襲うぞ?)
わ、分かったよ。
流石に人目のあるところでそれは勘弁。因みに何故今思考で会話をしていたのかと言えば、巨大ロボの股下に移動していたから距離が大きく空いたからだ。
なので何処でも通信みたいに話せるテレパシーで会話をしていた。音速で届く言葉よりも速いから時間も短縮出来るしな。
「生身で宇宙デビューか……怖いな」
「なんならサイコキネシスで覆えば良かろう。多少の循環は出来る筈だ」
「そうか。うん、じゃあそうしようか」
一応使えそうなスキルはあるのでルシの意見に従い、サイコキネシスでコーティング。
そのままルシに手を引かれ、俺達は巨大ロボを追い掛けた。
『こう仕掛けてきたか。だが問題は無い。宇宙にも様々な物質は存在している。何の支障も無い』
「そうか」
「ちょ、俺にとっちゃ洒落にならないって!」
《認証しました。新たなスキルを登録します》
巨大ロボは体から磁力を発し、宇宙に顕在する隕石を引き寄せた。
瞬く間にこの場は小惑星の隕石群となり、次々と迫って俺は死亡する。
本来の小惑星群は間隔が地球と月程離れているので仮に宇宙に出たとしても俺みたいに小さな人間が巻き込まれる事はないが、相手の場合は間隔を自分で管理している。
なので成す術無く食らってしまった。
「ルシ。宇宙空間も戦いにくいぞ!?」
「ならば近所の星へ着地するとしよう」
『……!』
無重力の筈の宇宙空間にて加速し、巨大ロボの懐へ蹴りを突き刺す。
その一撃で暗闇を突き抜け、近くの星へ着地した。まるで近くのコンビニに停車しようとでも言いそうな在り方。そこへ俺達も降り立つ。
「今更だけど俺が同行する理由はあるか?」
「共に居た方が愉快だろう」
「普通はそうかもしれないけど、ルシがそんな事を考えるなんてな……」
「駄神や他の生物相手では微塵も思わぬが、君は別だ。将来的に……神を屠った暁には共に世界を見て回ろうと思っているからな」
「俺に拒否権は……」
「あったとしても、その特異な体質を受け入れる者は少なかろう」
「うっ、確かに……」
どうやら俺が戦闘とか色々付き合わなきゃならない事に変化は無いらしい。
言われてみれば死んでも生き返る体質、そう言う異世界でしか役に立たない。現実世界じゃ何も出来ないだろう。
仮に元の世界で車に轢かれたりして死ねばその能力を貰えるかもしれないが、地球じゃ法律の壁とか色々あって相手にも迷惑掛けるし使い勝手が悪い。
そうするしかないのか……。実際、俺に寿命が来るかも分からないし。
『星の上に誘おうと何の意味もない』
「此方にとってもな」
隕石を引き寄せ、それを一気に撃ち出す。
もはや科学力とかSFとか関係無くなっている気もするが、宇宙だからジャンル的にはそうなのか?
そんな疑問を覚え、いくつか食らってしまうが既に隕石スキルは得たので生き返るだけでどうしようもない。
「やれやれ。サイコキネシスのバリアも大して意味を成さないのか」
「一回や二回なら何とかなるけど、連続で仕掛けられたら色々と大変なんだ」
一応ガードは固めているが、今言った通りの理由からあまり効果が無い。
やっぱり手数が多いと大変だ。
「仕方無い。ほら、これで良いだろう」
「……! マジか……」
近隣にあった引き寄せられる大きさの隕石。それら全てをルシは消し去り、宇宙塵として辺りに舞った。
お陰でダメージは少なくなったが、巨大ロボは構わず嗾ける。
『私自身でも十分だ』
「元よりその想定だろう。宇宙に出た事自体が想定外だろうしな」
一瞬の高速移動で背後へ立ち、山並みの巨腕を振り下ろす。それをルシは片手で防ぎ、そのまま引き抜くように千切った。
しかし千切られた腕は即座に再生し、蹴りを放ってルシの体を吹き飛ばす。見れば断面がなんかうようよしてるな。小さなコンピューターが自動修復を行っているみたいだ。
次いで狙われるは俺。持ち合わせのスキルじゃやれる事も限られているので一番広範囲に届く超遠光線にて振り下ろされる巨腕を消し飛ばした。
『破損率、0%』
「だよな……!」
その傷は即座に修復され、俺の体が掴まれて放り投げられる。
この星の重力を振り切って飛ばされ、
《認証しました。新たなスキルを登録します》
《認証しました。新たなスキルを登録します》
《認証しました。新たなスキルを登録します》
放り投げられた衝撃で死亡し、新たなスキルを得る。次いで星に衝突して絶命し、新たなスキルを得る。更には星の爆発に巻き込まれて新たなスキルを得た。
一瞬にして三回は死んだか。色々得られたけどあの場所に戻るのは時間が掛かるかもな……いや……。
俺は自分のデータを見、スキルを確認する。これで行こう。
「あの速度なら……!」
“加速撃”を用いてあの巨大ロボ並みの速度で移動。そのまま勢いよく激突し、死亡と同時にロボ幹部の片手を砕いた。
「ただいま!」
『このエネルギー……あの者の何処に宿っているんだ?』
「クク、彼は特別なのさ。本人的に嬉しいかどうかはさておきな」
『魔王様のクローン……お前は理由が付く』
俺の攻撃で動揺……ロボット的に言えばエラーが発生して一時停止し、ルシが星の反対側から舞い戻って背部から蹴り抜いた。
女性型の巨大ロボは倒れ、片手を着いて跳躍。体勢を立て直しつつ砕けた腕を再生させて向き直る。
『まだまだ研究は必要のようだ。更なる出力を解放。続けて仕掛ける』
「……!」
踏み込み、星の表面を抉り飛ばして加速。この星に海はないが大陸並みの範囲はあり、星の欠片が新たな星となって宇宙空間に漂う。
既に俺は粉微塵になり、ルシは片手でその拳を防いでいた。
『小さき者よ。私は屈せぬ』
「そうか」
腕を振り抜き、ルシの体を地面へと叩き付けた。
そのまま星の反対側から抜け出し、巨大ロボ幹部は核目掛けて光線を放出して今居る星を消し飛ばした。
「また宇宙空間に来ちゃったな。しかもスキルは得られなかったから多分あれも加速撃だ」
「ならあの様な動きが君にも出来るという事じゃないか。良かったな」
「まあ、何万キロを一瞬で詰め寄れる速さのスキルを得られたのは収穫だな」
『星の爆発を受けても尚無傷。威力を更に高める』
まだ上があると来た。まあ最終形態かどうかも分からないし、第四形態も中々特別な状態なのだろう。
俺とルシが織り成す自動再生付学習性超大型ロボ幹部との戦闘。こう言っちゃあれだけど、既に前世界の幹部の誰よりも強いな。
所有スキル
・光線ライフル
・刃足・レーザービーム・光線弾
・サイコキネシス・ボルトキネシス・フォトンキネシス
・超遠光線・形態変化(獣)・毒液・加速撃・投擲
・小惑星群・衝突・終焉爆発




