異世界7-5 第三形態
『やるとしよう』
「……!」
《認証しました。新たなスキルを登録します》
──刹那、俺の目にも止まらぬ速度で嗾け、俺の体は吹き飛ばされた。
ビル群を複数破壊して突き抜けて俺は絶命。スキルも得られたな。どうやら第二形態と第三形態のスキルは違うらしい。
どっちも変形だけど差違点があるって訳か。
「クク、どの程度やれるのか。楽しみだ」
『今の私はさっきまでの数十倍強い』
数倍どころか数十倍か。とんでもない上がり幅だ。
既にルシがロボ幹部の何十何百倍は強いが、戦闘が成り立つ時点で上澄みも上澄みだ。
『討ち滅ぼす』
「排除botでは無くなったか」
ロボ幹部が拳を打ち付け、ルシはそれをガード。瞬時に取っ組み合い、側面に蹴りを打ち出した。
それを受けた幹部は後退るが倒れも吹き飛ばされもせずに踏み留まり、ルシは距離を詰め寄って鼻先に拳を打ち込んだ。
それによって今度は倒れる。しかし無機質に起き上がり、頭突きを交えて再び互いに手を取って組み合う形となった。
相変わらずの頑丈さはそのまま。二人は同時に蹴りを放って衝突。ロボ幹部はその後ルシの足に変形させた自分の足を巻き付けて動きを止め、至近距離にて光線を撃ち出した。
「逃げ場を無くさせて仕掛けるか。考えたな」
『損傷無し。戦闘を続行する』
熱光線によって衣服は際どくなったが大したダメージは無い。
人によっては戦い難くなる衣服の喪失も羞恥などのような物とは既にかけ離れたルシに効く筈もなく、二人は再び距離を詰め寄った。
「ならば我も少し力を込めよう」
『……!』
先程までの腕力のみの攻撃から変え、魔力を込めた拳を打ち込む。それによってロボ幹部は吹き飛ばされ、地面を擦るように着地。
刹那にその距離を詰め、再び拳を繰り出すが、その攻撃にロボ幹部は拳で応えた。
激突によって生じた衝撃で地面が抉れて土煙が舞う。互いに攻めの手を緩めずに打ち合い続け、やがてルシが一旦距離を取る。
すると相手が地面に拳を打ち付け、地割れを引き起こした。
その地割れはルシの足元まで伸び、逃げ場を奪うように迫ってくる。
対するルシは特に焦らず、跳躍して回避。空中で身を捻り、回転を交え魔力を纏った踵落としを繰り出す。
対するロボ幹部は腕を交差して防御し、更に床が大きく割れ沈み、死角から打ち込んだ蹴りの威力に負けて吹き飛ぶ。しかしそのまま様子を窺いながら距離を置く。
ルシは着地し、大地を踏み砕いて吹き飛ぶ相手を追いかけた。
地面を砕きながら進み続ける幹部とそれを追うルシ。
そして瓦礫をグルッと回った辺りで二人がぶつかり、再び激しい衝撃が周囲へと広がった。
その衝撃によって地面に亀裂が入り、二人のいた周囲の場所が崩れていく。やがて二人は崩落する穴の中でぶつかり合い、ルシは魔力から大きな拳を顕現させ、打ち上げるように叩き込んだ。
『この形態に此処まで拮抗するとは……』
「そうでもないさ。貴様程度、苦戦にも拮抗にも値しない」
『……!』
一瞬にして浮き上がったロボ幹部の上へ立ち、横蹴りにて瓦礫の中へ吹き飛ばす。
着弾地点には爆発的な煙が舞い上がり、ザザザッと横方向に大きな粉塵が散って遠方の建物を崩落させた。
『破損率……7%……』
「頑丈さだけは取り柄だな。と言うか形態変化毎に破損率が回復していたのか」
俺はサイコキネシスで近くへ移動し、意外にも大したダメージは負っていないロボ幹部と此方も汚れ以外はほぼ無傷のルシの近くに立つ。
流石のルシ。圧倒しているな。……まあ衣服はボロボロで際どいどころかハッキリ見えているけど……。
対するロボ幹部は最初から全裸みたいなもの。こうして体の作りを見てみると、ルシは本当に人間の姿を模しているんだなってのが分かる。
「君は何処に着目しているんだ。散々我の誘いを断っておいて、やはり欲しいのだろう?」
「いや、違う! 断じて違うぞ!? 何となく目に入った情報が……じゃなくて……!」
「フフ。生憎、今回の拠点は人が多いからな。我は構わぬが」
「だから違うって!」
そうだった。下心を思ってしまうとルシに丸聞こえなんだ。
余計な事は考えず、戦闘にだけ集中しよう。……しかし、こうも不埒な格好だとどうしても目に入ってしまう……。
『余所見をするな』
「……!」
「やれやれ。横槍が入ったか」
ある意味ナイスだロボ幹部!
ルシ目掛けて光線を撃ち出し、それをヒラリと躱す。
背後の建物が倒壊すると同時に駆け出し、ロボ幹部も立ち上がって迎撃した。
二人の衝突によって地面が抉れ、分厚い鋼鉄が剥げて星の地表が剥き出しになった。
『排除』
「この程度でか?」
片腕を即座に光線銃へと変え、レーザーを放射。
それを紙一重で避け、避けた勢いそのまま裏拳を頬へ叩き込む。ロボ幹部の頭はあらぬ方向に傾き、次いで腹部へ蹴りを打ち付けて吹き飛ばした。
「まあ、避ける必要も無いが回避した方が的確な一撃を与えられるからな」
撃たれた場合、無傷でも若干押されて距離が開く。なので躱したとの事。
物事をトコトン楽しむ性格ではあるが、合理的な判断を下す事も割とある。
先程の戦闘を見る限りそこそこ楽しんだみたいだから今度は効率的に倒す方向へシフトチェンジしたのだろう。
『破損率9%』
「だからどうした」
捻られた頭を戻し、空中で体勢を立て直して加速。ルシと組み合う。
しかし強靭な機械の方が握り潰されるように砕かれ、即座に再生してルシの体を殴り飛ばした。
反撃されるなんて珍しいな。やっぱりロボ幹部はかなりの力を有しているようだ。
地面を抉りながら吹き飛び、ルシの着弾地点に無数の光線が放射される。
辺りは熔解して瓦礫も残らず消滅し、さながら爆心地のように崩壊した。
「まずまずの威力だ。矮小な世界なら崩壊しているかもしれぬな」
『破損率……50%』
瓦礫すら蒸発して残らない熱量を受けても尚無傷のルシが飛び出し、ロボ幹部の上半身と下半身を分離させた。
ついに強靭な身体が此処までのダメージを負ったな。更に追撃し、魔力の塊を打ち出して消し去る。
『まさか此処までとは……更なるエネルギーを解放せねばならないようだ』
「まだ形態があるか。その煩わしい見た目をさっさと変えよ」
『言われずとも。そうしなければ此方がやられてしまう』
ロボ幹部は液体のように広がり、粒子レベルで分解して再構築を執り行う。
こう言うのを見るとSF感が出てくるな。見れば周りにある残骸や機械兵をも飲み込み、その体積を大きく増やしていった。
『今戦った事によって得た力も学習した。同じ手は二度と食わない』
「おお、このセリフとかもそれっぽい」
「フッ、全力には程遠い力しか出していないが、そこからどうするのだ?」
『上がり幅を推測すればどの程度上昇するのかも把握出来る。数百倍の差があろうと対応は出来よう』
「クク、数百倍……程度か。それは誤差だな」
素体は第三形態。それがそのまま大きくなったような見た目。
しかし妙に肌色チックで遠目から見たら一糸纏わぬ女性が立っていると思うような危うい代物だ。……っと、また邪念が。ルシに突っ込まれてしまう。
何はともあれ次は第四形態か。今までの戦闘から色々学習して更なる力も得た。加えて周りの瓦礫を巻き込んだ事で完全に回復した。
戦う度に強くなるロボット型幹部。かなり厄介な相手だが、巨大化したしそろそろ最終形態かもな。
所有スキル
・光線ライフル
・刃足・レーザービーム・光線弾
・サイコキネシス・ボルトキネシス・フォトンキネシス
・超遠光線・形態変化(獣)・毒液・加速撃




