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異世界7-3 機械の魔王軍幹部

『殲滅』

「……!」


《認証しました。新たなスキルを登録します》


 片手から光線が放たれ、俺は絶命した。

 この成す術無く一瞬でやられる感覚も一週間振りだ。

 そして新たなスキルを得たが、今の攻撃はヤバいな。光線がどこへ到達したのか、先が見えない。

 背後に連なるは焼け溶けて倒壊したビル群。地面は大きく抉れ、幅四〇〇メートルくらいは削れていた。

 余波だけでこれとは、とんでもない威力だ。


「光線は星を突破して宇宙の彼方へ消え去ったな。星を一周して再び舞い戻る事は無いだろう」

「……星の重力と分厚い天井も軽く貫いたのか……やっぱり強いな」


『おかしなモノだ。確かに直撃した筈だが、ピンピンしている』

「ロボットがピンピンなんて慣用句を使うのかよ。変な話だ」

『気にするな。様々な言葉を使えるだけだ』

「その言葉はあんまし必要無いと思う」


 軽口を叩けるくらいの学習能力があり、流暢に話せる。

 ホントにロボットとは思えないくらいの存在だな。見た目と装備がまんまだから人間と勘違いする事は絶対に無いけど。


『さあ、続行する』

「流暢ではあるけど、短絡的な話し方。そこんとこはちゃんとロボットしてるんだよな」


 数言だけ告げ、ロボ幹部は再び光線を射出した。

 向こうにはレジスタンスの人達が居るが、ディテも居るので巻き込まれる心配は無いだろう。

 ロボットは固定砲台の如く乱射し、次々と周りが崩壊して行く。

 今のところ大きな動きは無いな。破壊規模は大きいが、ただ光線を撃ちまくっているだけだ。


「にしても、ゴツイ幹部だ」


 超能力によるバリアを張りながら改めて幹部の姿を確認。

 足は車輪であり、大きなボディに無骨な金属の腕が左右合わせて四本、それらはそれぞれ銃口に差し替えられており、見ての通り本体は動かず乱射中。

 乱雑に見えて隙は無い。闇雲だからこそ常に危険だからだ。別に俺は死んでも問題無いが、吹き飛ばされたら近付けないしな。


「やれやれ。防戦はつまらん。さっさと仕掛けるぞ」

「あ、ルシ! ……まあルシはその方が性に合ってるか」


 生き返る俺とは別に、ルシはシンプルに相手の攻撃を耐えた。それどころかほぼ無傷。

 なのでなんの心配も無く、止める理由も無いだろう。


「ポンコツよ。貴様はどの程度やれる?」

『初対面でポンコツ呼ばわりは酷だろう』


 光線が放たれ、ルシはそれを正面突破。眼前……なのかは分からないが近くに迫り、ロボ幹部を殴り飛ばした。

 その一撃で浮き上がり、ルシ自身も跳躍して回し蹴りを打ち付けた。

 それによって更に吹き飛び、複数の高層建造物を突き抜けて砂塵が舞い上がった。


「フム、頑丈な体だ。ポンコツなりに強固な造りのようだな」


『生身の人間にしては凄まじい力と思ったが、認識してみれば魔王様と瓜二つ。その他まで類似しているな』


「お、気付いたか。クク、我は古代兵器だからな。貴様らの主と同じ見た目をしているのさ」


『古代兵器……認証しても兵器要素を感じない。本当にそうなのか?』


「魔王に似ており、改造されておらずとも人間離れした力を有していればそれくらいしか候補も無かろう」


『タ、確カニ……』


 うん。やっぱりこの幹部はポンコツロボットかもしれない。

 あまりの動揺に言葉も戻ってるし、そもそも言いくるめられるってなんだよ。

 ロボ幹部は言葉を戻して言語を続ける。


『しかし、仮にそうであったとしてもやる事は変わらない。ただ対象を排除するのみ』


「そうだな。それはそうだ」

『……!』


 ルシが踏み込み、ロボの胴体に蹴りを突き刺した。弾かれるようにまた吹き飛び、着弾地点へ既に回り込んでいたルシは魔力からなるエネルギー波を放出。

 爆発が起き、ロボ幹部は巻き込まれた。が、多少の傷や汚れ程度で壊れてはいなかった。


『破損率4%……戦闘を続行する』

「己で分析して確認するか。しかし、破損率が100%になったら計れないから何の意味も無かろう」

『……破損率……27%……』


 踏み込み、ロボ幹部の4本腕のうちの一本をもぎ取った。

 そこから光線を放ち、胴体を貫く。


「ほう、これはいい。我が魔力を込めるだけで貴様以上のレーザーを撃てるようになった」


『……このままではマズイ状況だ。形態を変更する』


「形態か。因みにだが、今が第一形態だとして第何形態まである?」


『答える義理はない』

「ロボに義理も人情も何も無いだろう」


 次の瞬間、膨大なエネルギーがロボ幹部の中に集い、目映い光を放出する。

 形態変化可能なロボット。これもまたSFっぽさはある。質量保存の法則を超越したりする事が屡々(しばしば)あるが、この幹部はどのパターンか。


『第二形態……獣』

「畜生に成り下がったか」

『ありとあらゆる生物の力を使える。排除する』


 刹那、犬型ロボットの口から莫大な光線が吐き出された──って、そんな生物はいねーよ!?

 光線も相変わらず健在らしいけど、色んな意味でメチャクチャだ。

 そのビームをルシは跳躍してかわし、幹部はまた形を変える。


『空中に逃げようと無駄だ』

「ほう、猿か」


 ゴリラのような見た目となって手を組み、拳を振り下ろして地面へと叩き落とした。

 実際にやると指同士の隙間が擦れて痛い技だが、機械の体にそれは関係無いだろう。


『次はお前だ』

「デカい図体で機敏だな……!」


《認証しました。新たなスキルを登録します》


 瞬時に俺へ回り込み、巨腕にて体を粉砕される。

 何の対策もしていない常人なら即死か。それはありがたいが、他の人達の元に行かせる訳にはいかないな。


『生体反応あり。此方も此方で未知数だ』

「なんだ。サイや魔王から何も聞いていないのか。まあいいや。だったら俺のフィールドだ!」

『何を言っている。猿め』

「いや猿はお前ーッ!」


 ゴリラの体のまま巨腕が再び放たれ、俺は今得たスキルで応戦……って、痛……!?

 マジかよ。コイツがロボットなのもあって俺の体が変化したんだが?

 前世界のモーニングスターとも違う感じだ。


「オラァ!」

『機械の体……貴様もサイボーグか』

「改造人間染みてるのは否定しない!」


 巨腕と変化した俺の拳が衝突し合い、地面が余波で巻き上がって消し飛ぶ。刹那には周りの建造物も崩壊した。

 ちょっと痛みが伴うけど使い勝手の良いスキルだ。幹部クラスのスキルは基本的に使いやすい。


『排除』

「……っ、マジか!」


 拳同士の押し合いが続くと思いきや、相手の巨腕が砲門に変化して光線が撃ち込まれる。

 それによって俺の体は細胞残らず消し飛び、復活して距離を置いた。


「全身が武器になるんだったな……」

『まただ。手応えはあったが、倒し切れない。分析を開始する』


 流石に不思議と思ったのか少し分析。

 そう思える感情があるだけでかなりの物だよ。その上で慈悲とかは全く無い。

 良い塩梅だ。


「貴様、あれで我を倒したと思ったのか?」

『……!』


 開始と同時にルシが横から蹴りを放ち、瓦礫の方へと吹き飛ばす。

 当然のようにルシも無傷。そりゃそうか。星を破壊するエネルギーがあったとしても大して効かないような存在だ。万全なら多元宇宙崩壊のエネルギーを受けてすら行動可能な訳だからな。


『厄介。サイが逃走せざるを得なかった理由を理解した。その上で何の問題も無い』


「だってさ、ルシ」

「クク、形態変化(ごと)に相応のパワーアップもするのだろう。大したやつだ」


 瓦礫を消し飛ばし、ほぼ傷も付いていない姿で現れる。

 サイが範囲と多様性ならこのロボットは強度と応用性の塊か。時間が掛かりそうな相手だ。

 魔王軍幹部のロボット。確かに相応の力は秘めている。

所有スキル

・光線ライフル

・刃足・レーザービーム・光線弾

・サイコキネシス・ボルトキネシス・フォトンキネシス

・超遠光線・形態変化(獣)

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