異世界6-6 超能力者
「取り敢えず、キミは敵みたいだから俺が相手をしよう。此処まで来れた事への敬意も払い、俺が直々にね」
「そうですか」
瞬間、俺の左右から二棟のビルがミサイルのように降ってきた。
超能力者ならサイコキネシスか念動力の一種だろう。物の操作などを行う能力。
これで殺された場合、俺は念動力を得られるのだろうか。
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そんな思考の最中、俺はビルに押し潰されて死亡。体内を巡っていた血液が辺りに噴き出す。
一瞬にして周りは血の海となった。
「これで終わりか。此処まで来た割には呆気な……いや……」
気付かれたか。テレパシーは常に発動している訳じゃないみたいだが、生存確認の為に俺へ向けた時今の思考が伝わったのだろう。
サイは体に力を込め、今一度向き直る。
「驚いたな。あれを受けて生身の人間が生きているとは。ひょっとして改造人間だったりする?」
「ある意味じゃバグまみれだけど、アンタの思うそれとはまた別の人種だ」
「成る程な。事情ありのようだが、問題は無さそうだ」
既に次なる攻撃は差し迫っていた。
地盤を浮かせ、一つ一つが鋭利になった破片。それが弾丸のように撃ち込まれる。
周りの物を浮かせるという点からしてもさっきの超能力と同じだろう。それなら同じ技で迎え撃てる。
「周りに壁を作る感じで……!」
「……! 君も超能力を使えるのか。驚いたよ」
「まあな!」
破片のマシンガンは同じ念動力の壁にて防ぎ、辺りに散らす。
その余波だけで周りの建物が崩落する始末。単なる破片がこのレベルに強化されるなんて恐るべしだな。
けどまあ、要領ならルティアの念力で掴んでいる。
「ルティア。知り合いの名前か」
「ああ。そんなところだ」
「思考を読まれている事に対して特に何も思っていないな。つまり君の仲間にもそう言う人達が居るようだ」
「まあな」
超能力者相手に隠し事は出来ないが、別にどうと言う事はない。
隠し事云々よりも前にやるべき事はコイツをどうこうしなきゃならないからな。
「どうこう出来るのか?」
「やってみるってだけだ」
鉄の地面が捲れ、捲れ!? その瓦礫が無数に飛び散った。
何かを仕掛けてくるのは明白。超能力者っぽい技と言えば念動力の物体操作にそれを応用した様々な属性攻撃。テレポートとかの移動術に透視とか千里眼とかの眼力。
その他にも色々あると考え、今仕掛けてくる事は何かを考えなくちゃならない。
「考えている時間も勿体無いだろう」
「……っ」
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瞬間的に俺の体が感電し、そのまま絶命した。
ボルトキネシス的なやつか。知名度で言えばパイロキネシスの方が高いかもしれないけど、即死させるなら電気を操るこれが手っ取り早いって訳だ。
けど、これも得られた。要領は魔法に近いからすぐに扱える。
「そらよっと!」
「同じ力……不思議なスキルを持っているのか。確実に直撃したのに無傷な姿。体はともかく、着用物までノーダメージは変だよな」
「はっ、テレパシーも常に使っている訳じゃないのか」
「単純に五月蝿いからな。けど、キミ相手には使った方が良いかもしれない」
薄々俺のスキルに気付き始めているが無駄だ。俺ですらどんな効果があるのか未だに分からないんだからな。
攻撃方法は基本的に大技ぶっぱになるし、思考を読んだところで防ぎようがない。
「本当に不思議なスキルだったようだな。仕方無い。分かるまで確かめてみよう」
「結構痛いからやめてくれ」
「断りたいが、技を誘っているようだな」
「流石に誤魔化し切れないか」
感付き始めているな。
常に思考も読んでいるだろうし、ボロが出る前に仕掛け続ける。
「ボロ……つまりそれにも何かしらの弱点がある。出させるのが良いか」
「やれるならな!」
念動力を使い、俺も周りのビルを浮かせてサイへ放った。
遠距離に届いて重い物も持てる手と考えれば魔法よりも利便性は高いな。
それにビルを放り投げられているって事からしてもなんか俺が強くなったような気分になれる。
「使っている技から考えれば俺が行った事しかしていない。その能力はコピー的なものか」
「当たらずとも遠からず。まあ一種ではあるな」
読まれているなら変に誤魔化す必要も無い。前述したように俺にも分からない力だからな。
そもそもボロ自体があってないようなものだし、増援が来るまで耐えきれば良い。
「増援か。増えたところで関係無い気もするが、俺の力を目の当たりにしてその希望を抱いているって事はかなりの強者という事だ。そうなると魔王様へ反逆しようとしている者達じゃないな。あれらは口先だけのザコだ」
「ま、全次元で三本の指に入るだけの存在ってところかな」
「それはスゴい。本心でそう言っているという事は、その強さに説得力があるって訳だ」
「そうだな」
念動力同士のぶつかり合いが生じ、金属の道と建物が次々と倒壊していく。
これだけ大きな音ならすぐに来るだろう。他に用事とかが無ければな。
『侵入者発見』
『サイ様ガ戦闘中』
『助太刀致ス』
「ロボットやメカも集まってくるか……! てか、いつの時代をラーニングしたんだってのがあったな!?」
物音に気付くのは機械の方が早いか。そもそも二人が遠方に居たらビル倒壊の音に気付かない可能性もある。
向こうも機械兵は倒しているし、破壊規模はそう変わらないからな。
「そうか。助っ人の可能性がある人数は二人か。その二人がどれ程の実力かは分からないがこの場はケリを付けよう」
「まあ、形勢は俺が不利だな」
『『『排除……排除……』』』
機械兵達が一斉に迫り、俺目掛けて無数の光線が放たれる。
それのみならずサイ自身も仕掛け、圧倒的質量に俺の体は押し潰された。同時に光線が突き付け、複数回死んだ。
だけど新しいスキルは得られなかったな。全部一度食らったものか。
「食らう事で行える模倣。ネタが割れてきたな。全てのダメージは負っていた。それどころか死んでいた。なのに生き返り、その技をコピーする。死した時点でもう一つのクローンを生み出していたりするのか? それさ死に際に学習するナノマシンが体内に搭載されていると考えるのが道理だ」
どうやら俺のスキルの正体はクローンとナノマシンらしい。……なんてな。
この世界だとそう言う発想になるんだな。超能力も光線も科学だから当たり前と言えばそうだけど。
「フム、俺の推測は違うようだ。科学的に証明出来ない力なんかこの世にあるのか?」
「証明出来ない証明が俺の存在だ。不思議な事は世の中にあるし、その方が面白いだろ?」
「それもそうだな。解き明かす楽しみもある」
瓦礫と機械兵が空中に舞い上がり、瓦礫は雨のように降り注いで機械達は全方位から攻め立てる。
周りに影響を与えればこんな感じで応用も出来るんだな。
けどまあ、俺も防げるから問題無しだ。上手くすれば全方位叩けるかもしれない。
「“レーザービーム”+“サイコキネシス”!」
ビームを放出し、それを念動力でねじ曲げて周りの機械兵を破壊。そのままサイの方にも向けるが当人は同じ念動力で防ぎ、別の光線が俺に放たれた。
「……ッ!」
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的確に心臓を射抜き、俺はまた絶命。
光の超能力。フォトンキネシス辺りの力を使われたみたいだな。
この世界では光関連の攻撃が多い気がする。街全体がそんな感じだし、と言うか俺って光とは何かと縁があるな。
フッ、どうやら“闇炎の使者”じゃなく“光の貴公子”なのかもしれない。
「……何をアホな事考えてる?」
「うるせっ」
そうだった。コイツにも思考は読まれてるんだ。
危うくまた黒歴史を増やすところだったし、気を付けなくちゃな。
「しかしその様な異名があったとはな。こちらも気を引き締める必要があるか」
手遅れだったー!?
いや違うんスよサイさん。採算じゃなくてサイさん。これはちょっとしたアレがアレでこう言うアレじゃなくてですね!
「急になんだ。そのラフな話し方は。と言うか思考じゃなく普通に話せ」
「あ、そうだった。つい何時もの癖で」
「何時もの……つまり仲間もテレパシーの類いが使えるという事か」
「そうだな」
何はともあれ、黒歴史に新たな1ページが刻まれたところで仕切り直しだ。
俺とサイの戦闘は、現状増援が来るまで続くのだった。
所有スキル
・光線ライフル
・刃足・レーザービーム・光線弾
・サイコキネシス・ボルトキネシス・フォトンキネシス




