異世界6-4 機械兵
「では行こう」
「待て。何の装備も無しにか? 此方としても蓄えは少ないが、簡易的な光線銃くらいは貸し出せる」
「要らぬ。貴様らとは体の作りが違うのでな」
「相変わらずトゲのある言い方だが、成る程な。古代兵器のクローンだからか」
「そんなところだ」
光線銃を受け渡そうとしてくれたが、ルシは必要無いとその申し出を蹴る。
本来ならそれ自体が変に思われるところだが、古代兵器設定なので受け入れてくれた。
俺も光線銃系のスキルは得たから必要は無さそうだけど、一応受け取っておくか。……使い方は全く存じ上げてないけど。
「お前達は必要だな?」
「ああ。一応な」
「私は自分の武器があるから必要無いわ」
そしてディテはある風に見せる事で受け取り拒否。
考えたな。結果的に俺だけ受け取ったが、前述した通りなので戦法はさっき受けたスキルでだ。
「一先ず貴様は下がっていろ。この場は我らが受け持つ。そう言う話であったろう」
「気に食わないが分かった。監視用の小型カメラを飛ばしておく」
「構わん」
それだけ告げ、ルシはメカ達の方へ踏み込んで駆け出した。
踏み込まれた金属の地面にはバキバキと言う音と共にヒビが入り、破片が散って一瞬にして消え去った。
「加速装置は当然のように搭載済みか。古代の技術でこれ程までとは」
あ、そっか。
この世界線的に素の身体能力じゃなく、全身が改造されているとかそっち方面に解釈されるんだ。特撮ヒーローみたいだな。
まあそれは良い。寧ろ好都合ではあるからな。
俺は遠距離から狙いを定める方向で行動するか。前の世界で狙いを付けるコントロールは上がった。今ならそれなりのスナイプが出来る筈だ。
「それじゃ俺達も行こう」
「そうね。ルシちゃんだけに任せる訳にはいかないわ」
ルシに続くよう、俺達も陣形を取る。
俺は敵に狙われ難く此方が狙い易いビルの上へ。ディテはルシと同じようにメカ兵士達へ迫る。
奪還戦が始まった。
『ピピピ……侵入者発見。排除シマス』
「積まれた技術の割には古い認知力だな」
メカはルシの存在を認知し、定型文的な音声を発して横から銃口を生み出す。
間髪入れずそれが撃ち出され、背後の建物が爆発と共に倒壊して消滅した、
「この程度か。確かにレベルの低い所なら一体で壊滅させられそうなものだが、具体的な破壊力で言えば一発でビル一棟粉砕。くだらぬな」
『───』
光線は躱し、懐へと踏み入って下方を貫通。そのまま手刀で切り裂き、メカの機能が停止した。
メカが止まり、ルシの周りはロボット兵が囲む。
『侵入者……侵入者……』
『排除……排除……』
『滅セヨ……滅セヨ……』
「兵器型のメカ兵に人型のロボット兵。どちらも変わらぬな」
複数体のロボットが飛び掛かり、ルシは跳躍にて回避。
先程までルシの居た所は大きく割れ、対象が居なくなったと理解した瞬間に光線銃を取り出し避けた方向に撃ち出した。
「物理的な腕力と遠距離対応の光線銃。やれやれ。発展している割には随分と旧式の在り方だな」
光線も避け、そのままロボット達へ直進。弾が背後の建物に当たって粉砕すると同時にルシもロボットを砕いた。
「まだまだ居るが、性能は低く大した事もない。何の面白味もないな」
渦中へ飛び込み、次々とメカやロボットを破壊していく。
流石の技術の結晶も大魔王が相手じゃ分が悪いか。
ディテもディテで躍動していた。
『排除』
「アナタには無理よ」
光線が向けられ、直後に素材ごと消滅した。
向こうからしたら単純な破壊のルシよりは材料も消し去るディテの方が厄介かもしれないな。
見張りのカメラがあるのでディテは見た目だけの光線銃を創り出し、神力からなるエネルギー弾を撃ち込んで前方に並んだメカやロボットを消滅させた。
『破壊……』
「されるのはアナタよ」
重鈍そうな足がディテの頭上から迫り、それは片手で受け止める。それによって足元が陥没するが意に介さず、神様のエネルギーによって足元から消し去った。
周りには数多の機械が囲むがすれ違い様に全てを消滅させて優雅に歩き進む。
「ディテとルシは問題無さそうだな。俺のサポートすら要らなそうだけど一応働いておこう」
高台から下方の様子を眺め、階段を登る。
狙撃ポイントに到達した俺はそこから狙いを定める。光線銃は使い方が分からないのでスキルの“光線ライフル”でな。
『…………』
「意識外から……」
狙いを付け、そのまま射出。
RPGのように剥き出しのコアがある筈もなく、弱点らしい部位はよく分からないので、とにかく脳天から体へ貫通させる感じにする。
光弾は軌跡を描き、狙い通り一体のメカを貫いた。
『───』
『外部カラノ攻撃。仲間破壊』
『弾速、着弾点カラ軌道ヲ確認』
『七〇〇メートル先ノ高層建造物カラト推察』
『『『排除……排除……排除……』』』
そしてすぐにバレた。
ルシはあんな風に言っていたけど高性能だな。まあルシの比較対象は自分だし、全ての存在が低レベルなのだろう。
スナイパーは撃ったらすぐ離れるのが原則。俺はビルを駆け降り、別の場所を探す。こういう時身体能力強化や飛行のスキルが恋しくなる。移動はかなり重要だからな。
『発見……発見……』
『排除……排除……』
「っ早。もう見つかるレベルかよ……!」
マジで移動は重要だな。一瞬にしてここまで到達しやがった。
普通に考えれば分かるか。メカやロボットの方が人間より遥かに速いんだ。
『排除』
「……ッ!」
《認証しました。新たなスキルを登録します》
そして鋭利な足の刃によって俺は切り裂かれ、絶命した。
『生体反応無シ。死亡確認』
『生体反応アリ。生存確認』
『排除』
「復活へのレスポンスは無しかよ……!」
一度は死亡認定されたが、即座に行動が変わった。
人間や知恵のある存在じゃないから特に驚きもしないのだろう。知能的な意味ならスーパーコンピューター相当はあるのかもしれないけどな。
けど近距離のスキルは手に入れられた。
『排除』
「確認させてくれないのね」
《認証しました。新たなスキルを登録します》
直後にビームが撃たれ、ビルごと俺を破壊した。
認証したって事は光線ライフルとはまた別のエネルギー弾って訳か。けどコイツらから移動スキルを得る希望は無さそうだな。車輪のメカに轢き殺されればそれも可能になってくれるか?
『生体反応無……アリ……』
『続行スル』
「お、一瞬動揺したな。ウケるんですけどー!」
『排除……排除……』
俺の言葉へ反応は無し。
会話も成り立たないし殺戮と防衛に必要な事だけ付け、余計な部分は排除した感じか。
どこまでいっても無機質なメカだ。
『排除……排除……』
「ロボット兵まで来たか」
メカが手間取っているのを確認したからか、ロボット兵も光線銃片手に現れる。
死ぬ際の痛みは相変わらず健在だけど、お陰で色々なスキルは得られそうだ。
『排除』
「……!」
《認証しました。新たなスキルを登録します》
光線銃に撃たれて絶命。
一応新しいスキルも手にしたな。ライフルとかメカのエネルギー弾とは違う武器なのか。
これで基本的な攻撃に至るスキルは得たか?
『排除失敗』
『別手段ヘ移行スル』
「まだだったか……!」
光線銃が無理だと判断され、ロボットは肉弾戦へ移行。
っし、これで身体能力も強化出来るな。
『排──』
「……!」
次の瞬間、ロボット兵が光弾に撃ち抜かれて破壊された。
そちらの方向を見るとレジスタンスの方が。
「何をボーッとしている! 死ぬところだったぞ! あの兵の動きを見誤るな!」
「……っ」
余計な事を……!
善意からの行動なのは分かってる。だけど俺にとっては不要な手助けだ。
せっかく身体能力強化のチャンスだったってのに機会を失った……! 機械だけに……うん、やめとこう。
「礼は要らん。すっトロい者を助けただけでされる筋合いも無いからな」
「……ああ」
なんだコイツ!? 礼ってなんだよ!? お礼参りでもしてやろうか!?
完全に自分が助けてやった風に話してるぞ!? 恩着せがましくないつもりなんだろうけど鼻につく言い方しか出来ないのか!?
俺は死ぬ事が目的だってのに人の命を軽々しく助けてんじゃねーよ!!
それもそれでなんかあれな言い方だな。
だが、もう俺は完全にルシ側になった! コイツ腹立つ!
「フッ、そうか。ならば全てが終わった暁には、共に世を蹂躙する旅へ赴けるという事だな」
「ルシ。いつの間に……と言うか、それとこれとはまた別だからな!?」
また曲解されてしまった。
アイツが苦手なのは変わらないが、ルシと共に世界蹂躙とかは別に趣味じゃない。
いつの間にかあの人は居なくなってるから今の会話は聞かれなかっただろうけど、傍から聞いたら魔王軍の悪巧みだよ。
『『『排除……排除……排除……』』』
「まだまだやって来るな……敵さんも」
「何万の機械だ。一瞬で消し去れぬ事もないが、それをすると都市一つが消し飛んでしまうからな。ちゃんと気を遣っているのだぞ?」
「確かにルシにしてはちゃんとしてるな」
「我にしてはとはなんだ。我にしてはとは」
ルシとディテなら、この軍隊を一瞬で消滅させる事も可能。しかしそうすると奪還すべき街が崩壊したり不利点が多くなるのでしない。
それによってこの世界の魔王に気付かれてしまう可能性もあるし、チマチマやって行くしかないのだろう。
「先は長いな」
「そうだな。やはりこの街ごと」
「それはやめてくれ」
思ったより色々と大変な街の奪還作戦。それはもう少しだけ掛かるな。
所有スキル
・光線ライフル
・刃足・レーザービーム・光線弾




