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異世界5-9 合体すれば強くなる

「……!」


《認証しました。新たなスキルを登録します》


 ──時間が飛び、俺達の体が吹き飛ばされた。

 これで時間魔法も手に入れられたが、成す術無くやられてしまったな。

 基本的な対策として、時間停止は同じ能力があればその空間を動けるってものだけど、魔王の場合はどうなるか。完全なる独立空間の可能性すらあるぞ。

 よくある弱点としては止められる時間が短いとかあるが……。


「……魔王。アンタが止められる時間はどれくらいだ?」

「どうした藪から棒に。そんなの我の自由に決まっているだろう」


 まあそうなるよな。この魔王には弱点が無い。元々が全次元に置いて1~2の力を有するルシなのもあって使用魔法にデメリットとかは存在しないのだろう。

 ぶっ壊れとかチートなんてちゃちな生易しいものじゃあない。

 こんな相手どうやって倒せばいいんだ……。此方にもディテとルシが居るとは言え、停止空間を自由に動ける訳じゃない。魔王の能力がそう言うものだから。


(……フム、1つ思い付いた案がある。試してみるか?)

 え!?


 するとどうだろうか。ルシが何らかの案を思い付いたとの事。

 もし試せるなら願ってもない事だが、自分の空間を自由に行動出来て一方的に仕掛けられる魔王へどんな方法が……。


(簡単な話だ。我が(・・)君に(・・)成れば(・・・)良い(・・)

 ──ぇ……?


 そう言われた瞬間、俺の意識は遠退いた。問答無用かよ……。何をしたのか検討も付かないが、ルシが俺に成るとは一体。

 おそろしく疲れ、眠い日の夜のように、思考の間もなく俺の意思は途絶えた。


「さて、さっさと我を仕留め、我が世を統べる本体となろうか」


 魔王が告げ、世界が灰色になる。

 下方から溢れ出る溶岩。再生途中のルティア。瓦礫の上から落ちる破片すら止まり、魔王だけの空間が形成された。

 降り立っては優雅に歩を進め、ルシの前へ──


「──いや、今はルシ()の前へ……が適切な表現だったな」

「……!?」


 灰色の世界にて拳に力を込め、近距離まで来ていた魔王()の体を殴り付ける。

 勝利を確信している時が一番の攻め時。特に無抵抗で何も出来ないと思わせる事が最重要。同程度の実力者が相手の場合はな。

 首がねじ曲がった魔王は吹き飛び、瓦礫を飛ばし溶岩の中へと着水……着溶か? した。

 衝撃で舞った欠片や塵はその場で止まり、改めて静かな世界となる。


「……っ。何があった……! なぜ貴様が動ける……!? いや、そもそもその顔……面影は残っているが……我ではない……!?」


「そうだな。肉体で言えばテンセイだ。そして動ける理由だが……同じ我でありながら存ぜぬのか。まあこの様な機会なんぞ滅多に無かろうて。大抵は我1人でどうとでもなる。今のような事態が極稀だからな」


 驚愕の表情を浮かべる。我はその様な顔をした事が無いからこうして見ると新鮮だ。

 さて、改めて答えてやるとしよう。我のよしみだ。


「率直に述べれば“憑依”だ。我のみならず悪魔や霊達もたまに行うだろう」


「憑依だと……!?」


「ああ。その体の者の意思は精神世界へと送り、その者へ成り代わる術。デメリットとしては著しい身体能力の低下と使える魔法やスキルがその者の有するモノだけになるという事だ。しかし現時点の我が使えぬ時間魔法と空間魔法を使えるようになり、貴様だけの空間を動けるようになった。ああそれと、我自身の力も多少は上乗せ出来るがな」


斯様かような芸当が出来たとはな。だが確かに今の一撃……かなり弱体化していたな。時間魔法を手にした事で我の世界へ介入出来たが、攻撃力も何もかも足りなかろう」


「貴様にはこの程度で十分だ」


 ──魔王と話すルシの姿を、俺はどこからか見ていた……って、俺の体乗っ取られちゃったんだけど!?

 いや、確かに時間魔法は今さっき入手したけど、何の説明も無しにこれかよ!?


(悪いな。即座に時を止めてくるであろうと判断し、物言わず憑依してしまった)


 ルシ! 精神世界どうこう言ってたけど、この世界にも入ってこれるのか!


(ああ。今の我と君は文字通り一心同体。この場で会話も出来る)


 それは良かった……けど、なんで裸なんだよ!?


(何を申す。ここは意思だけの世界。衣服なんぞある訳無かろう)


 じゃあなんでルシはこの世界での姿のままなんだ!?


(それも簡単。精神や意思だけの世界。己の知る己の肉体があるのはおかしくなかろう)


 え? うーん……なんか説得力があるような、ただの屁理屈のような……。

 ルシには俺を揶揄からかいたいって前科があるしな。


(手厳しいな。まあ前科持ちは否定せぬしそれもまた仕方無し。一先ず我と共に戦って貰おう)


 現状それしかないからな。仕方無い。分かったよ。

 俺よりはルシの方が戦闘に慣れており、スキルとかの使い方も把握している。なので文字通り身を委ね、魔王を前に向き直った。


「止まった時の中を動けはするようだが、依然として他の者達は停止したまま。更なる弱体化を喫した我に我が敗れる道理はない」


「何度も言わせるな。この力で十分だ。テンセイは色々と便利なスキルを覚えている」


「……!」


 瞬間、魔王の体が硬直した。

 厳密に言えば我が硬直させたというもの。“遠吠え”。元より遠くとも効くが、実力が近しいのなればより効果を発するようだ。

 動けぬ魔王へ飛び込み、肉体強化に我の力の上乗せした拳を打ち付ける。

 その体は舞い上がり、光球をもちいて爆発させた。


「得られたスキルの威力はその者と同等。それに我の力が乗せられるのなればそれなりの威力を発揮するだろう」


「小癪な……!」


 止まった時の中。それ故に我から離れた光の爆発は停止し、その中から魔王が魔力の弾を撃ち込んだ。

 我は存在抹消にて魔弾を消し去り、肉光変化にて現状最速の光の速度で近寄る。実質亜光速らしいが、我の力の上乗せにて光と同等にまで引き上げた。

 魔王は黙視出来ているが、まあ問題無い。


「耐えられるか?」

「……っ。うがあああああ!?」


 認識発狂。テンセイは好んで使いたがらぬスキルよ。その意思は尊重してやるが、味方も動けぬ今は何の問題も無かろう。

 それによって止まった世界が再び動き出すので即座に消し去り、発狂して動けぬ魔王の懐に差し迫る。


「貴様の部下のスキル……良いな。今の我なれば重宝出来る。ある種の寝取りと同様よ」

(何を言ってるんだよ!?)


 意識からテンセイのツッコミが。フフ、この観点から言葉が聞こえるのもまた面白い。

 魔王の腹部には拳を突き刺し、そのまま殴り飛ばす。そして前述したよう、部下の力を付与。


「……ッ!」


 吹き飛ぶ最中に複数回の爆発が巻き起こる。

 空中にて何度も爆発しながら突き進み、地面へと激突。大きなクレーターが造り出される。


「次は幹部の姉妹からなる合わせ技で行こう」


「……!」


 魔弾を放ち、魔力に爆破を付与。それによって着弾するたびに爆発が起こる。元のステータスがオール0であるテンセイ。魔力量とかは存在しない概念。正にバグと呼べる存在。

 大半の力は我に大きく劣るが、限られたスキルで応用や拡張を考えて使うのは中々に面白いな。


「……おっと」


 刹那、我の肉体が切り裂かれた。

 厳密に言えば肉体はテンセイの物だが、まあ片腕だけ。憑依を解けば我の肉体は再生し、テンセイの体も多分大丈夫だろう。


(いや、俺が死ぬんだけど!?)

 誤差の範囲だろう。

(誤差は大差だよ!)


 ともあれ、魔王も本気を出してきたという事かもしれぬな。既に発狂は解けている。


「やれやれ。先程から我の部下のスキルだけで攻めてくるとはな……当て付けか?」

「いやーたまたまぐうぜんだよ。このようなこともあるのだなー」

「白々しい……!」

「クク、貴様の部下の魔法は中々良いぞ。これからも重宝してやろう」


 そう言えば、ルシの奴はずっと魔王の部下のスキルで攻めていたな……。たまに違うのも使ったけど、主体の攻撃はそれだ。

 なんというか、まあルシらしいっちゃらしい。さっきもNTRとかよく分からない事を言っていたしな。

 何故態々(わざわざ)表記を変える? 普通に寝取りと申せば良かろう。

 いや、なんか言いたくない。

 ウブだな。だからこそ揶揄からかい甲斐があるのだが。

 ノーコメントで。


 何はともあれ、更に利用してやろうか。基準値は高いからな。今のやり方でなくとも使用頻度は多かったであろうて。


「我が部下の力を弄ぶな……!」

「だったら貴様が己の手で止めてみよ。魔王なのだろう?」


 そう告げ、我は闇を顕現。

 フム、なんとなくこの力はしっくり来るな。闇操作というくくりが故、応用性も更に高い。

 ……と言うか、もはやどっちが正義か悪か分からないよ……。基本的には悪なんだろうけどさ。

 そうだな。しかし戦いには正義も悪も無かろう。勝つか負けるかのそれだけよ。勝者側が如何なる愚行をしていたとしても後の世では正義となるのが人類史であろう。明確な正義と呼べる行為は他者に生きる糧である食物を与えるくらいだ。

 かもな。相手を傷付けるのが悪い事なら戦争なんて全員が悪役だ。

 そう言う事だ。


「さて、止めてみよ。魔王よ」

「止めてやるさ。我が力を以てしてな……!」


 また立場が逆転しそうなやり取り。けどもう何も言わない。

 俺の使えるスキルのみならず、ルシの力の上乗せがあるからこそ対等に戦えている訳だからな。

 俺達と魔王の戦闘。それは時間停止を解除すると共に次のステージへと進んだ。

所有スキル

・───

・光球・光剣・肉光変化・光線・光蹴

・遠吠え・お手

・魔弾・魔衝波・火球・肉体強化×7・溶岩球・大水球・暴風球・大岩石

・モーニングスター(武器)

・熱光線・熱爆発・火炎鞭・炎爆球

・飛翔・貫通・風圧・メテオウィング

・自爆発・爆破・大噴火・付与爆破・核分裂・超爆発

・火炎息・雷降・暴風波・洪水衝・突進・流星・槍尾・崩星光波

・直視の即死・肉体変化(槍)・認識発狂

・空想顕現(槍)・インフェルノ・反射・無限鉄矢・鋼鉄圧球・死付与・蘇生阻止・存在抹消・石化

・闇操作・闇突・闇箒・ミニブラックホール・闇斬

・飛爪斬

・分からない攻撃・空間撃・時間操作(停止)

・冥界の爪

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