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異世界4-9 闇と影

「やれ。“影の巨人”」

『…………』


 手を伸ばして指示を出し、それに従う巨人はどこまでも届く程に巨大な手を振り下ろした。

 一撃で揺らぎはしたがダメージは少ない。と言うかこの星の半分の大きさって事を考えれば、今のルシの小手調べじゃこれくらいが妥当か。


「クク……良いサンドバッグではないか」


 指の第一間接部分ですら山よりも巨大な体でもルシにとっては腕試し程度の感覚なのか。

 飛び出して跳躍。手の平の中心へ拳を打ち付け、その大陸並みの腕を弾き飛ばした。


「さあ、どうだ?」

『……!』


 空気を蹴り、腹部と思しき箇所を突く。それによって星の半分はある体が浮き上がった。

 影とは言え質量があるっぽいしな。かなりの重さだろう。


「あれを浮かせるか。大したものだ」

「巨人はルシが止めている。俺達も仕掛けるぞ!」

「おおー!」「ご主人様がそう言うなら」

「言われずとも続ける……!」


 厄介そうな巨人はルシ1人で問題無いだろう。

 死者同士で争っているから周りからの邪魔も入らないし、あれ程の力を使えば魔力の消費も凄まじい筈。形勢は有利だ。


「またゴミが舞っている。それならいっそ吸い込むか」

「……!」


 その刹那、指先に小さな黒い球体を形成。それは一瞬にして爆発的にエネルギーを発し、俺達の体が吸い寄せられる。


「これは……!」


「言うならミニブラックホール。本来はこの程度の大きさでも(ゴミ箱)が無くなってしまうけど、闇魔法からなるそれは本来の物とは異なる。対象のみを吸い込み、圧縮して消滅させる存在だ」


「ブラッ……!」


 言葉を発しようとした瞬間に俺達の体は吸い寄せられる。

 俺はともかくルティア達はマズイ。消滅したら元も子もないからだ。

 故に闇を展開。ルティア、ラナさん、グラドさんの3人を闇に包み、俺の体はブラックホールに飲み込まれた。


《認証しました。新たなスキルを登録します》


 そして復活。ブラックホール内の感想を言うなら、よく分からない。

 なんかこねくり回された気もするし、八つ裂きにあった気もする。ねじれた気もするし身体中の血液が沸騰した気もする。後他には……色々あり過ぎて痛みを感じる暇もなかったな。


「お陰でブラックホールをゲットしたけど……正直使い処が思い付かないな。危険過ぎる。俺は人とか殺したくないし」

「掃除機から抜け出してくるか。単なる蘇生とは違うようだ」

「蘇“生”……ハッ、俺をゴミ扱いしなくなったって訳だな。蘇生って言葉が適用されるのは生き物だけだ」

「……そうだね。おめでとう。キミは今日からコバエという事にする」

「嬉しくねえよバカ!」


 パンパカパーン! テンセイはゴミからゴミにたかるコバエに昇格した。って、誰が喜ぶか!

 とことん貶してくるなコイツ! 知り合いまで昇格したリヒトやエクエレ姉妹ってスゴかったのか!?


「羽も飛ばしてきたし、ピッタリだろう?」

「コバエに羽毛はぇよ!」


 ツッコミを入れつつ羽毛を展開し、ダク目掛けて射出。闇にて丁寧に払われるが、これも牽制みたいなものだ。

 本命は3人。景色に姿を溶け込ませられるグール。そして同じく変化させられるヴァンパイア。闇と羽毛に紛れて近寄るなど容易い所業だ。


「……おや?」

「もらった……!」

「なのじゃあ!」

「ノーコメントで」


 3つの影がダクを捉え、その手足をへし折った。

 体が揺らいだダクは完全には把握しないまま一瞬だけ思考が停止し、その更なる隙に放っていた“メテオウィング”が直撃する。


「……?」


 そのまま吹き飛んだ。

 このスキルはあくまで隕石並みの威力ってだけで、爆発するとかじゃないからな。

 しかし威力は十分。突き抜けて進み、森を破壊。地裂と共に割れ、遠方にて大きな粉塵が上がったのを確認した。


「やったかの!」

「いや、隕石が正面に飛んだって考えたら破壊範囲が狭い。途中で闇で弱めながら守ったかもな」


 隕石の威力は、別段理系に長けている訳でもない俺でも分かる程。

 一説では恐竜が絶滅したとか当時の地球上の9割が死滅したとか言われてるしな。今のスキルにそのレベルは無いにせよ、普通の隕石でも湖が出来たりするくらいなのでとてつもないだろう。

 ちょっと森を削って遠くで煙をあげる程度、ミサイルやロケットランチャーでも出来る。

 そうなると奴は、


「驚いたよ。コバエと死なないゴミに此処まで抵抗されるなんて想定外だ。認識を改める必要があるかもね」


 闇で手足を戻しながら上空から降りてきた。天使か悪魔の親戚ですかって訊ねてやりたいが、まあ悪魔の方が近いんだろうな。人間に対する認識的には天使でもあるけど。

 けどまあ認識を改めるって言ってたしゴミではなくなるみたいだ。どの道ロクな表現じゃないだろうけど。

 皮肉を込めて聞いてみる。


「ハッ、次はどんな表現でののしってくれるんだ?」


「そうだね……“蚊”かな。煩わしくて、時と場合に寄っては命を奪われる可能性がある。影の巨人と戦っている魔王様のそっくりさんは戦い振りを見る限り“脅威”と断定出来るけど、まだキミ達の攻撃には然程さほど脅威を感じないからね。どこまでいっても面倒臭い……殺しても殺してもいつの間にか部屋に出てくる羽虫のようだ」


「言い得て妙だな。ルティア達は違うけど、俺はそんな感じだ」


 ゆっくりと降り立つ。相変わらず怒る様子もないが、この余裕で淡々と話す様。初対面の時のようにテンション高く言ってないし、思春期の中学生のように俺達を意識しているな。

 その瞬間、周りが急に暗くなった。


『──』

「影の巨人がやられたか。強さも魔王様並み。全ての夜をかき集めても単独じゃダメだったかな」


 ズズーンと重い音と共に巨人が倒れた。

 全ての夜並みの大きさなので当然俺達も潰されたが、どういう訳かすり抜ける。

 質量が無くなったのだろうか。しかしそうなると今出た音の辻褄が合わなくなる。

 考えても分からないし、不思議な現象が起こったって思おう。闇能力の定義自体が割とあやふやだしな。基本的に破壊とか無効化だけど、大抵なんでもありだ。


「という事で……今からボクが“夜”になろう」

「……!」


 倒れた巨人の影を全て片手に集め、自身の魔力を己に返還する。

 ダクの体は闇の魔力に包み込まれ、さながら鎧のように全身へまとわりつく。顔には中世の貴族が着けるようなマスカレードマスクが張り付き、背部にはマントのような闇がバサリと舞い、片手に力を集束させて闇の刃が顕現する。

 禍々しくもどこか神々しいその出で立ち。言うなら黒騎士ダークナイトだろうか。

 ダクは闇の刃を横一線に薙ぎ払い、地面を抉りながら走る闇の斬撃が俺達の前方に巨大な亀裂を生み出した。


「夜の騎士……参ったな。ナイトナイトになってしまう。ゴリラゴリラゴリラみたいな感じだ」


「異世界でもゴリラとか居るのかよ。いや、まあそっか。イメージの世界だしな。そもそも言葉を訳すって概念があるみたいだし」


 夜の騎士。

 それはそれで妥当な名の気もするが、英訳による名付けに悩むダクは言葉をつづった。


「そうだね。改めて名付けるなら……“闇黒武装クリーナー”かな」

「いやルビ! クリーナーって、“掃除人(cleaner)”の事かよ!? “暗黒武装”の文字に対する当て字じゃないだろ!?」

「……? 何を言っている。文字なんて見えないが……」

「いや、何となく気がした……」


 ホントだ。俺は一体何を言っているんだ?

 文字なんて見えないし、見えるのは武装したアイツくらいだ。

 何はともあれ、夜の闇を全て己の身に宿したダク。今の一撃を見ての通り、一挙一動で地形を変えるなんて朝飯前。文字通りな。

 夜という概念と一体化してどうなるのかはよく分からないが、とにかくパワーアップはしたのだろう。


「さて、ボクが本気になるのは魔王様と戦った時以来だ。実に久しい……さあ、やろうか? 面倒な者達よ」


「ゴミから随分と出世したものだよ」


 俺達とダクの戦闘。周りの死者とアンデッド達も変わらず戦い続け、ルシも加わり佳境へと差し掛かる。

所有スキル

・───

・光球・光剣・肉光変化・光線・光蹴

・遠吠え・お手

・魔弾・魔衝波・火球・肉体強化×7・溶岩球・大水球・暴風球・大岩石

・モーニングスター(武器)

・熱光線・熱爆発・火炎鞭・炎爆球

・飛翔・貫通・風圧・メテオウィング

・自爆発・爆破・大噴火・付与爆破・核分裂・超爆発

・火炎息・雷降・暴風波・洪水衝・突進・流星・槍尾・崩星光波

・直視の即死・肉体変化(槍)・認識発狂

・空想顕現(槍)・インフェルノ・反射・無限鉄矢・鋼鉄圧球・死付与・蘇生阻止・存在抹消・石化

・闇操作・闇突・闇箒・ミニブラックホール

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