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異世界4-4 打開策

「さあ、貴様はダク様直属の死者か?」

「……」


 返事はしない。ただの屍だからだ。

 さて。このまま無言で誤魔化せるのはいつまでか。

 覚えたスキルがスキルな俺はともかくとし、ディテならば気絶させるのは簡単。しかしそうすると十中八九気付かれてしまうだろう。偽装とか出来ないしな。

 それは避けたいところ。俺達が取るべき行動は、


「いい? アナタは何も見ていない。私達が居なくなったら意識が戻る」

「……何ヲ……」


 ──そして、悩んでいた所にディテが部下の額に指を。何かを言い返そうとした瞬間に止まり、Uターンしてどこかへ離れていった。


「ディテ。何をしたんだ?」

「この数分の記憶を消し去ったわ。順調にレベルが上がって、相手と私にレベル差があるならちょっとした記憶の操作くらいなら出来るようになったのよ」

「マジかよ……じゃあコソコソ隠れながら進む必要無かったんじゃないか?」

「そうでもないわ。魔王軍幹部と今の私のレベル自体は然程さほど離れていない。部下達ならどうとでもなったとして、主力を呼ばれてしまったら支障をきたしてしまうもの」


 どうやら記憶の操作が出来るらしいが、それなりの制約があるので今回みたいに単独相手でなければダクを呼ばれる可能性があって不用意には使えないらしい。

 今まで通ってきた場所は基本的に1人以上だったし、使わなかった訳だ。

 しかし一時的に誤魔化せても長居は無用。どの道ダクの部屋には入らないので他の部下に見つかるよりも前に移動する。

 それなりに死者が多い場所へ来、使用人や部下に紛れて行動を起こす。


(取り敢えず、ここからは脳内で会話するか。こういう時テレパシーがあると便利だな)


(そうね。それでどうするのかしら? さっき言っていたように上手い具合に亡者だけの空間なんてあるかしら)


(そうだな……一通り部屋は見て回ったけど、本当に全部を見た訳じゃない……死者が配置されそうな場所は……)


 ここは大きな屋敷。そこにありそうな部屋を考え、どこなら死人を配置するか思案する。

 城なら地下牢とか処刑場とか、場所によっては闘技場とか色々思い付くが、屋敷か。生者の部下に対する扱いはよく分からないが、死者への扱いは悪辣極まりない。

 何の感情も表に出させてないし、任せるなら面倒な所だよな。最悪、他の部下の目を盗んで人が居ない場所に誘い込んだりしなきゃな。


(……やっぱそうするか。死者と生者の見分けは簡単。自分の言葉も話せないし、サッと引き込んで話を聞こう。見た感じ図書館には人も居なかったし良さそうだ)


(そう。じゃあ図書館前で待機ね。見廻りのペースを考えれば、10分に1回くらいの頻度だわ)


(結構間隔が短いな。外には見張りなんか居なかったのに、屋敷内は結構厳重だ)


 死者を味方に引き入れる方法はダクへの恨みを刺激する事。それにつき、人が少ない図書館にて1人辺り10分程度で話を付ければ数時間で大凡おおよそは増やせるだろう。

 さっきの部下の言葉からして死者の管轄かんかつは決まっているみたいだし、上手くまとめてみる。

 それから少しの間、外に居るルシ達にはディテ経由で告げ、俺とディテは今の時間を以て味方を増やす方向で動き出した。



*****



 ──“3時間後”。


 1時間辺り4~5人のペースで話を付け、この屋敷の死者達を10人以上は懐柔した。

 と言うのも、見廻りするのは限られていて数人のルーティンで行われる。たまに別の者が通り掛かったくらいで思ったよりも少人数となってしまったのだ。

 しかし図書館に来るような者はほとんどおらず、死者達に話を付けるのは簡単だった。

 そのまま此処から外のルシ達に連絡する事も出来るし、仮拠点には十分な場所である。

 そんなこんなで、俺達は抜けても大丈夫そうな3人の死者と詳しい話し合いを行う。


「──という訳で、なんとかダクを信じ切っている街の人達を上手くまとめなきゃならない」


(それは難しいですね。今のようにテレパシーの存在を認知させ、街の人々に私達の思考を流し込むのは簡単です……しかし、それによって精神が無事で済むかどうか……ッ……ああ……! 私も苦しく、早く解放されたいのですが……)


 無論、死者達は自分の考えを話せないのでディテのテレパシーをもちいて。

 一番手っ取り早いのはディテのテレパシーを通じ、今の俺にしているように街の人達にも言葉を与えるという事。

 しかしそれは大きな精神的ダメージを与えてしまうのであまりしたくない。最低でも死者達がもう少し楽になればいいんだけどな。


「俺も解放してやりたいけど、現状なんのスキルを受けたのかも分からないから難しいかもな。スキルを無効化するスキルとかも使えないし」

(ええ。ゾンビなどのアンデッドともまた違う存在の私達。仮に受けた技を無効化出来たとしてどうなるか。嗚呼、本当に苦しい……)

「アンデッド……」


 なぜだろうか。何となくアンデッドという部分に引っ掛かる。

 彼女らを救えるような、そんな画期的なアイデアが出てきそうな雰囲気が……。


「今の状態って、操られているような感覚はあるんだよな……別の事を話そうとしても全く違う言葉が出てくる感じで」


(はい。思考以外の全てが何者かに操作されています。意識はあるのに自分での行動が叶わない……私もいつまでここに居れるかも分かりません。もうすぐ掃除の時間なので)


「思考以外そのままなマインドコントロールや催眠、洗脳の類い……」


 指定された時間にはその行動をしなければならない。基本的に24時間操られているような感覚。

 催眠……催眠か。……あれ、確かルティアも……。


「……思い付いた……!」

(え!? 本当ですか!?)

((……!))


 俺の呟きに今話している女性。そして他の2人も反応を示す。

 そうだよ。こっちにはアンデッドの専門家みたいな存在が居るんだ。言わばアンデッドの王と形容しても過言じゃない。ここが人々のイメージからなる世界なら尚更だ。

 時間もなさそうなので率直に話すとしようか。


「ああ。俺の仲間にはヴァンパイアが居るんだ。彼女に頼めば君達を解放出来るかもしれない」


(ヴァンパイア……! けれど、ヴァンパイアはアンデッドの魔物であって、私達とはだいぶ勝手が違う気もしますが……)


「いや、大丈夫だ。ルティアならこんな不完全な洗脳は簡単に解ける……と言っても、また操られる事には変わりないけど……まあ性格上、特に命令もせず自由にさせてくれるさ」


(……? 操って洗脳を解く……それは一体……)

「君達をヴァンパイア。またはグールにするんだ」

(((…………!)))


 俺の思い付いたアイデア。それは既に死者である彼女らをルティアの力を借りてアンデッドモンスターにし、存在の上書きで呪縛から解放するというもの。

 まだ確実にそうなると決まった訳ではないが、可能性はある。


「これから詳細を説明する。時間も無いから、今から数分でも手が空けられそうな人は居るか? 多分君達はそろそろ移動しなきゃならないだろうし、試してみる。成功したら全員に掛ける」


(それなら屋敷の者ではなく、街の方々の方が良いかもしれません。自由は制限されていますが、“何もするな”という命令が掛けられているので動きません)


「そうか。確かに街の人達は簡単に話すだけで動いていなかった……動けなかったのか。よし、分かった。その案を試してみよう」


(お願いします……! 魔王軍幹部討伐の実績がある、“グランドスネーク”の皆様……!)


「ああ、任せておけ! ……っとと、人は少ないけど大声は出せないな」


 話を聞くのにも信頼が必要なので変わらずギルド名は借りている。

 何はともあれ、そうと決まれば早速行動に移してみよう。既にコンタクトを取り、事情を説明せずとも協力してくれそうな人には心当たりがある。まずはそこに向かおう。

 俺達のダクの屋敷潜入調査。見つかりかけるトラブルもあったが無事突破し、全ての死者問題を解決出来るかもしれない打開策が見つかった。

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