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異世界3-5 寂れた古城

『『『ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛……!!!』』』


 濁った声が響き渡り、アンデッドモンスターが一気に仕掛けてきた。

 はっきり言ってC級程度じゃないだろ! この量! 一匹一匹が弱いかと思いきや単体でも結構強いアンデッドが居たりするし、少なく見積もってもA級はありそうだぞ!


「分析してないでさっさと片付けろ。経験値の山だ」

「アンデッドは浄化させてあげなくちゃならないわね」

「よーし! わらわの方が優秀と証明してやるぞー!」

「あのお城爆発させちゃダメかな?」

「生存の可能性は残ってるからお城その物を巻き込むのはNGだ」


 久々に俺も本格参戦となりそうだ。既に死んで成仏出来ないアンデッドモンスターなら消し去る事が救いに繋がるかもしれないからな。

 まあルティアを見る限りアンデッド生活を楽しんでいるかもだけど。


「不死身の肉体か。だが、ヴァンパイアのような再生能力が無いからゾンビと言うものは対処が楽だ」


 襲い来るゾンビの頭を鷲掴み、握り潰して粉砕させる。

 ゾンビは頭を壊したら行動不能になる。この世界は想像からなる世界なのでそれが適用されるみたいだな。


「本当に死なない子も居るみたいね。まあ、消滅させたら関係無いのだけれど」


 ゾンビとも違う、本当に不死身の存在。その体に触れ、塵も煙も残さず消滅させた。

 いや、浄化か。神様だしな。


「よーし! お主らもわらわの眷属じゃあ!」

『『『ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛……』』』


 そしてルティアは自分の眷属を増やしていた。

 いや、ヤバいな。既に死んでるアンデッドも従わせる事が出来るのか。ある種のアンデッド特効だ。


「“ミニエクスプロージョン”!」


 爆発魔法では巻き込んでしまう。なので小さな爆発で一掃する。

 そんな爆発ですらとてつもない破壊力。肉片が散るのでその状態でも動けるモノはそのままだが、後にディテが全て浄化させた。


「俺も威力は弱め……られるのか?」


 片手に光球を作り、上手く調整して小さくしてみる。

 スキルとして得たそのままの威力で放たれるこれだが、俺のスキルとして登録されたなら威力の調整を出来ない道理はない。

 なので上手く纏め、目の前に駆け寄ってくるゾンビへ狙いを定めた。


「これを……こう!」

『……!』


 小さな光球を放ち、着弾。次の瞬間には細胞一つ残さず消滅させた。

 成功っぽいな。けど小さくした上でこの破壊力。魔王軍幹部のスキルはやっぱりスゴい。

 その後、アンデッド系モンスターの群れは一掃完了。無事みんな成仏した。そして古城の中へと侵入して行く。



*****



 ──“古城”。


「中は暗いな。城の外の時点で月明かりくらいしかなかったけど、それよりも遥かに暗い」


「もう夜だからな。フフ、雰囲気には合ってるじゃないか」


「本当のお化け屋敷みたいなものだな。まあ、みんなに怖いって概念は無さそうだけど」


 夜の古城は色んな意味で雰囲気がある。よくあるような絵画に西洋的な鎧。カーペットは良いカーペットを使ってるかもな。

 既にお化けっぽいのは沢山見てるし、俺もそんなに怖くない。既にどんなアンデッドモンスターが居るのか分かってるから恐怖心が薄れているのだろう。

 よく未知が一番怖いって言うからな。


「しかし本当に暗いな光源とかないのか?」

「壁に使われていない松明が飾ってあるわ。それに火を灯したらどうかしら?」

「大丈夫だろうか。すきま風が吹いてるし結構ボロボロの古城。湿気ってないか?」

「使ってみたら分かる事でしょう」

「ま、そうだな」


 壁にある松明を手に取り、炎魔法で明かりを点ける。

 懸念はあったが上手く点火したようだ。思ったより湿気しけってなかったらしいな。

 そのまま薄暗い渡り廊下を照らし、明かりを持っているので俺が先導するように進む。


「うーん、本当にお化け屋敷みたいだな。一種のアトラクション感が出てる」

「中々良い雰囲気じゃのぅ」


 この環境を好いているルティア。ヴァンパイアだから何となく分かる。

 汚れたカーペットを歩み、ギィ……と床の軋む音が響く。外はあんなに騒がしかったのに中は怖いくらい静かだな。

 気配のようなモノも感じる気がしてきた。気のせいだろうか。後ろにはルシ達が居るので問題無いが、先頭は先頭で中々だぞ。


 これを考えている今にも背後、もしくは天井から何かが現れてもおかしくない。ほら、アナタの後ろにも……ってな。怖い話あるあるだ。俺が怖いと思うタイプの話は気付いたら近くにいる系だ。ジワジワと気付き、自分の意識外から入ってくる感じが嫌だ。

 在り来たりな静かなところからバーン! ビックリした? ってのはもうやり尽くされて個人的には飽きてるな。あくまで個人的には。

 そんな事を考えながらチラッと後ろを見てみた。


「──……あれ? ルシの姿が無くなってる……?」

「む? そう言えばそうじゃの」

「あら本当に?」

「どこ行ったんだろー」


 するとそこに、ルシの姿が無かった。

 俺達はともかくとして、ディテが気付かない事柄。これは予想外に大きな存在が関与している可能性があるかもしれない。


(いえ、そうじゃないわ。私はちゃんとルシちゃんの気配を感じているわよ?)


 そんな俺の思考へディテが返す。けど、ルシの気配は感じているのに姿を見失うって。


(どういう事だ? 目の前にルシは居ない。なのに分かるのか?)

(厳密に言えば違うわね。ルシちゃんは変わらず目の前に居る。だけど、姿だけが見えないって事)


 ……? ダメだ。ますます分からない。姿だけが見えないって、急に透明化のスキルでも使ったって事か?


(近いわね。けどあの子も意識していないわ。端的に言うと同じ場所の別の世界に入り込んだみたい)


 同じ場所の別の世界……本当になんの事だよ……。


(この場合、見せた方が早いわね。私がアナタ達にルシちゃんの状況を教えて上げる)


「わ! なんじゃ?」

「どうしたの? ディテ」

「……」

「これって……」


 説明されてもよく分からない。なので見せた方が早いと考え、ディテは以前にルシが俺へした意識の伝達をおこなった。

 共同体の2人は互いに見ている物を自分や他の者達へ見せる事が出来る。

 ルティア達には伝達のスキル的な事と言って誤魔化し、俺達は今現在のルシが見ている世界を映し出した。



***** 



「……。フム、“異界”か。この我を此処へ引き込むなど、己の存在が要らないようだな?」


 ディテ越しに映り込む景色。渡り廊下に悪趣味な絵画。今にも動き出しそうな鎧。確かに今俺達が居るような場所と似ている。ただ俺達が居ないだけ。

 そんなルシは何かと話している様子だった。


【ヒェヒェヒェ……その甘美なる魔力の気配。素晴らしい。既に最強の私だが、その力を手に入れる事が出来ればより最強かつ美しくなれるだろう】


「より最強でより美しい? 貴様は寝ているのか? 寝言でももう少しマシな事を言えるぞ」


【嗚呼、嫉妬の声が聞こえるなぁ……。私の強さと美しさを妬むのは当然。嗚呼、容姿はまあまあだが心が醜い】


 どうやらルシが相対しているのは話の通じない者のようだ。

 見た目で言えば……まあ、到底美しいとは思えないもの。顔はグズグズで体は辛うじて人型を保っているような異形。見た目を形容するなら、人の形だけを残して思い付く限りの凄惨な死を遂げた肉塊の成れの果て。

 正直、直視するのもはばかれる。


「まあいい。心が醜いと言うのは否定せぬからな。それで、貴様が我を此処に引き込んだのは間違い無さそうだな」


【ァア……そうだよぉ。ここはこの世とあの世の狭間……故に見た目はさっきまで居た所と瓜二つ。れどここには君一つ。私がゆっくりと君の全てを得る為に呼び寄せた】


「そうか。不思議な感覚だ。案外居心地は悪くない」


【ケヘヘ……だから呼び寄せられた。他の者達からは神々しさや単なるつまらない人間の感じ。何もかも分からない異形な雰囲気が感じられたが、君と金髪の子からは私に近いモノを感じた。子供趣味は無いんでね。君から取り込み、他の者達もゆっくりと頂こうと言う魂胆だ】


「そうか」


 話を半分以上聞いていない様子で適当ではなくテキトーに相槌を打つルシ。

 ルシの現在地はこの世とあの世の狭間で、ルシと今話しているアイツが近いものだから呼び寄せられた……か。

 ヴァンパイアであるルティアも引き寄せられたという事を考えれば、まあ悪魔的な何かから可能って感じだろうな。

 しかし奴の見た目。神々しさは分かるとして、何もかも分からない異形な雰囲気ってエクかラナさんの事か? となると俺は単なるつまらない人間……酷い言い様だな。否定はしないけど。

 そんなこんなで話が続けられる。


【という事で……早速頂きまぁす!】

「……」


 グチャグチャの人型を動かし、ルシへと飛び掛かる。

 ルシは軽く身を引き、次の刹那には懐と思しき場所へと入り込んで魔力を込めた拳を突き上げ、一言。


「……キモい」

【──!】


 魔力の壁があり、直接は触れていない。曰く、キモいからとの事。うん、酷い言われだ。

 拳によって打ち抜かれた異形は体が粉々になり、辺りに肉片が散った。


【ケヒヒ……嗚呼……いいよぉ……スゴくキモチイイ……思わずイッちゃいそうになっちゃったぁ~……】


「……粘土みたいな体。完全消滅させねば死なぬタイプの魔物か」


【ヒヒ……魔物なんて醜い物じゃない……私は言うなれば……そう、神様だ! だからこの世の全ては私が……!】


「そうか。神なればより容赦なく消滅させられる。我がこの世で一番嫌いなモノが神だからな」


 再生する魔物。おそらくこの古城の主。

 だがルシなら問題は無さそうに思える。何故なら既に古城の入り口で死んでも死なないアンデッドモンスターを消滅させていたから。

 何はともあれ、俺達が少女の父親を探す為に入った古城。そこで気持ち悪いモンスターとルシが相対した。

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