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異世界8-6 エイリアンの主

『■■■■』

「いきなりだな!」

「今までいきなりではなかった事の方が少なかろう」


 対面するや否や主は伸縮自在の腕を操り、その上で刃物へと変えて暴れ回る。

 それによって周りには大きな被害があるが、自分の船でも気にしない様子。

 既に俺は何度か死んでいるがスキル的には手刃変化なので新たなものは得られなかった。


『■■■■』

「お前は独楽コマか!」


 更なる回転が加えられ、切れ味の鋭い独楽が高速回転で迫り来る。

 それに対してルシは逆方向に衝撃を与え、高い回転力を一気に弱めた。


「それでこれか!」


 弱まったのを見定め、俺は“超遠光線”にてその体を撃ち抜く。

 周囲の危機を巻き込む事になるけど、まあそれはどうでもいいか。エイリアンの親玉に直撃し、大きな爆発が起こった。


『■■■■』

「再生力はお墨付きみたいだな……!」


 撃ち抜かれ、爆発で消え去った巨腕。それは即座に再生し、今一度刃の手と化して縦横無尽に飛び交う。

 範囲は広いし、更に何度か死んだし、動き回る相手ってのはかなり厄介だな。

 しかも即死じゃないからスゴく痛い。毎度毎度走馬灯みたいな物も流れて一秒の間隔が長く感じるから苦しみも伸びて大変なんだ。

 今のところ粘土みたいな形状変化以外の力は見せてないけど、どうせ何かあるんだろ。早いうちに倒しておきたいな。話し合いで解決するなら良いんだけど、そうじゃないしな。


『■■■■』

「フン、下らん。ただ闇雲に暴れているだけではつまらなかろう。知能は高い種族の筈だが、あの手この手で仕掛けて我を楽しませよ」


 動き回る相手だが、確かに攻撃方法は単調なもの。

 ルシは退屈そうに吐き捨て、エイリアンの両腕を引きちぎって破壊した。

 そこから飛び掛かり蹴りにてその体を貫く。


『■■■■』

「ほう? まだ生きているか。核となる部分が体内に埋め込まれており、我の攻撃を受けても破壊されなかったようだな」

「一撃与えただけで分かるのかよ……」

「当たり前だ。核というだけあって気配が極僅かに高い。その大きさから考えればおよその事は分かる。とは言え、核の大きさは数ミクロンにも満たぬがな」

「どんな極小サイズだよ……」


 核。俺達で言うところの脳や心臓と言った中枢部分。

 どうやらこのボスエイリアンにはその体躯にしてミクロン単位と言うセコい命を持ってるらしい。

 体の異常な変化もなんとなく分かるな。そりゃ核が無事で特殊な体質なら色んな戦い方が出来る。少なくともコイツは手足を変化させてクルクル回ってただけだけど。


『■■■■!』

「……!」


《認証しました。新たなスキルを登録します》


 毒の血じゃなく、吐き出された酸のような物がぶっかけられて俺は一瞬だけ骨になった。

 骨になるってこんな感覚なんだな。動く骸骨モンスターとかが苦しむ描写があったりするけど、確かにキツい。色んな意味で。

 新しいスキルを得たけど、また使いにくそうな代物だ。


「吐瀉物を撒き散らすな。下劣な生物だな」

『■■■■』

「ルシの影響でも吐瀉物吐いてんだけど……」


 文句を言いながら腹部と思しき場所を突き、また別方面の酸が吐かれる。

 コイツらも生き物である以上、口もあるのか。それとも圧迫されて内容物が押し出されただけか。

 いずれにせよ汚いのに厄介な攻撃だな。

 エイリアンはまた再生し、今度は刃と酸を組み合わせ、辺りをメチャクチャにしながら暴れる。自棄にでもなったのかと思う行動。しかも別に武器とかは使ってないんだな。


『■■■■』

「それしかやれぬのか。使えんゴミだな」

「そこまで言ってやるなよ……」


 手足を引きちぎり、酸を風圧で飛ばす。同じような攻撃しかしないエイリアンを前に飽きたのか、ルシはため息を吐いた。


「もういい。貴様はつまらんな。もう少しバリエーションを増やせ。殺める事だけに特化しているようだが、我のように効かぬ相手には無意味と化す。貴様もカスだがな。一先ずもう散れ」


『■■■■』

「ボロクソに言うな……」


 余程退屈だったのか、さっきまでの表情から一変。心底つまらなそうに数ミクロン未満と言う核を見つけて取り出し、魔力にてこの世から消滅させた。

 エイリアンは体が溶けるように崩れるが、最期の足掻きか覚束無い変化と共に体まとめて巨大な肉塊をルシへと押し付けた。

 ルシは不敵に笑う。


「クク……これはちと面白いな。最初から魅せてくれたのなら、貴様の寿命も数秒伸びたと言うに」


『■■■■』


 肉の塊は小指で弾くように消し去られ、エイリアンの体は瓦解する。

 普通に強敵ではあったけど、ルシの前じゃ簡単に終わる存在になっちゃったな。

 確かに他のエイリアン達は光線銃とかバリアに毒血とか色々使っていたけど、コイツは肉体を変化させて振り回していただけ。加えて酸。

 殺傷力の塊でもバリエーションは少なく、あっさりと消されてしまった。

 あんなに仰々しい登場だったのに……相手が大魔王なのはもうどうしようもない。世はルシの気紛れで成り立っているし、宇宙船を制圧するくらいは簡単だろう。

 ルシは俺の方を見た。


「では残った船員と共にこの船は宇宙の藻屑としておこう」

「唐突だな!? と言うか宇宙なのに“藻”屑かよ!? 一応撤退してくれるならその方が良いんだけど……」

「やれやれ。慈愛の感情なんぞ心の底から面倒臭いな。では親玉の死骸を持って宣告し、話し合いで解決てみろ」

「や、やってみるよ……」


『『『■■■■!!』』』

「良し、ではもう要らぬ」

「引き下がらなかったか」


 それから数分後、親玉を持っても話し合いで解決する事なんて全く出来ず、宇宙船は新たな宇宙の星屑と化した。

 南無南無。あのエイリアンの生態上、成仏って概念も化けて出るとかも無いから祈っても無駄だけど、なんとなく心持ちを軽くした。

 母船を破壊し、多くのエイリアンが死滅。大魔王に目を付けられたのが運の尽き。蹂躙する側がされる側に回るなんて諸行無常だ。


「さて、次の船へ行こうか。他の奴等も大した事無いのだろうからな。少しでも面白い物を見れたら良いが」


「ハハ……完全に目的が変わってる……」


 笑うしかない。そのまま別の宇宙船へ突っ込むように侵入。迅速な対応で光線銃を向けられ、一斉放射された。

 その全ては避ける事もなく突き抜け、大量のエイリアンを滅ぼしていく。

 正に一騎当千。いや、それすら足りない。街のような建物が立ち並ぶ宇宙船を駆け抜け、崩壊させながら直進した。

 いや、マジで化け物だな。俺達の世界に怪獣が現れたらこんな感じになるのかもしれない。


「失礼な奴だな。我の方が上であろう」

「そっちの指摘かよ。今のは物の例えで、と言うかルシとディテ以外でこの世に太刀打ち出来る存在は居ないだろ」

「クク、そうだな。そんな事を言っているうちにまた長が現れたぞ」

「マジだ……」


『■■■■』


 メチャクチャにしながら突き進み、辿り着いた先はこの母艦の親玉の所。んなアホな。さっきは辿り着くのに結構苦労したんだけど、こんなに早く着く事もあるのか。

 そして出会った瞬間、エイリアンは大口を開けて俺達を丸飲みした。


「成る程。こう言うタイプの存在か。色々居るのだな」

「ビックリした……」


 食われた筈の俺達は、主にルシの力によって脱出。破壊された肉体は粉々になったが再生し、形状を変化させて覆い尽くした。

 相変わらず粘土みたいな体だ。さっきの奴は刃とかそんな攻撃だったけど、また戦い方は変わってる。


『■■■■』

「当然、全身に武器も仕込んでいるか」


 伸縮自在の体。故に近代兵器を体内から放出したりもする。ってのもまた違うか。兵器と肉体は別々だ。

 それでもこの肉体を相手取るのは大変だな。核があれば無事とは言え、さっき粉々にしたのに再生したし。


「では再生する間もなく消滅させれば良かろう」

「それってルシじゃなくてディテの役目なんじゃないか?」

「駄神のやる事は浄化だ。我のそれとは種類が違う」

「……!」


『■■■■』


 黒い魔力が放出され、伸縮自在。変幻自在の体が飲み込まれる。そのまま吸い込まれるように消え去り、この世から完全に消滅した。あれじゃ数ミクロンの核も残らないな。と言うか核が無くても永遠に再生し続けるとしても存在その物が抹消されたから残らないか。

 魔力の余波は留まる事を知らずに突き抜け、この母艦も破壊した。


「あっさりと二機撃破……国家サイズの船がこうも簡単に終わるのか。強度も広さも俺達の国家より遥かに高いけど」

「所詮はこの程度だろう。しかしまだまだある。これでもペース的には遅い方だぞ」

「それが事実だから恐ろしいよ」


 無数の母艦。エイリアンの総合数は数億から数兆。親玉の数は少ないにせよ、それでもとてつもないだろう。

 それから少し経て更なる数の母艦を撃破。此処までの経過時間は三時間くらいか? おそらく総合的な数を思えばかなり順調なのだろう。


「……それでもまだまだ居るんだけどな……」

「先が思いやられるが、もう大丈夫だろう」

「そりゃ一機一機は簡単に破壊出来るんだろうけど……」

「いやそうではない。もう時間が掛かる事は無いという事だ」

「それってどういう──」


 言葉を続けようとした瞬間、他の母艦が一ヶ所に集った。

 何が始まるのか、SFを少し齧ってるならある程度の検討は付くかもな。俺は何となく察した。今のルシの言葉からもな。


『■■■■』

「……融合した……ロボットじゃないのに……」

「あの者達の体質から分かるだろう。君も何度か思っている粘土のような体。粘土は混ざれば大きくなる。そう言う事だ」

「そう言う事だろうな……」


 母艦の方ではなく、エイリアンの方。

 柔軟性のある体はそのまま融合する事も出来るらしく、あの中に全てのエイリアンの存在が集っていると考えるのが道理だろう。数ミクロンの命の大きさも少しは変わったか?


「手間が省ける。潜入操作、大詰めだ」

「最初から潜入も侵入もしてないような……まあ殴り込みやカチコミって方面の侵入なら間違ってないけど。それじゃ侵攻か侵略だ」

「そうだな。では掃討作戦としておこう」

「言い直したところで……まあいっか。ルシが居るなら勝てるだろうし」


 掃討作戦。それも間違っていない。

 何はともあれ、唐突に攻めてきたエイリアン騒動も終わりに近付くだろう。原因はこっちにもあるけど。とは言え遅かれ早かれ。この世界ではそう言う事が多い。科学がどんなに発達しようと弱肉強食なのは変わらないから。それ故に深く考える必要も無いだろう。それがエイリアンの本能なのだから。

 俺とルシの戦闘。それも終局へと差し掛かる。

所有スキル

・光線ライフル

・刃足・レーザービーム・光線弾

・サイコキネシス・ボルトキネシス・フォトンキネシス

・超遠光線・形態変化(獣)・毒液・加速撃・投擲・極化回し蹴り・極化裏拳・惑星エネルギー砲

・小惑星群・衝突・終焉爆発

・広域破壊線・毒血・手刃変化・怪光線・液酸

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