異世界8-5 対面
エイリアン達を一掃しながら金属のようなよく分からない物質に囲まれた無機質な廊下を進み、宇宙船という名の国を蹂躙していく。
既に侵略者の立場で行動しているな。先に仕掛けたのは向こうとは言え、まさか相手が大魔王とは夢にも思わないだろう。
とは言え、この宇宙人達は大魔王どころか魔王すら知らないかもしれないけど。
『『『■■■■』』』
「ついに防御を展開したか」
「先程の侵攻と言い、少しばかり時間が掛かるようだな」
どうやら防御にも時間が必要みたいだな。兵士が一瞬では鎧とかを装備出来ないように、準備が色々とあるのだろう。
奇襲って意味なら成功だが、あの強固なシールドをどうするか。
「しかしまあ、我にとっては泥の壁が展開されたのにも等しきものよ」
『『『■■■■』』』
そんな守護壁は意図も容易く決壊した。
本来なら現代兵器が何も通じない壁なんだろうけど、ルシの前じゃ無意味なのは立証済みだ。
『『『■■■■』』』
「けど相変わらずキリが無いな……!」
「良い催しではないか」
ザッザッと陣形を組み、一斉に光線銃を放射。
今更このスキルを得てもあまり意味無いので俺は避け、“刃足”と“手刃変化”にてシールドを貼っていない者達を斬り伏せる。
“サイコキネシス”の身体能力強化の影響もあるが、手足の硬度が上がるので相乗効果で威力も上昇している。
まさに一騎当千の戦い振りだ。
「飽きたな」
『『『■■■■』』』
が、俺の無双ターンは一瞬にして終わった。
本当に気紛れなルシ。ほんの少し前まで楽しんでいたが数秒のうちに気が変わり、魔力の放出と共に囲んでいたエイリアン達をシールドごと消滅させた。
「もうルシ一人で良いんじゃないか? 俺の存在意義はほぼ無いぞ」
「良いではないか。君が居ると会話が弾んで我の気分が良くなる」
「成る程。ルシのモチベーション役か」
「何事に置いてもモチベーションは大事だからな」
俺の役割はルシのテンションが若干上がる事らしい。
基本的に一人な筈の大魔王がそんな風に思うなんてな。意外な一面とも言える。
「折角二人きりなんだ。楽しもうじゃないか」
「こんな宇宙船でランデブーなんて出来ないよ」
「場所は問題じゃない。二人が楽しめれば良いんだ」
軽い雑談を交えながら別の場所に向かう。
一先ずは直接宇宙船を破壊しないなら司令官的な存在が居る部屋に行った方が良いかもな。
ルシなら言葉通じるし、撤退して貰おう。
「そんなにすんなり聞いてくれるとは思えぬがな。種族の存在が存在だ」
「正直俺もそう思うけど、物は試しだ。ダメならその時はルシに頼む」
「ダメなら全滅させるか。クク、心得たぞ」
「誰も全滅させるとは言ってないけど……結果的にはそうなるかもな」
何はともあれ条件は当主や王的な存在の部屋に行く事。
何も解決せずとも、主を手中に収める事で進展する可能性はあるだろう。
まあ、長とかにも普通に反逆しそうなエイリアン達。あくまで0じゃないほんの少しの可能性だ。
「けど、国どころか星並みの大きさを誇る母艦……一室を見つけ出すのも一苦労だな」
「そうでもないだろう。基本的に主という存在は高所か中心に居るものだ。愚民を見下ろすには打ってつけだからな。この者達ならそれくらい考えるだろう」
「暴論に近い持論だけど、確かにそうかもな。高い建物……それっぽい場所があれば探ってみるのもアリだ」
「それまでには大量の此奴らを仕留めねばならぬな」
「だな。まだまだ来たよ」
『『『■■■■』』』
目的地は決まったが、また俺達を取り囲むエイリアン。
どうやらコイツらに“恐怖”と言う感情は無いらしい。種族柄、不要な感情は排除するように進化したのかもな。俺達人類にとっては退化とも言えるかもしれないけど。
「一つ聞きたい。この船のボスは何処だ?」
『■■■■!』
「そうか。じゃあいい」
居場所を訊ね、納得の答えが得られなかったのか抹殺する。
どの道敵意がある時点で抹殺対象なので仕方無いとはいえ無情なり。南無南無。
「探すのも面倒だな。更に暴れて引き摺り出すとしようか」
「ホント、滅茶苦茶しやがる……」
魔力を込め、正面へ放出。それによってエイリアン達ごと母船の壁を破壊し、大気が外に盛れ出て吸い込まれる。
瞬間的に穴は塞がるが、何人か飛び出したな。
「ほら、君も広範囲技を使え。我は巻き込まれても問題無いから気にするな」
「……分かったよ。ちゃんと成仏してくれ。エイリアン……!」
「コイツらにあの世や輪廻転生の概念は無かろう。さっさと殺めよ」
「部下に殺生促すラスボスみたいな言い方だな」
「君は部下より上の立場だが、我がラスボスと言うのは間違ってなかろう」
「そりゃそうだ」
エネルギーを込め、コイツらが地上に降り立った時に先手を打った“広域破壊線”にて周囲を吹き飛ばす。
無機質な母船内部だがその破壊力は凄まじく、周りにある円盤はひっくり返り、エイリアン達はシールドごと吹き飛んだ。
「上出来だ。大分数も減ったろう。気配を掴み、一際大きな存在の元に向かう」
「オーケー」
数億から数兆の可能性があるエイリアンの数。それが何万分の一は減ったのを見越し、ルシは気配を探る。
誤差の範囲なんだけど、それでもそれなりに大きな影響が及ぶのかもな。
ルシは俺の手を引いた。
「よし行こう」
「もう分かったのか?」
「我を舐めるな。行為の際に我の肉体を舐めるのは許可してやるがな」
「なんの行為だよ!? と言うか一人で話を展開し過ぎだ!」
俺はルシの意味不明であり意味深な発言へツッコミを入れるが返答待たず、思ったより柔らかいその手に引かれて母船の中枢に。
おそらくとても頑丈な壁を容易く破壊して突っ切り、最深部の暗くチカチカと機械類が点滅を繰り返す部屋に来た。
明るい場所との光から大きく違って視界もチカチカするが次第に目が慣れ、目の前に佇む巨大なエイリアンに向き直った。
「貴様がこの母船の主か?」
『■■■■』
「そうか。よし、では降伏せよ。さもなくば殺す」
「会話が早いな!?」
母船の主で間違いは無かったようだが、率直過ぎるぞルシ。
だがそう簡単に降伏する戦闘民族じゃないだろう。
『■■■■』
「……!」
「やはりそう来たか」
《認証しました。新たなスキルを登録します》
立ち上がり、怪光線にて俺は絶命。新たなスキルを得る。
無傷のルシは臨戦態勢に入り、俺もスキルに力を込めた。
『■■■■!』
「止めたくば私を倒してみろ……だとさ。テンセイ」
「見たら分かる……!」
母艦はまだ他の場所にもある。その度にこんなボスキャラっぽいエイリアンと戦わなくちゃならないのか。先が思いやられる。
まあ数億から数兆の全エイリアンを倒すよりは楽だけど。
俺とルシの母艦潜入戦。主との戦闘が始まった。
所有スキル
・光線ライフル
・刃足・レーザービーム・光線弾
・サイコキネシス・ボルトキネシス・フォトンキネシス
・超遠光線・形態変化(獣)・毒液・加速撃・投擲・極化回し蹴り・極化裏拳・惑星エネルギー砲
・小惑星群・衝突・終焉爆発
・広域破壊線・毒血・手刃変化・怪光線