異世界8-4 侵入侵攻
──“一時間後”。
「では、作戦を決行する」
あれから一時間、何事も無く経過した。
既に乗り込む準備は終えており、迎撃態勢も整っている。
後は母艦に向かうだけなのだが、果たしてどうやって行くのだろうか。この星の人類が来た時に乗った宇宙船でもあるかどうか。
「それで、どうやって敵船の方へ?」
「ああ、それについてだが、我々が船を出すように考えていたのだが、ルシさんが自分達で行くと提案しまして……」
「え゛……」
行く手立てはルシが決めているとの事だが、不安だ。不安しかない。
俺はルシの方をチラリと見やり、彼女は不敵に笑った。
「今から行うのはちょっとした転移だ。一瞬で消え去るぞ。皆の者。心して掛かれ」
「ちょ、それってもしかして……!」
「一瞬で到達する」
ルシが俺に抱き付き、ムニッとした胸の感触が直に。しかしそれを楽しむ間もなく、即座に足へ力を込められた。この感じ、嫌な予感ばかりは常に的中するんだなってのがよく分かった。
次の瞬間、そのまま踏み込み、その場から物理的に飛び去った。
俺は咄嗟にサイコキネシスでバリアを張り、凄まじい空気圧に押されながら宇宙空間へと飛び込んだ。
───
──
─
「フム、思ったよりも早くに到達したな」
「いや……マジで……マジかよ……」
「言葉が覚束ないぞ」
「そりゃそうだろ……」
その結果、見事母艦へと乗り込む事に成功した……が、もう勘弁してくれ……。マジで寿命が縮まったぞ……。
「フッ、君なら死んでも生き返るだろう」
「そう言う問題じゃない……メチャクチャするなオイ」
「メチャクチャしてこその大魔王だ」
一先ず雑談は終え、俺は懐から通信機を取り出す。
これは事前に預かっていた物。侵入の際に電波……的な物が察知される可能性を考慮して切っており、今点けた。
「あー、もしもーし。聞こえてるかー?」
《ああ、聞こえている。もう侵入したのだな》
「そんなところだ。これから攻撃を仕掛ける」
《了解》
通信を切り、懐に仕舞う。状況的にも定期報告は必要だからな。
さて、
「情報が早いな。もう集まってきてる」
「微かな電波もキャッチ出来るのだろう。何ら不思議ではない」
「ま、確かにそうだな」
『『『■■■■』』』
既に取り囲んだ数万のエイリアンをどうにかしなきゃならないな。
完全に俺のエゴだが、知能の高い存在をあまり殺したくはない。だけどやるしかないのが戦争か。
見た目は完全に化け物なので他の人より躊躇はないが、我ながら勝手な考えで行動しているな。俺。
「既に地上戦で何体かは殺めたのだ。今更揺れるでない。面倒だな」
「俺はそう言う性格なんだよ」
「やれやれ。さっさと仕留めるぞ」
『『『───!』』』
ルシは踏み込み、瞬間的に周りのエイリアンを一掃した。
腕を払って頭を飛ばし、拳の風圧で全身を粉々にして消し飛ばす。
回し蹴りでバラし、空気の余波によって宇宙船の壁が両断された。
相変わらず一挙手一投足が即死の広範囲攻撃って言うラスボス仕様だな。
「感心していないで君もやるんだ。此処に来たのは君の選択だろう?」
「……そうだな。やるしかないか……」
正直気は乗らないが、やらなきゃ終わらないので覚悟を決める。
まだ防壁は貼ってないな。それなら次元に影響を及ばさずともなんとかなる筈だ。
サイコキネシスで周りのエイリアンを持ち上げ、そのまま圧縮して押し潰した。
念動力の内部にエイリアンの血が溜まり、それを破裂させて毒入りの体液で他のエイリアン達も絶命させた。
俺もルシには言えないな。仲間の毒性体液を浴びせると言う残酷な方法で倒している。
「フッ、良い事ではないか」
「良くねーよ……!」
反論はしつつもエイリアン達は討ち滅ぼしていく。このエイリアン達の星にとっては俺も立派な大量虐殺犯だ。
これからは侵略者の十字架も背負っていかなくちゃならないな。
「案ずるな。この者達の星に殺人が犯罪と言う法律はない。そう言う種族だ」
「マジか……ホントよく発展してるな」
「そもそも君達とも大きく違うだろう。分類で言えば人間と言えるが、あの者達にとって君達は野生動物にも等しき存在。逆も然り。気にする必要は皆無だ」
「なんか随分とフォローしてくれるな。今日のルシは」
「気紛れだ。君の事を気に入っているのもあるがな」
「そうかよ」
気に掛けてはいるが、本当に気に入られているのかは不明。それも含めての気紛れという事だろう。
しかし他人を殺めても何の罪にも問われない星か。滅んで正解だったかもな。他の星を侵略するつもりだったらしいし、宇宙的に見て害悪種族だろう。
「それでも手に掛ける事は違わないけどな。一人で勝手に罪悪感に苛まれるとしよう」
独り言を呟き、レーザービームにて貫く。
即死しなかった者は再生して光線を撃ち込み、形態変化(獣)にて俺はネズミとなって周囲に散り、龍となって一掃した。
『『『■■■■』』』
「近接戦もお手の物か……!」
《認証しました。新たなスキルを登録します》
エイリアン達は触手のような手を鋭利な刃物に変化させ、俺は殺められ新たなスキルを得る。
手を刃物にするスキルか。日常的にも使えそうな便利なスキルだな。
復活の過程で位置が変わった俺はエイリアン達の死角に回り込み、今得たスキルでエイリアン達を切り捨てた。
「道具の刃物と違って直に切った感触があるのがちょっと嫌だな……」
体液を払い、跳躍。上から“サイコキネシス”にてエイリアン達を押し潰した。
一瞬にしてこの場は体液の海と化し、俺とルシは宇宙船内の更に奥へ駆け行く。
「随分と使いこなしている。この世界のスキルにも慣れてきたみたいだな」
「まあ、基本的には相手を倒したり壊したりするだけだからな。けどやっぱり汎用性は魔法世界の方が高いかも。相手が相手だから広範囲技が多過ぎて気楽に使えないや」
「フッ、そうか」
強いは強いが、お気楽に使えるようなスキルは少ない。結局光線とかそれ系に頼りっぱなしだ。
一番使い道があるのは“サイコキネシス”だな。身体能力を強化したりバリアを貼ったり飛んだり選別して周囲を攻撃出来たり、早いうちにこれを得られたのはデカい。サイ様々だ。
「しかしまあ、この宇宙船は全てが敵。広範囲技をやっても良いのではないか?」
「いや、なるべく殺めたくはないよ。相手が敵ならなんでも殺せるメンタルは持ち合わせてない。と言うか、それならルシが母艦を破壊すれば良いんじゃないか? 星くらい簡単に破壊出来るんだろうし」
「クク……もう少し遊びたい気分だ。機械は壊しても苦しみも何も無いから退屈でな。藻掻き苦しむ生物を見る分には面白い!」
「うへぇ……相変わらずの大魔王らしい考えだよ。普通なら人間の敵だもんな。しかも救いようが無いタイプの」
「それらのイメージの出自は我なのだから似るのも当然だろう」
「あー、そうか。全ての神様のイメージと全ての魔王のイメージはルシとディテなんだっけ。道理で」
全ての神と魔王の産みの親と言っても過言じゃない存在二人。そもそもで親という概念すらないか。
何はともあれ、作戦の方はまあまあ順調だ。敵船に乗り込んで一方的に蹂躙する在り方。どっちが悪か分からないな。
俺とルシの侵攻は相手が撤退するか全滅するまで続く。
所有スキル
・光線ライフル
・刃足・レーザービーム・光線弾
・サイコキネシス・ボルトキネシス・フォトンキネシス
・超遠光線・形態変化(獣)・毒液・加速撃・投擲・極化回し蹴り・極化裏拳・惑星エネルギー砲
・小惑星群・衝突・終焉爆発
・広域破壊線・毒血・手刃変化