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異世界7-9 区切り

 ──ロボ幹部を倒し終えた俺達は元居た星へと戻った。

 星全体が宇宙からの飛来物によって被害を受けぬよう黒い物に囲まれているが、それはルシが軽く小突いて突破。

 支部があった場所に降り立ち、そこには機械兵の残骸が転がっていた。けど数が少ないな。ディテが消滅させた分とレジスタンスの皆さんが破壊した分、そして……まあ撤退したのだろう。


「帰って来たぞ!」

「という事は……!」

「魔王軍の幹部を倒したんだ!」


 俺達の姿を見や否や大喜びする人達。

 確かに今まで崩れなかった幹部の崩落。それはレジスタンスにとってかなり大きな戦果となるだろう。

 一先ず快く受け入れてくれたのでそちらに行く。


「勝ったのね。お疲れ様」

「まあな。っても条例通りルシがほとんどやってくれたから俺はあんまし関係無いレベルだけど」


 ディテが出迎え、事を説明。要するに今まで通り、俺自身が挙げた成果はそんな無い。

 なのでサクッと流し、レジスタンスの方々の対応をする。


「スゴいぞ!」

「まさか幹部を倒すなんて!」

「救世主だ!」


 ちょっと大袈裟な気もするな。まだ世界救ってないのに救世主って……。

 悪い気はしないけど、前述通り俺は何もしていないので持ち上げられると困る。当のルシは何処か行ったし。……まあ別の拠点に向かったのだろう。ディテが来たから離れたのはあるな。


(そうよねぇ~。ルシちゃんったら)


 それについてはディテも理解している様子。態度が変わらないのでショックなのか割とどうでもいいか悩みどころだが、半々くらいで慣れているだろう。

 兎に角、幹部は倒したけどまだやる事もある。


「それじゃ、支部は跡形もなく消し去ろう。もう殆ど形は残っていないけど、地下の方はまだあるだろうし、小型スパイメカも不明なままだからな」


「そうだな。よし、では支部のデリートを執り行う。最低限の物は持ったな?」

「「「はい。持ちました!」」」

「では実行に移る!」


 どうやって消し去るのだろうか。

 ディテやルシなら小指でも消滅させられるだろうが、未来チックな世界での削除方法は気になる。

 次の瞬間、隊長がスイッチを取り出した。それを押し込み、


「……また随分と古典的だな……」


 ドーン! と支部のあった場所が爆発。完全消滅を喫した。

 結局の所爆発オチか……。果たして本当にそれで隠滅出来るのか疑問だが、次の瞬間には答え合わせが来た。


「あー……そう言うことか。あの爆風に触れたら分子レベルに分解されるのか」


 爆破直後は形が残っていた瓦礫だが、爆風に触れた瞬間目に見えなくなって霧のような物が空中に散っていた。

 分子破壊爆弾。それがこの世界での証拠隠滅装置。確かにSFっぽさはある。


「これでOKだ。お前達、体内に異常は無いか?」

「「「はっ! ありません!」」」


 敬礼して返す。

 ちゃんと今回突き止められる原因となってしまった小型メカを警戒しているな。

 これなら安心……出来るかは分からないが、大丈夫そうではあった。

 その後俺達は機械兵を回収して移動。その道中も他の兵士達に襲撃されたが数も少ないので難なく対処し、拠点の方へと帰った。



*****



 ──“レジスタンス・本拠地”。


 此処がレジスタンスの本拠地。事細かな機械にも反応する、支部の物より性能の良い機械を使って全員の体内へ侵入されていないのを確認した。

 相変わらず街には活気があり、ディストピアチックにはなっているが明るい雰囲気だった。

 魔王軍幹部討伐の話は既にそこにも伝わっており、人々は歓喜する。

 情報が早いな。倒してからほんの数分だぞ?


「いやはや、今回はよくぞやってくれた。我らが英雄達よ」

「謎の侵入者から一気に昇格し過ぎだろ……」


 一週間前とは打って変わり、随分とまあ俺達の信頼も大きくなったものだ。

 幹部を倒したという実績はそれ程までのものなのだろう。

 行動しやすくなるから助かるけどな。


「これで魔王軍の幹部も残り二人となった訳だ。完全制圧も目に見えてきた」

「二人? って事はこの世界の魔王軍幹部は三人しかいないのか」

「この世界の? ……ああそうだ。魔王を筆頭に三人……厳密に言えば二人と一台……いや、一人と……とにかく主力は三人だ」

「なんか後半グダってたけど、成る程な」


 この世界では魔王軍四天王的な感じではないらしい。

 別におかしくはない。魔王が主力にする程の存在が少ないのは良い事だ。

 けどこの話し方からするに、指定された“一人”はサイとして、もう一人……それはロボ幹部的な、完全に人間とは言えない存在なのかもしれない。

 そうだとすると何が来るのか……。SF世界って事を考慮して超能力者にロボットだから……他の有名な存在はエイリアンとか超常生物とかサメとかになるけどな。幽霊とかもジャンルはSFだっけ? いや、ホラー映画にSFは多いけど幽霊はまた別だな。

 何にせよ、サイやロボ幹部並みの存在である事に変わりなし。この世界の魔王は更に強化されているし、対策のし過ぎって事はないな。


「けどまあ、多分しばらくは攻めて来ない筈だ。此処は見つかってないからな。他の街や国を解放していって戦力を整えた方が良いかもな」


「そうするつもりだ。だが本当にありがたい。君達が来てくれたお陰で今までの犠牲者達も報われる……我が亡き家族もな……!」


 家族の仇で戦地へ乗り出すレジスタンス。

 死亡フラグが立ちまくっているけど、ディテが居るから多分大丈夫……かもしれない。進んで人助けをする神様でもないから眉唾だけど。

 何はともあれ、これから少しだけ話し合いを行い、俺達三人は自室へと戻った。



*****



「残り幹部はたったの二人か。今回の世界は早く済みそうだな」

「そうだな。その後どうなるかは見物だが、取り敢えず今はこの世界の我について考えようか」


 またルシは不穏な事を言ってらっしゃる。

 確かにこんな技術力を持ち、血気盛んな人々が魔王という絶対的存在から解放されたらの不安はある。そりゃ数十年は平和な世界が続くんだろうけど。

 だけどその時俺達は別の世界に行っている筈。どうしようもないな。


「クク……不安ならば我らの子孫でもこの世界に残しておくか? いずれは支配する王となる筈だ。丁度君も居る」


「何の話だよ……。いや、言わなくても分かるけど。と言うか我“ら”って。それは却下。仮に子供とかを残したとして、殺伐とした世界だも復讐鬼になるのが目に見えている。王は王でも第二の魔王降誕だよ」


「良いではないか。元よりこの世界の魔王も我の分身。それならば血縁と言うのも悪くない。その方が濃く残るからな。案ずるな。君に合わせた肉体へ再構成する事も可能だ。毎晩ゴソゴソやっているのに気付いている。溜まっているなら我へ──」


「ストーップ!! これ以上はなんか危ない橋を渡る事になりそうだから無し! 今日も色々あって疲れたから待ってくれ!」


 ルシからすれば別に特別視する行為でもないのだろう。俺達人間も虫や他の動物のそれには異常者か生物学者以外興味ない。それと同じだ。

 まあその理論だと俺へ興味を持つルシが異常者って事になるけど、それは置いておこう。人間からしたら神様も大魔王も異常な存在である事に違いは無いからな。


「失礼なやつだ。まあいい。気付いていないかもしれないが、君も前よりは我を受け入れているぞ?」


「……うっ……」


 なんかちょっと思い当たる節はある。確かにそうかもしれない。

 ルシの言動や行いには引いたりもするが、別に良いんじゃないかと言う思考が若干入りつつある。まさか俺は変わってしまったのかもしれない。

 巻き込まれた一般人から巻き込む側に……。環境の変化って恐ろしいな。


「フッ、素直になれば良いだけだ。一先ず君に拒否されてしまったから今回もお預けで良かろう。欲望を吐き捨てたくなったらいつでも良いぞ」


「寧ろ本当になんでルシは俺へそこまで……特別正義感が強い訳でもないし、とんでもないサイコパスでもないぞ。普通の感性を持つ一般人。大魔王に魅入られる理由が分からない」


「我がそれを知っていれば良かろう。明日もまた解放へ赴くのだ。休むなら休むと良い」


「分かった。そうするよ」


 結局ルシの真偽は不明。良い様に言いくるめられてしまう。

 けどまあいっか。次元の違う大魔王の考える事を気にしていたら色々支障をきたす。


 魔王軍幹部の一つを倒した俺達は、次なる存在へと意思を向ける。

 この世界の魔王を倒すまで、この世界の魔王を倒した後もまだまだ旅路は続くだろう。

 高次元の存在に振り回されながら行くその道筋に、また一区切り付くのだった。


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