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プロローグ 大魔王襲来


 ──ある日ある時ある瞬間、俺、伊勢別いせべつ天星てんせいは謎の空間に居た。


 さて、なぜこうなったか。朧気おぼろげな記憶を探る。

 いつも通りのある日の事、少し天気が悪い時にどこにでも居る普通の青年である俺は散歩をしていた。そして直後の記憶がない。つまり直後に死んだのだろう。突然の死とはこの事だ。

 まあ、こういう時はマヌケな神か女神が現れて説明とか入ると思うんだけど……。


『あっらぁ~。ごめんなさいねぇ。天の川銀河第三惑星の地球、日本国内某所でぇ、手違いで雷を落として貴方を死なせてしまったみたいなのよォ……』


「……っ!?」


 オネェ!? オカマさん!? 神様ってそうだったのか!? 確かに性別とか超越してそうだけどさ!

 まさかまさかの事態を飲み込めずにいる俺へ向け、神様? は説明を続ける。


『そのお詫びと言っちゃなんだけど、ねえアナタ、異世界転生とか転移とか、記憶を保持したまま別世界に行く事に興味なぁい?』


「……っ」


 なんだこの微妙にネットリした誘い方……俺、今体無いのに寒気がしたぞ。

 神様? は更に口が回る。


『悪くない話でしょ? 救世主とか、勇者とか、色んな形でチヤホヤされて楽しくなる世界! しかも、アナタの望む特典付きだからね。良い事尽く目よ!』


「…………」


 怪しい。怪し過ぎる。大した恩恵の無い品を高値で送り付けるセールスが如き様。

 まあけど現実世界に未練とかも……見たかった漫画やアニメ、やりたいゲームくらいで特に無いしそれも良いかもな。そもそも生き返られるのかすら不明だ。

 一先ず返事をしようと口開く直前、暗いのか黒いのか分からない空間にヒビが入った。そこから顔を隠し、ローブのような物を纏った長髪の何かが現れる。


【やめろ……! 神! 貴様が何度も我の世界に干渉し、刺客を送りつけている事は分かっているぞ!】


『あら、此処まで来ちゃったのね。大魔王さん♡』


 ……へ? はあ!? 魔王……どころか大魔王が襲来してきたぞ!?

 俺の天元突破しそうな驚きを他所よそに大きな反応は示さず、大魔王へ接する神様。

 大魔王は俺の方を見、長い黒髪を揺らして忠告するように言葉を発した。


【そいつの、そのぺてん師の言葉に騙されるな。若き青年よ。奴が手違いで貴様を死なせたというのは真っ赤な嘘だ。神というモノは人間でも人間以外の生き物でも、気に入った存在が居れば殺め、手中に収めようとする。そして魂を縛り付け“異世界転生”という名目で器を与えて別世界へと送り込み、本来の肉体は永遠にコレクションとするのだ】


 はあ!? マジかよ!? 神ってそんな存在だったのか!?


『在らぬ事を吹き込まないで頂戴。この坊やを気に入ったのはそうだけど、異世界へと送り込むのはアナタを倒す為よ。大魔王』


 先程とは打って変わり、真剣な表情で話す神。

 大魔王を倒す為に人間を使う。それもそれで色々と指摘したい部分はあるが、それについての説明も今される。


『教えるわ。私達の関係と因縁を。──あの子は大魔王であり、私の兄妹でもある存在。最初はお互いに“無”から生まれ、私が全てを創造する力。あの子が全てを破壊する力を手に入れたの。私達が原初の存在故に、己の努力でね。今では多元に渡って数多の宇宙を創り、生き物達の生活を見ているわ。けど、あの子は思考が破壊的でね。私の創った宇宙を次々と滅ぼし、そこへ己の分身体を一つの宇宙の支配者として置いているの。ここまで説明したら分かるかしら? アナタにして欲しい事は特典として私が与えられる限りの力を与え、大魔王の分身を倒す事。刺客を送り付けているとはつまり、平和を守る為に可能性のある人々を異世界。即ちあの子の支配する宇宙に送り、倒して貰おうと考えているのよ』


 うん、ヨクワカンナイや。つまりこの二人は宇宙に置ける原初の存在で、兄妹喧嘩が勃発中って訳か?

 てか、兄妹のニュアンス的に……まさかこのカマ神様が妹の立場……あまり考えるのはよそう。


【貴様こそあらぬ存ぜぬを青年に吹き込むな! 世界を己の意のままにしようとする悪神が……!】

『どうやら話しても分からないみたいね』

【その様だな。いや、初めからそうだ。我と貴様は永遠に分かり合えない】

『文字通り永遠にね』


 オイ! 俺そっちのけでなんか最終決戦が始まろうとしているぞ!?

 一体何なんだよこの状況は!? 俺は普通に死んだだけだぞ!? モブみたいな一般人の俺を神様と大魔王のゴタゴタに巻き込むなよ!?

 大魔王は力を込め、黒い球体を片手に生み出す。


【この、一欠片で全宇宙を滅ぼせる“暗黒天砕壊滅魔極球”にて、この空間ごと貴様をほふり去ってくれよう】


 なんだって!? あんこくてんさい……なんだよそれ!? つか、マジで俺完全に蚊帳の外じゃん! しかも全宇宙を消せる力とか最早もはやラスボスだよ!?

 いや、大魔王ラスボスだったわ!


『アラアラ、怖いわねぇ。私相手にそこまでするのかしらん?』


 俺が怖いのはアンタ自身だよ神様……。


【貴様相手ではそれでも足りなかろう。だからこそ多元宇宙を絶対無限に渡って破壊し続ける力を絶対無限回ぶつける! 死ねェい!】


『駄目よ。私の空間は全ての宇宙と繋がっているもの。宇宙の一つだけならまだしも、私を壊されちゃ敵わないわ。絶対無限の回数ならそれを上回る数防げば永遠に防げるわね』


「……!」


 大魔王が放つ黒い球体に対し、神様は白い何かで対抗する。

 2つの衝撃波は一瞬にして数え切れぬ程にぶつかり合い、既に魂だけの存在である俺を巻き込み、世界が白く染まった。



*****



「──はっ……!? ここは……!?」


 気付いた時、俺は肉体を持って見た事の無い世界に立っていた。

 なんだ? 助かったのか? 既に死んだ身だから助かったとも違う気がするけど、取り敢えずアイツらから離れられ……!


「んもう! メチャクチャするわね! いくつかの力を失っちゃったじゃない!」

「それは此方こちらの台詞だ。クソ神が。これでは多元宇宙中に存する我らの制御が利かなくなってしまう」


「……へ?」


 2人が何かの言い争いをしていた。

 その2人の声はついさっきまで聞いていた声。

 嘘だろ……? これってそう言う事か? ラスボスと神様が……。


「アラ、アナタも気付いたのね。おはよう。肉体と魂は大丈夫かしら? アナタを送る予定だった世界に私達まで来ちゃったわよ~」


「悪いな、青年よ。君を神から守れなかった」


「……そうですか」


 もう何の理解も追い付かない。空返事をするしかなかった。

 俺の異世界転生。それはテンプレから全てが逸れ、バグったかの如く奇妙に始まってしまった。


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