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ソードマスターハデス 先祖の戦いとか概念干渉するレベルが王様の周りにいたとかそういう設定はあった気がしたが別にそんなことはなかったぜ

その男が強いという確信があった。

佇まいだろうか、それとも覇気とでも言うべきものか。


「きぇぇぇぇい!」


猿叫とでも言おうか、甲高い声と共に奴が剣を振り下ろす。

死の気配を強く感じ、すぐさま回避に移る。


「チッ!」


右に飛んだ瞬間、左腕が飛ぶ。

回避損ねた斬撃が入ったからだ。

構えた瞬間は見えたが、しかし降ろした瞬間は初動しか見えなかった。

しかしこの程度、すぐに……ッ!?


「腕が、治らない?」

「やはり、俺の動きを見る前に逃げやがる。あぁ、予知能力の類だな」


すぐさま切り離された腕を拾い上げて魔力を込める。

左腕を使った死体爆破だ。

俺と奴の中間地点に、爆弾となった左腕を放り投げて距離を取る。

投げ放ったと同時に左腕は赤熱して膨張し、閃光を放ちながら周囲に衝撃波を解き放った。


「くっ!」


その衝撃波に身を任せ、転がるようにして距離を取る。

恐らく、奴の斬ったものは死体となるのだろう。

死霊術師に操られた死体ではなく、何もないただの死体だ。

コントロールを奪うと言っても良い、そうであれば視覚共有で見た光景と合致する。


「咄嗟の判断にしては良いな、だがその手口は見飽きている」

「なっ!?」


真横から声が聞こえ、反応する。

反応した先にはすでに剣を構えた剣神レーヴェンシュラハイムの姿が見える。

まずい、奴の剣は間合いなど関係なく何故か斬り裂いてくる。


「死霊飛翔!」


肉体を霊体化させて剣の軌道からズレるべく移動する。

刹那の判断、しかしそれは間違いではない。

真横への斬り払い、それを霊体となって上昇することで何とか回避する。

だが、完全とは言えず今度は両足を持ってかれ、今では腰から下がない状態で浮遊するはめになった。


「化け物が、細切れにしてやる」

「やはり、両足が霊体にもならない。斬られたらお終いか」

「ハッ、当たり前だろうが。斬られたら普通は動きも治せもしねぇ、俺が斬ったんだから斬られたままになるのが道理だ」


今のやり取りで大体わかってきた。

奴はどういう訳か結果の固定が出来るらしい。

斬ったものは完全に切断された状態にされる。

そのため目に見えない精神体の繋がり、魔力でも支配権でも繋がりがあるものは問答無用で断つということだ。

霊体を斬るとか概念を切断しているのに近いのだろう。


「概念への干渉か、なるほど」

「ほぉ……だが、分かったところで」


奴の剣が再び構える姿勢に入る。

振れば、それは間合いも関係なく空間ごと此方を斬り裂くのだろう。

しかし、すでに方法は理解している。

俺は視界に入った奴の動作の起こりを目標に魔法を放つ。


「ぬっ、ぬおぉぉぉ!?」

「……ダメか」


剣を振るう。

その動き、それは数秒のタメを要する物だった。

数秒だけ、だが数秒あれば攻撃を避けることは容易い。

難なく避けたが、俺は失敗したことを悟った。

同様に、レーヴェンシュラハイムも何が起きたか理解したらしい。


「テメェ、何しやがった」

「あっ、理解してなかったか」

「何しやがったって、聞いて!?うおぉぉぉぉ!」


再び攻撃しようとする、その動作に向かって魔法を放つ。

奴は理解できなかったが単純だ。

奴の剣術と同様に概念への干渉を行った。

やろうと思ったら出来たので意外と簡単らしい。


奴の動き始め、動作の起こり、斬ろうとする意思でも良い。

そういう原動力とも言うべきそれを、強制的に死の状態にした。

斬ろうと思った瞬間にその意思は殺され、肉体の動きも死に、それに奴が気付き再び斬ろうとするまでに数秒。

そして、戦闘時に数秒の時間を稼ぐという結果にそれが繋がる。


「最初はダメかと思いましたが、慣れましたね」

「舐めたこと言ってんじゃねぇ!」


奴の攻撃が既に行動を終える。

見えないほどの速さ、なるほど迎撃される前に押し切ろうと考えたか。

だが、もう既に運用方法まで理解した。

俺の霊体は変わらず浮遊したままとなる。


「何故、何故斬れない!何をした!」

「俺に害ある全てを殺す瘴気を纏いました。差し詰め……害意抹殺とでも名付けましょうか」

「ふざけるな!この俺の研鑽をなんだと」

「普通、間合いの外の物は斬れないでしょ。ふざけてるのは貴方では?」


どうして剣が振れてないのに地面やら人体やら、なんなら山とか遠くの景色まで斬れるんですかね。

距離とか関係なく視界に移るものが何でも斬れる方がふざけてるでしょ。


「あぁ、そうだ」

「う、腕が!確かに俺が斬ったはず!それに、それは貴様が爆破させた……」

「貴方の切断したという状態を殺しました。そして、私の消費したという事実も殺しました。概念抹殺とでも言えば良いでしょうか、事象の殺害とでも考えてください」


言葉遊びのようだが、しかし実際に出来たのだから出来るのだ。

斬られてコントロール出来ない状態を死亡させれば、元のように切り離された両足は霊体となって遠隔で戻ってくる。

爆破して跡形もなく消えた左腕に関しては無くなってしまったという事実を殺すことで、そもそも切り離されず爆破されてないということになった。


「やはり、貴様はここで殺す!殺さなければ、この国の敵となる」

「ウチの先祖は国というか世界の敵だったみたいなんですけど。あと、不可能なことは言わないほうが良い」

「油断したな!喋っている暇など与えんわ!」


瞬きした瞬間だった。

視界がバラバラに、霊体が霧散したのが分かった。

切り刻まれたのだ、あの一瞬でだ。

全ての霊体は俺の支配を受け付けず、俺の意思も数秒も経たずにして消え去るのだろう。

だが、それは無意味だ。


「魔法すら斬り裂いて、お前の意思という意思を斬り裂いた。これで何も出来はしまい」

「いや、だから例え何かしても全て殺してしまえば元通りになるので不可能なんですよ」

「な、何故生きている……」

「今、説明したのに聞いてなかったんですか?俺の死を殺して、死んでなかった状態にした、理解できましたか?」


剣神とやらは人の話を聞いてなさすぎる。

何を驚いているのだろうか、もう一回説明が必要なのだろうか。

だから、がむしゃらに剣を振ったところで斬られたことを殺してしまえば……欝陶しいなこの人。


「もう疲れた、いい加減に死ねよ」

「あっ……」

「あっ」


そんなつもりはなかった。

ただ、本音を吐露してしまっただけだった。

しかし、俺の言葉に魔力が乗って魔法となったそれは呆気なく剣神の命を奪う。

俺の言葉を聞いたからか、剣神の生きているという状態が死んだのが分かった。

いやいや、きっと剣神のことだから死んだという状態を斬り裂いて復活するはず。


「…………」

「…………」

「馬鹿な!?呆気なさすぎる!あっ、が最後の言葉だと言うのか」


どうして俺に出来たことをお前がやらない。

概念への先駆者として、ノウハウは俺より持っているというのではないのか?


「……帰るか。後はコイツがどうにかしてくれるだろう」


討ち取った証拠として、首実検ように頭部を切り取り死体に魔法を掛ける。

死者変性、それも剣神と呼ばれた男の死体でのアンデット作成だ。


「ウオォォォォォ!」

「デュラハンか。よし、王都の貴族を殺してこい」


デュラハンは俺の命令に従い、剣を振った。

何で剣をと思ったが、振るった瞬間どこかに消えた。

いや、よく見たら離れた場所に転移している。


「移動する過程を斬って結果だけ生み出したのか?」


あるいは空間を斬ったのだろうか、生前よりなんか今のほうが概念切断の使い方が熟達してないだろうか?

いや、まぁ任せたらいいだろう。

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